男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する 改訂版   作:霧夢龍人

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番外編 女子達の狂喜乱舞

その日、女子達に激震が走った。

運動や勉強のどちらかに秀でた女子しか入ることが出来ない、実力主義の学校───青峰学園。

 

その学校は共学と名を打っている通り、男女入り乱れた学園である。

流石に男女の総数の差はあるが、街中で男性と巡り会う確率と比べれば天と地・・・いや、月とすっぽん程の差があるだろう。

 

男女比1:22。

しかしこの学校では、男女比率は脅威の1:4。

 

男を探しすぎて、何故かツチノコを見つけたという女性もいるくらいの学園外と、学校内を歩けば自然と何人か見つけることが出来る学園内は、地獄と天国だ。

 

故に青峰学園は倍率が高い。

だいたい応募した100人のうち、1人か2人受かる程度だ。

 

しかし女性達はみんな、この学校を受けたがる。

 

それはひとえに、男と巡り会いたいからだ。

だからこそみんな勉強に勤しみ、合格を勝ちとろうとしているのである。

 

そんな厳しい生存競争を勝ち取った者は狂喜乱舞しながら、カメラの前で奇声をあげることで有名である。

 

はてさて───本題に入ろう。

 

男の子との関わりが出来るかもしれないと、希望の眼差しで入学してきた女生徒達・・・ワンチャン彼氏も出来るのでは?と、淡い期待を胸に抱きながら、初登校をする。

 

そして気付く。

 

男おらへんやんけ!?・・・と。

 

それはそうだ。

男たちがこの学校を受ける理由は、お金を支給されるから。

逆に言えば、学校側がお金を支払われなければ、自分を狙う猛獣が犇めく場所に誰が行こうというのか。

 

現実は甘くないのである。

 

例え男を見つけたとしても、男に話しかけた事がない彼女達が話しかけに行くのは至難の業だ。

 

つまり───絶望である。

 

そんな中だ。

 

彼女達の瞳に希望が宿るようになったのは、入学して1ヶ月が経った時である。

 

彼女達は語る。

 

そこに───天使がいたと。

大天使が現生に降臨していたと。

 

最初は男の子と思われていたらしい。

その理由は、男子用の制服を着ていたからだ。

 

今思えば可笑しいと考えてしまうが、当時はそう思われていた。

 

故に、男子と思って何とか勇気をだして話しかけた猛者がいたが・・・その笑顔を見て危うく昇天(ノックアウト)しかけたらしい。

それ見て天使は慌てたように「大丈夫?」とニッコリ笑ったらしく・・・そこで記憶が途絶えているとのこと。

 

天使は───可愛すぎた。

 

猛者は言った。

 

あんなに可愛い子が、意地悪で醜悪な男なわけが無い・・・と。

 

後に湊ファンクラブの会長になる彼女は、天使を男ではなく女の子であると周りに広めたのだ。

その結果、湊という天使は・・・男装をしている、可愛らしい女子であると周りに完全に周知されてしまった。

 

天使の人気は凄まじく、その類まくれな美しさと可憐さで女子生徒・・・いや先生も魅了していった。

 

そんな彼女(彼)が、美少女ランキングという顔面偏差値の高さを競うモノで一位をとるのは、時間の問題だった。

因みに美少女ランキングに立候補したのは天使ではなく、猛者がこっそり参加者に天使の名前をエントリーさせたらしい。

 

同じクラスの女子生徒達などは───銀のショートヘアに碧眼。まるで“ツクリモノ”のように整った顔に加え、本人の明るい性格と意外と恥ずかしがり屋な一面を兼ね備えた上に、運動神経よし成績よし性格よし顔よしという4つが揃う彼女に。

 

性癖を壊されていた。

 

それこそ、同じクラスの男子たちに興味を抱かないくらいに。

 

そして今、そんな彼女が・・・食堂にいた。

 

ここだけの話だが、天使と言われる彼女にはファンが多いため、湊ファンクラブから“YMNT(イエスミナトノータッチ)”という規約が定まられている。

 

故に彼女に話しかけるものは、湊ファンクラブにはいない。

 

しかしやはり人気が凄いため、彼女が食堂に行く時は湊ファンクラブの女子生徒のほとんどが食堂に行って湊を眺めるらしい。

 

話を戻そう。

 

今日も彼女は、親友である遥と雫と一緒に食堂に来ていた。

そしていつも通り、チキン南蛮を注文する。

 

しかもその数、特Lが3つだ。

普通なら多いと感じるだろう。

 

しかし、普段から彼女を見ている湊ファンクラブの面々は異変に気付く。

 

───いつもより・・・量が少ない?

 

「なっ!?量が少ないわよ!?」

 

「どうしたのかしら・・・体調悪い?」

 

「舐めたい」

 

彼女はいつも9皿ほどチキン南蛮を食べている。

たまに別の料理を注文することもあるが、ほとんどがチキン南蛮だ。

 

それなのに・・・なぜか3皿。

 

その事実に気付いた湊ファンクラブの間に動揺が走る。

 

───も、もしかしてダイエット!?

 

「ダイエットって・・・太ってないのに?」

 

「あんなにスタイルいいのに・・・流石天使ね」

 

「生きてる次元が違うわ」

 

(ちなみに特Lサイズとは、湊が入学した際に導入されたサイズであり、沢山食べる湊のために食堂のおばちゃん達が考案した、エルサイズの3倍の大きさを誇るサイズだ)

 

特Lが3つというそのあまりの少なさに、食堂のおばちゃんもビックリしていることが分かる。

 

「え、多かった・・・?」

 

「いや・・・もしかしてダイエットかい?」

 

「ううん、全然?ただ今日はそんなにお腹空いてないからさ!これくらいでいいかなーって」

 

「そ、そうかい?ならいいんだが」

 

どうやらダイエットではないらしい。

しかし、食堂のおばちゃんに向ける笑顔の破壊力と来たら、周りで見ていた湊ファンクラブのメンバーはそれだけで昇天(ノックアウト)してしまった。

 

やはり彼女の周りは危険だ。

認識を改め、ファンクラブの面々は少し遠目から眺めることにした。

 

そのおかげで他の列が更に混んでしまうのは、また別のお話だろう。

 

そのまま注文を済ませてお金を払い、厨房の入口で立っている湊。

 

すこし所在なさげにチラチラと周りの様子を確認している───可愛い。

 

「ヴッ」

 

「湊ちゃん産みたい・・・だめかしら?」

 

「なんであんなにキョロキョロしてるの?可愛すぎるってほんと」

 

心の内側から燻るような母性がファンクラブのメンバーを襲う。

 

ダメだ。

彼女の可愛さは距離に関係していない。

1度その姿を視認すれば、可愛いという感情に支配されてしまうのだ。

 

なんという生物兵器。

 

彼女がひとたび戦争の中心に行き、周りの兵士に泣いて祈ればきっと戦争は止まるだろう。

 

やがて山ほどある料理を受け取り、いつも座っている席まで運ぶ。

 

湊が座っている席は、選ばれし人間しか座れないようになっている。選ばれし人間というのは、湊と直接的な友人である遥と雫や、ファンクラブの会長や副会長などの湊と近い立場にいる人間のことだ。

 

食堂の1番奥の席の左側。

 

天使と許された人間しか座れない座席。人呼んで聖域(サンクチュアリ)

 

そこで天使は1人、遥と雫を待ちながらチキン南蛮を食べていた。

 

パクパクと一心不乱にチキン南蛮を一生懸命に食べる姿は、保護欲を擽られてしまう。

 

「か、可愛すぎない?」

 

「天使・・・」

 

「舐めたい」

 

「食べ終わった食器貰えないかな・・・」

 

鍛え抜かれた古参湊ファンクラブのメンバーですら、もはや昇天(ノックアウト)寸前だった。

 

新参メンバーなんかは、既に息を引き取って(昇天して)いる。

 

だがここで死んでしまえば湊を拝むことは出来ないと、必死に耐えていた

・・・その時だ。

 

湊の後ろの、出口へと繋がるドア。

そこから、湊の次に人気が高い現生徒会長───青峰 春陽が現れた。

 

美少女ランキング2位の、かなりの美貌を持つ生徒会長である。

可愛らしくモデル体型な湊とは対照的に美しく、それでいてスタイルもいい。

 

湊がいなければ確実に美少女ランキングの座は、青峰 春陽に渡っていただろう。

 

そんな彼女が・・・なんと、湊の肩をトントンと叩いたのである。

しかもどこかいたずらっぽく、それでいて蠱惑的な笑みを携えながら。

 

もちろんそんなことは露知らず、後ろを振り向き「んむっ?」と可愛らしく声をあげる湊。

 

傍から見れば、アニメや創作で夢見たカップルの光景である。

 

美しく妖艶な生徒会長と可愛らしく清楚な湊が、食堂という大勢が集まった公衆の場で、カップルのようなことをしているのである。

 

その光景は美しく、まるで絵画のように芸術に溢れていた。

 

もちろん、そんな光景を見て湊ファンクラブの面々は無事で居られるはずがない。

 

「きゃーーーー!」

 

「と、尊い・・・」

 

「天国はここだったのね」

 

「産まれてきて・・・よかった」

 

ある女子はその光景の尊さに倒れ、またある女子は拝み、またある女子は産まれてきたことに感謝する。

 

そんな混沌とした状況の中、さらに生徒会長は一石を投じた。

 

少し波立つ水面に、大きな岩を投げ入れるように・・・。

 

───「ちゅっ」

 

その音は、大人数が集まる食堂でもよく響いた。

カチャカチャとご飯を食べる手が止まり、喧騒とした騒ぎ声が消える。

足音すら誰もたてず、ただひたすら目の前の光景を凝視していた。

 

それは気絶していた湊ファンクラブの面々も例外では無い。

 

時が止まったのかと錯覚するほどに、誰も動くことが出来なかった。

 

───美少女ランキング1位と2位が・・・キスしている。

 

「・・・っえ!?」

 

「き、キスしてる・・・?」

 

「1位と2位が・・・女の子どうしで?」

 

「「キタァ〜ーーーー!!!!」」

 

瞬間、上がる歓声。

今この時、完全に食堂にいる全女性の気持ちはシンクロしていた。

 

それ即ち・・・尊い。

 

1部では、湊と春陽のカップリングを提唱し、邪道扱いされていた女子が狂喜乱舞している。

周りに「ほら!ほら!やっぱりハル×ミナはあったんだよ!」などと言い続けているが、周りは未だにその光景に釘付けだった。

 

しかし───。

 

 

「ごめん湊ぉー!待たせ・・・た」

 

「謝罪。思っていたより混んで・・・?」

 

牛丼と蕎麦が乗ったトレーを持ちながら、二人がいつもの席に向かっていく。あまりにも人が多かったため時間を取られた二人が現れた。

 

申し訳なさそうな顔をしながら、湊に近づき・・・気付く。

 

「・・・なにして、んだよ」

 

「・・・湊?」

 

事態は急展開を迎えようとしていた。

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