迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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今回は十代とのコミュ回です。


出かけた先で凄い経験をした。(2)

 

 遊城十代の乱入にチンピラ達は我先にと逃げ出した。

 

 その後、昼も近いこともあって助けてもらった礼にと食堂に場所を移すことにした。

 

「さっきは助かったよ。ありがとう。

 その礼にというのもアレだがなんでも頼んでくれて構わないぜ。

 十代が割り込んでくれてなかったら危なかったからな」

 

 互いに自己紹介をした際に本人からの希望で名前呼びにさせてもらった俺は、メニューを渡しながら改めて礼を言う。

 

「へへっ、いいってことさ」

「折角だからネオスとユベルの分も奢らせて貰うぞ?」

 

 そう言うと十代の背後に半透明の姿で『ネオス』と『ユベル』が現れた。

 

『気持ちはありがたいが私に食事は必要ないからその気持ちだけで十分だ』

 

 確かにネオスに口のパーツ無いもんな。

 今更だけどどうやって声を出しているんだろう?

 

 長年疑問にも思わなかった疑問を過ぎらせているとユベルも断った。

 

『ボクは十代が美味しく食べている姿をみているだけでずっと満腹だからいらないよ』 

 

 と、ネットリとした熱の籠る視線を十代に向けるユベル。

 

『フフフ。君の糧になる命がなんて憎らしい。

 ボクも十代に食べて欲しいなぁ』

 

 流石アニメ史上最強のヤンデレの候補に未だに挙げられるヤヴァイ御方。

 昔は怖かっただけだが改めて聞くと自分に向けられてもいないのにゾワッとさせられる。

 

「すみませーん! エビフライ定食とオレンジジュースお願いします!」

 

 そしてそれをスルーしてウェイトレスに注文してのける遊城十代のメンタルも大概ヤバいな。

 一緒にグラタンを頼みウェイトレスが下がったところで十代が俺に訊いてきた。

 

「そう言えば執事さんってこの後時間有るか?」

 

 自分の状況を簡単にだが説明したら十代は俺を執事さんと呼ぶようになってしまった。

 まあ、そう呼ばれることのほうが多いから座りがいいので構わないのだが。

 

「ん? …まあ、特別決まった予定は無いな」

 

 姫様への土産の選定という大仕事が控えているが、それ以外は街を知ることぐらい。

 

 そう答えると十代はにっと人好きのする笑顔で言った。

 

「じゃあさ、飯の後で俺とデュエルしようぜ!」

 

 やっぱりそれが来たか。

 

 覚えている内容も大分虫食いになってしまったが、アニメでも十代はデュエルバカと言っていいぐらいデュエルが好きだった。

 そんな十代がデュエルディスクをもつ者を前に我慢なんてする筈がない。

 

「デュエルか…」

 

 左腕のディスクに視線を落とし、俺は思わず十代に問いを投げ掛けていた。

 

「十代。君は精霊界でデュエルする事が()()と思ったことはないか?」

「怖い?」

「ああ。俺はデュエルが怖いんだ」

 

 年下の子にするような相談じゃないと頭の中では分かっていても俺はその言葉を止められなかった。

 

「カードゲームは好きだ。

 好きなカードでデッキを組んで思った通りの展開に持ち込めた時は気分がいい。

 負けるのだって悔しくても嫌いじゃない。

 自分の運の無さや相手の構築力や運が上回った結果ならそれはそれで仕方ないからだ」

 

 ただし未知の風だけは絶対に許さないが。

 

 後テンプレのような環境デッキの連戦は勝てるのは分かるがそればかり戦うのは正直うんざりしてくる。

 

 閑話休題

 

「だけど、それはあくまで()()()()()の話だ。

 相手に痛みを強いて挙げ句命を奪いかねない精霊界のデュエルが、俺は怖い」

 

 城でデュエルを披露する際にも姫様はそんな俺を慮り、相手をアンデット族や機械族といった殺害の心配のない相手か、完全に勝利が決まった時点で介入してトドメをささないよう気を遣ってくれている。

 

 そんな気遣いが有り難く、同時に情けないとそう思ってしまうのだ。 

 

 こうして内心を吐露してしまったのは、俺が知る限り遊城十代が最も多くの相手をデュエルで命を奪ったからなのだろう。

 

 十代はアニメの中で友人を失い、その絶望から力を渇望して闇墜ちした経験がある。

 その際に『覇王』を名乗り、実際にデュエルで相手を手に掛けるシーンもあった。

 

 経緯はともあれ、痛みを強いる道を歩んだ経験を持ち、それでもデュエルを純粋に楽しむ気持ちを持ち続ける強さを持つ十代がとても眩しく思えた。

 

「うん。執事さんの気持ちが俺にも分かるよ」

 

 穏やかな声で十代はいう。

 

「執事さんはデュエルが好きだよな?」

「ああ」

 

 勝つのは嬉しい。負けるのは悔しい。

 

 好きじゃなきゃそうは思わない。

 

「だからもしもが起きても、執事さんなら大丈夫だよ。

 だってさ、執事さんは()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「……」

 

 相手を傷つけて素知らぬ顔でいられるほど俺は神経が太くは生きられない。

 

 だからもし人を殺すようなことをしてしまったら、俺は一生その罪を背負い続けるだろう。

 

 俺は()()()()()()()()()()()()()()()()のだと、十代の言葉に漸く気付かされた。

 

「……そうか。そう、なんだな」

 

 気づいていなかった自分の一面を教えられて、少しだけ肩の力が抜けた。

 

「お待たせいたしました。

 ご注文のエビフライ定食とグラタンです」 

 

 と、タイミングを図ったようにウェイトレスが料理をテーブルに広げていく。

 

「うっまそ〜!いただきます!!」

 

 喜色満面の笑顔を浮かべて好物のエビフライに齧り付く十代に見た目相応の幼さを見ながら俺もフォークを手に取りグラタンへと向かう。

 

 味はまあ、美味いは美味いんだがアリアスが用意してくれる料理のおかげで舌が肥えたらしく不満はないが値段相応かなと思ってしまう。

 

 と、二匹目のエビフライを手にした十代が俺に言う。

 

「執事さん、改めて食い終わったらデュエルしようぜ!」

「…ああ。お手柔らかに頼むぜ」

「ニヒヒ。そいつは難しいかもな?

 最近新しいヒーローが増えたから俺もスッゲー強くなったしさ」

「新しい…?」

 

 と、何気ない一言に俺はかつての悪夢の様な光景を思い出す。

 

ヴァイオンでシャドー・ミスト落として融合サーチして融合でサンライザー。ミラクル・フュージョンとダーク・コーリングでデスフェニとマリシャスベインがががが…

 

「ゴフッ!?」

「執事さん!!??」

 

 たった1枚から始まる完全蹂躙盤面を思い出してしまい思わず顔面からテーブルに突っ込んでしまった。

 

「……いや、すまん。

 以前居た場所でよくヒーロー使いにボッコボコにされてたのを思い出してしまってな」

 

 なんとか復活してそう断ると、十代は目を輝かせて尋ねてきた。

 

「へぇ、俺以外にヒーロー使いが居たのか?」

「ああ。こっちと違ってネオスペーシアンやD-HEROもそれなりに刷られているから使い手は結構居たし、デッキ研究も盛んだったぞ」

「いいなぁ〜。

 きっと俺の知らないヒーローなんかも沢山居るんだろうな〜」

 

 未知のカードの可能性にワクワクを抑えきれないといった様子の十代に、俺は苦笑を堪えきれず溢してしまった。

 

「流石に全部は覚えていないが、話せるだけなら教えてやるよ。

 先ずは…そうだな、リンク召喚のヒーローは知っているか?」

「なんだそれ!?

 スッゲー気になる!!」

 

 早く早くと急かす十代を宥めつつ騒がしい昼食は過ぎていった。

 

 

 

 




次回は久々にデュエル回です。

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