迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
『相棒』
「うん。空気が変わった」
【暗黒界の取引】で引いたカードを見た案内人のそれまでの
遊戯のモンスターゾーンにはデッキのエースモンスター【ブラック・マジシャン】が立ち、墓地には魔法使い族が破壊された際にリクルート出来る【マジクリボー】が控えているため盤面は見た目より硬い。
対して案内人のモンスターゾーンには守備表示のアリアーヌとエダの二体と永続魔法【憑依覚醒】が配されている。
お互いの手札は両者共に暗黒界の取引で引いてきたカードに交換したため不明。
セットせずにターンを終えたためモンスターか手札誘発のどちらかの可能性が高い。
「ボクのターン。ドロー!」
引いてきたのは【クィーンズ・ナイト】。
「メインフェイズで【クィーンズ・ナイト】を攻撃表示で通常召喚します」
【クィーンズ・ナイト】
通常モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1500/守1600
しなやかな動きで敵を翻弄し、
相手のスキを突いて素早い攻撃を繰り出す。
「チェーンはありません」
「バトルフェイズに移行!
クィーンズ・ナイトでエダに攻撃!」
女騎士の剣線が魔力障壁を切り裂きその身に刃を突き立てる。
「チェーンはありません」
「ブラック・マジシャンでアリアーヌに攻撃!!『
弟子の仇だからか気合の篭った声と共に魔力弾を解き放ちアリアーヌが黒い魔力に飲み込まれた。
「チェーンはありません」
「メインフェイズ2は何も無しでターンエンド」
モンスターゾーンは空に出来たが、しかし彼のデッキは生贄無しで大型モンスターを展開出来る加速力の高さ故に油断は出来ない。
「ドローフェイズ。ドロー。
来てくれたか相棒」
フッ、と案内人は頬を緩め嬉しそうにそう呟いた。
「スタンバイフェイズ。メインフェイズ。
私は【憑依装着-ダルク】を攻撃表示で召喚します。
【憑依覚醒】の効果で一枚ドローしバトルフェイズに移行」
「どうぞ」
「ダルクでクィーンズ・ナイトに攻撃。
『クーゲル・ドンケルハイト』!」
主の命にダルクが杖を突き出し闇色の魔力弾を女騎士に見舞う。
「チェーンはありません!」3900→3250
「バトルフェイズを終了しメインフェイズ2に移行。
手札を一枚セットしてターンエンド」
「ボクのターン。ドロー。
メインフェイズにボクは手札の魔法カード【拡散する波動】を発動します!」
「ここで切りますか…」
【拡散する波動】
通常魔法
(1):相手フィールドにモンスターが存在する場合、
1000LPを払い、自分フィールドのレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスター以外のモンスターは攻撃できず、
対象のモンスターは可能な限り相手モンスター全てに1回ずつ攻撃しなければならない。
その攻撃で破壊されたモンスターの効果は発動できず、無効化される。
「ボクはモンスターゾーンのブラック・マジシャンを指定してライフを1000払いこのターン全てのモンスターに攻撃出来る!
バトルフェイズに移行!」3250→2250
ライフアドバンテージを失うが、これで伏せカードが後続を呼び出させる【憑依解放】でも墓地から【霊使いダルク】をセット出来る【憑依連携】であってもこのバトルフェイズ中に排除出来る。
或いはもう一つのキーカード【ビッグウェルカム・ラビュリンス】であっても今引いてきた【墓穴の指名者】で墓地のラビュリンスを指名すれば最悪でも効果発動は封じられる。
「チェーンはありません」
「バトル!
ブラック・マジシャンでダルクに攻撃!『
ブラック・マジシャンがダルクへと照準を定め魔力を収束させ、ダルクは静かにその時を待つ。
そして、収束した魔力が威を放とうとした刹那、主はその意を解き放つ!
「チェーンして伏せカード発動!」
「来たっ!」
【霊使い】か、或いは【ラビュリンス】のカードのどちらでも対抗手段は準備出来ていると意気込む遊戯は、しかしそのカードの縁が
「魔法カード!?」
「速攻魔法発動!【超融合】!!」
「超融合!?」
(融合の!?)
(速攻魔法だと!?)
【超融合】
速攻魔法(準制限カード)
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。
自分・相手フィールドのモンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。
「このカードにはチェーンを行えない効果がありますので確認は取りません。
手札を一枚捨てて自分と相手のモンスター全てを融合素材に指定して融合を行います!
私が選択するのは、ダルクとブラック・マジシャン!!」
空間が軋むように大きく歪み、見通すことの叶わぬ混沌の暗闇がダルクとブラック・マジシャンを飲み込まフィールドを満たす。
「ブラック・マジシャン!!??」
「召喚条件はフィールドに存在するトークン以外の闇属性モンスター二体!!
四界を征した覇王のその道行きに付き従う四天の一角!餓えたる牙持つ毒龍を今ここに召喚する!!
融合召喚!!レベル8!【スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】!!」
【スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】
融合・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2000
トークン以外のフィールドの闇属性モンスター×2
(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。
相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を選び、
その攻撃力分このカードの攻撃力をターン終了時までアップする。
(2):1ターンに1度、相手フィールドの
レベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。
エンドフェイズまで、このカードはそのモンスターと同じ、元々のカード名・効果を得る。
(3):融合召喚したこのカードが破壊された場合に発動できる。
相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。
混沌が晴れるとフィールドから二人の魔術師は姿を消し、食虫植物と融合したような黒と紫色の禍々しいコントラストに彩られた強壮な巨龍が遊戯の前に立ちはだかっていた。
「そんな、ブラック・マジシャンが…」
破壊ではないのでマジクリボーのリクルート効果も発動せず、しかも融合召喚時に発生する召喚酔いはバトルフェイズに召喚されたため
つまり…遊戯が勝つには後一手足りない。
「ごめんもう一人のボク」
見えた勝利を逃した悔しさに頭を下げる遊戯に名も無きファラオは静かに諭す。
『俯くな相棒。
お前は俺が手を出さなくてもオシリスを倒したあの男を後一歩まで追い詰めたんだ』
名も無きファラオから見ても二人は完全に互角だった。
案内人が勝ったのはほんの僅かに運命が彼に寄っただけの事。
『相棒はまだ強くなれる。
この敗北は相棒の力になる』
「……うん!」
浮かんだ涙を拭い遊戯は真っ直ぐ相手を見据えて宣言する。
「ターンエンドです!」
悔しさで震えそうになる足に喝を入れて立つ遊戯の姿に案内人は見守る親のような優しい笑みを浮かべ小さく頷いた。
「ドローフェイズ。ドロー。
スタンバイフェイズ。メインフェイズ。
バトルフェイズに移行します」
「何もありません」
敗北しても誇りは失わないと真っ直ぐ宣言する遊戯に案内人は告げる。
「スターヴヴェノムでダイレクトアタック!
『ヴェノム・ザッパー』!」
使い手の意を受け、毒龍はその鋭い鉤爪を遊戯に突き立てる。
「うわあぁぁぁぁ!?」2250→0
毒龍の爪が遊戯のライフを奪い去りデュエルの終了のブザーが鳴る。
「良いデュエルでしたよ遊戯君。
引いたカードが違えば私は負けていました」
遊戯が暗黒界の取引で【拡散する波動】ではなく【
案内人がダルク、或いは闇属性かつ追加で手札を増やせるアリアンナを引けていなければ。
少なくともこのターンの決着は着いていなかった。
他にも分水嶺と見れた場面は少なくなく、内容を反芻すればカードパワーに勝る案内人がここまで追い詰められたのだから遊戯は勝ったと言えよう。
握手を求める案内人に、悔しさを糧と飲み込んだ遊戯はその手を取る。
「ありがとうございました」
「こちらこそ。貴方とデュエル出来て心から感謝しています」
しっかりと握られた握手のように、それぞれに想いをしっかりと刻み込みデュエルは幕を下ろした。
正直、描いてる作者が遊戯に勝てると思ってませんでした。
当初のプロットでも【融合解除】でスターヴ除去からの遊戯の逆転勝利だったんです。
ですが、やりたいシーンを書いている内に遊戯のリソースが尽き【融合解除】を挟むと召喚酔いのせいでスターヴ出落ちになる展開にしか進まず、悩んだ末に着陸したのがこの結末でした。
後、大半の読者は気付いているでしょうが超融合はユベルからのカードを貰った感謝の贈り物です。
つまり、ユベルは完全に善意のみでGXの最強呪物を渡してくれやがりました。
因みにスターヴヴェノムは二枚目が来たからとユーリからのプレゼントです。