迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
その日、世界は未曾有の混乱に襲われた。
世界的人気を誇るカードゲーム【
同時に先日行われた『バトルシティ』に於いて社長である海馬瀬人が大会三位という戦績から海馬コーポレーションそのものへの不安視が高まり株価が低迷。
『パラディウス社』による大量買い付けを許してしまいM&Aこそ為されなかったものの事実上の買収という責任から海馬瀬人が社長を退陣するという事態になった。
そんな世の理の狂い混迷の中、武藤遊戯は友人達と共に海岸埠頭のとある倉庫に足を運んでいた。
「ねえ遊戯。
本当にこの場所でいいの?」
「うん。その筈だよ」
それは先日の事である。
バトルシティを勝ち抜き三枚の【神のカード】を手にした武藤遊戯は己が内に宿る【名も無きファラオ】の記憶を取り戻すために博物館に展示されたとある石碑へとカードを翳したのだが、しかし記憶を取り戻すことは叶わず町にはモンスターが現れた。
そうした混乱の中、遊戯達の前に腕を切断された【迷宮の案内人】を乗せたバイクが博物館へと飛び込んできたのだ。
「詳細は後で話すから君の持っている【ホーリー・エルフ】を貸して!!」
バイクを操縦していた少女は遊戯の前でバイクを停車させると困惑する遊戯にそう頼み、遊戯が戸惑いながらもその要求に応えると少女は案内人の切り落とされた左腕のデュエルディスクに遊戯のカードをセットしてホーリー・エルフを現実に【召喚】してみせた。
「貴女ならマスターを救えるでしょう!!
お願い!!マスターを助けて!!」
必死に懇願する少女にホーリー・エルフは「分かりました」と応じ、遊戯達の前で魔法を使い案内人の傷を癒し切断された腕を繋げた。
そんな現実味の無い光景に付いて行けず役割を終えたホーリー・エルフが顕現を解いた所で新たな人物が現れた。
「お疲れ様でしたマスカレーナさん。
流石【S-Force】から抹殺命令が降されるエージェントだけありますね」
案内人が助かり緊張が解けた少女ことマスカレーナにグラマラスな身体を執事服に押し込める捻れた角とコウモリの翼を腰から生やした銀髪の女性がそう声を掛ける。
「今言わなくて良いことを言うんだからホント性格悪いよねアリアスちゃんってさ」
眉を八の字に寄せマスカレーナが唇を尖らせながらそう文句を口にする。
「失礼。褒めたつもりなんですよ?」
「ふん!」
プイッとそっぽ向くマスカレーナに苦笑を零してからアリアスは呆然と成り行きを見ていた遊戯達へと向き直る。
「この度は私達の主君にして同胞たる執事君を救って頂き心より感謝します。
武藤遊戯殿、ホーリー・エルフ殿、ありがとうございました」
慇懃に見惚れる程に綺麗な所作で礼を告げるアリアス。
「一体何があったんだ?」
腕を切り落とされるというショッキングな光景とカードから現れたモンスターがその傷を治すというあまりに現実離れした展開にそう問い掛けるも、アリアスは不意に上を見上げてから述べた。
「ああ。少し騒がしくし過ぎたみたいですね。
皆様、説明したいのは山々ですが入口を強行突破したのがバレて警備員が此方に向かっております。
童実野町の埠頭の廃倉庫にてお待ちしておりますので詳しい話は後日そちらで」
アリアスの言う通り遠くから複数の走る足音が聞こえる。
捕まってあらぬ疑いをかけられても困るとアリアスの提案に従い博物館を逃げ出したのが先日の顛末となる。
そうして翌日、アリアスが指定した廃倉庫へと遊戯達は足を運んだ。
おそらくこの辺りだろうと廃倉庫を探していると、鍵束が繋がる鞭を持つ捻れた角を持つ少女が出迎えた。
「ようこそおいでくださいました。
【武藤遊戯】様、【真崎杏子】様、【城之内克也】様、【本田ヒロト】様、【御伽龍児】様、【獏良了】様。
私は皆様をご案内仕るよう主より仰せつかった【
どうぞよろしくお願いします」
教本に載るような完璧なカーテシーと共に自己紹介をするアリアンナ。
「君も案内人さんのモンスター何だよね?」
「はい。私達【ラビュリンス】は真の主である姫様より下賜され、現在は【迷宮の執事見習い】様をマスターとして仰ぎ配下の列に加わらせていただいております」
「【迷宮の執事見習い】?」
「武藤遊戯様にとっては【迷宮の案内人】と呼ぶ方が記憶に当たるでしょう」
「ちょっといいか?
案内人って、昨日大怪我してたのをホーリー・エルフに治させていたオッサンだよな?
アイツもモンスターだったのか?」
アリアンナの言葉にこんがらかってきた城之内がそう尋ねるとアリアンナは「いいえ」と答えた。
「彼は異邦より現れた迷い人。
今はまだ貴方方と同じ唯人です。
詳しい事は私達の『城』にてお話させて頂きます」
そう言って歩きだすアリアンナに訝しみながらも一同はついて行く。
「なんだかおかしな事になってきたな」
「そうだね」
「それにお城なんて何処にあるのかしら?」
見渡せどその様に言い表せられる建物は何処にもなく困惑を抱きながら歩いていると、アリアンナは一件の廃倉庫の前で立ち止まった。
「それでは皆様。
ようこそ我が【白銀の迷宮城】へ」
そう言って扉を開くと、そこには『異世界』が広がっていた。
「な、なんだこりゃあ!!??」
扉の向こうには屋根はなく深い森に囲まれた青い空を映す湖が広がり、正面に見える橋の向こうには巨大な白く輝く巨城が鎮座していたのだ。
「わぁ!すごく綺麗なお城!!」
「一体どうなってやがるんだ!?」
城の美しさに目を輝かせる杏子に対し、現実離れした光景にビビり散らかす城之内。
「皆、あの娘が行っちゃうよ!」
立ち往生する遊戯達を残し城へと向かうアリアンナの姿を獏良に指摘され慌てて追いかける一同。
橋を抜ける最中突如空に影が挿し、見上げれば白と黒の鋼の機神が上空でドッグファイトを繰り広げていた。
「うぉぉおおお!!」
「すげぇカッケー!!」
巨大ロボットの戦闘シーンを間近で見れたことに城之内と本田がはしゃぎ遊戯達も声にこそ出さないがその圧巻の光景に驚きと興奮を抱く。
「アリアンナさん!!あのロボットはなんだい!?」
「アレはアーゼウスとティ・フォンですね。
マスターを害された際に動けなかった憤りを発散させる為に戦っているので火器こそ封じておりますが危険ですので近づかないようにしてください」
確かに目まぐるしく立ち位置を変えながら行われる二体のドッグファイトは凄まじく苛烈であり、下手に近づこうものなら命の保証はされないだろう。
「他にも城から離れた場所で感情を落ち着けようと暴れているモンスター達が数多くおりますので、私からあまり離れないよう気を付けてください」
その言葉に改めて辺りを見回すと、アリアンナの言う通り森の奥で地面が隆起し爆炎が巻き起こっていたり、天に向かい紫色のレーザーが放たれていたりと近付くのは躊躇われる光景がいくつも散見していた。
「「「「「……」」」」」
城の美しさも霞む恐ろしい世界が直ぐ側に潜んでいたことを改めて理解した一同は君子危うきに近づかずを心から理解しアリアンナに大人しくついて行く。
そうして橋を渡り終え城門の前に辿り着いた一同の前でアリアンナは告げた。
「これより城内を案内致しますがその前に一つ注意事項をお伝えさせて頂きます」
「注意事項?」
「城内には侵入者を『おもてなし』する為の罠が数多く配置されております。
私からはぐれたり迂闊に物に触れたりした際には命の保証はしかねますのでご注意してください」
「罠ったって…そんな大層なものを…」
アリアンナの言葉を軽く受けた城之内が脅かしているだけと扉に手を触れ、電流が城之内を焼いた。
「ギャアアアアア!!??」
何度も骨が透けるギャグ漫画によくある演出を挟みつつブスブスと焼け焦げた城之内が地面に倒れ伏す。
「城之内君!!??」
「し、死んでる…」
「なわけねえだろ!!」
縁起でもない冗談を口にした本田に城之内は起き上がりながら怒り取っ組み合いを開始する。
「因みに今のは橋を抜けて安心した所を電撃で焼き殺すトラップです。
なんとか停止が間に合いましたが、次も同じ様に間に合う保障はないのでお気を付けてください」
「成程…確かにここにトラップが有るとは普通思わないよね」
TRPGゲーマーである獏良はその悪辣さは参考になると素直に感心し、ゲームクリエイターを志す遊戯や御伽も城之内を心配しつつも同じ様に感心していた。
「でもこれじゃあ中に入れないわよね?」
至極真っ当に杏子が問うとアリアンナは「私達が入る入り口は此方です」と、正面からは非常に分かりづらい場所に配された勝手口を示す。
「だったら最初からそう言ってくれよ…」
「お伝えする前に城之内様がトラップに引っ掛かられたので」
「うっ!?」
自業自得と暗に言われ言葉に詰まる城之内を横にアリアンナは鍵束の鍵を一本選び勝手口の鍵を外して戸を開く。
「それでは改めて城の主である姫様とマスターがお待ちしているお部屋へと案内させて頂きます」
因みにアリアンナが警告してたのは獏良(闇)にです。
というよりセキュリティ切ってないのは闇バクラ対策だったりします。
次回は合流直前まで飛ばす予定です