迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
後、執事がオシリス倒したのはマリクを救済とかではなくオシリス倒せばデュエルエナジーウハウハじゃないか?という完全私欲でした。
成し遂げた…。
スピンオフの『遊戯王R』を含めても作者が同格以下の相手に正面からの敗北を経験させなかった【神のカード】に対し完全勝利を得たという確かな充足感を感じながらマリクが操作を手放し倒れ伏した『人形』へと近寄り体調を確かめる。
(…脈が弱い)
最低二日以上は飲まず食わずで放置されていたはずだからさもありなんだが、やはり気分がいいものじゃない。
「レインさん。
ディスクとカードの回収は任せます」
「了解」
運びにくいのでデュエルディスクを外してから『人形』を肩掛けに抱え河川敷を最短距離で上がると、武藤遊戯と海馬瀬人が揃い踏みで正面から待ち構えている場所であった。
(う〜ん。原作ファン感涙の光景なんだが、もうちょっと後にして欲しかったなぁ)
動画と写メでギガ単位は撮りたい衝動を我慢して俺は二人に尋ねる。
「すみませんがどちらでも構いませんので近隣の病院の場所を教えてくれませんか?」
「病院だと?
まさかそいつを入院させるつもりか?」
「ざっと見た感じではその必要はあるかと」
「知ったことか!!」
正直に告げると海馬は傲慢な態度で俺の要求を切って捨てた。
「バトルシティを這い回る蛆虫共がどうなろうが俺には関係ない!!
そんなゴミ共より貴様の事だ!!」
う〜ん。見事な海馬節だなぁ。
傲慢かつ滅茶苦茶不愉快な発言な筈なのに海馬瀬人が言うと不思議と格好良く聞こえるな。
それにグールズは現在進行形でコピーカードを使用してバトルシティを滅茶苦茶にしている連中だから主催者の海馬瀬人からの視点では真っ当な意見なので人命尊重観点や法的にはまだしも論理的、感情的な反論は難しい。
だからといって今は付き合う気はない。
「あ。じゃあもういいです」
そう言って颯爽とデュエルディスクを構える海馬の横をさっさと通り過ぎてタクシーがありそうな大通りを目指す。
「待て!!」
完全にブチギレた声で呼び止める海馬瀬人を無視して急いでいると全力で回り込んだ海馬瀬人が怒り狂った様子で詰問してきた。
「貴様ぁ!! この俺を無視するとはいい度胸だ!!」
「無視した訳じゃないですよ。
人殺しになるのは御免ですから人命を優先しているだけです」
そう言って回れ右と別の道を急ごうとした俺の前に黒塗りの高級車が数台並んで道をふさいだ。
状況が状況だけどここまでやるか?
……原作の海馬瀬人ならやるな。
「その男の肩に乗せた奴を病院に搬送しろ磯野!!」
「畏まりました瀬戸様!」
無理矢理拘束されそうになったら【緊急テレポート】使ってでも逃げるつもりでいたら海馬瀬人は意外な命令を口にした。
「その少年を此方へ」
「…分かりました。お願いします」
引き渡すと磯野と呼ばれたグラサン黒スーツは思ったより丁寧に『人形』を受け取ると車に乗せ急加速して遠ざかっていった。
「これで貴様が急ぐ理由は無いな?」
「え、ええ。そうですね」
プライドが服着て歩いている海馬瀬人がこちらの要望を飲むなんてちょっと意外だ。
いや、バトルシティで城之内の救出に手を貸したりとかしてたしそうでもないか。
「それでですが、御要件はオシリスを賭けたデュエルで宜しいのですよね?」
「無論だ!
だがその前に!貴様にはそのデュエルディスクを何処で手に入れたのか吐いてもらうぞ!!」
あ〜。そっちかぁ…。
「我が海馬コーポレーションの技術の粋を盗用し運用する貴様とその背後関係一切を全て吐かせてやる!!」
「あのぉ、それについてなんですが……」
別次元の未来人なんですなんて正直に言っても信じてもらえるはずも無いし、かといって『イリアステル』に擦り付けても良いわけもないし。
デュエルで勝って有耶無耶にするにしても下手して海馬瀬人がオベリスク手放しでもしたら決勝トーナメントに参加しなくなって歴史崩壊の可能性があるから勝つのも危険だし、だからって負けたらオシリスが遊戯じゃなくて海馬の手に渡ってしまいこれも歴史崩壊の条件に当たってしまう。
あれ? もしかしなくても詰んでる?
「レインさん!
どうしたら良いかZONEにヘルプお願いします!!」
俺の頭では打開策が浮かばず恥も外聞も投げ捨てレインさんに救援を求めた。
だが、しかし…
「ZONEより回答。
『なんとかしてください』との事です」
神は死んだ。
比喩抜きでさっき俺が殺したから是非もないんだけどさ!!
「デュエルディスクについてなんですが、私が未来人だからと言ったら信じてもらえますか?」
「不愉快な冗談でこの俺を騙せるとでも思っているのか!」
「じゃあ、未来で登場するブルーアイズの新規カードの話をしたら信じてもらえます?」
「ブルーアイズの新規カードだと!?」
うわっ、めっちゃ食いついた。
「ええと…手札から【
とりあえずMDで【ブルーアイズ】デッキと戦うとよく見るラインナップを幾つか挙げてみると、海馬はブルブル震えながら疑いと期待と興奮が混ざったすごい表情を浮かべていた。
「嘘八百並べていると吐き捨ててやりたいが、だがもし奴の戯言が真実ならブルーアイズは更に強靱かつ最強となっているという事に…」
どうやら口から出任せと切り捨てたいが挙げたカード達があまりにも魅力的過ぎて信じたくなり葛藤しているようである。
「……いいだろう。
貴様の戯言を今回だけは耳に留めディスクの件については見逃してやろう。
だが、【神のカード】を賭けたデュエルからは逃さん!!」
やったぜ!
いや、結局原作崩壊フラグ折れてないからやってねえよ!?
「待て海馬」
もう全部投げ捨てて逃げるしか無いのかと覚悟を決めた直後、それまで静観していた遊戯が割って入ってきた。
「俺からも質問がある。
お前が未来から来たと言うなら俺について答えられるな?」
「申し訳ありませんが、貴方の真の名についてお答えはできませんよ【武藤遊戯】。
いえ。正しくは【千年パズル】に眠っていた古代エジプトの名を消された【名も無きファラオ】と呼ぶべきですか?」
「っ!?」
『もう一人のボクの事を知っているの!?』
え? なんで武藤遊戯の声が聞こえるんだ?
いや、これはチャンスだ。
「ええ。私は貴方達の旅がどの様に決着を迎えたか過去の記録として存じていますよ武藤遊戯君」
「『相棒(ボク)の声が聞こえている!?』」
「ええ。はい。私自身も急に聞こえ始めたので理由については答えられませんが」
もしかしたらオシリスを倒した事で大量のデュエルエナジーを獲得した余波なのかもしれないが、しかしダルク達は見えていないのでやはりこれも憶測の域を出ない。
ともあれ、遊戯が絡んできたこのチャンスを逃せば原作崩壊から助かる道が無い!
「名も無きファラオ。どうか【オシリスの天空竜】を引き取ってもらえませんか?」
「何をっ!?」
『神のカードを僕達に!?』
無理矢理にでも原作の流れに戻すためそう願い出ると海馬が怒りの声を放った。
「貴様!? 俺とのデュエルから逃げる気か!?」
「それは違います。
先も言った通り私はこの時代の人間ではありません。
私が知るバトルシティの記録において武藤遊戯は【オシリスの天空竜】を手にした状態で海馬瀬人とバトルシティの予選を勝ち抜いた先で相見えました。
私が元の時代に戻るためにはその流れに沿わなければならないのです。
ですから、貴方とのデュエルからは逃げはしませんが【神のカード】をアンティは出来ないのてす」
「戯れ言を!」
「俺は本気だ」
情に訴えるなんてやりたくはないし通用するとも思えないが、しかし口八丁が通じる相手でもない以上海馬瀬人を説得するにはもうこうする意外に俺には手段は思い浮かばない。
「俺は待っている家族の元に帰るためならどんな手段を使ってでも未来に帰る。
弟のために自分の命だって賭けた貴方なら分かるだろう海馬瀬人?」
「………」
主と崇める姫様を家族と言ったことを反省しつつ、睨まないよう気をつけながら目一杯圧を込め海馬瀬人を真っ直ぐ見据えると、暫しの間をおいて海馬瀬人は不意に背を向けた。
「興が削がれた。
貴様のような軟弱者とデュエルした所で、俺の戦いのロードの路傍の石にすらなりはすまい」
そう言うと海馬瀬人はデュエルディスクを待機状態に戻してしまった。
「海馬瀬人。貴方の選択に敬意を」
「ふん!
貴様のデュエルディスクの内部データを献上する事で今回の無礼は水に流してやる」
最大の感謝を込めて一礼すると海馬瀬人は短く鼻を鳴らしてそう返した。
「それぐらいなら、まあ問題ないですよね?」
「ZONEからの返答は『誤差範囲に収まるので問題ないです』」
協力者からもお墨を貰い未来は一旦の危機を免れたらしい。
最大の危機は免れたと安堵しつつ、レインからオシリスを受け取り武藤遊戯の前に立つ。
「思うところはあるかも知れませんが、私のために受け取ってもらえないでしょうか」
そう言ってからオシリスを差し出すと武藤遊戯はオシリスをじっと見つめてから徐ろにオシリスをその手に取ってくれた。
良かったぁ。これで第一関門は変えることができた。
これで後は原作に関わらないよう適当にデュエルで遊びながら決勝戦に不参加すれば歴史は守られるはず。
とはいえ、原作と違い正面からオシリスを倒されたマリクが何かしでかさないかって懸念があるから念の為そちらに注意は払っておいたほうがいいだろう。
「だが、タダじゃ貰えないな。
オシリスを受け取る代わりに俺とデュエルをしようぜ」
「アンティではなく対価として。ですか?」
「ああ」と、不敵に笑う武藤遊戯に胸が高鳴りを覚えるのだが…
「貴方からのデュエルはお受けしたいのですが、つい今しがた海馬瀬人の要請を蹴った身で二もなくデュエルをお受けするのはあまりにも彼への無礼が過ぎてしまいます」
「む?」
確かにと武藤遊戯も表情を解いてしまう。
「ですので、代わりでは有りませんが私と
『もう一人のボクじゃなくてボク?』
「先に申しておきますが、私は遊戯君が弱いなどと微塵も思っていません。
寧ろ、海馬瀬人や【名も無きファラオ】より彼こそが
「相棒が
意味が分からないと困惑させてしまうが、これは本音だ。
今はまだ片鱗しか覗かせていないが、遊戯君は双六の孫らしく
「どうでしょう?
これならデュエルを断ってしまった海馬瀬人へも面目が立つと思うのですが?
勿論遊戯君が断るならこの提案は取り下げます」
名も無きファラオと海馬瀬人の両方の顔を立てられる方法として両者からともデュエルを断ればとそう思いつきを提案すると、やはり遊戯君は迷いを見せた。
海馬瀬人が少し離れた所で腕を組み推移を見ていることから一応納得はしてくれているようだが…
「相棒。お前はどうしたい?」
『……うん。やるよ。もう一人のボク』
「分かった」
言うや否や【千年パズル】が一瞬輝き武藤遊戯の雰囲気が変わる。
「要望に応えて頂きありがとうございます遊戯君」
「ううん。海馬君のことも有るし構わないよ」
「そうですか。
それでは、すぐに始めますか?
できれば先のデュエルの反省を活かしてサイドデッキと入れ替えたいカードが何枚か有るので少し時間を貰えると助かりますが」
「うん。ボクも貴方と戦うなら使いたいカードがあるからその方がいいな」
やはり彼はヤバイ。
「では、十分の調整時間を挟んでから始めましょう」
背に走る汗の感触に期待と恐怖を感じながら俺はそう告げた。
ちょっと無理矢理感が有るかもですが、海馬を納得させつつオシリス渡すにはこんな展開しか思い浮かびませんでした。
自身の技量不足が悔しい…
次回は表遊戯戦になります。
まあ、当然ながら洒落じゃなく激戦になります。