ユメ先輩生存ルートです(強弁)
―――昨日は、星がよく見える日だった。
砂漠化は土地を枯れさせる。砂はインフラを駄目にして、乾きと荒廃を与える。
かつては栄えていたこの自治区も、急速な砂漠化が広がってからはみるみる内に衰えていった。砂祭り、なんて催しにもなっていたのに、その恵みも度を過ぎれば厄介なだけの災害でしか無い。
でも、その分。いいこともあると思うんだ。今言ったみたいに、砂を使った祭りも昔は行われてたし、何より星がよく見える。
都市開発が進めば進むほど、天然の宙とは縁が遠くなる。地上の喧騒と光が、遠くの星の輝きを目に入らなくしてしまう。
だから、雲一つ無い夜空に、浮かんだ星々の海は本当に綺麗だった。すっごく綺麗で、ただそれを見る為だけに生まれてきたかのような気もする。
砂漠の静寂が、天体観測にはピッタリの雰囲気を助長していた。こんなにいい星空なんだから、ホシノちゃんとも一緒に眺めたかったな。
ホシノちゃん、というのは私の唯一の後輩のこと。ちっちゃくて、可愛くて、しっかりしてて頼りになるのに、何処か私とおんなじようにおっちょこちょいな大切な後輩。
……最近は、少しピリピリしちゃってるけど、それもしっかりしていけば、きっと収まる。
今の問題が解決すれば、きっと二人で。ううん、ひょっとしたら、もっと沢山の人数で、あの星の煌めきを見ることが出来るのかもしれない。
「えへへ、きっとそっちのほうがいいよ」
そんなふうに、水色の長髪を持つ彼女は、にへらっと陽気に笑って学校の屋上から立ち去ろうとする。
「あっ!流れ星!」
きらり。遠方の宇宙で星が尾を引いて移動する。最初の一筋が流れて、今度は次々と大量の流星が空を瞬く。
「す、すごい!こんなのニュースでも言ってなかった…」
次々と流れてくる流星群。その素晴らしい光景を満足な環境で見ているという事態に目を奪われ、ハッと正気を取り戻した彼女は、この滅多に見られない現象に慌ててお願いをし始める。
「ホシノちゃんと仲直り出来ますようにホシノちゃんと仲直り出来ますようにホシノちゃんと仲直り出来ますようにっ!」
流れ星が消える前に3回願い事を言うことが出来たら、願い事が叶う。
それは所詮、なんの根拠も実証もない噂話。ただ、誰もが一度は考え、例え信じていなくとも考える行為。
それを、彼女は真剣に、見ているこちらが真剣になるほどに思いっきり願い事をしていた。
「え、え〜っと後は……あっ、アビドス復興アビドス復興アビドス復興!大金持ちになれますように大金持ちになれますように大金持ちになれますように!ま、まだ…!? ………け、健康健康健康!強くなれますように強くなれますように強くなれますように!」
思いの外長く続く流れ星に、とうとう新しいフレーバーのお菓子の味まで願い始めた所で、流星は収まった。ぜえはあと息を吐く彼女は、これだけ沢山願ったんだから、どれか一つくらいは叶うかも、と思いながらルンルン気分で今度こそ腰を上げる。
(あ…)
そして、一つだけ、言っていなかった願いが見つかった。さっきは、アビドスに戻ってきた大勢で星を眺める情景を思い浮かべていたものの、それが叶う確率は限りなく低い。
何故なら、自分は3年生。後輩が新しく入る年にはもう自分はこの学校にいないのだ。唯一あり得る手段としては、今アビドスが抱えている問題を踏まえて尚、他所から転入生してくるか、出ていった生徒たちが戻ってくることだけ。
どちらも、現状ではとても現実味がないこと。
そして否応なく実感する。今の関係が少しギクシャクしているからだろうか。一人で夜空を眺めていたからだろうか。
たった一人の後輩と過ごした楽しい思い出が、脳を駆け巡る。
(ホシノちゃんと、ずっと一緒にいれますように)
彼女は、ユメは、既に遅いと知っていながら、数多の流星の失せた宙へと願いを乗せる。これまでと違い、声には出さず静かに祈られたそれは、なんの意味もない意志として虚空へと散っていった。
――古来より、星とは力を司るもの。ヒトには理解できぬ天上の向こう。星の海に瞬く大小の輝きは、地上から眺める他無い人類にとっては憧れと畏怖、祈りの的であったのだ。
届かぬホシに手を伸ばし、彼方の空にユメを乗せて。
その大半は無為に終わる。ただの意思なき惑星に願った所で、遠く離れたこの地のたかが一生命体に利益を及ぼすことなどありえない。
だが、もしも、もしも、遠く離れた
……なんて、そんな風に考えてしまうほど、 宇宙とは広大で、強大で、人の力の及ばぬ絶対的な信仰の的になるものだった。
――――だから、これは限りなく低い確率を奇跡的に引き当てて
✦✦✦
(……あれ。わたし。なんで)
何も聞こえない。
いくら静かな砂漠とはいえ、僅かな環境音くらいはするし、最近は砂嵐も酷いのだから、風切り音すら聞こえないのはかなり珍しいことだった。
どうやら寝ていたらしいと目を開けようとして、何も体に変化はない。どれだけ瞳を開けようとしても、身体を起こそうとしても、とんと言うことを聞いてくれない。
まだ夢の中なのかも。
そんな風に呑気に考えたその頭を、致命的な痛みの信号が走る。
「ぎっ―――!?」
あ、あああぁあアあ嗚呼あああっっ!!?痛い!痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
体中が熱い。じくじくとうずく傷跡に熱した鉄板を無造作に突き刺すような、開かれた内臓を無遠慮に弄り回されているような。
そうとしか形容できない苦しみが襲い掛かり、遅れて知覚する。
(あ、わたし、そっか)
そうして、ユメは妙に冷静な頭でこれまでの記憶を思い出した。
それは、今から死を迎える前の一瞬の想起。所謂走馬灯というものだったのかもしれない。
これまでの活動、青春。そして最期の光景も。
●●に騙され、向かった先で突如現れた巨大なナニカと戦って……。
何か光が瞬いたことしか覚えていないけど、多分、それを食らってしまったんだろう。だから、体の感覚がないんだ。なのに、大切な何かが溢れていくことだけは、自分の体が死に向かっていることだけは理解できる。
実際、その姿を見て生きているという希望を見出す人物は限りなく少ない。ズタボロの全身に、強力な力で根本から吹き飛んだ左腕と右足。強力な熱量で焼かれたのか眼球のタンパク質は凝固し、綺麗な琥珀色の瞳は既に無い。
口元も焼け爛れ、半端に溶けてくっついた口の皮膚が息をするたびに震える。
(ホシノちゃん……)
絶え間ない激痛と死の恐怖に襲われながら、最期の最期に思い出したのはホシノのこと
だった。
可愛くて、強くて、ちょっと辛辣なところもある、私の後輩。
(気にしちゃうかな。しちゃうよね。だってホシノちゃんは優しいから。いや、ホシノちゃんは強いしちゃんと乗り越える……でも、ちっとも気にされなかったら悲しいな。……アビドスはどうなるのかな。ホシノちゃんはやっていけるのかな。………きっと出来る後輩を、守ってあげるのかな)
際限なく溢れだす未来への届かぬ想い。目は何故か開かないけれど、心の中で泣いている。
(どうしよう。わたし、もっと。ホシノちゃんと、一緒に……)
そして、ようやく己の死を理解して哀しみに暮れる。後悔に苛まれる。あの日常をもう一度過ごしたい。もっとやりたいことがあった。砂祭りだって、ホシノちゃんが卒業する姿だって見ていない。
(……死にたくない。死にたくないよ、ホシノちゃん。まだ、生きていたい。どんな形でもいいから。それこそ、病院で寝たきりになったとしても、もう一度、ホシノちゃんと会って、仲直りして。………嫌だなぁ)
後悔の記憶を取り戻すように、幸せなユメを見る。
そして、ゆっくりと、昨日見た綺麗な星々に溶けるように。限界だったユメのヘイローは呆気ない音を立てて砕け散った。
――――瞬間、世界はすべての色を喪った。
この色というのは、そのままの意味ではない。この世界に存在するすべての生物が、例外なく怖気と妙な圧迫感に駆られ、ぞわりとした緊張感に襲われる。
それはほんの一瞬程度で、時間にして0.000003秒の緊張。誰もが無意識に忘れてしまう程度のものだったが、確かにその瞬間だけは、この世界の生きとし生けるものすべてが同じ感覚を共有したのだ。
それを知覚できたのは、極一部の限られた者達。それも、こちらに興味を持っていなかったことで、辛うじてそれを許された者。いや、そもそもソレに比べればその様な存在など文字通りの塵芥でしかないのだろう。
その反応は様々だった。
「……どういう事ですか、これは…。何故あのようなものがこの程度の…?絶対者と呼ぶことすら厭われるアレは、私達の目指すものですら……? アレは、一体…?」
一人は、理解と考察を進めながらも、ソレへの理解は己の目指すべき行程すら歪めるものだと認識し、その興味を危険なものだと放棄した。
「……アレは私たちの知る神秘でも恐怖でもない。かと思えば、崇高とも異なる……否、崇高程度でアレへの見識を語っていいものか。はたして、アレを形容する表現が世界にあるのかすら危ぶまれるが…。少なくとも、私の望むものでもないことは確かだ。……どの様な芸術作品も、土台そのものが消えてしまえば意味は消失する。嗚呼、私はあれが恐ろしい。願わくば、何者をも手にかけることなく通過することを望もう……」
一人はその威容を己の認識した全ての存在を越える天災と見なした。
「…………」
「…………」
一人は沈黙を貫く。
(あの様なものが、あっていいはずがない!あれが存在してしまえば、私の目指す崇高ですら…!色彩をも越えるソレが、なんの目的でこのような場所に…!? いえ、これは、崇高をも足蹴にできるほどの力を知覚する好機……)
また一人は、余りある力の奔流に魅せられ野心を抱く。
「お、おおおおおおおおっ!!!?だめだ、やめろ、それはいけない!このコデックスでは耐えられない!あの存在のコデックスを視界に収めるな…!? ゲームなどとは考えるな…!小生は、アレの参入を望まない……!!」
そして、その中でも最も近くにいた者は、怯えるように暴れ狂い、その醜態を晒しながらそれが過ぎ去るのを待った。
そして、その降下地点。
それが降臨する所以となった少女の遺体が野晒になっている。
ソレはほんの微かな時間でソレに手を加えると、瞬く間にこの次元から去っていった。ここよりも上の次元から、更に上の次元を飛び飛びに移動して、ようやく元の次元に帰ったそれから、それ以上の干渉はない。
恐らく、その次元が閉塞しても尚、再び姿を表すことだけはないだろう。
蝶の羽ばたきが大嵐を起こすことはあれ、銀河を終わらせることだけはない。
少なくとも、その点に関してだけは救われたのだろうか。
―――…
人知れず、無為に世界が終末を迎えようとしていたのも知らず、降臨地点で異変が生じる。
何と、既に死していたはずの少女の肉体が欠損した右腕と右足を補ってムクリと起き上がったのだ。
これだけを見れば、上位存在の奇跡によって、哀れな命が救われたと思うのだろう。………その変化に、目を瞑れば。
根本から存在しない右足から、別々の方向に二本の足が生えている。確かに足として機能しうる程度の輪郭を保ったそれだが、新たに生えたうちのもう一つの足は両の足とは反対向きに突き出している。
正常な向きの足も稚拙なものだ。間接だけは真似しているような、指も爪も存在せず、象の様に棒の平面のみで大地に立っている。
左腕の断面からは二本の腕が生え、その二つは肘先から溶けるように融合しており、その外見は醜悪な銃のように歪に変化を遂げた。そして、その後ろ。左肩の辺りから伸びる、新たな腕。こちらは驚くべきことに通常の人間のものと寸分違わないものだが、その出処が故に余計に異常に感じさせる。
全身には傷を覆うために包帯で巻かれ、眼窩を覆う包帯は血液で真っ赤に染まっている。朽ちたようにカサついた包帯に体中を巻かれた姿は、さながら古代の
驚くべきことに服の中まで包帯が巻かれており、露出しているのは新たに生えた手足と、目元を除いた頭部のみ。
彼女達、生徒の意識の象徴とも認識されているヘイローは粉々に砕けたまま。
「ホシノ……ちゃン」
歪に変化した身体を携え、それはふらふらと砂を掻いて歩み始めた。
肉体の変容と、それに耐えうる身体を持っていたとしても、その精神までが無事であるとは限らない。死体のまま蘇り、今も乾きと痛みを訴える肉体を持ちながら、容易に楽になることが出来ない、気の狂うような生は、果たして幸せなのか。
少なくともこの日。砂漠を宛もなく彷徨う亡者が一人増えた。確かなことと言えば、そのくらいだろう。
『ホシノ』
原作通り「ここに居たんですね」した。原作の描写は分からないが腕と脚が放置されていて血痕もあるので死んだと確信している。勝手に殺すなんて酷いよね
『ゲマトリア』
ちょっと出てきた相手の格が高すぎて嘆いている
『クズノハ』
大好きなアイドルのライブに行ったら全員ぶくぶくに膨れて破裂してその中身をモロに被ったレベルの衝撃
『ユメ先輩』
大量の流星群が分岐点。
死体から蘇生されたが、デザインが違うのは悪意からではなくそもそもの常識や価値観が異なるから。
常に体の変異による不快感や痛みがあり、一度死亡したので意識は靄がかっているようで、朦朧としている。
腕の銃からは細胞と鉄分を使って球を撃ち出すことが出来るが、撃ち過ぎると鉄分が無くなり血液が黄色になる。その場合細胞片だけを飛ばすことになるがどれだけ撃っても死ぬことはない。
モチモチお肌は放浪で乾いて、健康的な足はなくなっちゃったね。ぷるんとした唇は融けてくっついちゃったし綺麗な琥珀色のお目々は白く濁って見えなくなっちゃったね。
でも無料で生き返れたから儲け物だね。どんな姿でもって言ってたし自分の体の変異はなしとか願ってなかったから仕方ないね。しっかり条件をつけないから土地もあんなふうに買われちゃうんだよかわいいね
『超上位存在ちゃん』
キヴォトスの存在する次元から14つくらい上の次元からやってきた。完全に善意の第三者。
光の9京の35兆乗くらいの速度で歩行し、その存在を言葉に表すまでに大抵の宇宙は閉じる。
とても理知的で優しい種族。
今回のは偶然だが、祈られたり願われたらこれだけ離れた次元でも取り敢えずやってくる。
当人が死亡しているのを見て、自分が遅かったからだと反省している。なので蘇生した。
銃型の腕はここの世界における自衛手段、あるいは戦闘に扱う物だと知ったため、片腕では上手く扱えないだろうと思い直接生やした。が、掴むことなどにも使用しているらしいので急遽新しい腕を追加した。
足は失った足を補助して安定して歩けるようにと言う配慮。
体中の傷は包帯を巻いてあげた。尚傷の度合いがよくわからないので包帯は全身に巻かれている。
痛みが襲っているが、これは本人達にとっては理解できない感覚のため、分からずそのまま形だけを直した事によるもの。一定以上下の次元の存在がそれで苦しむと理解すればすぐにでも飛んできて治す程度の配慮はある。まあキヴォトスの次元がなくなるまでに再び訪れることはないんですけど。
ついでに、目と口元は目に見えて分かりやすい傷ではなかったため放置。一応傷がついていそうな目元だけ包帯をしている。
生やす位置が少しずれていたりするが、人間で例えると0.000001mmの人形を道具を一切使わず補修したような物なので、かなりの神業である。
言い直すが、悪意は一切なしの善意100%でこれらを行っている。
最初の願いは大体叶えた。
ホシノと仲直りが出来、一緒にいられるように蘇生したし、またそのために体は健康()にしたし強くもなった。大金持ちと復興資源として、記憶から読み取ったものを現実にすべく地下に大量のレアメタルとこの次元に存在しない一部の資源を埋めている。
まあ、大体カイザーの土地になっちゃうんですけどねw