迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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最近ペース早い?
…うん。色々な事から執筆に逃げてるんだよ。




手段を問わないとは決めたが限度は必要と思い知った

「俺、まだ本当に人間のままなんだよな…?」

 

 マリク(傀儡)から逃亡を果たした俺は現在、()()()()()()()()()()()()()()()()を退避場所として選んだ。

 どうやって移動したか?

 逃走手段としてハスキーさんに仕込まれた三角飛びとパルクールです。

 全力疾走の件といい、この時空に来てから明らかに身体能力が向上しているのが気になる。

 まさか気付いていないだけで俺はもう悪魔に変異し終えているのか?

 

 だとしたら……別に何も問題ないか。

 

 『いずれ』が『もう』に変わってしまうだけの話だし、デッキ構築に気をつけなきゃ程度だ。

 

「それは後でダルクにでも相談するとして、今は当面の問題を解決するのが先だな」

 

 ソートモードを起動してデッキから【霊使い】関連のカードを外し、サイドデッキから【ラビュリンス】関連と【罪宝】を取り出し差し替えてデッキを【ラビュリンス】に改竄。

 エクストラデッキもエクシーズとリンクに差し替え、レギュレーションを大事に皆楽しいエンジョイデュエルを愛するいつもの俺からデュエルは現代遊戯王の理のみを指標に【ラビュリンス】を害する全てを燼滅する事のみを目的とする『迷宮の執事見習い』モードに意識を変えて俺は虚空に語りかける。

 

「聞こえますか『イリアステル』の方々。

 私と取引しましょう。

 応えていただけない場合、私はこれから別次元の召喚法を解禁してバトルシティへ乱入し全てのデュエリストを蹂躙した後、【神のカード】三枚全てを破り捨てます。

 タイムリミットは5分です」

 

 懐中時計を取り出し時間を計り始める。

 

 一分経過。何も起こらない。

 

 二分経過。何も起こらない。

 

 三分経過。何も起こらない。

 

 四分経過。何も起こらない。

 

 五分経過。何も『待たせてしまいましたね』

 

 宣言通りバトルシティを焼き払おうと時計の蓋を閉じかけたところで時空が歪み白いアンモナイトに乗った男が現れた。

 

「よもや、貴方が私の前に来るとは思いませんでしたよ【ZONE】」

 

 正式な呼び名は『イリアステル滅四星無限界帝Z-ONE』。

 テレビアニメ『遊戯王5D's』の最終ボスであり、世界を救うために破滅を破壊するしか選択肢を選べなかった悲しき英雄。

 

『やはり私を知っているのですね【迷宮の魔王】』

 

 合成音声を使い誰からも呼ばれたことがない名でそう俺を呼ぶZONEに顔を顰めてしまう。

 

「失礼ですがそのように呼ばれた記憶はありませんよ?」

『当然ですね。

 それは貴方がこれから行う蹂躙を経て魔道へと墜ち、人を止めた果てに至る羅刹と化した際の貴方の名なのですから』

 

 そう言うとZONEはまるで見てきたかのように経緯を語る。

 

『私達との邂逅を成さなかった貴方は宣言通りバトルシティに【ラビュリンス】と共に舞い戻り、融合に加えて未来の召喚法【シンクロ召喚】のみならず異なる次元の召喚法【エクシーズ召喚】【ペンデュラム召喚】【リンク召喚】の5つを果断なく使い、【武藤遊戯】【海馬瀬人】【城之内克也】【マリク・イシュタール】【リシド】【イシズ・イシュタール】【獏良了】等の本来バトルシティで競い合い戦う筈だった者達を片端から踏み潰し【神のカード】を全て破壊しました。

 その後バトルシティのみならずパラディウス社の【ダーツ】【ドーマ三銃士】に飽き足らず【ペガサスミニオン】までもを一人残らず喰らい平らげ、未だ封印されている【三幻魔】からも魔力を奪い集めた魔力を用いて人間を止めたのです』

 

 いくらなんでもやり過ぎだろ未来の俺!?

 

「百歩譲りパラディウス社まで攻撃したのは理解出来ます。

 しかしペガサスミニオンや三幻魔まで狙ったのはどうしてですか?」

『件の貴方が豹変したのはバトルシティを壊滅させた貴方に【千年錠】を持つ【シャーディー・シン】が接触してからです。

 おそらくそこで何らかの暴走のきっかけがあったのだと考えられます』

「……」

 

 考えられるのは精神を弄られて思考が歪まされた結果、一秒でも早く姫様のもとに帰ろうと手段と目的が滅茶苦茶になった…か?

 

「一応理解しました。

 それを踏まえてお尋ねします。

 『イリアステル』は歴史を守るために私を排しますか?」

 

 個人的にZONEとはやりたくはないが、しかし姫様のもとに帰るためにも俺は容赦出来ない。

 しかしその懸念は杞憂に終わる。

 

『残念な事に私達では四人掛かりでも【迷宮の魔王】となった貴方に太刀打ちは敵いませんでした。

 その歴史を破棄し、本来の時間軸を取り戻す為には貴方に協力するほうが公算が高いでしょう』

 

 その言葉に俺は少しだけ肩の力を抜く。

 

「良かった。ブルーノの大切な仲間と戦いたくは有りませんでしたので」

『ブルーノ? アンチノミーの事ですか?』

「ええ。と言っても、貴方からすれば未来の彼です。

 彼について詳しい経緯は語れませんが、役割を終え機能を停止していた彼を再起動した際に貴方の事情を知ったので、私個人としては貴方がどんな目的であっても可能な限り敵対はしたくないのです」

『それで貴方はあの時……』

 

 どうやら俺を退けようとした際に何かあったらしい。

 

『あり得てはならない未来の話はこの辺りとしましょう。

 私達に何を求めるのですか?』

「グールズの弱体化を。

 厳密に言うと今現在彼らの手に渡っているカードの一部が手に入らなかったと改竄できますか?」

『それ自体は然程難しくはありません。

 ですが、彼らが収集したカードプールは膨大です。

 一枚一枚確かめていては時間が足りません』

「私のデッキとサイドデッキのデータを提供します。

 武藤双六との会話からチューナー全般と【EM】は除外して構わないようですが、汎用性が高くこの時代の環境に於いて存在してはならないレベルのカードパワーを秘めたカードは大体入ってます」

『わかりました。

 しかし抵抗はないのですか?

 私がそれらのカードを手に入れれば私の計画はより盤石となりかねない。

 間接的にとはいえ、貴方は世界を破壊しようとしている私に加担するのですよ?』

 

 データを受け渡そうとしたところでZONEはそう尋ねるが、俺は肩を竦める。

 

「一番大事なもののためにより多くに犠牲を強いようとした私に貴方を非難する権利はありません。

 それにZONE。貴方はブルーノが信頼している方だ。

 そんな貴方だから私も貴方が私欲のためにこのデータを扱わないと信じますよ」

『……そうですか』

 

 そう言うZONEはデータを受け取ってから告げた。

 

『ですが私は貴方を完全には信用出来ません。

 ですので監視用のデュエルロボを残させてもらいます』

 

 そう言うと空間が歪みそこから銀髪をツインテールに結ったどう見ても人間にしか見えない少女が現れた。

 

『彼女は『レイン恵』。

 こちらから要請があれば彼女を通して連絡します』

 

 そう言い残しZONEは姿を消した。

 

「……えっと。よろしくお願いします?」

「……」

 

 何を話せばいいか分からず挨拶するも彼女は無言で首肯のみを返した。

 

「言葉は?」

「現地人に紛れるため可能」

「…そうですか」

 

 ロボットとはいえ年頃の娘さんの見た目の相手とどう接していいやら…。

 

「ZONEからの指示が来ました。

 デッキ調整をするようにと」

「え? ああ、そうですね」

 

 確かに最悪の選択のために全力状態に改造したままのデッキでバトルシティには戻れないな。

 

「とりあえず先程までデュエルで使用していた状態に戻しますので、問題無いかデッキの確認をお願いします」

「了解」

 

 追加したカードを抜き、【霊使い】を戻してからレシピをレイン恵に開示する。

 

「デッキ構築に問題無いと判断。

 それと今後の活動にあたって注意点が通達されています」

「なんですか?」

「歴史を維持するため最低限事実として実行される必要があるタスク。

 一つ『武藤遊戯が【オシリスの天空竜】を入手』

 二つ『バトルシティ決勝戦に武藤遊戯、海馬瀬人、城之内克也、マリク・イシュタールの四名が参加する』

 以上二つが損なわれた場合歴史の修正が不可能になると警告がなされています」

 

 まあつまり、今すぐマリクにお礼詣りしてラーをぶんどるのはNGと。

 

「わかりました。

 まあ、程々に活動するように抑えていきましょう」

 

 散々煽ったからもしかしたらマリクが『人形』をけしかけるなんてパターンもあり得るが、そうなったらオシリスを遊戯に押し付ければいいだけと言うなら気楽も気楽。

 

 なんせあのデッキなら【ラビュリンス】より【霊使い】の方が勝率期待出来るまであるぐらいだしな。

 

 

 




というわけでお目付け役が付きますた。

以下、バッドエンドルート


五分経過。何も起こらない。

「交渉決裂ですね。
 残念です」

 もとより誰も頼れないのは分かっていたことだ。
 ならば、俺は世界を破壊してでもより確実な選択を選ぶ。

「ブルーノ、マルファ、ハスキーさん、遊矢、ユーリ、ズァーク。
 勝手な話だが俺の人の心はお前らに預ける。
 裁きはお前たちに任せた」

 そう言うと同時に、不思議な事にそれまでの呵責がストンと消え去った。
 同時に頭に違和感が生まれ、触れてみるとそこにはさっきまで無かった硬い感触が感じられた。

「……成程。これが悪魔族の世界か」

 今の瞬間、俺はついに悪魔に生まれ変わってしまったようだ。
 眼下には人間の形をした虫螻が這い回り、踏み潰したらさぞ気持ちいいだろうという加虐心が湧き上がる。

「おっと、姫様に仕える者として無作法はよくありませんね」

 欲望のままに振る舞うケダモノになるのを律し【ラビュリンス】に連なるものに相応しい振る舞いを意識せねばと気を引き締める。

「さて、参りましょう。
 先ずはそうですね…愚かにも私を組み伏せられると驕った墓守の少年から味わいましょうか」

 敗北に彼はどんな絶望を晒してくれるか、それを考え愉しみながら、目立つ角を隠しビルの屋上から姿を消した。
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