迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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姫様は本気を出さないでください。(震え声)

 絢爛豪華な城内をアリアンナの先導に従いながら進む遊戯達。

 見たことも無い美しい細工に彩られた城内は見惚れそうなほどに美しいが、しかし、この城に仕掛けられた恐ろしい罠が数多に控えていると聞かされていた一同に感動する余裕はなかった。

 

「しかしすごく広いわよね。

 このお城にはどれぐらいの人が住んでいるのかしら?」

「迷宮城に住まうのは城主である姫様と私達【アリアドネの姉妹】のみとなっています。

 遠からず執事も加わるので総数は六人になるでしょうか?」

「なんで疑問形なんだい?」

「姫様がお作りになった家具など同胞であれど住人として数えるべきか悩むものが少なくないのです」

「作った家具をって、この柱時計とかもか?」

 

 ちょうど通りがかった柱時計に本田が指を差すと突然時計の針が急速回転しだし、上の扉からデフォルメされた蝙蝠が飛び出すと本田の顔を翼で叩いてから何処かへと飛び去った。

 

「わぶっ!?」

「あの子は【白銀の城の狂時計(ラビュリンス・クックロック)】姫様が手ずから生み出された()()()()()の一つです」

「あの時計は家具型のモンスターってことなのかな?」

「ええ。

 この城の家具は全て姫様が手ずから生み出された命を宿すモンスターであり、それ故に何処までを住人に含めるかは個々の判断に委ねられております」

 

 そう話を終え再び歩きだすアリアンナ。

 そうして途中突然燃えだすストーブやケタケタ笑いながら揺れるシャンデリア等の家具達からのイタズラに驚かされつつ、漸くとある扉の前でアリアンナは立ち止まった。

 

「大変御足労をお掛けしました。

 こちらに我らが主とマスターがお待ちです」

「漸くかよ…」

 

 家具達からのイタズラに一々オーバーに驚いていた城之内と本田がげっそりした様子でそう呟くと獏良はでもと嘯く。

 

「お化け屋敷みたいで少し楽しかったよ」

「そうだね」

 

 なんだかんだありつつも観光気分を味わえ楽しめた一同だが、しかしそんな感情も扉の奥から響いた怒号により霧散した。

 

『何をしてくれやがったのですかこのアホ姫!!』

 

 ビリビリと空気を震わせる凄まじい声量に扉を挟んでなお耳が痛くなる。

 

「今のって、案内人さんの声だよね?」

「やはりそうなりましたか」

 

 戸惑う遊戯の声に応えずアリアンナは溜息を吐くと扉を軽くノックしてから「お客様をお連れしました」とドアを開いた。

 

「貴女は自分が何をしでかしたのか分かっておいでなのですか!?」

「私はアホじゃないもん!!」

「だったら馬鹿ですか!?

 貴女が使い込んだ魔力は元の時空に帰るための重要なリソースだったんですよ!?

 それを城を顕現させるだけに飽き足らず態々空間を弄るなんて無茶苦茶までして、お陰で溜め込んだ魔力が殆ど残ってないじゃないですか!?」

「バカじゃないもん!!

 天才芸術家だもん!!

 第一、予定より少しだけ多めに使っちゃっただけで魔力はちゃんと残ってるじゃない!」

「残りは最大時の3割弱!

 オシリスの天空竜を倒して獲得した魔力に至ってはほぼ使い倒しておいて何をほざきやがるのですかこの阿呆が!!」

「またアホって言った!!」

 

 扉の向こうでは上着を脱いだベスト姿の案内人がキレ散らかし、小豆色の着古したジャージ姿の【白銀の城のラビュリンス】が半泣きで若干幼児退行している光景が広がっていた。

 

「なぁにこれぇ?」

 

 あんまりすぎる光景に思わずそう零した遊戯にアリアンナが淡々と説明する。

 

「遊戯様は執事がこの時代の人間でない事はご存知でしょうが、彼が元の時空に帰還する方法についてご存知ですか?」

「あ、いえ。知りません」

「そうですか。

 執事が元の時空へと帰るためには大量の魔力が必要となります。

 魔力を集めるためには強いデュエリストとデュエルを行い、その過程で倒したモンスターやデュエリストが発露する魔力を回収する事で貯蓄を増やしていました。

 ですが、姫様がこの城を現世に顕すための魔力を執事が集めていたモノから賄ったため、流石に執事も堪忍袋の緒が切れて、ああして物申しているのです」

 

 そう事の経緯を語るアリアンナ。

 しかし、いつの間にかその内容は全く別のものに変わっていた。

 

「大体にして姫様はどうして真面目にデュエルをなさらないのですか?

 見栄を張って変な演出をするから相手からは恐れられずに面白い変な女扱いされてしまっているんですよ?」

「私は変じゃないもん!!

 それにいつだって私はエレガントで気品ある恐ろしい悪魔足らんと頑張ってるのにどーして執事はそんな酷い事言うの!?」

「黙らっしゃい!!

 貴女が『美しくも悍ましい白銀の悪魔』を演出しようとして対戦相手から『頑張れラビュリンス〜私がバレリーナになった理由〜』なんてサブタイトル付けられた時の私の遣る瀬無さがご理解いただけるのですか!?」

「なんで私がゴエ◯ン枠なのよ!?

 私がなるならヒロインの◯姫でしょう!?」

「非難する場所はそこじゃないでしょうが!!??」

 

 実はコントなんじゃないかと思ってしまう面白おかしい光景に必死に笑いを堪える遊戯達にアリアンナが提案する。

 

「どうやら夫婦喧嘩は暫く終わりそうに無いので別室でお茶でも如何でしょうか?」

「…お願いします」

 

 そういうことになった。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 事前に申して頂けたならまだ仕方ないと諦めて魔力を提供していたというのにアホ姫が…。

 

「お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」

「いえ…事情は聞いたので怒るのも致し方ないと思います」

 

 そう言ってくれた遊戯君は本当に優しいなぁ…。

 

「ありがとうございます。

 それで、何処から話したら良いものか…」

 

 未来についてあまり語るわけにも行かないし、かといって言えませんで押し通すわけにも行かない。

 難しいバランスを担がされている事実にどうしようと頭を捻っていると、趣に城之内君が口を開いた。

 

「なあオッサン。

 アンタは人間なのになんでモンスターに仕えているんだ?」

「姫様に仕えている理由ですか…。

 それを話すにはこの世界について少し語る必要がありますね」

 

 そう前置き、この世界は『次元』という括りにより分けられた世界であり、自分はその中の一つ『精霊界』に迷い込んだ別次元の人間であったことを語った。

 

「その後、紆余曲折あって私は執事見習いとして姫様にお仕えすることにしたんです」

「それじゃあ未来から来たっていうのは?」

「そちらも事実ですよ。

 未来の精霊界で知人の実験に協力した際のトラブルでこの時代に来てしまったのですので」 

「一体誰なんだよその知人ってのは…」

「あー…」

 

 本人の名誉のためにいって良いものか少し悩むが、下手に隠し立てして信用を失うのも困るので正直に告げる。

 

「ブラック・マジシャンです」

「「「「ブラック・マジシャン!?」」」」

「お師匠様が!?」

 

 知っている名前に遊戯達が驚くと同時に驚きすぎたのかブラック・マジシャン・ガール(マナ)がPON!と音を立てて飛び出した。

 

「「「「うわぁっ!!??」」」」

 

 突然現れたブラマジガールに遊戯達が慌てふためく中俺は特に驚くこと無く挨拶する。

 

「こんにちはブラック・マジシャン・ガール。

 未来では別件で貴方にもお世話になりましたよ」

「そうなんだ!?

 ところで貴方とお師匠様は何処で知り合ったの?」

「『魔法族の里』ですね。

 元々はパンドラ…赤い法衣のブラック・マジシャンとの繋がりがあって彼経由で知り合いました」

「あっちの師匠かぁ〜。

 気難しい人なのによく友達でいられるね?」

「そうですか?

 選ぶ言葉は悪いですが意外と面倒見は悪くないですよ?」

「それは知ってる!」

 

 コミュ力の高いブラマジガールにぐいぐい押される感じでついついこちらの話を口にしてしまうが、ふと遊戯君達が置いてけぼりにされてしまっていたことに気付く。

 

「聞きたい話は尽きないでしょうが、遊戯君達を忘れてしまっては失礼ですからこの辺で」

「あ!うん。そうだね!」

 

 俺の言葉にハッとしたブラマジガールは遊戯君にゴメンねと謝罪する。

 

「お師匠様の名前が出たからつい我慢できなくなっちゃって、ごめんなさい!」

「うん…。ボクは大丈夫だよ。

 それより、君は本当にボクのカードのモンスターなんだね?」

「勿論!お師匠様やクリボー達も皆これから始まる戦いでもマスターのために頑張るって気合い入っているからね!」

 

 それじゃあまたね!と言い残し顕現化を解除するブラマジガール。

 

「凄かったな」

「ああ」

 

 そう語り合う城之内君と本田君が何処に視線が向いていたかは言わないでおこう。

 

「さて、話が逸れてしまいましたがカードの中には精霊が宿る物があり、彼等が住まう世界が実在することは理解出来たと思いますがどうですか?」

「あ、はい。十分理解出来ました」

「だけどどうして急に現実にモンスターが現れるようになったのかしら?」

「それは…もしかしたらボクが【神のカード】を石碑に翳したから…」

「それは違います」

 

 どうやら未だドーマからの接触は起きていないらしく自分に責任があると気負う遊戯君に否定を告げる。

 

「人間界と精霊界の境界線を崩した犯人は別に居ます。

 彼等の目的を打ち砕けば事件は無事に収束するでしょう」

 

 そう言うと俺が続きを口にするより先に城之内君が熱り立つ。

 

「一体誰なんだよそいつは!?

 っていうか、オッサンは未来から来たのなら事件が起きる前に犯人をぶっ倒して解決できたんじゃないのかよ?」

「申し訳ありませんがそれは出来ません」

 

 彼らからしたら至極当然の疑問に俺は謝罪する。

 

「確かに私が未然に事件を収集することは不可能ではありませんでした。

 しかしそれは未来を破壊する行為でもあります。

 協力して事に当たり解決するならまだ誤差で済ませられますが、私が未然に解決は出来ません」

「そんなもんやってみなけりゃ「待って」遊戯?」

 

 なおも言い募ろうとする声を遊戯君が制止した。

 

「案内人さん。

 そうまで言うのにはそれだけの理由があるのですよね?」

「ええ。

 未来を守ろうとしているのは私だけではありません。

 『イリアステル』という組織が今も未来を維持するために奔走しているのです」

「イリアステル…」

「彼等は遠い未来から時間の歪みを観測し、その歪みを糺すために私と協調関係を結んでいます。 

 彼等を無為にすることは私には出来ません」

 

 たとえそのために時代の一つを破壊しようと目論んでいても、俺はZONEと決定的には敵対したくないのだ。

 

「随分身勝手な言い分だな」

 

 俺の言葉に直面している事態が自分達の予想を遥かに超えてたスケールの問題である事を僅かづつ理解しだした遊戯君達が言葉を発せなくなる中、その沈黙を破り海馬瀬人の声が響いた。




勝手に魔力を使われてプッツンした執事だけどこいつ、姫様が勝手をせずおねだりしてたら文句言いつつ手持ちの魔力全部差し出してますた。

つまりこいつら喧嘩しつつ単にいちゃついてただけと。
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