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「ネットニュースで見たよ、竜子ちゃん!」
「優勝おめでとう!」
「お、おう……」
登校するなり、竜子はクラスメイトたちに取り囲まれる。
「『不思議の国の有栖宮』さんに勝ったんでしょ?」
「あ、あやつ、そんな二つ名じゃったんか……」
「違うの?」
「い、いや、確かに勝ったぞ」
竜子が頷く。
「すごいわ!」
「さすがだね!」
「い、いやあ、それほどでも……あるかのう!」
「わあああ……!」
クラスが大いに沸き立つ。
「す、すごい盛り上がりだ……」
太郎が唖然とする。
「え~皆も将野竜子さんを見習って……」
「校長先生が全校集会でワシの名前を出したぞ!」
「すごいね」
「竜子さんが二つの駒で四組の駒を取りました……」
「算数のテストでワシが出題されたぞ!」
「す、すごいね……ちょっと意味が分からなかったけど……」
「まさのりゅうこさん、いつもありがとうございます!」
「全校生徒がワシに感謝の念を伝えてくれるぞ!」
「す、崇拝っぷりがちょっと怖いな……」
「いや~連日のこのフィーバー、さすがワシじゃな!」
「えっと、竜子……?」
「ん?」
「最近将棋は?」
「う~ん、飽きた」
「あ、飽きた⁉」
「ああ」
「あ、ああって……」
「正直、モチベーションが上がらなくての~」
竜子が両手を広げる。
「も、燃え尽きたってやつ?」
「そう、まさにそんな感じじゃ」
「そうか……」
「さっさと帰ってゲームでもするのじゃ!」
竜子が走って校門にさしかかろうとする。
「……そんなことだろうと思ったわ」
「!」
玲央奈が竜子の前に立ち、髪をかきあげる。
「将棋バトルにも顔を出さないし……」
「そ、そなたは……誰じゃったかな?」
玲央奈がズッコケる。
「ま、まさか、忘れたの⁉ 伊吹玲央奈よ!」
「いやいや、冗談じゃ」
「まったく……」
玲央奈は体勢を立て直す。
「なんの用じゃ?」
「暇なんでしょう? ちょっと顔を貸しなさい」
「い、いやあ~用事があっての~」
「ゲームなんていつでも出来るでしょ」
「ぐっ……聞いておったのか」
「車に乗って」
玲央奈が車に乗るように促す。黒塗りの高級リムジンである。
「お、おぬしの車か?」
「まさか、人のよ。とにかく乗って」
「う、うむ……」
竜子と太郎が玲央奈とともにリムジンに乗って、あるビルに向かう。
「着いたわ。降りて」
「こ、ここは……」
「将棋道場よ。さっ、入って」
玲央奈は竜子を促す。竜子は太郎とともに道場に入る。
「いらっしゃいましたわね……」
そこには左京と央美がいた。
「おぬしたち……」
「我が家のリムジンの乗り心地はいかがだったかしら?」
「まあまあじゃな」
竜子が左京に応える。央美が声をかける。
「尻尾ちゃん、久しぶりだね~半月ぶりくらい?」
「まあ、それくらいになるかの……」
「最近はアプリでも見かけないし……どうしたのかな~って思ってさ」
「……用件はなんじゃ?」
「感想戦をしようかなって思ってさ」
「乾燥線? 別になにも濡れてはおらんぞ」
央美の言葉に竜子が首を捻る。
「感想戦ですわ。互いの感想を戦わせるということ……」
左京が扇子を広げてパタパタとさせる。
「なんの感想じゃ?」
「この間の大会よ」
玲央奈が席について、盤上に駒を並べ始める。
「ええ?」
「ええ?じゃないわよ、大会ではバタバタとしていたから、今振り返るの。対局を振り返るのは大事なことよ……まずは……貴女と外海さんの一局を……」
玲央奈が手際よく駒を並べる。
「ええっ⁉ お、覚えているんですか?」
太郎が驚く。玲央奈が応える。
「ええ、それはもちろん」
「も、もちろんって……」
「さあ、座って」
玲央奈が竜子に対し、自分の前の席に座るように促す。
「いやあ、もう将棋は……」
「モチベーションが無いって? ……入ってちょうだい」
「う、ううっ……!」
「⁉」
ボロボロのゴスロリ衣装に身を包んだ真理が入ってくるなり倒れ込んだ。