迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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完全に油断していた!!

「手持ちのカードは後これだけか…」

 

 その後、遊戯君達に『オレイカルコスの神』の攻略に必要な『ティマイオス』と会うために双六の友人である【アーサー・ホプキンス】氏を訪ねるよう助言と共に幾つかのカードを預けた。

 結果、サイドから幾つかのカードと3枚あったうららとGは手元から消えデッキからも遊戯君と城之内君に一枚ずつ【憑依覚醒】を預けたのでこちらもデッキに一枚しか残っていない。

 どれも屋敷に戻ればまだストックはあるが、現状わらしうさぎしぐれの三種が主要な手札誘発となっている。

 エクストラデッキのカードに関しては預けようとしたのだが全員から断られた。

 

「これ以上施しは受けん!」

「リンクもエクシーズも付け焼き刃で扱うには難易度が高過ぎるから…」

「この3枚だけでもいっぱいいっぱいだよ!」

 

 と、それぞれかららしいお言葉を貰いそちらは手元に残せた。

 だが…

 

「いや。彼等を信じよう」

 

 三人共俺が憧れた『真のデュエリスト』なのだ。

 それに、ざっとだがデッキ診断と改造のアドバイスもしておいたし、ドーマの手勢ならどうにかなろう。

 加えて大神祇官とリースの目的はあくまで俺。

 遊戯君達とデュエルする理由はほぼ無いはず。

 

「先ずはデッキの改造からだな」

 

 イリアステルとて大神祇官とリースを放置するわけにも行かないだろうし、すまないがエクストラデッキを完全に解禁した殺意で塗り固めねば勝ちようがない。

 

「執事君。ちょっといいかい?」

 

 と、サイドデッキを広げたところでアリアスが俺に話しかけた。

 

「どうしたアリアス?」

「さっきの話を聞いてね、一つ思いついたんだよ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……聞かせてくれ」

 

 アリアスの言葉に俺は作業を中断する。

 何度と無く言われているがアリアスは()()だ。

 普段でこそお茶目な悪戯で済まされる真似しかしないが、友人のためにとシンクロ次元に未曾有の混乱を引き起こしかけた事を俺が解決出来るから問題ないで済ませられる性根のままに振る舞えばどれだけの惨劇となるかわからない。

 アリアスが【ラビュリンス】である限りその悪性を無作為に撒き散らすような真似はしないだろうが、だからこそ悪意に関しては俺たちの中で誰より秀でている。

 そんなアリアスが思いついた悪逆は無視出来ない。

 

「うん。それはね…」

 

 そうして聞かされたその方策は、まさに()()()()を突いたものだった。

 

「どうかな?

 そんな真似をされたら君は耐えられるかい?」

「…キツイなんてもんじゃねえよ」

 

 デュエリストであるからこそ耐えられない、()()()()()()()()()()を口にされ俺はそう漏らす。

 確かにこれなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 同時に()()()()()()()()()通用する掟破りの()()()()だ。

 

「念には念を押してそちらにも対策しておかないと不味いな」

 

 ありえないはありえない。

 何の作品だか忘れてしまったが、その言葉を確りと忘れず可能性があるなら潰すべきだ。

 何故なら俺は()()()ではないのだ。

 

 遊戯君やアテムのような絶対的な運命力。

 海馬瀬人の持つ前に進み続ける鋼の意志。

 城之内君が持つ運命力さえ超越する爆発力。

 

 其れ等を持ち得ないからこそ【MD次元(俺達)】は殺意で以て追い付き追い越そうと()()()()()()()()()

 俺はその研鑽の威を借りている故に対策を怠る事は赦されない。

 

「先にエクストラデッキを弄ろう」

 

 何を仕掛けてこようが驚かないようエクストラデッキを全て抜いた所で「主殿!!」と扉を開け放ちながら【乱破千代丸】こと【S:Pリトルナイト】が部屋に転がり込んできた。

 

「遊戯君達に何かあったのか!?」

 

 念の為遊戯君の護衛を頼んでいた彼女の慌てようにそう問うと、リトルナイトは息を整えながら驚愕の事実を報告した。

 

「大神祇官が遊戯殿と接触しました!

 そのまま二人はデュエルを開始しています!」

「っ!?」

 

 俺ではなく遊戯君を標的とされた事に俺は視界が真っ赤になるほどの怒りを掻き立てられ、メインデッキをデュエルディスクにぶち込むとそのまま部屋を飛び出した。

 

 

〜〜〜〜

 

 

「それじゃあ遊戯。また明日」

「うん。また明日」

 

 別れの言葉を交わし、杏子の背中が見えなくなると遊戯は一人事を歩き出した。

 

「ねぇ、もう一人のボク」

『どうした?』

「これからどうなっちゃうんだろうね?」

『…そうだな』

 

 もう一人の遊戯、『名もなきファラオ』が漸く過去を取り戻せると安堵した矢先にそれを阻むように『オレイカルコスの神』が活動を始め、さらに未来の異世界の住人までもがそれぞれの思惑のままに暗躍をしている。

 その一人、自分達の味方を標榜しデッキという財産を切り崩し身銭である強力なカードまで譲った『迷宮の案内人』は彼らに言った。

 

『『オレイカルコスの神』との戦いで君達はより強くならなければなりません。

 そうでなければ『名もなきファラオ』が記憶を取り戻すことを良しとしない、『名もなきファラオ』の()()()()との【究極の闇のゲーム】を攻略する事は叶いません』

 

 実際に交わしたデュエルを通じて彼の自分達に向ける強い敬意を直に感じた遊戯は、その想いが偽りとは到底思えない。

 しかし、だからこそ不安になる。

 

「『オレイカルコスの神』を超える【究極の闇のゲーム】…」

 

 【千年アイテム】を持つ者が手繰る【闇のゲーム】。

 敗者に恐ろしい末路を齎すそのゲームの【究極】とはなんなのか?

 

『…フッ、流石だぜ相棒』

 

 そんな遊戯の姿に『名もなきファラオ』は頼もしそうに笑う。

 

「え?」

『目の前に迫る『オレイカルコスの神』の脅威よりその先の心配が出来るなんて頼もしいぜ』

「あ!? そ、そういうわけじゃないんだよ『もう一人のボク』!」

 

 案内人はこうとも言っていた。

 

『私が介入しなかった君達は『オレイカルコスの神』を退ける事に成功しました。

 ですが、その道程は容易ではなく紙一重の敗北との綱引きに辛うじて勝ち残る綱渡りの戦いばかりでした。

 これからの戦いは僅かな綻び1つさえ君たちから希望を奪う厳しい戦いです。

 ですから、決して必ず勝てるなんて楽観しないでください。

 その慢心は、貴方達を敗北という底無しの奈落に突き落とすでしょう』 

 

 そんな警告を受けてなお、『オレイカルコスの神』の()()()に考えを向けられる遊戯に頼もしさを感じる『名もなきファラオ』と、油断を指摘されたと思い慌てる遊戯。

 そんな穏やかなやり取りは、しかし、もうまもなく自宅に辿り着く交差点に差し掛かった所で中断させられた。

 

「っ!?」

 

 横断歩道の向こうに仮面で顔を隠した『怪人』が佇んでいた。

 

「貴方は!?」

『お初にお目に掛かります武藤遊戯殿。

 私を存じて居られるようですが、改めて自己紹介させて頂きます。

 私は【教導の大神祇官】。この度は貴方達に『お願い』があって、こうしてご挨拶に参りました』

『下がっていてくれ相棒!』

 

 咄嗟に入れ替わり遊戯の代わりに『名もなきファラオ』は対峙すると同時にデュエルディスクを起動した。

 

「頼みと言ったな?

 俺達に何の用があるというんだ?」

『おおっ!? お聞き入れくださるのですね!これは喜ばしい!

 私の願いはドラグマへの帰還。

 その為には彼の人が持つ『神器』が必要なのです』

「『神器』? 何のことだか分からないな」

 

 初めて出てきた名に本心から首を傾げる『名もなきファラオ』に大神祇官は滔々と嘯く。

 

「彼の『神器』は文字通り神の器。

 砕かれし創世神と破壊神の遺されし器を精霊の管理者が世界を繋ぐ楔として作り直した()()()()()()()()()を生み出す力を持つ『鍵』なのです!!」

「鍵?」

『しかし彼の人はその事実を知らない!

 なんと悲しきかな!神の頂へと上がる権利を預かりながらその意味を知らず、その権利を行使することも無く、『神器』の力を精霊と戯れることにしか使わず、剰えその無垢なる神の器を闇の呪で汚染した上で呪われし城の悪魔に献上しようというのです!!

 ああ、なんと悲しいことでしょうか!』

 

 捲し立てる大神祇官の言葉は語りかけているようで只々独り言を吐き出しているに過ぎないと『名もなきファラオ』は気付いた。

 しかし朧げながらこれ迄の言い様で彼の人が案内人を指しており、彼が精霊とコミュニケーションを図る為に持つ何かしらを大神祇官は求めている事を理解した。

 

「だからこそ、私はその事実を正しく彼に理解して頂き『神器』を正しく神の座へと至らしめて欲しいのです!

 どうか私の願いを聞き入れてください」

 

 まるで神の不在を嘆く御使いのように大仰に嘯く大神祇官に、『名もなきファラオ』は尋ねた。

 

「さっきから聞いていたが、言っていることが滅茶苦茶だって気づいているのか?

 それにだ、アンタの仲間が案内人に大怪我をさせた後も助けようとしなかったらしいじゃないか。

 どうして仲間を止めなかったんだ?」

「それは致し方無かったのです。

 リースの憎しみは救うにはあまりにも哀れなのです。

 私には止めようがありません。

 ですので、せめて『神器』だけでも譲って頂き、彼にしか払えないリースの憎しみは彼に受け止めてもらおうと」

「お前…」

 

 どれだけ丁寧な言葉を使おうと、『神器』が手に入るなら勝手に殺し合えと気にもしていない事が微塵も隠せていない。

 その様子に案内人が彼奴らを『救う気にならない』と言った意味を正しく理解した。

 

「お前の要求を聞く気はない!」

「それは困ります。

 私はドラグマに帰らねばならないのです。

 そうですね。もっと分かり合うために交流を深めましょう」

 

 そう言うと大神祇官は宛らドラゴンの一部を切り取ったような禍々しいデュエルディスクを腕に取り付ける。

 

「私達が分かり合うための最適なコミュニケーション。

 デュエルを通じて分かりあえば、きっと我々は友人になれる」

「……」

 

 あくまで穏やかに、しかしどこまでも自分勝手な言い分を並び立てる大神祇官に、もはや語る口は必要ないとデッキトップを五枚引き込む。

 

「先攻はお譲りします。

 さあ、愉しみましょう!」

 

 




次回、遊戯対大神祇官
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