迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
デュエルを終え、再び応接室へと戻ったのだがその空気は重かった。
「お疲れ様でした。
城之内君、体の痛みは大丈夫ですか?」
「ああ…問題ねえ…」
啖呵を切った手前泣き言は言えないと意地を張っても意気消沈までは抑えきれないらしく城之内君はそう答えソファーに深く座り思い詰めた顔をしている。
城之内君の事は遊戯君達に後を任せ、俺は二人に尋ねる。
「異なる次元の召喚方法を目にしてみてどうでしたか?」
「認めたくは無いが、エクストラデッキを解禁した貴様に今の俺は及ばないだろう」
「うん。カードパワーが根本的に違い過ぎる」
やはりそうか…。
そうして俺は、フェアに戦いたいという気持ちと同じぐらい彼等からその言葉は聞きたくなかったのだと気付いた。
「…そうですか。
では城之内君は実際に相対してみてどうでしたか?」
「そんなの…訳が分からねえよ…。
モンスターだけじゃなくて、手札も、魔法や罠も、自分の墓地さえ敵に回っちまったみたいで頭が滅茶苦茶だ」
「その通りです」
「え?」
肯定されて不思議がる城之内君に俺は言う。
「私の時代のDMは自身の手札とフィールドだけでなく、相手の墓地や除外ゾーンを含めた全てを利用して戦うのです。
例えるならそうですね…ライフポイントを城壁とし、デッキを城内の備蓄戦力、手札は出陣可能な即時戦力で、墓地や除外ゾーンは遊兵とする『軍略ゲーム』と例えられるでしょうか?」
「そう言われたら今までの案内人さんのタクティクスは凄く納得出来た」
違和感の正体に納得がいったとごちる遊戯君を横に俺はもとよりの本題に入る。
「大神祇官とリースが使うであろうテーマはそんな時代に産まれたカード達で構成されている筈です。
特に大神祇官が用いる可能性があるテーマの一つは【ラビュリンス】と最悪の相性となります」
「貴様が言うそのテーマとは?」
「【
下級モンスターを持たないレベル六以上のドラゴン族で固められたテーマであり、出張性能の高さから故郷では現在でも最上位陣が使用している実績もある強力無比なテーマです」
「ビーステッド…」
「ちょっといいか?
下級モンスターがいないならどうやって召喚するんだよ?
他のモンスターを生贄に使うのか?」
この時代ならではの本田君からの疑問に俺は一枚だけサイドに入れている現物を見せる。
「効果を確認してみてください。
それでこのテーマの怖さが見えてくるはずです」
【深淵の獣ドルイドヴルム】
効果モンスター(制限カード)
星6/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分か相手の墓地の光・闇属性モンスター1体を対象として発動できる
(相手フィールドにモンスターが存在する場合、この効果は相手ターンでも発動できる)。
そのモンスターを除外し、このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、
相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを墓地へ送る。
「自分だけじゃなくて相手の墓地からでもコストを支払えるの…?」
「加えてフェイズ制限も無いだと!?」
「えっと…つまり?」
効果の不穏さに俺が言った意味を理解し戦慄する海馬と遊戯君の横で今一理解できていない城之内君がクエスチョンマークを浮かべる。
「例えば遊戯君が【死者蘇生】でブラック・マジシャンを蘇生しようとした際に発動条件を満たしていれば、ブラック・マジシャンの蘇生を妨害しつつドルイドヴルムは相手のフィールドに召喚されます」
「なんだよそのインチキカードは!?」
実例を挙げてようやく理解した城之内君が叫ぶも、俺は肩を竦めて嘯く。
「これでもビーステッドの中だとまだ優しいぐらいなんですよ?
他のはサーチ能力とかあるのでそれらを止められないと未使用の手札を三枚残して高レベルモンスター一体とドロー加速と妨害のカードを立ててきますから」
「なんでそうなるんだよ…?」
「それが【深淵の獣】というテーマなんです」
そういうテーマだから諦めろと締めくくると遊戯君が俺に尋ねた。
「他に使いそうなカードはあるんですか?」
「可能性が一番高いのは【教導】でしょう。
他は【デスピア】が来る可能性もありますね。
後は、【深淵の獣】以上に【烙印】は無いと思いますが…絶対はありえません」
「それぞれの特徴は?」
「【教導】は儀式を切り札にするテーマで、自分のエクストラデッキを能動的に送れる厄介さがあります」
「自分の切り札を墓地に送るのか?」
「エクストラデッキはフィールドに召喚して戦わせるだけが強みではありません。
これらのように墓地に送ることで利が生まれるカードもあります」
【旧神ヌトス】
融合・効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻2500/守1200
Sモンスター+Xモンスター
自分フィールドの上記のカードを墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。
自分は「旧神ヌトス」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
手札からレベル4モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードが墓地へ送られた場合、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
【共命の翼ガルーラ】
融合・効果モンスター
星6/闇属性/鳥獣族/攻1500/守2400
同じ種族・属性でカード名が異なるモンスター×2
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になる。
(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
自分は1枚ドローする。
「成程。こういったカードを墓地に落としアドバンテージを稼ぎながら相手のエクストラデッキに眠る切り札を削っていくデッキか」
「【教導】の強みはエクストラデッキメタ。
対し【デスピア】は融合を軸にした高速展開に優れたデッキになります」
「【烙印】ってのは?」
「【アルバスの落胤】という下級モンスターとその派生の1種類だけの融合軸のデッキですが、デッキパワーは【ラビュリンス】より上です」
「ラビュリンスより!?」
「【烙印】のエースモンスター【氷剣竜ミラジェイド】は連続使用こそ出来ないものの、【落胤】融合モンスターを墓地に送ることで対象を取らないフリーチェーンの除外効果を持ち、こちらのアクションによってフィールドから離れたエンドフェイズに相手フィールドに【サンダー・ボルト】と同等の全体破壊を叩き込みます」
「ちょっと待て!?
アクションって事はラヴァ・ゴーレムなんかで処理しても発動するのかよ!?」
「今までの対戦時には試す余裕はなかったので確証は言えませんが、おそらくリリース時にも発動する筈です」
「なんだよそれ…無茶苦茶じゃないか!?」
「加えて効果発動に必要な【烙印】融合モンスターは墓地に落ちた際に【烙印】関連の魔法を墓地からリクルートする効果を持ち、アルバスの落胤は相手フィールドのモンスターを素材に融合召喚してきます。
そしてミラジェイドは一ターンで呼び出せる災厄級のモンスターです」
説明を終え、痛いほどの沈黙が訪れる。
「対抗策は…」
「バウンスなら被害はなく無力化出来ます。
或いは効果にチェーンしてその効果を無効にすればどうにか出来ますが、【烙印】にはアルバスを融合素材とするモンスターが場にいる時にモンスター効果を無効にする【鉄獣鳥メルクーリエ】やフィールドに存在するカードをモンスター魔法罠例外無く無効にする【赫ける王の烙印】といった対抗策も控えています。
今でこそさらに強力な融合メインのテーマがいくつか登場したため融合使いのプレイヤーはそちらに移行しましたが、一線級の性能は変わりませんし扱いやすさから融合デッキの練習として握るプレイヤーは多いです」
「今さらに強力なテーマが複数とかサラッと恐ろしい事言わなかったか!?」
「そちらについては今は関係ないですから気にしないでください。
ともあれ、【烙印】はアルバスが大神祇官と敵対関係にあるので握られる心配は他より少ないですが無いとは言い切れません。
悔しいですが、大神祇官がデッキに【アルバスの落胤】を入れていたら私の勝機は一割に届かないでしょう」
更に言うならミラジェイドの上に【真炎竜アルビオン】という更なる怪物まで登場しているのだ。
ダルク達を全員外しサイドのグッドスタッフとラビュリンスだけで固めても勝機は誤差程度にしか上がらないだろう。
「もう一人の方はどうなんだ?
【烙印】と変わらないぐらいヤバイデッキを使うのか?」
空気に耐えかねたのかかなり強引に流れを変えようと城之内君がそう尋ねてくれた。
「リースが使うデッキに関しては使いそうなテーマは思い当たるものの、何を使うのか分からないと言うしかありません」
「構わん。全部挙げてみろ」
「リースは【星遺物】という次元の住人なのでそれ関連の【クローラー】【星杯】【オルフェゴール】【ジャックナイツ】【パラディオン】【トロイメア】辺りが候補に挙がりますが、【パラディオン】と【ジャックナイツ】は大神祇官と同じ理由で排除していいでしょう。
利用しようとした【星杯】組が力を貸すとは思えないのでこちらも排除してもいいでしょう。
なので、手勢であった【トロイメア】とリースが器としている【オルフェゴール・ガラテア】が属する【オルフェゴール】辺りが一番可能性が高いと思います」
「それらも【烙印】と同じぐらいヤバイのか?」
「いえ。両方共【ラビュリンス】ならある程度は優位に運べるぐらいのデッキパワーです。
ですが、リースはおそらく
「「「「「!!??」」」」」
「精霊界の住人にとってデュエルは絶対不可侵の神聖な儀式としての側面もあります。
故にリースは私を貶めるために
ガラテアの劣化具合からして封印は100年200年程度では済まなかっただろう。
千年、下手をすれば万単位の年月の間に煮詰まった憎しみを晴らそうとするリースの事だ。
「憎悪に狂ったリースなら他の者とのデュエルの最中に奇襲をかけて動けなくさせ、デッキを目の前で引き裂くぐらいやりかねないでしょう」