竜王はワシじゃろ?~異世界生まれのJS、将棋を始めてみた~ 作:阿弥陀乃トンマージ
「まったく……単独行動はやめておくんなさいまし……」
着物姿で黒髪ロングヘアの女の子が直虎を見てため息をつく。
「いや、関東大会上位勢の皆さんにきちんと挨拶せんとアカンやん……」
直虎が苦笑交じりに答える。
「その考えは大事ですが、こちらも勢ぞろいせなあきまへんやろ?」
「そうそう、手間を省けるというものよ~」
短髪で長身に法衣をまとった細目の女性がうんうんと頷く。
「せやかてやな~」
直虎が自らの後頭部をポリポリと掻く。
「ナオトラ、勝手は困るわよ!」
銀髪のショートボブで軍服調の服を着た小柄な少女が直虎をビシっと指差す。
「勝手って言われてもな~」
「アナタ、対局を挑む気だったんじゃないの?」
「! ま、まあ、流れによってはな……」
「それで負けたらどうするのよ⁉ アナタを倒すのはアタシなんだから!」
「おおい、誰が負けるか!」
直虎が突っ込みを入れる。
「とはいっても~勝負は時の運だからね~」
長い前髪で両目が隠れた平均的体格である女の子が笑みを浮かべる。
「いやいや、そうそうは負けへんから大丈夫やって……」
「とにかく……!」
「ん?」
着物の女の子が口を開く。
「数日後には対局する機会があるわけなのですから、わざわざこちらの手の内をさらす必要などありやしまへん」
「いや、挨拶は大事やで~」
「挨拶はさきほどこちらに済んだでしょう?」
「……」
着物の女の子が指し示した先にアリスが立っていた。
「有栖宮さん⁉」
玲央奈が驚く。
「ド、ドウモ……」
アリスが軽く頭を下げる。
「挨拶は済んだ?」
「ひょっとして……」
央美と左京が怪訝な視線を着物の女の子に向ける。
「お察しの通り、さきほど、こちらの有栖宮アリスさんに、そちらの棋田直虎が勝たせてもらいましたので……」
「!」
「なんですって?」
央美と左京が驚きの視線をアリスに向ける。
「イ、イヤ……タイヘン、メンボクシダイモゴザイマセン……」
アリスが申し訳なさそうにする。
「その勢いを駆って、こちらに乗り込んできたというわけでございます」
「ここに集まっているって、SNSで見かけてな」
直虎がウインクする。
「しかし……その必要もないでしょう」
その場にいた全員の視線が着物の女の子に集まる。
「……どういうことかしら?」
「関東のレベルも大体分かったということでございます」
玲央奈の問いに着物の女の子が答える。
「! 大体?」
玲央奈が顔をしかめる。
「ええ、大体」
着物の女の子が首を縦に振る。
「何が分かったのかしら?」
「たかが知れとるな……と」
「‼」
「いえ、他意はありまへん……」
着物の女の子が自らの口元を隠す。
「他意が無かったら、もっと駄目でしょうが……!」
「失礼、正直な物言いしか出来ませんよってからに……」
玲央奈の怒りを含めた視線に着物の女の子は首をやや傾げて応じる。
「……週末じゃ」
「ん?」
全員の視線が、口を開いた竜子に集まる。
「週末の対局で、ワシらがおぬしらに吠え面をかかせてやるわ!」
竜子が着物の女の子たちをビシっと指差す。
「……これはこれは……随分と威勢がよろしいことで……」
「アナタ、名前は?」
銀髪の女の子が竜子に尋ねる。
「将野竜子じゃ!」
「! アナタが関東チャンピオン……小さいわね」
銀髪の女の子が驚きの視線を向ける。
「おぬしもちっちゃいじゃろ!」
「なんですって!」
「というか、お前らは何ものじゃ! 名を名乗らんか!」
「……
「! 『神戸のトリックスター』!」
「
「! 『奈良の守護者』!」
「
「! 『京都の絶対女王』!」
「ルーヴ=アルジャンよ!」
「! 『堺の銀狼』!」
「……二つ名しか出てこないのですが?」
左京が央美に懐疑的な視線を向ける。
「いやいや、揃いも揃って関西の実力者たち……その棋風もちゃんと抑えているよ」
「それならばよろしいのですが……」
央美の言葉に左京が頷く。
「それでは失礼……」
麒麟と名乗った女の子を先頭に、5人が外に出ていく。
「……というわけで、週末に関西の大会上位勢と団体戦を行うのよ」
玲央奈が竜子に話しかける。竜子が元気よく応える。
「面白そうではないか! なかなか濃い連中じゃな! 燃えてきたわい!」
「モチベーションが上がったようで良かったわ」
玲央奈が微笑む。週末を迎える。