司令官が男の子を注意していると、怪人の最後っ屁のせいで男の子の言うことを何でも聞いちゃう状態になっちゃった!
しかもそのまま、司令官はヒーロー達と男の子の合体指示を実行してしまいさあ大変。
「こら! 私たちが戦っている時に近づいたら、危ないでしょう!」
「えー、だってさー! ホンモノのヒーロー、みたいじゃん!」
メガネをかけ、ヒーロースーツに身を包んだ女性ヒーローが幼い男の子を叱っています。
「あのね、確かに私たちは合体して強くなれるわ。だからと言って、みんなをしっかり守れるわけじゃないのよ」
「まあまあ司令官、この子も悪気があったわけじゃないんだからさ」
「レッドは黙ってて! あなただって、たまに危ない戦い方するんだから、もう!」
「あはは、ヒーローなのにヒーローにおこられてるー!」
その近くには数人のヒーローたち。
それぞれ赤・青・黄・桃のスーツを身にまとい、司令官の要素を見ています。
「どうしよ、ブルー? 私たちもなんか言ってあげたほうがいいかなぁ?」
「うーん、ボクとしては司令官に賛成かな。今回の怪人がそこまで強くなかったから良かったけれど、暴れた際に破片が飛んできた可能性もあったからね」
「あらあら、ブルーったら心配性ねぇ。イエローのスピードだって合体中はあるわけじゃない? なんとかなると……思うんだけど?」
胸の大きなピンクがわざとそれを当てるようにブルーに体を寄せてきて。
柔らかい感覚にちょっとブルーが驚いて、少し身を引いてしまいます。
「でも、ほーんと弱かったよね今回の怪人。別にみんなで合体しなくても良かったんじゃないのかなあ?」
高校生といった感じのイエローが、少しなだらかな胸を逸らしながら呑気に言います。
「おいおい、イエローはすーぐそうやって油断するじゃねぇか。合体している間は俺たちみんな司令官にシンクロするんだから、軽率なことしなくて済むんだぜ?」
ガタイのいいレッドが、コツンとイエローの頭をこづき。
「あー! そんなこと言ったって、レッドだってすぐ突撃するくせにー!」
「うるせぇ! 俺のは計算ずくだってーの!」
脳筋感溢れる発言に、ブルーはため息をつき、ピンクとイエローは笑ってしまい。
そんな中でも、司令官は男の子に向き合ってお説教を続けていました。
「いい? あなたはまだ子供で、そんな強くないんだから! ちゃーんと私の指示を聞かないと、危ないの!」
「いいじゃんいいじゃん! もう、今日は怪人たおしちゃったんでしょー? じゃあ、ぼくの好きにしてもいいじゃんかー!」
聞く耳持たずというか、やんちゃ盛りというか。
男の子が全く反省せず、司令官は困ってしまい。
そんな上司と男の子を見て、四人のヒーローもクスクス笑ってしまいます。
「カァ〜、く、くっそぉ〜!」
そこから少し離れた場所で……なんと、倒されたはずのカラス怪人が動き始めていたのです!
とは言え、合体ヒーローの必殺技を食らって体はボロボロ。
声を出すのもやっとという状態で、起き上がることもできず……
「お、オイラをなめてると、ひ、酷い目にあうカァ〜!」
カラス怪人は倒れたまま手を動かし、司令官を狙い。
「へ、へへ、ちょっとの間だけ、男の子の言うことを、聞いちゃうカァ〜!」
そう言いながら放った光線は、あまりにも弱々しく。
完全に油断しているヒーローたちはそれに気づくこと無く、司令官に光線が直撃してしまい……
「もう、いい加減にしなさい! 大怪我しちゃうから、危ないって話をしているのよ!」
そうとは知らず、お説教は続いています。
「んもう、うるさいなぁ! 怒るの、やめてよ!」
男の子がそう、言い返した時でした。
「あ、はーい! 分かったわ、怒るのはおしまーい!」
突然司令官がそう宣言し、ニコニコと笑顔で男の子の頭を撫で始めます。
「あ、あれ、いいの!?」
もちろん、男の子はびっくり仰天!
「うん、いいわよ。だって、私はあなたの言うこと、聞いちゃうものね!」
司令官が意味のわからないことを言い出し、ヒーローたちも首を傾げます。
「あれ、司令官、どうしたんだ?」
「うーん? 子供が泣きそうだから、おふざけしてる、とか?」
普段とはまるで違う行動に、何が何だかわからず。
「えー、本当!? じゃあ、なんか踊ってみてー!」
「分かったわ! はい、ワンツー! ワンツー!」
周囲の動揺も気にせず、司令官は男の子に言われるがままダンスを始めてしまいます。
「し、司令官、どうしたんですか!?」
「どうしたって、ワンツー! ワンツー! この子が踊れって言うから、踊ってるのよ! ワンツー! ワンツー!」
「あはは、おもしろーい! 司令官さんが、ぼくのおもちゃになっちゃったんだ!」
「うん、うん! 私は君のおもちゃなのよー!」
さあ大変! 怪人の思わぬ攻撃のせいで、司令官はヘンテコリンになってしまったではありませんか!
「し、司令官、落ち着いてください!」
「私は落ち着いてるわよ! 命令通り動いてるだけ、ワンツー! ワンツー!」
「じゃーあ、司令官さんのつよさのひみつ、おしえてー!」
「はーい、分かりました! 私の強さの秘密は、私が開発したヒーローシステムにあるのよ!」
絶対に秘密にしなければならない事も、ペラペラ喋ってしまいます!
「ブ、ブルー、どうなってるんだあれ!?」
「と、とにかく、一旦止めないと!」
「でも、ど、どうやってぇ!?」
真面目でしっかり者のはずの司令官が、変なことばかりしてしまう。
そんな現状に理解が追いつかず、ヒーローたちはあたふたするばかり。
「……それで、とっておきなのがハイパードッキングシステム! 私に、ヒーロー全員が合体できるのよ!」
「へー、すごーい! 合体しちゃったヒーローは、どうなるの?」
「簡単よ! 私と人格が同調するから、私と同じ気持ちになっちゃうの! でも、能力を使う時は補助してくれるから、みんなの力を最大限に組み合わせて使えるのよー! レッドの筋力、ブルーの知力、イエローの反射神経、ピンクのスタミナ! 全部揃えば、向かう所敵なしなの!」
まるで解説動画のように、全部説明してしまう司令官。
ここで終わっていれば、まだ大事にはならなかったのですが……
「そんなに強いの? ぼくもやってみたーい!」
「分かったわ! じゃーあ、ヒーローのみんなを合体させちゃうわね!」
なんと、男の子の発言を指示と解釈し……司令官はおかしくなったまま、とんでも無い事を始めてしまったのです!
「ちょ、ちょっと、まずいんじゃない!?」
「司令官、ストップ、ストップ!」
四人のヒーローが大慌てで、司令官に駆け寄ります。
「ハイパードッキング起動。男の子に、レッド・ブルー・イエロー・ピンクを合体実行!」
司令官が高らかに宣言した瞬間、四人の肉体は見知らぬ男の子に吸い込まれていき……
(お、俺が、ぼくになっていってるぞ! えへへ、俺って、斉藤 たかし、4歳!)
(このままじゃ、ボクがぼくにシンクロだー! ボクはブルー、じゃなくて斉藤 たかし、4歳!)
(待って、待って!? なんで私が、男の子、ぼくになっちゃったー! うふふ、斉藤 たかし、4歳!)
(う、嘘でしょ、司令官とじゃなくて、ぼくとがったーい! 私は斎藤 たかし、4歳!)
あっという間のことでした。
男の子の指示を笑顔で実行した司令官の目の前で、ヒーローたちは男の子になってしまったのです。
一瞬で心も同調し、みんなもう斎藤たかしくん。
誰かも知らないし、どこの子かも知らない赤の他人の男の子だったのに、もう一緒の存在に。
「わあ、すごいや! 本当に皆が、僕と一つになっているんだ!」
幼稚園の制服の模様があるカラフルスーツに身を包み、2m近くある合体ヒーローが大はしゃぎ!
もちろん、人格は4歳の斎藤たかしくん!
司令官が説明した能力を全て併せ持つ、すごい存在になってしまったのです!
ムキムキでガタイもよく、おっぱいもおちんちんもおっきくて。
「えへへ、ちょっと考えるだけでどんどんいろんな事を思いついちゃうや。えーっと、どれどれ?」
ブルーの知能を使って、自分の思い通りに高度な思考を開始!
「ねぇ、司令官さん! まだ僕のお願い、聞いてくれる?」
「ええ、もちろんよ。今度は何かしら!」
「じゃあね、司令官さんの権限、僕にちょうだい!」
「はーい、了解よ! 私の全権限を、君に移行!」
司令官は言われるがまま、自分の持つ権限を最も簡単に譲ってしまいます。
「あはは、本当に移行しちゃったんだ! あーあ、これでもう、分離するのも僕の思い通り!」
「そうよ! もう全部、君の好きに使えるのよ! ……え、え、え? わ、私、なんでそんなことしちゃったの!?」
どうやら、怪人の攻撃の効果が切れてしまったようです。
司令官は真顔になり、冷や汗をかきだし。
「あれ、どうしたの?」
「ど、どうしたって、え、私、皆をあなたに合体させて、え、え、えええ!?」
「えっへん、すごいでしょ! 司令官さんの部下はみーんな、僕になっちゃったんだよ!」
「ちょ、ちょっと、そんなのおかしいでしょ!? ハイパードッキング、解除!」
司令官は大慌てで、ブレスレットに指示を出します。
ところが、何も起こりません。
「んもう、忘れちゃったのー? 司令官さんの権限は、僕が貰っちゃったんだよ! あ、違うや。司令官さんが、くれたんだっけ。アハハ!」
「え、じゃ、じゃあ、解除できないわけ!?」
「えーっとね、僕ならできるよ。でもなー、どうしよっかなー?」
胸を触り、股間を触り。
逞しい腕がたかしくんの思い通りに動き、しっかりとその感覚が伝わってきます。
「す、すぐに戻りなさい!」
「ヤダもーん! だって、こんなにムキムキで、こんなに頭が良くて、ママよりおっぱいおっきいし、パパよりおちんちんおっきいんだよ! 元に戻ったら、ただの幼稚園児になっちゃうもん。つまんないや!」
体を見せつけるようなポーズを取り、ピンクの特徴である長い髪を風になびかせて。
いきなり高性能な肉体を手に入れて、そうそう簡単に手放せるはずがありません。
たかしくんは逞しい体を味わいながら、嬉しそうに笑っています。
「で、でも、ヒーローのみんなは嫌なはずでしょ!? だから……」
「あはは、そんな嘘言ったってダメだよ、司令官さん! さっき、心がシンクロするって説明してくれたじゃん! そうだぜ、司令官! 俺は今、斎藤たかしだぜ! 僕も問題なく、斎藤たかしです! 司令官、私、斎藤たかしなんだよ! 私も、齋藤たかしのままでいいわ♡」
たかしくんが四人の真似をして、その事実を証明するような発言をして。
「あ、あ、あ……」
自分で作った機能なので、何がどうなっているか理解できてしまいます。
ヒーローがみんな、ヤンチャな子供になってしまっている。
とんでも無い事態に、司令官は頭が真っ白に!
「だから、いいでしょー? 僕、合体状態気に入っちゃった! 確か30分このままだと、固定されちゃうんだよね? 後27分、ドキドキしちゃうや!」
「こ、こうなったら力づくでも……!?」
にっちもさっちも行かなくなった司令官。
無理やりたかしくんのブレスレットを操作しようと飛びかかった、のですが……
「よいしょ、ポーイ!」
その手を掴まれ、回転する勢いで放り投げられ。
「きゃああああ!?」
「ダメだぜ、司令官! 俺、斎藤たかしは格闘の達人なんだぜ!」
レッドの口真似をして、たかしくんはくすくす笑い。
「そ、そんな!?」
「んもー、司令官さんったら頭悪いんだ! ああ、まあ僕の方が頭はいいですからね。4歳の男の子より頭が悪いなんて、司令官さんっておバカさん! えへへ、こんな感じで、僕になったみんなのおかげで簡単に技が使えるんだよー! えへへ、すごいでしょ!」
「あー……」
何気なく使用している全員の力。
それを実際に目の当たりにし、その厄介さに頭を抱えてしまい。
「あ、そうだ! じゃあ、ゲームして勝てたら分離してあげる!」
「そ、それ、本当ね!? 後でやっぱりなし、とかダメよ!?」
「あはは、司令官さんの方が子供みたいなこと言い出してる、おかしーい! うんうん、本当だよ!」
「わ、分かったわ! やってあげようじゃない!」
「じゃあね、鬼ごっこ! 僕、私の力があるから、速いわよー!」
「どうやったら、私の勝ち?」
「えーっとね、僕を捕まえて、ブレスレットに分離指示出せたら! このボタンを押したら、司令官さんでも操作できるようにしておくからね!」
画面を見せ、遊び慣れたおもちゃを触るかのように設定を変更していき。
「や、やってやろうじゃない!」
「あはは、強くなるって面白いや! じゃあ、用意スタート!」
そういうなり、まるで弾丸のような速度でたかしくんが走り出します。
「確かにイエローと同じ速度ね。だったら、10秒もすれば息切れするはずだわ!」
見失わないように目で追いつつ、追跡を開始。
自分の部下の性能ですから、司令官もそれをよく知っています。
カウントをしながら追いかけていくと……予想通り、巨体でゆっくり動いているたかしくんの姿が!
「ようし、捕まえ……!」
飛びかかったその時。
再び、たかしくんがものすごい速さで動き始めたではありませんか!
「えっ、どうして!?」
「あっはは、予想通り! もーう、司令官さんったら単純なんだー!」
4歳児に煽られ、司令官は顔を赤くしてしまい。
「ど、どういうことよ!?」
「えへへ、司令官さん、私の足の速さに気を取られて……私の持久力の事、忘れていませんか? 合体してるから、イエローの速さで、ピンクの体力分動けるんだもーん!」
しまった、という表情になる司令官。
たかしくんは作戦が上手くいったことに機嫌を良くして、楽しそうにスキップしています。
「僕、この体、楽しーい! 俺も、幼稚園児になって楽しいぜ! ボクの計算では、分離するより融合したままでいる方がメリットだらけ! 私、男の子になって気持ちいいなぁ♡ 私が子供になっちゃって、なんだかドキドキしてるもの♡」
司令官のシステムに不備はなく、四人の魂はなおも子供と一体化したままのようです。
合体を気に入ってしまい、子供の倫理観そのもので同意してしまい。
とはいえ、司令官はそれを良しとするわけにはいきません。
世界を守るための力であって、子供が楽しむための力では無いのですから!
「い、いい加減にしなさーい!」
「えー、何が? 僕、全力で楽しんでるもーん!」
「そ、それ、みんなのための物なのよ!?」
「うんうん、分かってるよ! ちゃんと怪人もやっつけるもーんだ! えへへ、司令官さんより僕の方が強いんだから、簡単に倒せちゃうもんね!」
「え、えっとぉ……」
やることはちゃんとするという宣言に、全く言い返せません。
ブルーがあちらの味方をしている以上、言い合いで勝つのも難しく。
「そうだ、司令官さんも合体してみたらいいじゃん! 面白いよ、合体!」
「な、何言ってるの!? 私、あなたになるのは嫌よ!?」
当然の反応。
「えへへ、僕はもう、最強だからいいもんねーだ! どっちかというと、お礼したいっていうか……」
「お、お礼?」
ブレスレットを操作し始めたたかしくんの発言に、司令官は理解が追いつかず。
「ハイパードッキング起動! さっき倒した怪人と、司令官を合体実行!」
「えっ」
次の瞬間、まだ息絶えていなかった怪人に司令官の肉体がイン!
(ちょっと待って、なんで私が、カラス怪人のオイラなんだカァ〜!)
シンクロ完了。
「あはは、どうどう、司令官さん!」
カラス怪人と司令官の特徴が合わさった、ヘンテコな存在にたかしくんが声をかけます。
「うふふ、合体最高よ! こんなクソ雑魚カラス怪人と一緒になっちゃうなんて、私楽しくって仕方ないわ! わぁ、すごいカァー! 司令官が、オイラと同じ気持ちだカァ!」
融合のせいか、肉体の傷もほぼ元通り。
「えへへ、君なんでしょ! 司令官さんに変な事したの!」
「うふふ、その通り! 最後っ屁に、一回だけ使える攻撃を私にしちゃったのよ! そのせいで、私はたかしくんの言う事を全部聞いちゃって、ヒーローのみんなを幼稚園児に合体させちゃったってわけ〜♡ カァカァ、そのおかげで、オイラもおっぱいヒーロー司令官と合体成功だカァ♡」
羽ばたきながら飛び跳ね、大きな胸をプルンプルン揺らし。
「怪人さん、司令官さんと合体したんだから……今日から、ちゃんとヒーローやってよね!」
「分かったカァ! えへへ、オイラの攻撃の効果は切れたのに、私、たかしくんの言うことに従っちゃうカァ〜♡」
怪人と同じ気持ちになってしまった司令官。
新しい体で楽しそうに、たかしくんとじゃれています。
「あはは、合体っておもしろーい! 俺もボクも、私も私も、4歳のぼくにくっつけて幸せ〜♡」
「カァカァ、こんなの私、戻りたくないわぁ〜! 怪人と一緒って、たのし〜い♡」
トンチンカンで無邪気な二人の合体ヒーロー。
ヒーローたちは4歳児の精神にまとまってしまい、司令官は雑魚怪人の精神と繋がってしまい。
全員一生このまま、妙な合体状態で面白おかしく生きていくことになってしまったのでした。
おしまい