迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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ちょっとバッドエンドルートが頭を離れず執筆が進まないため一回吐き出させてもらいます。

一応警告しますが、只の蹂躙しかありません。

書いたら落ち着いたんで次回は本編に戻る予定です。


【番外編】ファウストは盲に墓穴を掘る

 それはありえてはならない歴史。

 

 あるべきではない選択。 

 

 これは、手にした天秤を傾けてしまった愚かな結末の行く末。

 

 

─────────────────────

 

「モクバ。状況はどうだ?」

 

 大会本部にて【神のカード】の動向を追いかけさせていた弟へと進捗を確認する【海馬瀬人】に【海馬木馬】は纏めた調査報告を渡す。

 

『今のところ【神のカード】と思しき強力なエネルギー反応は確認されていないよ兄サマ』

「バトルシティの状況は?」

『ちょっと待って…え?』

「どうしたモクバ?」

 

 訝しむというより、どうして気づかなかったのかと驚くような弟の声に若干の焦りを抱きながら報告を促す。

 

『大変だよ兄サマ!!

 パズルカードの収集状況が一箇所に異常に集まってる!!??

 それもまだ集まってるだけじゃない!!

 デュエルディスクの稼働状況がすごい勢いで下がっているんだ!!』

「なんだと!?」

 

 それはつまり、大会参加者が異常な速度で狩られているということに相違ない。

端末越しに『どうして今まで気づかなかったんだっ!?』と己の失態を悔やむモクバに瀬人は即座に指示を降す。

 

「モクバ!最もパズルカードを所持している者の情報を寄越せ!」

 

 グールズが本格的に動き出したと思った瀬人だが、帰ってきた答えは瀬人にして認められるものではなかった。

 

「ディスクに紐付けられているはずの所有者データが無い!

 それどころかそのデュエルディスクは海馬コーポレーションの製造番号すらないよ兄サマ!?」

「っ!?」

 

 デュエルディスクは瀬人が一人で開発した唯一無二であり、製造は現在のところ海馬コーポレーションが完全独占しているために稼働している全てのディスクには海馬コーポレーションの製造番号がある筈なのだ。

 一応パラディウス社を始め幾つかの企業へとライセンス契約を交わしているため将来的には海馬コーポレーション以外からもデュエルディスクが販売されるだろうが、しかしそれはまだ未来の話。

 あり得ざるディスクの所持者の存在に瀬人は盗人への怒りを抱きながら努めて声を落としモクバに問い質す。

 

「そのディスクの所持者の現在地を教えろ!」

『っ!? 直ぐ側だ兄サマ!!』

「な…!?」

 

 驚くべき言葉に咄嗟に周囲を見回した海馬はそこに先程までいなかったディスクを腕に装着する男を目にする。

 

「キサマは…!」

 

 洒落た眼鏡に燕尾服を着ていることを除けば何処にでもいるような雰囲気の男は、しかしそのデュエルディスクと手にはおかしなものを携えていた。

 

「キサマ、その下品な錫杖と首飾りを何処で手に入れた?」

「一応これらは古代エジプトに連なる文化財産ですよ?

 まあ、純金製品に品が有るか無いかは個人の感性次第ですから一々論じるのも時間の無駄ですね。

 それで入手の経緯でしたらグールズの首領とその姉を仕留めた証拠として首の代わりに回収したのですがご納得いただけますか?」

 

 あっさりと、あっさりと世界規模に手を広げる犯罪組織の首を刈り取ったと嘯く男に瀬人は得体のしれない不気味さを覚えながら、しかしそれらを表に出さず「ふぅん」と鼻を鳴らした。

 

「ならばグールズが盗んだというカードは持っているのだろうな?」

「【オシリスの天空竜】と【ラーの翼神竜】の事でしたらこちらにありますよ」

 

 そう【千年ロッド】と【千年タウク】をゴミの様に放り捨てポケットから2枚の【神のカード】を見せる。

 男の手元にありながら異様な存在感を放つ二枚のカードに瀬人はデュエリストの本能で真贋を見極めた。

 

「っ!?

 …成程。貴様の言葉を額面通り信じる気は無いが、貴様が【神のカード】を持っているのは間違いないようだな?」

「嘘は一言も吐いてませんよ?

 信じがたいという気持ちは理解しないでも有りませんから構いませんが」

 

 瀬人の言葉に苦笑を返す男に向け、瀬人はディスクを展開しながら構えを取る。

 

「貴様の持つ二枚のカードを賭けて俺と戦え!」

「分かりました。

 そちらは【オベリスクの巨神兵】を賭けるのならお受けしましょう」

 

「貴様…本気で言っているのか?」

「その言葉が掛け金が釣り合わないことを指しているなら勿論構いませんよ。

 私はデュエルをしたいだけですので、使いもしない()()()なんて何枚賭けても懐は痛みませんから」

 

 男の顔に浮かぶ笑顔に揺らぎはない。

 ますます不気味さを膨らませる相手に対し、鼓舞するように瀬人は吠える。

 

「ならば貴様も俺の戦いのロードを彩る路傍の石となれ!!」

 

 吠えてデッキトップを引く瀬人はそこで目を疑う光景を目撃した。

 

「さて、路傍の石となるのはどちらでしょうね?」

 

 一切の余裕を崩すことなく()()()()()()()()()()()()のデッキトップから五枚引く男に瀬人はデュエルの宣言を忘れ叫んだ。

 

「貴様ぁ!!そのディスクを何処で入手した!!??」

 

 オートシャッフルは瀬人が組み込む事を断念した機能の一つであり、最先端を行くはずの己より先に進んでいるものが居る事実に瀬人は激昂する。

 瀬人の赫怒に対し、しかし男は肩を竦めて困った様子で嘯く。

 

「それは私も知りたいですね。

 このディスクは気が付いた時には私の腕に取り付けられていたので誰が何のために用意したのかさっぱりなものですから…」

 

 しゃあしゃあと嘯く男に瀬人は怒りとともに言い放つ。

 

「ならば貴様の腕ごとそのディスクも頂いてやるわ!!

 俺のターン!!ドロー!!」

 

 その言葉に初めて男から笑顔が消えたことに気づかぬまま瀬人はメインフェイズを開始する。

 

 そして、【地獄】が始まった。

 

「俺は手札から【ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者】を召喚する!!」

 

【ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者】

効果モンスター

星4/闇属性/魔法使い族/攻1200/守1100

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

お互いにフィールドのドラゴン族モンスターを効果の対象にできない。

 

「更に手札から」

「召喚にチェーンを宣言します」

「何!?」

 

 第一ターンかつフィールドがからの状態での宣言に流石の瀬人も耳を疑うが、男は構わず手札を一枚開示する。

 

「私は手札から【白銀の城の狂時計】を手札から墓地に送り効果を発動。

 更に狂時計にチェーンして手札を一枚コストに手札の【白銀の城の火吹炉】を墓地に送って効果を発動しますがその前にチェーンはありますか?」

「【ラビュリンス】だと!?」

 

 瀬人も名前だけは聞いたことがある伝説のテーマに一瞬忘我に見舞われるが即座にプレイングに回帰する。

 

「っ、俺に使う効果は無い!」

「そうですか。

 では改めてコストと共に火吹炉を墓地に送りデッキから【ビッグウェルカム・ラビュリンス】をセット。

 更に【ラビュリンス】の効果で手札を墓地に送ったため墓地から狂時計を守備表示で特殊召喚。

 更にチェーンして手札から【迷宮城の白銀姫】を守備表示で特殊召喚します」

 

 自分がモンスターを召喚しただけで相手の場に二体のモンスターとセットカードが伏せられ瀬人は理解するのに必死になるしかなかった。

 

「手札からカードを使うのでしたよね?

 どうぞ」

「貴様っ…!?

 俺は手札から【ドラゴンを呼ぶ笛】を使い手札から【トライホーン・ドラゴン】と【クレセント・ドラゴン】を特殊召喚する!」

 

 ロードオブドラゴンが高らかに鳴らす笛の音に導かれ三角の竜と三日月型に反った曲刀を携える鎧姿の竜人が降り立つ。

 

「3体とも守備表示。

 当然ですね」

「おのれぇ…」

 

 攻撃力3000の迷宮姫が待ち構えているのだから当然の判断と口にした男の言葉を自らへの軽視と受け取り瀬人は臍を噛み憤怒に燃える。

 

「俺は更にカードを一枚伏せターンエンド!!」

「エンドフェイズに【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を発動します。

 チェーンはありますか?」

「……」

「では姫様の効果を発動しデッキから【天龍雪獄】をセットしてからデッキから【白銀の城のラビュリンス】を特殊召喚します」 

 

 鎧を纏う姫が新たな罠を配しドレス姿の姫が優雅な足取りで場に現れる。

 

「その後フィールドの狂時計を手札に加えます。

 罠カードの効果でモンスターがフィールドから離れたため墓地の火吹炉と姫様の効果発動。

 火吹炉をフィールドに守備表示で特殊召喚し……そうですね。セットカードも怖いですがおそらく【攻撃の無力化】等の攻撃誘発でしょうから今回は手札を1枚破壊します」

「手札破壊とを選択可能な効果だと!?」

「手札は一枚きり。選ぶ必要はありませんね。

 姫様『ストライク・ラブリュス』です」

 

 男の言葉に姫が手にする双斧を海馬の手にするカード目掛け投げつける。

 斧がぶつかり手札からこぼれ落ちたカードは…

 

「流石というべきですかね?

 初手に【オベリスクの巨神兵】を引き込む辺り、やはり運命に愛された方は違いますね」

「……」

 

 苦笑を漏らし墓地へと落とされるオベリスクを嘲笑うように見遣りながら嘯く。

 彼なりの本心からの称賛はしかし、瀬人にしてみれば嫌味にしか思えなかった。

 

(あのペガサスが『時代を先取りし過ぎる』と嘯いたという話は嘘ではなさそうだ)

 

 どうしてもタイムラグが生じる罠を即座に使用可能とし、最上級モンスターが容易に場に立つだけでなくリクルート能力さえもが相手のターンに発動してのける凶悪さはさしもの瀬人にさえ攻略法が容易には見えない。

 このテーマに比べたら【神のカード】のほうがまだ慈悲深いとさえ思えるほどだ。

 そして現在、お互いのフィールドには最上級モンスターが二体ずつと下級モンスターに伏せカードが一枚ずつ。

 そこだけ切り取れば互角に聞こえるが、しかし実際に照らしてみれば優劣を超えて勝敗が決したと言われてもおかしくない程の隔絶した戦力差が開いていた。

 

(俺が…遊戯以外に負ける…?)

 

 認めがたい現実がひたりひたりと足音を鳴らしながら眼前に迫りくるのを感じ、さしもの海馬瀬人も絶望を伴う恐怖の感情を感じずにはいられなかった。

 

「それでは私のターン。

 ドローフェイズ、ドロー。」

 

 丁寧な動作でデッキトップを引き抜き手札に加える。

 

「スタンバイフェイズ。メインフェイズ」

 

 一つ一つのフェイズを移行を一々宣言する丁寧なプレイング。

 しかし本人の異様な雰囲気と合わさりまるでホラー映画のワンシーンにも見えた。

 

「先ずは確実性を重視し、アドバンテージを稼ぎましょうか。

 私は手札から狂時計を墓地に送り効果発動します。

 チェーンはありますか?」

「……っ!?」

「どうやらこの先も確認を取る必要はないようですね。

 それでは手札を一枚コストに火吹炉を墓地に送りデッキからフィールド魔法【白銀の迷宮城】をセット。

 【ラビュリンス】モンスターの効果で手札が墓地に落ちたので狂時計を再び特殊召喚。

 その後セットした【白銀の迷宮城】を発動」

 

 その宣言と同時に男の背後に絢爛豪華な巨城が姿を現す。

 

「次いでラビュリンスの効果発動。

 墓地から【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を選択しセット。

 狂時計の効果により即座に発動。

 デッキから【白銀の城の従者アリアーヌ】を特殊召喚しフィールドの狂時計を回収。

 【ラビュリンス】罠カードが発動したため迷宮城の効果発動。

 【ラビュリンス】罠カードに追加破壊効果を付与し相手フィールドのカードを一枚破壊出来ます。

 対象を選ぶ効果のためロード・オブ・ドラゴンの効果でドラゴンは選択出来ない効果を無視できますが今回はロード・オブ・ドラゴンを破壊します」

 

 迷宮城から溢れ出した呪詛にロード・オブ・ドラゴンが飲み込まれフィールドから姿を消す。

 

「おのれっ!?」

「そして罠カードの効果でモンスターがフィールドから離れたのでラビュリンス、火吹炉、アリアーヌの効果発動。

 火吹炉を特殊召喚し一枚ドローしてからトライホーン・ドラゴンを破壊します」

 

 ラビュリンスが破壊の愉悦に顔を歪めながらトライホーン・ドラゴンへと何度も斧を叩きつけ破壊した。

 

「伏せカードがミラーフォースだったら笑えませんが、その時はまあ、なんとでもなりますね。

 バトルフェイズに移行します。

 ラビュリンスでクレセント・ドラゴンを攻撃。『ブレイク・ラブリュス』!」

 

 トライホーン・ドラゴンを叩き潰した程度では愉悦は満たされないと血の滴る音を振り回し、迫る双斧を睨み付け身を守るクレセント・ドラゴンの武器ごと叩き潰す姫様の愉悦に歪む狂笑に楽しそうで何よりですと場違いな朗らかさで嘯いた男は、唐突に手を止めて瀬人に聞こえるように喋り始める。

 

「クレセント・ドラゴンが破壊できたと言うことは【攻撃の無力化】や【炸裂装甲】の類ではなさそうですね?

 とすると考えられるのは【カウンター・ゲート】などの直接攻撃に反応する防御札でしょうか?」

「ぐぐぐっ…」

 

 嘲笑われている。

 それでいて油断せずフィールドに残された最後の一枚が自分の喉を突き立てる刃である可能性を捨てず警戒を見せる姿に瀬人は歯噛みを我慢できない。

 

「考察はこの辺りにして、答え合わせといきましょう。

 アリアーヌでダイレクトアタック」

 

 メイド姿の悪魔が燭台のような三叉槍を瀬人に突き立てんと走る。

 

「舐めるのもいい加減にしろ!!

 伏せカード発動!【青き眼の激臨】!!」

 

【青き眼の激臨】

速攻魔法

このカードを発動するターン、自分は「青眼の白龍」しか召喚・特殊召喚できない。

(1):このカードを含む、自分の手札・フィールド・墓地のカードを全て裏側表示で除外し、

デッキから「青眼の白龍」を3体まで特殊召喚する。

 

「伏せていたのはそれですか!」

 

 とどめを刺す事が出来なくなったというのに、男の顔に浮かぶのは見逃したことへの慚愧ではなく喜びであった。

 

「手札と墓地の全てを糧とし現れろ!!

 俺の魂!三体の【青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)】!!」

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

通常モンスター

星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。

どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。

 

 猛々しい咆哮を轟かせながら海馬瀬人の象徴ともいえるモンスターが場に舞い降りる。

 

「素晴らしい!

 魂のために神さえ放棄する姿は実に美しい!

 やはり貴方が侍らせるべきは神などではなくブルーアイズ達ですね!」

 

 瀬人を守る形で展開するブルーアイズの姿をまるで肖像画を前にしたように歓喜極まる男に、瀬人は吐き捨てる。

 

「御託は十分だ!

 ターンを進めろ!!」

「おっと、失礼。

 感極まり無礼を働いてしまいましたね。

 それではメイン2に移行して私は手札から先程アリアーヌが持ってきてくれた【心変わり】を使用します」

「おのれぇ…」

 

 称賛しておいてその一角を奪う男の悪辣さに怒り狂う瀬人に対し、愉悦に下限の三日月を浮かべた男は滔々嘯く。

 

「そんな貴方に敬意を表し私も少しばかり()()を出しましょう」

「本気だと?

 貴様、俺に対して手加減していたというのか!?」

 

 これまでで最も屈辱に満ちた言葉にプライドを傷付けられ激昂する瀬人に男は「当然でしょう」と嘯いた。

 

「最初の時点で立っている土俵が違うのですから、そちらに合わせるのが礼儀というもの。

 ですが、魂を賭けて頂いた貴方には礼儀を捨てて差し上げましょう。

 それがこちらからの返礼です」

 

 三日月が消え、男の顔に研ぎ澄まされた殺意が浮かぶ。

 

「私は貴方の【青眼の白龍】に【白銀の城の火吹炉】をチューニング!!」

「チューニング!?」

 

 聞いたことがない用語に困惑を抱く瀬戸の前でエフェクトがはじまる。

 火吹炉が分解され翡翠に輝くリングが形成され、ブルーアイズがその輪へと飛び込む。

 

『兄サマ!! 突然神を超えたやばいエネルギーが発生した!!

 監視カメラも急に動かなくなってるんだ!

 兄サマ!!何が起きてるの兄サマ!!??』

 

 混乱に喚き散らすモクバの声さえ届かず瀬人は眼前で繰り広げられる光景に目を奪われていた。

 未知の特殊召喚に忘我に見舞われる瀬人の前でリングを通過し飛翔するブルーアイズが粒子へと分解され新たなモンスターが形成されていく。

 

「これが未来の召喚法!!その名も『シンクロ召喚』!!

 現れろ、レベル10!!【カオス・アンヘル-混沌の双翼】!!」

 

【カオス・アンヘル-混沌の双翼】

シンクロ・効果モンスター

星10/闇属性/悪魔族/攻3500/守2800

チューナー+チューナー以外の光・闇属性モンスター1体以上

このカードをS召喚する場合、自分フィールドの光・闇属性モンスター1体をチューナーとして扱う事ができる。

(1):このカードが特殊召喚した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを除外する。

(2):このカードは、このカードのS素材としたモンスターの元々の属性によって以下の効果を得る。

●光:自分フィールドのSモンスターは相手が発動したモンスターの効果を受けない。

●闇:自分のモンスターは戦闘では破壊されない。

 

 瀬人のカードを用い現れたのは邪悪と荘厳という噛み合うはずのない要素を兼ね備えた白と黒の翼を背に持つ無貌の天使。

 

「本来であればチューナーという種族がいなければシンクロ召喚は出来ませんが、このモンスターを召喚する際に光、闇属性のモンスターをチューナーとして扱いシンクロ召喚を行うことが出来ます」

「シンクロ…召喚…」

「カオス・アンヘルの召喚時効果発動。

 フィールドのカードを相手自分問わず一枚除外します」

「っ!?破壊ではなく除外だと!!??」

「対象は当然貴方のブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン!!

 『カオス・リムーバー』!」

 

 効果の宣言に漸く現実へと帰ってきた瀬人の前で相反する二つの力を束ねて生み出された虚無の闇がブルーアイズを飲み込みこの世から抹消する。

 

「俺の、ブルーアイズが…」

 

 この時代のカードプールに除外をリカバリーする手段はほぼ存在せず、存在する僅かな手段も瀬人のデッキには入っていない。

 

「カードをセットしターンエンドです」

 

 手札はまだ残っており召喚権さえ使っていない状態でターンを譲る男に手加減されていると理解しながらも瀬人はその怒りを向ける気力さえ湧かなかった。

 奴は言った。()()()()()()()()()と。

 つまり、奴にはまだ展開する手段が手の内に残されているということだ。

 まだ手加減されているという事実に憤りを感じているが、同時にそうでもせねば()()()()()()()()()()()程の隔絶したカードパワーの差が隔てられているのだとも理解出来た。

 

 自分達が剣と盾の決闘なら奴のそれは荒野の早撃ちによる決闘。

 

 奴の言う通り立つ土俵からして違ったのだ。

 

 勝ち目はない。

 抗う意味もない。

 己は対峙した時点で()()()()()()()()()()()()()

 苦痛さえ感じることも許されない絶望にサレンダーしてしまえと己に潜む()()がそう囁きかける。

 

「俺のターン!!ドロー!!」

 

 だからこそ【海馬瀬人】は()()()()()()()()()()()()()()

 

「バトルフェイズだ!!」

 

 この状況を打破する手段はデッキの中にはないのだから見る必要さえないと、カードを確認せず瀬人はそう声を張り上げる。

 己に出来ることは『海馬瀬人という存在を奴に爪の一欠片でも刻みつけること』のみと最後にフィールドに残った魂のカードに告げる。

 

「奴のモンスター【白銀の城のラビュリンス】を攻撃しろブルーアイズ!!」

 

 相手はなんでも構わなかった。

 だが、瀬人はその中で本能的に()()()()()()()()()と、そう感じたままに命令する。

 

「【滅びの爆裂疾風弾(バースト・ストリーム)】!!」

 

 主の魂の咆哮を受け取り、ブルーアイズがその口腔から破滅的なエネルギーを放出する。

 着弾と同時に激しい粉塵が巻き上がり視界を全て覆い隠す中、男の感心した声が響き渡る。

 

「やはり貴方は素晴らしい。

 この状況の中、一番攻撃力が低いアリアーヌを選ばず、アンヘルに自爆せず、迷宮姫との相打ちを望まず姫様を狙い撃ったその誇り高さは敬服に価します」

「下らん世辞だ」

 

 慰めなど必要無いと吐き捨てる瀬人に男は「だからこそ残念です」という言葉が響き、粉塵が晴れていく。

 

「…馬鹿な」

 

 ブルーアイズの攻撃により破壊されたはずのラビュリンスが身体を煤けさせながらも悠然と立ち続けていた。

 

「カオス・アンヘルの効果です。

 アンヘルは召喚時に素材に使ったモンスターの属性が光属性か闇属性であった場合追加効果を手にします。

 光属性を素材にする時、アンヘルはシンクロモンスターに効果耐性を与えます。

 そして闇属性を素材とする時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()を付与します」

「なんだそのふざけた効果は」

 

 あまりにも残酷な現実に絶望さえ吹き飛ぶ瀬人。

 

「その点に関しては同意しますよ。

 私のターン。ドロー。

 バトルフェイズに移行。

 カオス・アンヘルでブルーアイズを攻撃。【光と闇の破局】」

 

 無貌の天使が手に宿る光と闇を重ね合わせ極光を生み出すとブルーアイズ目掛け解き放つ。

 

「……」4000→3500

「迷宮姫と姫様でダイレクトアタック【クロス・ラブリュス】」

 

 砕け散る魂のカードの最後をしっかりと目に焼き付け、迫りくる二人の姫を前に瀬人は静かに目を閉じた。

 

「次は勝つ。その勝利を預かっておけ」3500→0

 

 そうして敗北を噛み締めながら瀬人は除外されていた【オベリスクの巨神兵】を抜き出し男に向け投げつける。

 

「態々投げる必要がありますか?」

「ふんっ! 答えろ。貴様のその未来のカードは何時ごろ生み出されるのだ?」

「…残念ですが、貴方がシンクロ召喚を手にする機会は無いかと」

「……そうか」

 

 その答えで疑念はすべて晴れたと瀬人は背を向ける。

 

「海馬…」

 

 そこには険しい顔をした【武藤遊戯】が立っていた。

 

「【神のカード】が欲しくば好きに挑むがいい。

 俺はやることがある」

 

 敗者に言葉を弄する権利はないとその横を通り過ぎる瀬人に、遊戯もまた告げる言葉はないと振り返らずデュエルディスクを構えた。




因みにマリク達は神のカードと千年アイテム手放す条件で命だけは助かりました。

オシリスとラーのそれぞれの撃破はオシリスはリバイバルスライムの効果でドローさせてからトリックスター&ドロバのハンデスで攻撃力ゼロにされた後で羽箒でフィールド壊滅を喰らい倒され、ラーはなんでか効いてしまった無限泡影で返り討ちにされた後墓穴で除外されて対処されました。

バッドエンドの続きは…多分書かないと思い…たい。
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