迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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恥を忍んでリハビリとして書かせていただきました。

十話前後で一旦区切る予定です。


白銀の迷宮城は今日も賑やかだ。
迷宮姫はポンである


 

 絢爛に輝く白銀の光沢を放ちながらも、どこか陰鬱としたおどろおどろしさを抱く、そんな二律背反を抱いた奇妙な城があった。

 

 その名を『白銀の迷宮城(ラビュリンス・ラビリンス)』。

 

 その白銀の城の中に充てがわれた一室で『俺』は、手にした羽ペンを羊皮紙に走らせながらもうすぐ昼食の時間になるなと、そう思考が逸れた処で、ふと、遠くから聞き馴染むようになったドタドタと駆ける音が耳に入った。

 

「ここに居たわね執事!!」

 

 バタンと荒々しく扉を開いたのは、目を潰してしまいそうなほどに美しい女性だった。

 

 絹糸のような白い髪と側頭部より伸びる双角。

 

 白磁よりなお透き通る白い肌。

 

 鼻筋はツンと立ち、銀色に輝く瞳は億の値を与えられた宝石さえ屑石としてしまうだろう。

 

 彼女の名は【白銀の城のラビュリンス】、または【白銀城の迷宮姫】(レディ・オブ・ザ・ラビュリンス)

 この城の主である。

 

 但し、

 

「姫様…何度申せばわかるのですか?

 その着古したジャージはお止めくださいと言っているでしょうが!!」

 

 着ているのが小豆色の着古したジャージであるという点が全てをマイナスに叩き落としてしまっている。

 

 俺の苦言に対し、しかしお嬢様は効いた風は一切なくフンスと鼻を鳴らしてジャージを押し上げる豊かな双峰を張って宣う。 

 

「私の美しさの前に衣服なんて飾りでしかないわ!」

 

 衣服はそのためにもあるだろうがと声を大にしたいのを堪えていると、姫様は調子づいた様子で自信満々に宣う。

 

「私、遂にあの憎っくき『騎士』をギャフンと言わせる最高の『おもてなし』を思い付いたわ!!」

 

 まただよ。

 

 ドヤッと言いたげな不敵な笑みを浮かべる姫様に、しかし俺はゲンナリとした気分になる。

 

 姫様のいう『騎士』とは『白銀の城ラビュリンス』をアスレチック宛らに駆け抜け、姫様を毎回ぐぬぬと喚かせる挑戦者のことである。

 

 そしてその挑戦者の踏破を挫き敗北を刻むのが姫様の野望であり、障害として工夫を凝らした様々な罠を敷いては毎回容易に捻り潰されている。

 

 正直、端から見たら某仲良く喧嘩するネコとネズミの関係にしか見えないのだが、一応互いに真剣なため野暮は言わないようにしている。

 

 ともあれ、執事という役職を戴いている身としてぞんざいに振る舞うのも気が咎めるので、態度から早く聞きなさいと催促している姫様に尋ねる。

 

「それは良う御座いますね。

 障り無ければその案を自身にも拝聴させていただけますか?」

 

 思いつく限りに慇懃に問いを投げてみると、姫様は「勿論よ!!」と待っていましたという様子で話し始める。

 

「私、今日まで視野が狭すぎたのだと気付いたわ!

 城に入り込んだ『騎士』をコテンパンにすることばかりに頭が行っていたのよ」

「左様で」

「だから、今回は城外にもう一つ罠を仕掛ける事にしたわ!!」

 

 城を囲う森に【迷い風】でも吹かせるのかと思っていた矢先に姫様は「入って来なさい!」と部屋の外に呼び掛けた。

 

「えぇ…?」

 

 姫様の声に応じて入って来たのは、全身を宝石細工を鏤めた黄金の鎧に隠し、兜の奥に赤い輝きを揺蕩わせる恐ろしい『死』の気配を纏う偉丈夫であった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()その絢爛豪華な存在を、俺は嫌と言うほど知っていた。

 

「お、【黄金卿エルドリッチ】…で、御座いますか…?」

 

 【黄金卿エルドリッチ】。

 数多の罠カードを駆使し、何度排除しようと墓地から舞い戻るまさに死を超越した絶対君主。

 数多の切り札をバニラに貶める【スキルドレイン】も然して役に立たず、伴に【死霊王ドーハスーラ】がいた日には何も考えずにサレンダーして仕切り直しを願い出る程の厄介極まるモンスターである。

 

 俺がトラウマを思い返して身を固くするのも意に介さず姫様は気色満面の笑みで俺を褒めた。

 

「流石私の執事!

 一目で正体を見抜くなんて見事な慧眼ね!」

「アリガトウゴザイマス」

 

 正直エルドリッチから漏れ出る死の気配を受けて、身体から生命力的なナニかが抜け落ちるような倦怠感に洒落にならないと思いながら耐えている俺に対し姫様は嬉しさをそのままに滔々と語る。

 

「黄金卿の黄金の城と私の白銀の城。この2つが並び立てばあの忌々しい『騎士』にだって攻略なんて出来っこないわ!!」

 

 確かに布陣としてはかなり強力だろう。

 

 シナジーが無いかといえば無くもないし、【エルドリッチラビュリンス】なるデッキも世にはある。

 

 然しながら。

 

「姫様。差し出がましいとは存じ上げますが、一つお伺いしても宜しいでしょうか?」

「何かしら?」

「エルドリッチ卿は不死者。

 即ちアンデット族に類する御方と自身は記憶しているのですが間違いないでしょうか?」

「その通りよ」

「であらば、卿の配下もその多くはアンデットであろうと思われます」

 

 と、俺は一旦区切りエルドリッチに頭を下げる。

 

「エルドリッチ卿。そのような意図は全くございませんが、もしかすると私共の発言が礼を失するように聞こえてしまうやもしれませんので先に謝罪させていただきます」

  

 そう断りを入れるとエルドリッチは赤い目を光らせながら理解してくれたようで鷹揚な態度で頷いてからオッケーのジェスチャーをくれた。

 

「ありがとうございます。

 では改めて姫様。エルドリッチ卿と轡を並べられると言うことは領内に数多のアンデットを配される事であり、その場合、姫様の『おもてなし』が幾多の罠に怯え惑う()()()()()()()ではなくアンデットの猛攻を切り抜ける()()()()()()()()になってしまうのではございませんか?」

「……」

 

 そう確認を取ると姫様は鳩が豆鉄砲を食らったかのような間の抜けた顔になった。

 

 あ、やっぱり気付いてなかったんだ。

 

「駄目よ!!私の『おもてなし』は恐ろしさの中に美しさを兼ね備えたエレガントなものじゃなきゃいけないのよ!!」

 

 姫様の事だから「金の城と銀の城で2倍美しい!!」なんてアホもとい短慮な思いつきで動かれたのだろう。

 ギャーギャー喚く姫様に不快そうな様子を見せないエルドリッチも、おそらくそんな幼子のような思いつきを聞かされ毒気が抜けてしまったから孫の我儘に付き合う祖父の趣で相手をしてくれたのだろう。

 

「エルドリッチ卿!」

 

 と、癇癪が落ち着いた姫様が背筋をピンと伸ばしてエルドリッチに正面から相対する。

 

「私から持ち掛けた共闘ですが、申し訳ないけれど今回は白紙にさせていただきたい」

 

 ああして凛とした佇まいをしていれば美人なんだけどなぁ。

 まあ、ジャージのせいで全部台無しなんだけど。

 

「この謝礼として、そこの執事がデュエルで『おもてなし』をさせていただきますわ」

「おい待てアホ姫」

 

 思わず素で罵倒してしまったが訂正も惜しいと俺は問いただす。

 

「そこは姫様が責任をとってデュエルするところだろうが?」

「お黙り! 貴方は私の下僕!

 私の代わりに『おもてなし』をするのは当然ですわ!」

 

 フンスと鼻を鳴らして闘うよう仕向ける姫様。

 

「エルドリッチ卿。重ね重ねうちの姫様の御無礼を謝罪させていただきます」

 

 そう謝罪する俺に対し、エルドリッチはいつの間にか腕に装着した『デュエルディスク』を構えて準備万端といった様子を見せている。

 

 そのデュエルディスクもエルドリッチのデザインを損なわないよう黄金と宝石で飾り付けられたゴージャスな特別仕様だ。 

 

「もしかしてなんですが、卿の目的は最初から私だったのですか?」

 

 その問いの回答は何故か意気揚々とした姫様からだった。

 

「そうよ!エルドリッチ卿は手を組む条件としてあなたとの対戦を所望したのよ!」

 

 なんて条件飲んでやがりますかねぇこのアホ姫は?

 

「…畏まりました」

 

 こうなってしまえばもはや闘わずに収まることはないだろう。

 

 何せここは、()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

 

 デスクの引き出しを引き、中に収めてあるラビュリンスを彷彿とさせる銀細工のあしらわれたデュエルディスクを取り出し、()()()()()()()()()の中の一つを取り出しデッキホルダーのカードと差し替える。

 

「え゙っ!? よりにもよって()()を持ち出すの?」

 

 デッキケースから中身に察しがついたらしい姫様が本気で嫌そうな顔をするが、さりとて俺ははっきり宣う。

 

「エルドリッチテーマに趣味デッキで挑むなんて出来ませんよ」

 

 この世界の住人は基本データ単体に汎用数枚程度の純正テーマデッキばかりだが、エルドリッチは純でも洒落にならない殺意の塊なのだから、こちらも相応の手段を用意する。

 デュエルディスクを装着し、待機形態から変形させて俺はエルドリッチにまっすぐ立ち向かう。

 

「お待たせいたしました。

 御要望にお応えし、私、【迷宮の執事見習い】改め【現世からの迷い人】がお相手を仕ります」

 

 そう自らを名乗るとエルドリッチは一つ頷いてから赤い光を放つ瞳を煌々と輝かせた。

 

「では、参ります」

 

 デュエルディスクが示す先攻は俺。

 

 俺は一切の迷いなく手札から一枚のカードを抜いてその発動を宣言した。

 

「私は手札から【王家の眠る谷−ネクロバレー−】を発動!!」

 

 さあ、この『墓地封印&特殊召喚完全禁止嫌がらせ全開デッキ』を抜けるもんなら抜いてみろ!!

 

 




 大体こんな感じでやっていきたいなぁ。
 
 主人公の名前は伏せます。
 出す予定は今のところありません。

 プロットは作ってあるのでエタりはしないといいんですが、鬱がひどく執筆ペースが安定しないため次回はゆっくり待ってくださると有り難いです。

 続きは気長に待っていてくださるとありがたいです。
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