迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
『準備はいいか相棒』
真剣な顔でサイドデッキから幾つかのカードを差し替える遊戯の背から『名も無きファラオ』はそう尋ね、遊戯は振り返らずに「うん」と答えた。
「今のボクが思うあの人のデッキへの対策は用意出来た筈だよ」
『そうか』
表情こそ不安が拭えないために硬いが、同時に僅かながらの自信も伺えた。
そんな相棒の姿にふと時間を確認し、まだ少しだけ余裕があると見た名も無きファラオは遊戯に問う。
『相棒』
「どうしたの?もう一人のボク」
『相棒は俺達が本当にオシリスを攻略出来たと思うか?』
「ううん。今の僕達のデッキでオシリスを倒す方法は思いつかない。
でも、あのデッキにはオシリスを強化するための手札を増やすために大量のドローソースが入っていたから、そこを突く事が出来ていたら
『っ!?』
『…ふっ、流石だぜ相棒』
彼の言っていた
『さあ、行ってこい相棒!』
「うん!行ってくるよもう一人のボク!」
先に調整を終え遊戯を待っていた『迷宮の案内人』の前に立つ。
「お待たせしました」
「いえいえ。
それではデュエルの前にバトルシティのルールに則りアンティの提示を。
私からは挑戦権として【オシリスの天空竜】を譲渡する事に加え、アンティとしてパズルカード一枚と【妖精伝記シラユキ】を賭けます」
オシリスを撃破するキーカードにもなった使いやすく強力なカードを提示した案内人に海馬が異を口にする。
「貴様、何故【白銀の城のラビュリンス】を賭けようともせん!」
海馬にしてみれば魂のカードを提示する気概も無いのかと軽く煽ったつもりだった。
「…」
「っ!?」
刹那、海馬をして案内人から胸に刃物を突き立てられたと錯覚するほどの殺意が案内人からほんの僅かだが漏れ、しかしすぐに霧散し穏やかな声で返答を口にする。
「失礼。
確かにバトルシティのコンセプトを考慮するなら私は姫様を提示するのが筋なのでしょう。
ですが、【ラビュリンス】はテーマで固めてこそ本領を発揮するカテゴリーですがその入手は事実上不可能。
姫様一枚を渡した所で本領を発揮出来ずコレクションとして飾られる未来しかないのであるなら、希少度では劣っても遊戯君のデッキに一枚だけ入っても多くの仕事を熟せるだろうシラユキを渡すほうが彼等に有益であると判断し提示しました」
「…いいだろう。余計な口を挟んだ」
カードの希少さより勝者のデッキの強化に繋がる選択なのだと嘯く案内人に海馬は一理を認め引き下がる。
「遊戯君に意見はありますか?」
「…いえ。ボクもシラユキは欲しいと思ったので嬉しいです」
嘘ではない。
コストの重さはあっても召喚権を使わず墓地から特殊召喚可能なシラユキは遊戯のデッキの大幅な強化に繋がるだろう。
同時に、彼にとって【ラビュリンス】が踏んではならない地雷どころか【神のカード】さえ霞む恐ろしい
「僕はパズルカードと【デーモンの召喚】を提示するよ」
執事の例に則り、彼のデッキが悪魔族と魔法使い族に集中していたことを鑑みて【デーモンの召喚】を提示した。
「了解しました。
それでは、デュエル成立ですね」
穏やかにそう嘯きシラユキをデッキに戻しオートシャッフルを起動する案内人に、すごい便利だなぁと思いながら遊戯もデッキをシャッフルする。
「ではデッキカットをどうぞ」
「うん。僕もお願いします」
シャッフルしたデッキを交換し数回のカットを行ってから返して改めてデュエルディスクに装填する。
「先攻後攻の選択権はどうしますか?」
「…コイントスをお願いします」
「わかりました」
遊戯の要望に案内人がポケットからブルーアイズが刻印されたコインを取り出して両面を提示する。
「ブルーアイズが表になります。
表か裏を選択してください」
「表で」
「承知しました。
では、いきます」
握った拳の上に乗せ甲高い音を立てて親指で弾かれたコインが真っ直ぐ真上に飛ぶ。
真上に飛んだコインを手の甲で受け止め優しく抑えた案内人はゆっくり手を退け面を提示する。
「表が出ました。
遊戯君。選択権の行使をお願いします」
「うん。ボクは先攻を選ぶよ」
「了解です。
それでは始めましょう」
両者共に最初の五枚を手札として引いたのを確認し、同時に宣言する。
「「デュエル!!」」
「ボクのターン!ドロー!!」
勝ち負けが大勢に影響しないデュエル。
それ故に遊戯は己の技量を更に高めるための試練として強敵に立ち向かう。
「ボクは手札を一枚墓地に送り【THE トリッキー】を攻撃表示で特殊召喚する!」
【THE トリッキー】
効果モンスター
星5/風属性/魔法使い族/攻2000/守1200
(1):このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。
「チェーンはありません」
「更に手札から装備魔法【ワンダー・ワンド】をトリッキーに装備!」
【ワンダー・ワンド】
装備魔法
魔法使い族モンスターにのみ装備可能。
(1):装備モンスターの攻撃力は500アップする。
(2):装備モンスターとこのカードを自分フィールドから墓地へ送って発動できる。
自分は2枚ドローする。
「そちらにも何もありません」
「そして、魔法カード【エクスチェンジ】を発動する!」
(上手い!)
(奴の手札を確認しつつ対策を選べるか。
成程。器の遊戯も凡骨ではないようだな)
「流石に何も出来ませんね。
ではどうぞ」
距離を詰め案内人が手札を公開する。
【白銀の城のラビュリンス】
【デーモン・イーター】
【憑依覚醒】
【灰流うらら】
【ハーピィの羽根箒】
公開された手札に遊戯は迷わず宣言する。
「灰流うららを貰います」
属性の数だけ強化する憑依覚醒にフィールドを問題無用で薙ぎ払うハーピィの羽根箒やトリッキーが居るので即座に特殊召喚し更なる展開も狙えるデーモン・イーターも魅力的だが、遊戯はそれらよりこのカードを手札に残させてはいけないと灰流うららを選ぶ。
「……やはり貴方は強敵だ」
遊戯の言葉に執事は不思議な程に非常に嬉しそうに笑う。
「では私は【融合】を頂きます」
手札の【ブラック・マジシャン・ガール】【聖なるバリア -ミラーフォース-】【融合】の三枚から案内人は【融合】を選択しお互いに交換する。
(ミラーフォースじゃなく融合?)
渡したくは無いが見せ札として敢えて手元に残したまま公開したミラーフォースを選ばなかった執事に懸念を抱きつつ交換を終え遊戯は思考する。
(ここは羽根箒の対策からだ)
「ボクはワンダー・ワンドの効果を発動。
装備したトリッキーと共に墓地に送り二枚ドロー! っ!?
カードを一枚伏せモンスターをセットしターンエンド!」
「私のターン。ドローフェイズ。ドロー。
スタンバイフェイズ。メインフェイズ」
引いたカードを確認し、案内人は一瞬フィールドを確認すると手札をディスクに挿入した。
「私は君から頂いた【融合】を発動します!」
「ここで融合!?」
「私は手札の【白銀の城のラビュリンス】と【デーモン・イーター】を融合!
獣と魔性、二つの交わらぬ力を束ねし異形なる王よここに現われろ!
融合召喚!レベル六!【幻獣王キマイラ】!」
【幻獣王キマイラ】
融合・効果モンスター
星6/風属性/獣族/攻2100/守1800
獣族モンスター+悪魔族モンスター
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「有翼幻獣キマイラ」として扱う。
(2):このカードが融合召喚した場合に発動できる。
このターンのエンドフェイズに相手の手札をランダムに1枚墓地へ送る。
(3):相手ターンに墓地のこのカードを除外し、
自分の墓地の獣族・悪魔族・幻想魔族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
「キマイラ!?」
「これは【有翼幻獣キマイラ】の未来の姿。
もしかしたら使う機会があるかもと思ってデッキに入れていましたが、まさか武藤遊戯を相手に使うとは思いませんでしたよ。
キマイラを守備表示で召喚しエンドフェイズ時に適用される召喚時効果を発動しましたがチェーンはありますか?」
「ううん。
何も無いよ」
「では手札から【太陽の魔術師エダ】を攻撃表示で召喚。
召喚時効果を発動しますがチェーンは?」
「……ううん。通す」
「…わかりました。
ではデッキから【闇霊使いダルク】を裏守備表示で特殊召喚し、【憑依覚醒】を発動。
バトルフェイズに移行しますがその前に何かありますか?」
「どうぞ」
「ではエダでセットモンスターに攻撃します」
エダが杖に魔力を収束し裏守備モンスターへと解き放つ。
「伏せモンスターは【マシュマロン】!」
【マシュマロン】
効果モンスター
星3/光属性/天使族/攻 300/守 500
(1):このカードは戦闘では破壊されない。
(2):裏側表示のこのカードへの攻撃が行われたダメージ計算後に発動する。
攻撃したプレイヤーに1000ダメージを与える。
エダの魔術はマシュマロンに弾かれ案内人に当たる。
「っ!? こちらからチェーンはありませんので戦闘後に私は1000ポイントダメージを受けます。チェーン確認」4000→3000
「ありません」
「ではバトルフェイズを終了しエンドフェイズに移行します。
エンドフェイズにキマイラの召喚時効果が適用され遊戯君の手札をランダムに一枚墓地に送ります。
私が選ぶのは左です」
「っ!?」
遊戯の手札から【聖なるバリア -ミラーフォース-】が消える。
「やはり伏せカードは羽根箒を誘導するためのブラフでしたか。
或いは羽根箒にチェーン可能な汎用速攻魔法や【嗤う黒山羊】等の墓地効果持ちと見て間違いなさそうですね」
「……」
完全に読まれていた。
此方の意図を読み羽根箒を温存した案内人に遊戯は背に伝う冷たい汗を感じつつ、しかしその口元には強者とのギリギリの戦いへの期待から笑みが浮かんでいた。
執事がキマイラ採用したのはデーモン・リーパーを墓地に送る手段の一つとしてです。
ただし、ガーディアン・キマイラは強すぎるんで十代から出禁くらってます。
因みに融合系カードは一枚だけしか入ってません。