ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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近くて遠い相手

没ネタ

『偽・金剛杵(ヴァジュラ・ナカル)』。

投擲魔法。

 

没理由。力及ばず砕かれていく演出の為に複数の雷帝の矢・八連(アシュタ・シャクラダヌス)を採用

 


 

 リリウスがリヴァイアサンと戦っている同時刻、人造迷宮(クノッソス)。

 

 複数の部隊に分かれて各所の精霊の分身(デミ・スピリット)の下へ向かう【ロキ・ファミリア】。

 

 レフィーヤ、ベートの率いる部隊の前に、一つの影が立ち塞がった。

 

「! 敵影! あれは、【葡萄の杯(クラーテル)】!」

 

 【ディオニュソス・ファミリア】の団長であり、唯一の真なる眷族。怪人(クリーチャー)アウラ・モーリエルだ。

 

「【唆されし愚者。雷霆の真実に焼かれよ】」

「!! 詠唱、魔法が来ます!」

「【ヴロンディ・セメレー】!」

 

 通路全体を覆う轟雷。生命を焼き滅ぼす雷火を前にベートが飛び出す。魔法を吸い取るフロスヴィルトで受ける気だろうが、短文詠唱とは思えぬ高火力広範囲。助かるのはベートだけ。そのベートだってただでは済むまい。

 

 が、その前に清浄な白い障壁が現れ防ぐ。

 

「…………あ」

「来たか…………」

 

 レフィーヤが振り返り、アウラは目を細める。

 薄暗い闇の中でも清冽な純白の衣装。ダンジョン内で顔を隠している時に着る黒衣とは真逆の、汚れ無き白巫女(マイナデス)。

 

 来る時に備え深層のドロップアイテムや強化種のラーニェの糸などをふんだんに使った戦闘衣(バトルクロス)。

 

「落ちろ!」

 

 アウラが叫ぶと人造迷宮(クノッソス)の通路に張り巡らされた緑肉が失せ、扉が露わになる。ガコンと開くも、フィルヴィスが障壁を足元へ移動させる。

 

「っ!!」

「お前達は精霊の相手をしろ。奴の相手は私だ」

「ああ!? ふざけんな、なんでてめぇが決める!」

「私達は冒険者だ。力以外の序列の決め方など知らん」

 

 言外に「私はお前より強い」と言われ牙を剥くベート。

 

「べ、ベートさん!」

 

 と、そんなベートの手首を掴むリーネ。不安げに見つめる彼女は、ベートがプライドを取り戦いに残ればどれだけの被害が出るか。

 

「………後ろから追われたら殺すぞ」

「ああ、背は任せろ」

 

 ベートが駆け出し残る面々も困惑しながらついていく。

 

「フィルヴィスさん………」

「レフィーヤ、お前も………」

「私は………役に立ちませんか?」

「……………………ああ」

「っ!!」

 

 悔しい。情けない。そんな思いを胸に、しかし言葉を飲み込むレフィーヤ。今はただ、己の弱さをただ恥じる。そして、それをバネに必ず!!

 

「…………悪い、待たせたな」

「よく言う」

 

 一度だって警戒を解かなったくせに。逆に言えば、アウラはフィルヴィスをして油断ならぬ相手である。

 

「死ねフィルヴィス、私のために!」

「何よりだ。ディオニュソス様のためにと言われてしまえば、どうしようもなかった」

「どうしようも………?」

「ああ、誰かの為でないなら………私はお前を救える」

 

 誰かの為に杖を取るエルフの止め方など知らないが、そうでないなら力で屈服させればいい。

 

 

 

「だが、それでは意味がないからな。こちらに敵意がないことを示す為に、敢えて攻撃を受けた」

「急に端折るじゃん」

「自己再生持ち同士の殺し合いだ。泥仕合にしかならん」

 

 

 

 

 瞬く雷光。

 轟く雷鳴。

 弾ける雷。

 

 吹き飛んだ腕が再生する。

 消し飛んだ腹が再生する。

 割れた頭蓋が再生する。

 

 リリウスに説明した通り、まさに泥仕合。不死身の如き怪人(クリーチャー)同士の殺し合い。フィルヴィスに分があるのは見て明らか。

 

「何故…………何故お前は、そんなにも美しい………!」

 

 ギシリと歯が砕け兼ねないほどに噛み締めフィルヴィスを睨みつける。泥と血に紛れて尚、その瞳はアウラを見据え美しく輝く。

 

「お前だって同じくせに! その身を汚され、怪物に堕ちた! なのにどうして、そこまで高潔でいられる!!」

 

 ある日、ディオニュソスに酒を勧められた。やけに上機嫌だった主神。多くの眷族を失い悲嘆に暮れていた主神の見せる久し振りなその姿に喜び付き合い、気付けば骨の仮面の男と共にダンジョンの底。

 

 蠢く緑の肉塊があり、逃げようとした足を取られた。笑って見ていた主神に伸ばした腕が千切られた。胸を切り開かれ剥き出しの骨に押し込まれる極彩色の魔石。

 

 自分という存在が変わる恐怖。何かが器を汚す不快感。ゲタゲタと美しくも邪悪な笑い声が脳裏に響く。

 

 ゲラゲラと葡萄酒(ワイン)の匂いが混じった笑い声が耳朶を打つ。

 

 千切られた腕を繋ぎ合わされ、元の形に戻った。だが、もう先程までの自分ではない。

 

──おめでとう、生き残ったのは君だけだ

 

 周囲に蠢く肉塊。そのなかに、見覚えのあるネックレスをその身に沈める肉塊を見つけた。それらが何か察するのに時間はかからなかった。

 

 何かの冗談だと尋ねた。敬愛する神の変様を信じられないと言うより、理解出来ず。そんな愚かな娘を矢張り神はゲラゲラ笑う。

 

──ああ、泣いてはいけない愛しい眷族(アウラ)。そうか、誇り高い君は、そんなに穢れた自分が許せないんだね

 

 なら殺してあげようと、首を折られた。

 指を千切られ体中の血を流された。内臓を鼠に食わせられた。

 八つ裂きにされた。叩きつけられ全身が飛び散った。毒で変色してのたうち回った。喉に熱した鉄を流し込まれた。業火で炭に変えられ四肢を踏み砕かれた。酸で顔をぐちゃぐちゃに溶かされた。上半身と下半身をねじ切られた。鋸で股から斬られた。肺腑を隙間なく泥水で満たされた。

 

 魔石を壊さぬよう丁寧に致命的な拷問をされた。

 20を超えぬ内に折(・)れ(・)た(・)。

 

 死にたくない。痛いのは嫌だ。助けてください。死にたくない。

 頭を地に擦り付け助命を媚びる妖精に矢張り神は笑う。

 

 高潔さなどそこになく、ただただ痛みに怯え死を恐れる少女がそこにいた。

 

 そしてナイフを1本持たせ、命じる。子供を殺せと。

 断った。臓腑をモンスターに食わされた。

 

 再び命じる。振り上げたナイフを振り下ろせず落とした。水の中に小一時間沈められた。

 

 それでも殺せないアウラにディオニュソスは未完成の神酒(ソーマ)を飲ませた。

 少女はその誘惑に耐えられず殺した。酔が覚めて苦しむ少女に神は腹を抱えた。

 

 折れて、汚れて、逆らえぬ少女に神は命じる。

 お前の仲間を増やしてやるから従えと。許されないと知りながら、未完成の神酒(ソーマ)に酔う脳に流し込まれる甘い毒。

 

 自分の意思じゃないと言い訳して、苦しみを知らない奴らと嘘の怒りを動力に助けてくれない世界を呪った。

 

「それでも私は、お前を救うために来た」

「っ! 戯言を!!」

 

 放つ轟雷。無抵抗で受けたフィルヴィスを焼く。

 

「! なん、のつもり!?」

 

 傷が癒えていくフィルヴィスを再び焼く雷。それでもフィルヴィスは回避も防御もせずアウラに向かい歩く。

 

「なぜ反撃しない!? 私が心変わりをするとでも!?」

「…………………」

「っ! その目を、やめろ!」

 

 己を見つめるその目にアウラは叫ぶ。

 お前はそんなことしないと言う目を向けられたことなんていくらでもある。

 

 その視線を全部裏切り続けてきたのは弱い自分だ。

 

「私は、強くない。貴方みたいに、高潔にあれない!! なのに、なんで…………!」

「だってお前は、私と違って別れなかった(逃げなかった)だろ」

「!? 何を…………!」

「私は、『彼等』に囲まれながらも魔石が胸にある事実に耐えきれず、分けた。だから、私はそれだけでお前を尊敬するよ」

 

 偽り無きその目にアウラは後退る。

 

「やめろ……その目を、やめて……………私は強くなんてない。尊敬されるなんて………! 私の弱さが、どれだけの人を殺したか知らないくせに!」

「ああ、知らない。だがお前だって私を知らないから、そんなことが言える」

 

 フィルヴィスだって冒険者を殺した。異端児(ゼノス)と冒険者の予期せぬ接敵。天秤に掛け、異端児(ゼノス)を選んだ。

 

 同胞を守るために冒険者に剣を振るい後悔しているフィルヴィスに異端児(ゼノス)達が同情し慰めてくれなければ寝れない日は今よりも増えていたかもしれない。

 

「私達は、誰だってそうさ。一歩間違えていれば、ただ一人の出会いが、何かを決定的に変えていた。それでも進んだ道で踏み躙った誰かは、決して私達を許しはしない」

「それなのに、私を救うと!? 生きろと、そういうのですか!?」

「そ(・)う(・)だ(・)」

 

 言い切った。

 互いに叫んでいれば詠唱なんて唱える暇もなく、目の前に接近したフィルヴィス。

 

「償えなんて言う気はない。そんなことは不可能だ。だが、生きろ。お前が生きようとする限り、私がありとあらゆる敵意から守ってやる」

 

 

 

 

 

「と、説得した」

「なるほど」

 

 アウラがフィルヴィスに神々が知れば百合キタ~と叫ぶような視線を送る理由を説明していたがフィルヴィスは気付かないしリリウスも特になんとも思わない。カーバンクルのカールだけは何故かコクコク頷いている。

 

「まあ、そうだな。お前も、俺も、何か一つ違っただけで今とは違う道を歩いていただろう…………だから、お前が守りたいなら好きにしろ」

「ああ。時に、ディオニュソス様はどうなったんだ?」

「ああ、あの後一番入り組んだ部屋に押し込んで溶かしたオリハルコン流し込んだ」

 

 素材は有り余っていたし。

 

「と、ところで………ディオニュソス様に言っていた、『誰の女』って」

「? お前は俺のだろ」

「ま、まあ、そうだな。うん、そうだ」

 

 関係ないがフィルヴィスとリリウスの身長差は60セルチぐらいあるよ。いやほんと、何の関係もないけどね。端から見たら………

 

「しかしあの神(ひと)は随分お前に執着していたな」

「ああ、まあ………」

「まああんな変態そうそう現れないだろう」

 

 元主神に対して酷い言い草である。だがまあ確かに似たような変態のアポロンはあれに比べればまだ良識的な範囲の趣味でそもそもオラリオにいない。ならあんな変態そうそう現れない。そう思っていた時期が、フィルヴィスにもあった。

 

 

 

 

 3日後。オラリオ。

 

「ああ、素晴らしいね! こんなに美味しそうな子に出会えるなんて、数奇な運命に感謝を!」

 

 蛇を操る金髪の貴公子を前にリリウスは炎の蛇を出しながらバチバチと紫電を走らせる。

 

「思わぬ『寄り道』で、摘み食いなんて端ないとは思うけどね。君のような極上の食事を前に無視するなんて、それこそ失礼だろう?」

 

 異界の吸血鬼はそう言って笑った。

 


 

次章はコラボです。

 

 

 

例えばこんなリリウス

 

闇派閥(イヴィルス)リリウスver2

 

違った事。妹が殺された。ディース姉妹が気まぐれに拾ったリリウス。2人がママ。

 

「楽しみね、楽しみだわ! 邪神の王が齎す最高の祭り!」

「踊りましょうお姉様、リリウス! 愉快に、滑稽に、沢山の人を殺して(愛して)あげるの!」

 

 

 当然リリウスは人殺しなんて好きじゃないしその行為に愛なんて感じないけど、2人ボッチで狂う母達を孤独にしないために、人を殺して笑う2人のために、今日も下手くそに笑う。

 

 

「邪悪なくせに無邪気に笑える彼奴等を、二人っきり(ひとりぼっち)に出来なかっただけだ。何故って? 救われた恩返しだ………」

 

 なんて言葉を遺して正義の使徒達を曇らせるかもね。

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