日本はとても良い国だ。
どれだけ親が貧しくても、地域が貧困でも、本人が賢く美しく健康で強ければ、大抵は巻き直して勝ち組になれる。
本人の能力さえ高ければ願いを叶えて幸せになれる。
日本の国家は、日本の政府は、親の資産に関わらず優れた人間でさえあれば勝ち組になれる社会を作り上げてくれた。
唯一必要な親から受け継ぐべき遺産は、優秀な遺伝子だけであり、逆に言えばこれがなければ余程の資産がなければ終わるが、これは日本に限った話どころか、人間に限ってさえいない話だ。
生物全てに適用される真理だ。
男に生まれて顔が良いだけで、ホストとして数億を若い内に稼げる。
結婚も出来るし、周りにも尊敬される。
後はホストクラブの経営者側になり、浮いた金はオールカントリーか米国向けの投資信託に回すだけで良いらしい。(諸説アリ)
こんなに生きる事が簡単な国が他にはあるだろうか?
いや、無いだろう。
国のする事なす事間違いだとか裏があるとかいって、国民が国家への信頼を持つことを許さない反日勢力もいるが、そういった人々は国からも期待されていない。
何故なら現在の体制で負け組であり続けた人々が、現在の体制に不満を持っているだけだからだ。
敗北しか出来ない人々が、俺は国の役に立ってはやらないぞと主張しても、最初から役立たずには期待していないぞという返答が、国側の心の中で行われるだけだろう。
大成功を目指さないのなら、特別に優れている必要すらない。
特別に劣ってさえいなければ、余裕で生きていけるし、家庭も持てる。
家庭が持てない人間の多くは、そもそもそいつがモテない事が最大の理由であるから、普通の顔なら何とかなるのだ。
それなりの人間なら、理想の相手は無理でも、それなりの相手は見つかるものだ。
それなりの相手さえ見つからないのなら、それはきっとそれなり未満なのだろう。
それなり未満の人間達がいる。
そう。
ボッチで空気が読めなくて物忘れも多い比企谷八幡のような人間がいる。
周囲との競争に勝てず、自分で自分を救えない弱者は、周囲を圧倒するずば抜けた強者が己を救済すべきだという発想を持つ。
現実的には、大富豪がチェーン店でバイトをしたりするような、高レベルの者が得られる報酬が低いステージにいるメリットは無いのだが…。
自分では誰かに勝つことが出来ない。
その能力がない。
何もかも諦めているから平気というよりは、何やっても駄目だから諦める人生の送り方が形成されたのだ。
だからこそ、そこら辺の有能な成功者を軽く超える誰かがいて、その誰かがそこら辺の有能な成功者よりも、自分を選んで助けてくれる事を望む。
諦めたはずの幸せを掴める夢想を、結局捨てきれていないのである。
それこそが、陽乃を好きになる八幡の心理そのものなのだ。
陽乃も大学生だ。
彼女は優秀なのでかなり上の大学へと進んだ。
そこには雪ノ下家を超える名家の青年達も多く居た。
彼等の一族は相手を選べる側で、選ぶからには賢く強く美しい配偶者を選び続けて来た。
そうやって優秀な遺伝子を集め続けて来た。
優秀な遺伝子を束ね続けて来た。
もはや比企谷家とは比べ物にはならない。
陽乃は初めて敗北を味わった。
自分より格上の先輩に惚れて言い成りになり、呼び出されてはヤられる日々に幸せを感じる女になった。
比企谷八幡の様な弱者は雪ノ下陽乃の様な強者を超える更なる強者に選ばれたがる。
しかし、雪ノ下陽乃の様な特別な強者も、それ以上の強者に選ばれたがるのだ。
比企谷八幡に出来ることは、本当は諦めていたフリをして諦めていなかった事を、自分には無理なんだと心から理解する事。
優れた存在を称賛して、己とは別世界のものとして扱う事。
自分の初恋の相手が恋する相手は自分である事は決してないと、諦めを付ける事。
部活にも本気になれなかった奴は、受験にも就活にも本気になれない。
一生、本気になっていれば成功したかも知らないと妄想しながら生きていくのは、余りにも無意味なのだ。
だから、それは捨てるべきである。
凡人にさえ選ばれない人間が、相手を選び放題の強者に選んで貰えると勘違いしてはいけなかったのだ。
それこそが恋愛弱者男性として生まれた、比企谷八幡の救いであるのだから。
おしまい。
この完璧な作品に対する評価と感想待ってるぜ!!
by死にたくない作者