運命に出会った竜が、運命との生活を守るために分岐点の日にめちゃくちゃしてだいたい解決させていったお話。とその運命に出会った日の回想。

 ※Fate/Grand Orderの奏章冒頭までの範囲でネタバレ有。ご注意ください。
 
 ※筆者はFateシリーズはFGOのみ履修済みです。

 ※続きません

 ※アンチ・ヘイトは念のためにつけています。

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 メリュ子を法具5にするときに「小説書くから出て」って言ったので書きました。なお、大遅刻な模様(その日から今日までに水着メリュ子まで出てるんですよねぇ……)


Fate──竜の見た運命

 星の内海へと帰る。その一心で体を動かし、掘り進む。最強の竜たる私──アルビオンでさえ、星の内海へと至ることは一筋縄ではいかない。

 

 

最強のはずの私が、動くごとに僅かに傷ついていく。

 

 

大地に爪を立てれば、爪が僅かに欠けていく。穴を大きくするために体をよじれば、石の礫が私の鱗に傷をつける。そんな一つ一つの微々たる損傷が、徐々に私の体を蝕んでいる。

 

 

 でも、止めることは出来ない。そうこうしている今でさえ、かすかに地上に残る神秘さえも薄れ続けている。これ以上、状況が悪くなる前に帰らなければ。

 

 

 世界から急速に神秘が失われていく。神秘に覆われた時代は終焉を迎え、霊長の時代がやってくる。そんなこと私も理解していた。

 

 

でも、これは想定外だった。「たとえ神秘が失われようとも、最強の竜種たる私ならいつでも自由に星の内海へと帰れる」と思っていた私だけれども、こと今回の件に関してだけは浅はかだったと言わざるを得ない。

 

 

 「私なら、自由に星の内海と外を行き来できる」と信じて星の外側にいることを選んだ私は、「私でさえ、星の内海と外とを繋ぐ通路を作れない」ことに気づいた。

 

 

そして、その瞬間、これ以上、状況が悪くなる前に私は行動に出た。星の内海に帰るために。

 

 

 地表は既に遥か遠くにある。唯一、ここと地上を繋ぐのは、一直線に降り注ぐ太陽の光だけ。地上に未練がないと言えば嘘になる。けれど、地表から星の内海へ流れ、ますます薄れていく神秘が私の焦燥感をもっとひどくする。

 

 

 もっと先へ。もっと深くへ。星の内海へ帰るために!

 

 

 はやる気持ちに反して、体の動きは精彩を欠いていく。既に腕も翼も機能を停止したのか、感覚がない。が、それがなくとも動きはする。動きはしてくれる。ならば、穴は掘れる。問題はない。何も、問題はな……っ!?

 

 

 とうに石くれが降ってくる音と掘り進める音しか拾わなくなっていた耳が、新しい「ブチッ」という音を拾った。思わず動きを止めた私の目が、落ちてくる私の両腕を捉えた。

 

 

 ……それがどうした。それごときで私は諦めない。新しく発生したこの障害物(腕だったもの)を片付けなければ。

 

 

 あぁ、すごくやりづらい。腕がないだけでこんなにもやりづらいなんて思わなかった。顎で砕いて粉砕しようにも、腕がなければ抑えられない。

 

 

 何か腕の代わりになるものがあれば……。

 

 

 っ!? 目の前に唐突に光が現れた。私が警戒する間もなく光は薄れ、中に浮かぶ何かの輪郭がおぼろげに浮かんでくる。

 

 

 中身の姿があらわになった途端、私は彼と私の間に起こる出来事を垣間見た。

 

 

 ……なるほど。彼──藤丸立香が私の運命か。これから私は赤子の(・・・)彼とともに育ち愛を育んでいくと。それはなんて素敵なんだろう!

 

 

でも、彼は到底、こんな場所に居られるはずがないか弱い生き物。その未来を守るためにも私が保護してあげないとね。

 

 

 頭を彼に近づけると、待っていたかのように私の頭の上に降りた。本当に軽くて、頭の上にいるかいないかわからないくらい。

 

 

「だぁー」

 

 なんて言っているかはわからない。けれども、さっき見た未来からして、彼と一緒ならこの場面を乗り越えられる。彼の持つ魔力は微々たるもの。私が爪の先にも満たない量を引っこ抜こうものなら、一瞬で朽ちてしまう。だから、別の方法で協力を願う。

 

 

《立香。私は星の内海に帰りたい。貴方の力を貸して》

 

 ……返事がない。ぺしぺしと私を叩いていたはずの彼が動きを止めている。何が理由かわからないけれど、困惑しているのは確かね。

 

 

《私は家に帰りたい。貴方にもそれを願って欲しい》

「たーい!」

 

 肯定は得られた。よし。やろう。炉心を全力稼働。魔力をひねり出す。地上では出来なかったけれど、地上よりも星の内海に物理的に近い場所で、こんな場所にまでやってこれる特性を持つ立香がいて、私の帰還を願ってくれている。

 

 

 これだけの好条件が揃っていれば、境界を繋ぐ竜たる私なら……よし! 出来た! 私と彼の初めての共同作業は何もかもを貫き、星の内海へと至る道を拓いた。目の前の光の中に体を踊り入れ、私は無事に星の内海へとたどり着いた。

 

 

《ありがとう。立香。貴方のおかげに私は無事に……あ》

 

 さっきまで私の頭の上にあった、誤差レベルの重さが消え去っている。…なるほど。彼は私の助けなんてなくとも、自力で自分の場所に帰れたのね。

 

 

 なら、私はまずはこの傷を癒そう。私と彼は生きている時間どころか、文字通り生きる世界まで違う。でも、私なら、この難局を乗り越えられた私ならいつの時代の彼にも会いに行ける。それなら、万全の状態で彼に会いに行くほうがいいはずだ。それまで待っててね。私の愛しい立香。

 

 

 

 

 

 

_____

 

 ん……寒い。それにしても、懐かしい夢を見た。今でも、私と立香が初めて出会ったあの時の記憶は鮮明に思い出せる。なのに、夢にまで見るなんて……、私は本当に彼が好きなのね。

 

 

 その彼が、起きたときに横にいてくれないのは不満ではあるけれど……。寒がりな私を寝かせてあげようとしてくれる、彼の優しさが嬉しい。

 

 

 さて、今は何時かな。布団の中から手を伸ばしてスマホを手に取る。えーと、12時。休みの日だし私には普通。

 

 

 今日の予定は……え。嘘。

 

 

 私の顔がさっと青ざめる。今日、立香、予定ないの!? 失敗した。予定がないとわかっていたら、朝から立香とデートが出来たのに! やっぱり今からでも立香を星の内海に連れ帰って……いやでも、それをするとお母様やお父様が悲しむ。

 

 

 竜たる私も、十数年も人間として立香と過ごしていれば多少の常識は身に付く。ある日、家の前に籠に入って置かれていた私を、自分の赤ちゃん(立香)もいるのに「見捨てられないから」なんて理由で拾った彼ら。私に、何かビビッと来たって理由で”メリュジーヌ”と名前を付け、自分の子供(立香)に与えるのと同じくらいの愛を注いでくれた彼ら。

 

 

 そんな彼らだ。(ある意味、常識はないけれど)。だから、少なくとも彼らが死ぬまではその手段はとれない。

 

 

「メリュ子ー!起きてるー!?」

「っ!起きてるよ。お母様」

「そ。ならいいわ。お昼よ。降りてらっしゃい」

「わかった」

 

 少し名残惜しいけれど、布団から出る。寝間着を脱ぎ捨てて着替える。姿見を見て……うん。完璧。立香の隣に立つに足る私だ。

 

 

「おはよう。お母様。お手伝いさせて」

「ありがと。立香は外で食べてくるって言ってたから、私たちだけで食べちゃいましょ」

「え」

 

 そんな。立香、帰ってこないの!?

 

 

「そんな絶望した顔しないの。メリュ子。あなたみたいなかわいい子に惚れられて、立香も嬉しいとは思うわ。でも、ずっと一緒に居ようとすると嫌われるわよ?」

「そんっ……はい」

 

 思わず反論したくなったけれど、お母様の言っていることはきっと正しい。立香は優しいから基本的に私を受け入れてくれる。でも、たまに「ごめん。メリュ姉。ちょっと友達とだけにさせて」と言われるもの。そして、私はそのたびに友達を焼き尽くしたい衝動に駆られる。

 

 

 だから、お母様の言っていることは決して的外れではない。けれども、この寂しいという気持ちに嘘はつけない。

 

 

 でも、駄目だよね。切り替えよう。

 

 

「お父さんは今日、休日出勤くらってるから、私達だけ。今、私が運んでいるこれでおしまい。食べちゃいましょ」

「はい。いただきます」

「いただきます」

 

 席に座って向かい合ってお母様の作ってくれたご飯をいただく。立香がいつも食べているご飯と同じご飯を食べられる。幸せ。

 

 

「あ。ごめんなさい。お母様。ご飯を任せきってしまって」

「ううん。いいのよ。朝が弱いのは体質なのでしょう?なら、仕方ないわ。平日、いつも頑張ってるもの。偉いわ」

「……ありがとう」

 

 本当、お母様は優しい。立香もお父様もだけど。言うつもりもなかったけど、頭の中にはいた「何で起こしてくれなかったの?」なんて文句がしわしわと消えていった。

 

 

「お母様。夜は僕が作るよ」

「お父さんも帰ってくるから4人分になるし、買い物も行かないといけないわよ?」

「大丈夫」

「そう。じゃあ、お願いするわ。その代わりお昼は片付けまで任せてね」

「わかった。ありがとう。お母様」

「いえいえ」

 

 あ。しまった。スープもあったんだった。もっと冷める前にお腹に運ぶ。出来立てよりも少し冷めてしま手散るけれど、お布団から出て少し体温が下がった私を、体の中から温めてくれる。

 

 

「美味しかったよ。お母様。ご馳走様」

「お粗末様」

「お母様。片づけはやってくれると言っていたけれど、さすがに後片付けくらいはいいよね?」

「あ、そう?ありがとう」

「いえいえ」

 

 お皿を重ねて運ぶ。油汚れはそこまでなし。軽くすすぐだけはしておこうか。

 

 

 じゃーっとお水を出して手で軽く拭いて、これでよし。

 

 

「それじゃあ、お母様。僕は部屋に戻るよ」

 

 携帯で立香を探して、合流しよーっと。

 

 

「立香のことが好きなのはいいけど、やりすぎないようにね」

 

 え。私は立香と合流するなんて一言も言っていないのに。何でバレたの?

 

 

「娘のことですもの。貴方がそんなに楽しそうな顔をしているってことは、それ以外に有り得ないわ」

 

 楽しそうにコロコロと笑うお母様。何でバレたの? とも聞いていないのだけど。さすがお母様ということにしておきましょう。時間がもったいない。

 

 

 デートするならもっとちゃんとした服を……そうだ。服にもシチュエーションも大事だよね。立香はどこにいるんだろう? スマホを開いてデバイスを探すっと。

 

 

 ……ん? No signal? なら、地下にいる? 最後にシグナルが出ていた場所は……うん? 駅前広場? おかしい。あの辺りに地下はない。

 

 

 仕方ない。ならば、魔術的な方法で……見つけた。南極だ。何でそんなところに!? ……あ。なるほど。今日があの日か。立香が世界を救う冒険を始めなければいけない日。だからかな。今日、あんな夢を見たのは。

 

 

 なら、私は立香に呼ばれるまで待っていれば、一緒に愛を深める大冒険が出来る。なんて素敵なんだろう!

 

 

 ぼすっと布団(掛け布団)の上に倒れこむ。待ってよ……と思った私の頭に、かつて垣間見た未来の立香の姿が浮かぶ。あの時は「この人が運命か」としか思っていなかったから気にもしなかった。けれど、私を頼りにしてくれている時の彼は、いつもボロボロだった。夜、私の横で寝て居る彼は、辛そうに涙を流していた。

 

 

 ──うん。彼に……、立香にそんな姿は似合わない。

 

 

「お母様。行ってくる。夜には帰るよ」

「行ってらっしゃい。あら、お着換えしなくていいの?」

「時間がないので」

「そう。行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 

 外に出て、周囲に影響が出ない程度に魔力を行使する。周囲の認識を阻害しつつ、公園に到着。広さは十分。遊んでいる家族はいるけれど、この位置関係なら大丈夫。

 

 

 認識阻害を強め、姿を竜へ! 目的地は南極! 真っすぐに飛びなさい!

 

 

私なら直接、立香の元まで飛べる。だけど、それでは駄目。それでは、世界の崩壊を防げない。病巣をすべて破壊する。

 

 

 そのためには、転移するよりも外から襲撃をかけるほうが確実。さぁ、立香のために世界を救ってしまいましょう。

 

 

 私が垣間見た立香との未来から判断する限り、必須殺害対象が一人。必須破壊対象が一つ。あの施設は……正直どうでもいいけれど、見ず知らずの人でも、出会っちゃった人が死んだら立香は悲しむ。なら、大炎上は防がないといけない。多分、あれは爆発。

 

 

 爆弾を探すためにドローン展開準備。至近距離に接近しつつ、破壊対象を破壊するための加速レーン形成開始……形成完了。

 

 

 さぁ、行くよ! レーンに飛び込み超加速。そのままの勢いを天球──カルデアスに叩きつける!

 

 

 ッーー! 硬い! し、痛い! さすがは仮にも惑星のコピー! ドローンを展開。爆弾を探せ。

 

 

 破壊は後回し。先にターゲットを消す。混乱から立ち直られると厄介。

 

 

あたりに無力化された魔術師たちが転がっているけれど、このカルデアスとの激突の余波で無力化されている中にはいないでしょう。

 

 

「ちょ……何よ。何なのよ!?レフ!?どうしたらいいの!?」

「落ち着け、マリー!」

 

 ありがとう。オルガマリー。そいつがターゲットか。消えろ。口から熱線を発射。無力化されていない奴らに邪魔はさせない。翼、腕、尾。使える全てを使って行動を阻害する。

 

 

 命中した熱線がターゲットに命中。一瞬でレフを蒸発させ、余波が壁を貫き、天へと消えた。

 

 

「レフー!」

 

 レフ・ライノールの殺害を完了。ドローンが見つけた爆弾は不発化処理をしてその辺に転がしましょう。

 

 

「竜よ。貴方の目的は?」

 

 この金髪のいかにも魔術師といった感じの男は……私を攻撃する意図はなさそうね。いつでも反撃に出られるような準備はしているけれど。ふむ、こいつなら私が飛び去った後、うまいこと誤魔化してくれるでしょう。

 

 

《つがいの救助》

「は?」

《二度も言わせる気?不当に拉致されたつがいの救助よ。あぁ、後、世界の守護》

 

 他の奴らもこちらを襲う気配は今のところなし。私が会話に応じているから、こいつに任せる腹かしら。

 

 

「後者について詳しく。何故貴方ほどの竜が動いている?」

《人類滅亡から、つがいを守護するためよ》

「人類滅亡の原因とは?」

《人理滅却と地球白紙化。前者の首謀者はレフ・ライノール。後者はカルデアス。よって、私は両者を破壊するわ。前者は達成された。後者はこれから。巻き込まれたくなければ、手を出さないことね》

 

 さて、どうやってカルデアスを壊しましょう。あれで破壊出来ないってことは、破壊には惑星破壊級のエネルギーがいる。エネルギーを断とうにも、あれのエネルギー源はおそらく、正規の手順で完成された聖杯。きっと、中に組み込まれてしまっている。

 

 

 ……追放しましょうか。この世界は正史。私が来たことで歪んでいるかもしれないけれど。

 

 

 正史では私は……アルビオンは星の内海に到達できずに死んだ。なら、アルビオンが星の内海に到達できた世界は? きっと、魔術の発展が遅れて剪定される。どうせ剪定されてしまう世界。まだ残っているようだし、有効活用してしまいましょう。

 

 

「マリー!……え」

「メリュ姉!?」

《いいところに来たわね。立香》

 

 ナイスタイミング。そこにいる医者がアラートに気づいて来たのについて来てくれただけみたいね。私が来たってわかったから来てくれたのならよかったのに。

 

 

……あら。この人、忘れているのね。

 

 

「何してるの、メリュ姉!?」

《迎えに来たのよ。それより、そっちの医者。ロマニ・アーキマン。立香を連れて来てくれたお礼に伝えましょう。あなた、忘れているようだけれど、受肉した英霊よ?》

「え」

 

 お礼はした。なら、やるべきことの最後を済ませましょう。

 

 

《乗って!立香》

「え、うん!」

 

 尻尾で立香をさらい、私の頭の上に乗せる。

 

 

《初めて私達が出会った世界に繋げるわ。貴方の力を貸して》

「自分、力の貸し方なんて知らないよ?」

《あの時みたいに繋がるように祈ってくれればいいわ》

「あの時を覚えていないんだけど……了解」

 

 さすが私の立香ね。すぐに了承してくれた。さぁ、炉心を回しましょう。魔力を生み出しましょう。生み出した魔力は全て圧縮しましょう。

 

 

私は境界を越える竜。一度、境界を越えたことのあるあの世界なら、立香がいればほとんど魔力ロスなく繋げられる。さぁ、あの世界に繋げましょう。……よし、繋がった!

 

 

《立香!少しドローンに捕まっていて!》

「わかった!」

 

 頭が軽くなった。これで心配するものはない。外殻を破壊されたカルデアスをすくい上げ、繋がった穴の先に放り込む。

 

 

私のありったけを受け取り、滅ぶがいい! 熱線を解き放つ。結果を見る前に、繋がった出口を閉じる。こちらにまで余波が届くと洒落にならない。……ふぅ。少し疲れたわ。回復するためにもデートに付き合ってもらわないとね。

 

 

《さぁ。立香。帰るわよ。デートをするわよ》

「え。あ。うん!」

 

 いまいち返事がしゃきっとしないわね。まぁいいわ。許可を貰えたのだから帰ってデートしましょう。

 

 

 

 

 

 

_____

 

 視線の先、蒼穹の空を白亜の竜が飛んでいく。来訪した時間は一瞬、されど、色々な傷跡を残して。

 

 

「なぁ、キリシュタリア。あの竜は一体……?」

「さぁね。ただ、目的はわかるさ。カドック」

「それは?」

「つがいを奪われた竜が極めて理性的につがいを助けに来たんだよ」

「は?」

 

 わけがわからないという顔をするカドック。

 

 

「安心してほしい。私もよくわかっていない。ただ、一つわかることは、かの竜とかの竜のつがいに触れることは、かの竜の逆鱗に触れるということさ」

「あの竜を放っておくつもりか?あの人間があの竜を制御できるとでも?あいつ、竜に押し切られてたろ」

「大丈夫よ。カドック。かの竜は彼のことが好き。だったら、彼に嫌われることはしないわ。恋する乙女は殿方に嫌われたくないもの」

「乙……女?」

 

 ペペロンチーノの言葉でカドックが壊れた。「竜が乙女?」なんて言葉を繰り返している。人外が人と恋する伝承は数あれど、実際に目にすることはないし、無理もない。かくいう私も、許されるならものすごく色々と尋ねてみたい。だけど、今、それは出来ない。やるべきことが多すぎる。

 

 

「それよりも、まずはかの竜の来訪で何が失われて、何が解決したのかの把握。そして、時計塔がどう動くかのシミュレーションをしなければ。それでいいですよね、所長?」

 

 ……駄目か。返事がない。というか、寝てる?

 

 

「所長は無理やり寝かせたよ。医療室に連れていくね」

「お願いします」

 

唐突に敬愛する教授を失ったんだ。無理もない。

 

 

「ならば、臨時で私が指揮を執る。先ほどの調査を」

 

 現状、カルデアが把握できていることは少ない。でも、今の時点でもはっきりしていることはある。それは、我々、人理継続保証機関フィニス・カルデアはカルデアスを失ったが、かの白亜の竜の逆鱗に触れ、人類を滅ぼされないようにし続けることが最大の存続理由になるだろうということだ。



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