迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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というわけで今回はデュエルするよ!


油断大敵は最悪のタイミングでやってくるな。

「双六殿。この度はありがとうございました。

 次に来る時は客として来店させて頂きます」

 

 本当に姫様のプレゼントに良さそうなゲームがあったので本心から感謝を述べた。

 

「ホッホッホ!

 それじゃあ気を付けてのう」

 

 穏やかに送り出す双六に押されて俺は再びバトルシティへと戻る。

 時刻はもうすぐ昼を指そうとしている。

 時代的にコンビニはもうあった筈だから菓子パンでも買って手早く済ませてしまおう、と、そこで俺は問題に気付く。

 

「俺の財布の中身が精霊界の金しかねえじゃん」

 

 ということでカードショップに入りサイドデッキの中から【ワンダー・ワンド】と【粘糸壊獣クモグス】を売却しておく。

 

 お値段は買取価格三万円。

 売っておいてなんだが、レッドアイズが五十万の世界だからってカードの価格のインフレが洒落にならんね。

 そんな事を思いつつコッペパンを口に放り込み缶コーヒーで流し込んで小腹を満たしておく。

 

「さて、もういいですよ」

 

 食べ終えたゴミを片付け先程から悪意的な嫌な感じを含んだ視線に向けてそう宣う。

 

「へへっ、気づいていやがったのかよ?」

「ええ。まあ。

 デュエルのお誘いという事で宜しいですか?」

 

 そう尋ねると如何にも高橋ワールドに居そうな小悪党じみた男はアンティカードを提示する。

 

「俺はパズルカードと【暗黒界の取り引き】を提示するぜ!」

 

 中々悪くない1枚だな。

 この時代だとテーマデッキ以外では使いづらい手札交換カード扱いだが、墓地活用が盛んな現代なら【暗黒界】以外でも十分実用が視野に入るレベルの一枚だ。

 

「わかりました。

 パズルカードと【妖精伝奇カグヤ】を提示します」

「成立だ」

 

 そう言うと男はにやりと笑いながらカードをデッキに入れてシャッフルする。

 

「……」

 

 こいつ、まさか…

 嫌な予感を感じつつカグヤをしまいオートシャッフルを起動してから最初の5枚を引く。

 男がディスクにデッキを戻し最初の5枚を引くと先攻後攻の表示が決まった。

 俺は後攻。手札は、

 

【ドロール&ロックバード】

【無限泡影】

【白銀の城の従者アリアーヌ】

【ビッグウェルカム・ラビュリンス】

【白銀の城のラビュリンス】

 

 ドロー加速は無い上に姫様素引きとあまり良くはないが、しかし展開次第でワンキルもあり得る布陣だ。

 

「俺のターン!ドロー!

 俺は手札を一枚捨ててこいつを呼び出すぞ!!」

 

 手札コスト?トリッキーか?

 

「来い!【黒魔女ディアベル・スター】!!」

 

【黒魔女ディアベルスター】

効果モンスター(制限カード)※MDでは無制限

星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2000

このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードは自分の手札・フィールドのカード1枚を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。

デッキから「罪宝」魔法・罠カード1枚を自分フィールドにセットする。

(3):このカードが相手ターンに手札・フィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

自分の手札・フィールドからカード1枚を墓地へ送り、このカードを特殊召喚する。

 

「ディアベルスターだと!?」

 

 馬鹿な!?

 そいつはこの世界じゃ双六が発狂するぐらいのレアカードだぞ!!??

 

「ディアベルスターの召喚時効果発動!!

 俺はデッキから【裏切りの罪宝-シルウィア】をフィールドに」

「待った!!チェーンして手札から【無限泡影】の効果発動!!

 その効果を無効にする!!」

 

 フィールドに現れた魔女が魔力を高めるも破邪の光が放たれ魔術を失敗させた。

 混乱しながらも敷かれたら次のドロー次第で詰みかねないカードを防ぐため無限泡影を使い止めると男は不快そうに舌を打つ。

 

「知らない強力なカードだ。

 どうやらお前からはまだまだ搾り取る必要がありそうだな」

 

 舌舐めずりして卑しく笑う男に俺は確信を抱いて問いただす。

 

「そういう貴方は『グールズ』の一員であると見ても宜しいみたいですね?」

 

 その問いに男が卑しい笑みを深くした。

 

『グールズ』

 

 バトルシティに於いて暗躍していた悪のカードプレイヤー達であり、その頭領は墓守の一族の一人であり【千年ロッド】の所持者である【マリク・イシュタール】である。

 そうなれば奴がディアベルスターを持っていることにも納得が行く。

 グールズは奪ったカードを違法コピーした物を使用しており、その技術は海馬瀬人肝煎りのデュエルディスクで使用可能な精度を有している。

 

「俺は手札から【アステカの石像】を守備表示で召喚し、カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

【アステカの石像】

効果モンスター

星4/地属性/岩石族/攻 300/守2000

(1):このカードが攻撃された場合、その戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になる。

 

 セットすることで真価を発揮するカードを表で出す明らかなプレミを無視しつつ、俺は伏せカードを警戒しながら己の迂闊さを悔いていた。

 

(グールズがコピーカードを作れるなら 双六が知っていたカードは全部奴らの手にあるものと前提にするべきだったのに、そんなことにさえ頭が回らないなんて馬鹿野郎だ俺は!!)

 

 そうなると相手のターンに動くのさえ危険になる。

 グールズ相手に何も考えずににエダと霊使いのコンボを使っただけでフィールドがガラ空きの状態で相手の場に攻撃力4500の倶利伽羅天童が飛び出してくるなんてことだってあり得るのだ。

 スカイ・マジシャン・ガールとチューナー全般は双六も知らなかったからその分だけまだ救いはあるが、逆に言えば他のグッドスタッフ達は殆どが敵として現れる可能性がある。

 

(大ピンチも大ピンチじゃねえか)

 

 負ければ地獄。

 勝ってもその先には現代遊戯王の強カードが闇から睨み付ける鉄骨渡りもかくやの地獄街道。

  

「ドローフェイズ、ドロー!!」

 

 どちらも地獄に変わりなかろうと、渡り抜かねば姫様は守れないなら全速前進以外に選択肢は無い!!

 

「スタンバイフェイズ、メインフェイズ!

 俺は手札から【白銀の城の従者アリアーヌ】を通常召喚する!」

 

 フィールドに現れたアリアーヌは相対するディアベルスターの姿に頬をひきつらせる。

 

「チェーン確認!」

「無しだ」

「ならばアリアーヌの効果発動!

 手札から【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を墓地に送りデッキから【白銀の城の従者アリアンナ】を守備表示で特殊召喚する!」

「伏せカード発動!

 速攻魔法【死の罪宝-ルシエラ】を発動!」

 

【死の罪宝-ルシエラ】

速攻魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分フィールドのレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。

以下の効果をそれぞれ適用する。

●対象の表側表示モンスターはこのターン、他のモンスターの効果を受けず、

次のターンのスタンバイフェイズに墓地へ送られる。

●相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力は、対象のモンスターの攻撃力分ダウンする。

この効果で攻撃力が0になった場合、さらにそのモンスターを破壊する。

 

 アリアンナが着地する前のこのタイミングでルシエラ!?

 タイミングがおかしいがともあれ棒立ちで受けるのはまずい!?

 

「チェーン発動!

 墓地に落とした【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を除外して効果発動!

 フィールドのアリアーヌを手札に戻す!」

 

 ディアベルスターが悪魔の翼を模した大鎌を手に緑のオーラを斬撃として放つがアリアーヌは寸でで足元に開いた穴に自ら飛び込み難を逃れる。

 

「逆順処理によりアリアーヌを手札に戻した後ルシエラの攻撃力低下効果を適用!

 その後アリアーヌの効果によりアリアンナを守備表示で特殊召喚する!

 そしてアリアンナ召喚時効果でデッキから二枚目の【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を手札に加える」

「ちっ、タイミングを間違えたか」

 

 【ラビュリンス】を知らないからではなく純粋にプレミをしたようだが、此方としてはアリアーヌで姫様を引きずり出す予定を崩された最悪な事に変わり無い。

 

「カードを二枚伏せターンエンド」

 

 状況の悪さは変わらないが、立て直すのに十分な状態で回せたのが唯一の救いか。

 

「俺のターンだ。

 ドロー。スタンバイフェイズにディアベルスターは墓地に落ちるが、これで終わると思うな!

 手札から【罪宝狩りの悪魔】発動だ!

 墓地に落ちたディアベルスターを手札に戻すぜ!」

 

 いい引きじゃねえかコンチクショウ。

 だが、希望が見えた!

 

「チェーンして伏せカード発動!!

 【墓穴の指名者】!!ディアベルスターを除外する!!」

「やりやがったなテメエ!!」

 

 二枚目を出されたら即座にぶっ刺すつもりだったが、態々墓地から回収したところを見るにピン差しか或いは手札にもうディアベルスターは居るらしい。

 

「クソッ!モンスターとカードをそれぞれセット!

 ターンエンドだ!」

 

 ディアベルスターはピン差しで間違いないみたいだな。

 それはそれとして罪宝狩りの悪魔の墓地効果を使わない?

 まさか知らないのか?

 何がしたいのか分からんが攻めるなら今だ。

 

「エンドフェイズに伏せカード発動!

 【ビッグウェルカム・ラビュリンス】!

 手札から【白銀の城の従者アリアーヌ】を特殊召喚!

 チェーン確認!」

「【サイクロン】も無いのにエンドフェイズで動けるか!?」

 

 いくらでもあるんだが?

 しかし教えてやる義理もないのでプレイングを再開する。

 

「アリアーヌ召喚時にアリアンナを手札に戻す。

 その後、フィールドのモンスターが罠カードの効果でフィールドから離れたためアリアーヌの効果発動!

 一枚ドローし、手札から魔法罠カードを一枚セットするか【ラビュリンス】モンスターを特殊召喚する!

 出番ですよ姫様!!

 【白銀の城のラビュリンス】召喚!!」

 

 力を込めて石突で地面を叩きながら姫様がフィールドに降臨する。

 

「生贄無しにレベル8のモンスターを特殊召喚だと!?」

「これが【ラビュリンス】の力だ!!

 ドローフェイズ、ドロー!!」

 

 引いてきたのは【憑依連携】。

 手元にアリアンナ以外のモンスターが居ない上に悪魔族はアリアスしか残っていないので完全に死に札だが問題ない!

 

「スタンバイフェイズ!メインフェイズ!アリアンナを攻撃表示で召喚し召喚時効果は破棄してバトルフェイズに移行!

 姫様でアステカの石像に攻撃!」

「馬鹿め!

 トラップ発動!【仁王立ち】だ!」

 

【仁王立ち】

通常罠

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの守備力は倍になり、ターン終了時にその守備力は0になる。

(2):墓地のこのカードを除外し、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

このターン、相手は対象のモンスターしか攻撃できない。

 

「馬鹿はテメエだ!

 俺の目的は伏せカードを使わせる事だ!

 チェーンして【ビッグウェルカム・ラビュリンス】の墓地効果発動!!

 このカードの効果は俺のフィールドにレベル8以上のモンスターが居る時相手フィールドのカードを選択可能になる!!

 アステカの石像を手札に戻させる!!」

「なんだと!?」

 

 大上段に構えた斧を振りかぶる姫様だが、斧が届くより先に地面がバネ仕掛けに跳ね上がりアステカの石像が空高く打ち上げられ昼間の星に消えた。

 

「更にフィールドからモンスターが離れた事で姫様及びアリアーヌとアリアンナの効果を発動!!

 合計2枚ドローし、手札から【白銀の城の執事アリアス】を特殊召喚!!

 更に姫様の効果でセットモンスターを破壊だ!!」

 

 姫様が持て余した斧を伏せカードにぶん投げると【サイバーポッド】は役目を果たせず砕け散る。

 

「サイバーポッドが!?」

「攻撃対象がバトル前にフィールドから離れたためバトル宣言を巻き戻す!

 姫様でダイレクトアタック!【ブレイク・ラブリュス】!!」

 

 宣言に攻撃しようとする姫様だが、斧を手放していたために仕方無く男をビンタする。

 

「がっハッ!!??」4000→1100

 

 マジで痛そうに顔を押さえる男に俺は容赦なくトドメを刺す。

 

「お願いしますアリアス!

 アリアスでダイレクトアタック!」

 

 茶器を消し大鎌を呼び出すとアリアスは男を斬りつけた。

 

「ギャアアアァッ!!??」1100→0

 

 派手に吹っ飛んだ男にリアルダメージは発生していないはずなんだけどと首を傾げつつ、起きてくる気配がないので生死の確認とパズルカードだけでも回収しておこうと近づくと…

 

『フフフ…。

 最下位の構成員とはいえ無傷で倒したからどんな奴か確かめに来たけど、これは思わぬ拾いものになりそうだ』

 

 人体構造を無視した動きで男が立ち上がると素人に毛が生えた程度の俺にも分かるほどの魔力が男から沸き立ち額の部分に『ウジャトの目』が形成され、人が変わったような口調で話しかけて来た。

 このシチュエーションをよく知っていた俺は、内心俺にまで絡んでくるのかよと思いつつ平静を保ち問いかける。

 

「中身は別人に変わったみたいですね。

 とすると、今その男を操る貴方はグールズの幹部の誰かですかね?」

『おや?驚かないんだね?』

「魔術には少々馴染みがある生活を送っていましてね。

 それで、御名前を伺っても宜しいのですか?」

『悪いけどそれは無理だね。

 僕はグールズの首魁だから、そう簡単には名乗れないんだよ』

「……それはそれは」

 

 まあ、知ってたけどね。

 

「それで、不甲斐ない部下の代わりに今度は貴方が私と戦うと?」

『いいや。君の実力とデッキを鑑みるに、このデッキではどう足掻いても勝ち目はなさそうだからね』

 

 そう言うとディスクからデッキを抜いて地面にぶち撒ける。

 

「……」

 

 おそらく殆どがコピーとはいえ、カードを蔑ろにする態度に俺はヘイトを高めていく。

 

『そろそろ本題と行こうか。

 君の実力を僕は高く評価しているんだ。

 どうかな?僕達『グールズ』の仲間にならないか?』

「仲間にですか…」

 

 またこのパターンだよ。

 俺は只のモブだよ?

 なんであっちこっちからスカウトされまくるかねぇ?

 

『君が参加してくれるなら君には幹部の席を用意しよう。

 望むなら君の欲するカードを用意してもいいよ』

「断わったら?」

『君は僕達の障害になる事は間違いないからね。

 残念だけど平穏な生活は諦めてもらおう。

 当然。君の家族や友人達も巻き添えになってもらうよ』

 

 成程。こうやって従わざるを得ない状況にして無理矢理取り込んでから【千年ロッド】で洗脳していったのか。

 これなら短期間で組織の拡大も不可能ではないか。

 だが、今回に限っては相手が悪かったな。

 

「ならば答えは一つですね。

 お断りします」

『なんだって?』

「脅しは無駄ですよ。

 生憎私は天涯孤独の身。

 貴方が利用できる駒はこの世に存在しません」

 

 別の次元に渡る手段があるなら話は変わるが、少なくともマリクにはそんな事は不可能だ。

 

「それと一つ。

 貴方が名もなきファラオへの復讐心を抱くのは理解出来なくもないですが、流石に()()()()だ。

 そうだろう?【マリク・イシュタール】」

『僕の名前をお前何処で!?』

「知りたかったら【神のカード】をアンティしてデュエルするぐらいの覚悟で来い!!」

 

 そう言い捨ててパズルカードを拾い全力疾走でその場を離れる。

 

「こうなりゃ自棄だ!!

 全部巻き込んでしっちゃかめっちゃかにしてやるよ!!」

 

 俺は絶対姫様を守り抜く!

 たとえ何を利用してでもだ!!




ディアベル出落ちにすんな?

こればっかりは本当にすみません。

だってディアベルを本気で暴れさせたら万単位で字数増えちゃうんだよ!!

じゃけん、バトルシティから退場しましょうね?

どうやってだって?

そこに『イリアステル』という被害が一致する人達がいるじゃろ?
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