ハッピーバレンタイン!

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下ネタ注意です。


ウンコがチ◯コになる能力

 異世界転生をした。

 最近漫画やアニメで流行りのアレである。

 転生ものには何らかの能力が付属するのがお約束だが、俺にそれを説明してくれる神様的な存在はいなかった。つまり俺に能力的な何かが宿っていたとしても、自分で気づくしかないということだ。

 転生した俺は孤児だったらしく、名前は孤児院で適当に決められた。チヨ・コウンと名付けられた少年、それが俺だった。

 名前がダサいが、異世界なのでしょうがない。……改名しようとしたが、法律?やら何やらで無理だったので、諦めるしかなかったのは秘密である。

 この世界はよくある中世ヨーロッパ風な世界観だった。マジで飽きるほどみた世界である。農業や狩猟で生計を立てている者も多く、孤児院で暮らしていた俺は、そういった作業をして育った。

 

 そうして俺が16歳になった頃、俺は自らの身体の異変に気づいた。

 大便━━ウンコから良い香りがするのだ。

 初めは気のせいだと思った。しかし今までの人生で排出してきたものとは明らかに色が異なるうえ、形が整いすぎていた。

 この匂いには覚えがあった。

 今世ではなく、前世のものだ。甘くしかしどこか独特の苦味のようなスメル。

 間違いない。カカオの香りだ。

 もちろんこの世界でカカオは食していない。

 俺は一つの仮説に辿り着いた。

 

 もしかしてこれ、チョコなのでは、と。

 

 そこからの行動は早かった。まず本当にチョコなのかどうかを試すために、近所に住んでいた幼女に試食させてみた。幼女の喜びようと数日経っても体調を崩さない様子から、食べるに値するものだと判断した。

 幼女がウンコを美味に感じる頭のネジが外れた子供の可能性も僅かながらに存在するため、孤児院の連中にも配ってみた。

 皆甘いものが珍しいのか、目を輝かせながら食べていた。

 ウンコなんだよな、と心の中で何度思ったがわからないが、言わぬが仏である。ウンコを嬉しそうに食す姿は滑稽で、可哀想だ。貧乏な上に騙されてウンコを食わされている。怒りすら湧いてくる光景だった。

 誰もお腹を壊さなかったため、これは本当に食べられるものだと俺は判断した。自分でも一度口に含んでみたが、紛れもないチョコの味がした。もちろん気持ち悪くて即座に吐き出したが。

「チヨ、ありがとうね」

「これくらい何でもないよ。皆が喜んでくれて嬉しいしね」

 孤児院を管理するお婆さんは、皆が幸せそうにウンコを食べる様子を見て、目尻に涙を浮かべていた。なんだかこっちまで嬉しくなってくる。

「うんうん、本当に美味しいねえ。チヨもどうだい?」

「うん、俺はいいかな」

「遠慮しないでいいんだよ?」

「あっ、遠慮とかじゃなくて本当に大丈夫です」

 

 俺のウンコの噂はたちまち国中に広がっていき、ウンコ目当てで俺の街に訪れる者まで現れ始めた。そうなると皆が気になるのは不思議なスイーツの出どころである。

「チヨ兄ちゃん、これどこで貰ってきたの?」

 ウンコ1人目のファンである幼女にも聞かれたが、俺は言葉を濁すしかできなかった。

 まさか俺の肛門から生まれていますとは言えない。そんなことを言おうものなら、俺はウンコを食べてきた奴らから殺されるだろう。

 俺のウンコが有名になっていくのを見た俺は、不安になり始めた。

 そろそろマズいかもしれない。

 材料(?)も出どころもやばいブツだ。ここいらが潮時なのでは……。

 そう思い始めた頃、俺は王の住む都から来た商人に、ある提案をされた。

「この食べ物を売ってくれませんか?」

 商人曰くウンコの味は、都の他の食べ物にも引けをとらないほどの美味だという。

 ならば自分の元で売らせてくれないか。

 そういう提案だった。

「いや、流石にそれはちょっと……」

「そこを何とか……絶対売れます! お願いします!」

「うーん」

 このウンコの知名度が上がることは望ましくない。熱心な勧誘だが、ここはやはり断るか━━

「もちろんタダでとは言いません。報酬はこのくらいで━━「やりましょう」え?」

「やりましょう!!」

 

 ウンコの商売はとても上手くいった。商人曰く、数に限りがあるものは特別感を演出できれば大体売れるとのことで、実際販売する数に制限を設けてみると、飛ぶように売れた。俺の元にはすぐに大金が入り、商人は国でも有数の商売上手として名を上げた。

「人生何がどうなるかわからないもんだな」

 俺は朝の快便を紙に包みながらため息をついた。

 生活は格段に良くなった。俺の育った孤児院も、俺の寄付でだいぶ豪勢になった。しかしどこか虚しい。

 人生の目標の一つであった孤児院への恩返しが済んで、俺は暇だった。

「毎朝ウンコを納品する日々……虚しい」

 お金が入った時は嬉しかった。しかしこの世界には娯楽が少ない。つまり使い道があまりないのだ。

 ウンコの販売も商人が管理しているため、俺はほとんどすることがなかった。

「これもうウンコするだけのニートだろ実質……」

 ここからの人生、何をしていけばいいのだろうか。

 そんなことを考えていたある日。俺の元へ、一人の男が訪ねてきた。

「お! あんたがチヨか!」

「ええ、そうですが……」

 そこにいたのは屈強な大男だった。

「おいチヨ。俺らにお前の売ってる食べ物を寄越せ」

「ああ、それでしたら……都の方で商人が販売していると思うので、そちらから買うのが良いかと」

「違う違う、俺はお前が生み出す食べ物を奪いに来たんだが……」

 何でもないように言う男に、俺は一瞬困惑した。しかしすぐさまその意味を理解し、慌てて後ずさる。

「強盗!? アレにそこまでの価値はないぞ!?」

 何せウンコだ。価値どころか汚物代表みたいな物である。

「いやいや、中毒になるやつが出るほどに美味いらしいじゃねえか」

 驚愕の事実だ。ほとんど口にしたことがないのと、俺が前世で食べ慣れているのもあって、ウンコ━━チョコの味については考えたことがなかった。

「そんなに話題になっているのか」

「知らなかったのか? 結構すごいことになっていてな……国では規制の話も出ているとか」

「規制!?」

 そんなことになっていたのか。ウンコ中毒で国が動くなんて……。

「そこで国に抑えられる前に、俺らがそのブツを回収しようとしているんだが……」

 男は家の中に目をやり、顔を顰めた。

「そんなに量はないのか? 目に見える量があると踏んでいたが……」

 量がないのは当然だ。所詮は人間一人から排出される便。毎日作り出しているとはいえ、たかがしれた量だ。

「そう簡単に作り出せないってことか? 今ある分だけでも出してもらうぞ」

 普通に怖い。やはりなんちゃって中世、思考が蛮族すぎる。だいたいこの男は何なんだ。ウンコを渡せば帰ってくれるのだろうか。

「い、今ある分はこれしか……」

「……これだけか?」

「そ、そうだ」

「納得できんな。ついてこい」

 今にも暴れ出しそうな怖い人に睨まれて断れる人がいるのだろうか。そうして俺は拉致されることとなった。

 

 俺が連れてこられたのは、幽霊が出そうな廃城だった。いかにもアジトです、といった雰囲気だ。

「こいつの家にブツはなかった。だから連れてきたぞ」

「ほう。なるほどな」

 俺が対面したのは、日光を浴びていないんじゃないかというレベルに肌が白い男?だった。フードをかぶっているのと、声が中世的でわからない。

 謎の人物はなんだか偉そうな雰囲気だ。知らんけど。

「我も食したが……アレは独特の中毒性がある味だ」

 なるほど。こいつはウンコを食ったのか。俺の中で、謎の人物の評価が少し下がる。

「チヨとかいったな。我々にアレを提供しろ。アレを使えば世界を牛耳ることもできるかもしれん」

 ウンコで世界を支配する……? こいつは何を言っているのだろうか。 

「お前自身が協力してくれるならば、こちらも特に害するつもりはない」

 共に世界を支配しないか。

 そう言われ、心が揺らぐ。

 本当にウンコで世界を支配できるのだろうか。

 俺だって男の子だ。世界征服しようなんて言われたら、子供心が揺れてしまう。

「お前の生み出すものは世界を変える力を持っている。どうだ?」

 ウンコ……その力を信じても良いのだろうか。

「わかった。協力しよう」

 俺は晴れて悪人となった。

 

 ウンコを悪事に使おうと決心した俺は、まずウンコの正式な販売を停止し、桁違いの価格での裏ルート販売に限定した。世間的には俺が死んだことにし、俺が遺した遺産という噂を流し、ウンコを流通させた。

 ウンコは想像していた以上に需要があったようで、この国のセレブたちがこぞって求めるようになった。

 俺が協力することにした組織はどんどんと力をつけ、今では国の政治にまで影響を及ぼせるようになっていた。まるで悪の組織である。

「はっはっは! 笑いが止まらん!」

 謎の人はウンコによる利益で、ここ最近は常に上機嫌だった。

「それはよかったですね」

「ああ。お前のおかげだ。……今一度聞くが、製造方法を教える気は無いんだな?」

「そうですね。これだけはダメです」

 実は俺のウンコでした、なんて言えるわけがない。

 ……皆に食べさせているものがまともなものじゃなかったというのは、悪の組織らしいといえばそうだが、この謎の人も食べているためカミングアウトできないでいるのだ。

「最近、我らを嗅ぎ回っている者どもがいるらしい。勇者などと呼ばれて持て囃されていると聞いた」

「勇者……」

 何かモーレツに嫌な予感がしてきた。ほとんどの物語で悪の組織は勇者に敗れる運命なのだ。

 

 その悪い予感は当たった。

「そこまでだ!」

 アジトは日に日に制圧され、対処を考えているうちに勇者たちは、俺のいるアジトまで乗り込んできた。

「我を倒すか……見事!」

 謎の人が実は女で勇者の姉であったりとか、俺のウンコが原因で勇者の家族が死んだだとか、色々な話をしていたが、激しい戦闘の末に謎の人は敗北した。

「姉さんを唆したお前を、私は許さない!」

 そしてなぜか俺が黒幕だと思われている。なぜだ。俺はウンコをしていただけなのに。

 というかウンコが原因で人が死ぬって何だ。たかがウンコに命をかけているのか? 理解ができない。

「覚悟!!」

 勇者は涙を流しながら殺意を向けてくる。

 これはもう腹を括るしかないのかもしれない。元はと言えば俺がウンコを人に食べさせたのが原因だ。

「そこまで言うならばしょうがない。お前にこの食べ物の真実を教えてやろう」

 俺はウンコを両手に持つと、それらしいポーズを決めた。

「俺を倒すことができるならば、だがな!」

 だが俺も素直に負けてやるつもりはない。ウンコの秘密を明かすのは死ぬ間際だ。

 思えばウンコに助けられてきた人生だった。ウンコに始まり、ウンコに終わる。これも悪くないかもしれない。

「いくぞ、相棒」

 俺はウンコを握りしめ、それをひとかじりし━━勇者に向かって、足を踏み出した。

 口に入れたウンコには、不思議と拒絶感を感じなかった。

 2度と食べないと誓ったウンコ━━それに、俺はどこか懐かしい甘さを感じた。




以下あとがき

読んでくださりありがとうございます。
この駄文を書こうと思ったのは、冬の寒さにより腹痛に悩まされていた時でした。汚い話になりますが、トイレにてなぜこれらを捨てなければいけないんだ、と嘆いたところからアイデアが生まれました。
ウンコが気になってしまう年頃ってありますよね。それが再燃した感じです。
下品な話なので没にしようかとも思ったのですが、バレンタインが近かったので投稿することにしました。

これを書いた後、チョコが少し怖くなりました。
あなたが今日食べたチョコは実は……なんてことは絶対にないので、皆さんは安心してチョコを食べてください。

ハッピーバレンタイン!

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