「うっ……」
「お、おい、どうしたのじゃ、ゴスロリ⁉」
竜子が真理に駆け寄る。
「ううっ……」
「おい!」
「不覚を取った……」
「ふ、不覚?」
「将棋で負けたのよ」
玲央奈が本当のことを告げる。
「馬鹿なことを言うな、将棋で負けたくらいでこんなことにならんじゃろ」
「大げさなのよ……早く立ち上がって」
「ふむ……」
真理がスクっと立ち上がる。
「な、なんじゃ……」
竜子があっけにとられる。
「敗戦のショックをオーバーに表現してみた」
真理がピースサインを竜子の顔に突き出す。
「ひ、人騒がせな!」
竜子は真理の手を払いのけて立ち上がる。真理はさほど気にせずに話し始める。
「今日は警告に来た……」
「警告? なんのじゃ」
「これから皆の前に立ちはだかるであろう相手のことを……」
「待て……話が見えん……」
「先日、家族旅行で関西に行った……」
「語り始めた!」
マイペースな真理に竜子は翻弄される。
「まあまあ、ちょっと聞いてみようよ」
「外海央美……」
「関西に行ってどうされたんですの?」
「郷右近左京……」
央美と左京に竜子は呆れ顔を向ける。
「将棋の大会が開かれていた」
「将棋の大会……」
「参加した」
「急じゃな!」
竜子が声を上げる。
「そこに将棋があれば一局指すのが将棋指しというもの……」
「そ、そうなのか……」
「分かる」
「分かりますわ~」
「分かりみ~」
「ええっ⁉」
玲央奈と左京と央美が揃って頷いたことに竜子が驚く。
「りゅ、竜子が振り回されている……」
竜子が困惑しているさまを見て太郎が驚く。
「その大会には、関西中の実力者が顔を揃えているという話だった……」
「そ、そうだったのか?」
「周囲は関西弁ばっかりだが、なんとかその情報は聞き取れた……」
「いや、日本語であるということには変わりないじゃろ」
「楽しみに大会に臨んだ……初戦の相手は、『琵琶湖の山本』」
「! あ、あの山本さん!」
「ご存知ですの? 央美さん」
左京が央美に尋ねる。
「琵琶湖のように広い指し回しが特徴的な関西の実力者だよ」
「どういうことじゃ?」
「盤面を広く使える人なのよ」
「ああ、なるほど」
「分かっちゃった⁉」
玲央奈の補足に納得した竜子に太郎が戸惑う。
「広さに戸惑った……盤面が果てしなく続いているのかと錯覚するほどだった……」
「ほう……」
左京が閉じた扇子を自らの口元に添える。
「しかし、どうにか勝利することが出来た」
「ほう!」
左京が扇子を広げる。
「これがその時だ……」
真理が盤面を再現してみせる。玲央奈が頷く。
「なるほど、盤面をあえて限定したのね」
「ふ~む……」
竜子が自らの顎をさすりながら頷く。
「次戦の相手は、『和歌山の中村』……」
「! あの中村さん!」
「ご存知ですの?」
左京が央美に問う。
「みかんのように天真爛漫な指し手だよ」
「……どういうことじゃ?」
「盤面が笑って見えるのよ」
「ああ、そういうことか」
「理解しちゃった⁉」
玲央奈の補足に再度頷く竜子を見て、太郎は再度戸惑う。
「その陽キャなノリに若干戸惑ったが……なんとか勝利した。再現すると……」
真理が盤面を再度再現してみせる。玲央奈が再び頷く。
「なるほど、盤面で泣いてみせたのね……」
「ほう……」
玲央奈が頷きながら盤面を覗き込む竜子に対して微笑みかける。
「興味出てきた?」
「! い、いや、別に!」
「それじゃあ、モチベーションが上がりそうな話をしてあげるわ。真理さん……」
玲央奈が真理に話の続きを促す。
「次戦の相手に完膚なきまでに敗れた……」
「!」
「どう?」
「そ、それがどうしたというのじゃ」
「その関西の猛者たちと私たちが対抗戦を行うことになっているのよ」
「‼」
竜子の顔色が変わる。
「呼んだかいな?」
「⁉」
竜子が声に振り返る。