迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
「手札から【ミラクル・フュージョン】を発動!!
墓地の【E・HEROネオス】と【ユベル】を除外して【E・HEROネオス・クルーガー】を融合召喚!!」
あ、終わった。
対峙する十代のフィールドに頭部後方より身の丈程もある翼を生やし黒い鎧を纏うネオスが現れる。
「来い!! 俺の魂の半身を宿すHERO!!【E・HEROネオス・クルーガー】!!」
【E・HEROネオス・クルーガー】
融合・効果モンスター
星9/光属性/魔法使い族/攻3000/守2500
「E・HERO ネオス」+「ユベル」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算前に発動できる。
その相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
(2):表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合、または戦闘で破壊された場合に発動できる。
手札・デッキから「ネオス・ワイズマン」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
「チェーンはありません」
俺は頑張った。
壊獣アルファカグヤコンボでHEROの陣形を切り崩し、バグースカやリダンで妨害を重ね不意討ちしてきた宝玉獣相手に必死に時間を稼ぎ、リンクを含む霊使い達を全力で運用して過労死ネオスを自陣に引き込む事で抑え込み、そうして足掻き続けて最後の最後でマスカレーナ経由アストラムを呼び出すことに成功してハネクリボーも薙ぎ払い十代のライフを50にまで削り落とした。
うん。削りきれなかった時点で運命力が足りなかった事は何と無く察してたけどさ、まさかバブルマン先輩用に使わないよう温存していたうららを潰したのが、十代が最初に伏せてから一度も発動の兆候どころか視線さえ寄越さなかった墓穴の指名者だなんて想像も出来るか!!??
というかHEROにハネクリにユベルに宝玉獣まで入れててこのタイミングまで墓穴の指名者を仕込んでるとかどんな運命力だよコンチクショウ!!
「ネオス・クルーガーでアストラムに攻撃!!
効果で戦闘発生前にアストラムの攻撃力3000ポイント分のダメージをプレイヤーに与えるぜ!!」
これが主人公って奴かぁと思いつつ、ネオス・クルーガーが放つ黒い波動にライフを消し飛ばされる。
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
懐かしい決め台詞を生で聞けたことが何よりの報酬だなと、そう思いながら俺と十代のデュエルは俺の敗北を以て決着を迎えた。
〜〜〜〜
「いやぁ、本当に楽しいデュエルだった〜!」
喜びを全身で表す十代に対して俺も疲労困憊になりながらも非常に充足感を感じていた。
実際、初期ライフは4000スタートだったがスタート8000だったっけ?と勘違いするぐらいタクティクスが飛び交う熱いデュエルだった。
途中でアニメのBGMが脳内で勝手に再生されるぐらいと言えば理解出来るだろうか。
「なあなあ執事さん。もう一回やろうぜ!」
「気持ちは分かるが、流石に連戦はキツイから勘弁してくれ。
それに、ちょっとやらなきゃならない事があるからそちらを優先したいんだ」
既に空は大分色を変え始めている。
これ以上は姫様への土産探しに支障をきたすだろう。
「そっか…それなら仕方ないな。
いつかまたやろうぜ!!」
「ああ。今度は違うデッキで相手をさせてもらうよ」
【霊使い】も回していて楽しいテーマだが、やっぱりドリアードデッキを回したいという気持ちが強い。
帰ったら暫くはドリアードデッキをメインに変えてガン回ししよう。
『そんな事言ってもずっと使ってくれなかった事は許してあげませんからね!』
なんかツンデレキャラっぽい幻聴を聞いた気がするが俺にカードの精霊が憑いているはずも無いし気の所為だろう。
「じゃあ、またな!!」
元気に手を振り去っていく十代を見送り、その姿が人混みに消えたのを見届けてから俺も踵を返す。
「さて、土産は何にしたものか?」
十代に相談しておけ?
いや、無いわ。
十代はそういうとこ無頓着だし、ユベルは『十代がくれるならその辺の石ころだってどんな宝石より美しいよ』とか言うだろう。
ネオスも含めてほぼ男性だし、ワンチャンでバーストレディとかいう時点で相談しようとは思わない。
「……なんか強い罠とか?」
『ダルマ・カルマ』とか『天狼雪獄』みたいなMDでも猛威を奮っている強カードあげれば喜ぶは喜ぶだろうが、なんか違うよな?
「無難に珍しい菓子かな?」
と言ったが、先にも言った通りアリアスが用意したほうが美味しい物を用意するだろうから微妙過ぎる。
あーでもないこーでもないと頭の中で思案しつつ色々見て回るが、やはり納得行く品は見付からない。
「流石に不味いか…?」
1時間近く歩き回ってろくな成果もない状況に焦りを覚え始めた頃、ふと視界に見覚えのあるモンスターがカウンターで店番をしているのに気付いた。
「たしか…『六花精ボタン』だったか?」
強力なエクシーズモンスターをエースとする【六花精】テーマのモンスターで、強力なサーチ効果で初動の一枚だったはず。
「行ってみるか」
なんとなく興味を惹かれた俺は意見をもらえるだけでもと思いその店に足を踏み入れた。
〜〜〜〜
そして帰還用の魔法を書かれたスクロールを使い『白銀の城ラビリンス』へと戻ってきた俺を待っていたのは…
「随分派手にやったようですね?」
いつにも増して破壊されたエントランスと急ピッチで修復作業を進めるアリアンナ達の姿。
「お戻りになられたようですね」
メイド服にヘルメットと違和感全開のアリアンナは俺に気づいて声を掛ける。
「ええ。ですが、この惨状は…?」
まるで壊獣が暴れたかのような様子をアリアンナが説明する。
「『騎士』に「なにか嫌なことでもあった?」と煽られた姫様が癇癪を起こされて、執事のデッキケースから『アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を無理矢理呼び出されました」
何してくれてやがりますかアホ姫!?
過剰火力を恐れて外してたから城にあるのはともかくなんで俺のデッキケースを持ってたんですかねぇ?
「その後、雪辱を果たすためか非常に凶暴化したかの竜によりこのような状態になっております」
「……そうですか」
そういえば前にしてやられた際にかなりヘコんでたもんな。
「その後は?」
「『騎士』に退けられて情けない鳴き声を上げながら消えました。
カードの方は無事ですのでそこは御安心を」
アークリベリオンぇ…
「分かりました。
作業を中断させてすみません。
あと、こちらは土産になります」
ついでというのも何だが、二度手間になってもと思い土産を渡しておく。
「金平糖ですか?」
「ええ。六花精の里で採れる花の蜜から抽出した砂糖で作られているそうですよ」
店員のボタンに女性への土産にピッタリだと勧められて購入したものだ。
手の平に収まるサイズの小瓶一個で店売りの同じサイズの金平糖の十倍の値段がしたが、話通りなら希少価値的にも妥当なのだろう。
「花の良い香りが着いていますね。
大切に食べさせていただきます」
瓶の蓋に顔を近づけて香りを嗅いだアリアンナが珍しく表情を緩めて礼を言った。
よし! 信じてよかった。
「それは何よりです。
姫様は自室に?」
「はい。拗て引き籠もっています」
まったくもう。
「ありがとうございます」
アリアンナと別れ途中でアリアーヌとアリアスとも同様のやり取りを交わした後、一度自室に戻りいつもの執事服に着替えてから姫様の部屋の前に向かう。
「姫様。ただいま戻らせていただきました。
中に入っても宜しいでしょうか?」
ノックをしてから呼び掛けるが反応は無い。
無視しているのか寝てるのか判別がつかん。
「お答えが無いのでこのまま入らせて頂きますよ?」
『……』
やはり反応はない。
「失礼します」
不在であったりあられもない姿であれば扉に開かないように頼んでいるのでラッキースケベ的なトラブルは心配しなくていいので安心して扉を開いて中に入る。。
中に入るとベッドの上にシーツに包まるミノムシが居た。
「はしたないですよ姫様?」
「……ぷぃっ」
そう窘めると姫様はシーツの隙間から顔を覗かせるも頬を膨らませて再び中に籠もってしまった。
自分でぷぃっって言うとかかわよかよ!!
…っとそれよりやる事やる事。
「そう拗ねないで下さい姫様。
可愛らしいお顔が台無しですよ?」
「つーん」
だからなんで一々口に出してくるかなぁこの姫様は?
「ふぅむ。
お土産をお持ちしたのですが、この様な状態では一度持ち帰ったほうが良さそう「駄目ぇ!!」」
押して駄目ならの要領でそう口にしてみると効果覿面であった。
「お土産もって帰ったら絶対に許さないからね!!」
よっぽど感情が昂ぶっているようで若干の幼児退行の気配を見せながらそう怒る姫様。
「それは怖いですね。
では、お受け取りいただけますか?」
「ええ! 貴方の誠意を私に見せてみなさい!」
そう言いながら両手を突き出す姫様にアリアンナ達にも渡した金平糖の瓶に加えて丁寧にラッピングされた箱を乗せて差し上げる。
「開けていいわよね?」
「勿論です」
答えを聞くまでもなくラッピングを剥がして箱を開梱する。
「…これは、『白銀の城ラビリンス』?」
中に入っていたのは精巧に作られたミニチュアサイズのラビリンスが中に入ったスノードーム。
一緒に姫様達も城の周りに配している豪華仕様である。
これも同じ店で買った品である。
あの店ではオーダーメイドのスノードームを作るサービスもやっており、それを利用して用意したのだ。
しかもこのスノードーム、魔力で降雪をオン・オフ出来る中々ハイテクな一品だったりする。
「……返す」
と、姫様は明らかに機嫌を悪くした様子で俺にスノードームを返してしまった。
……駄目だったか。
「申し訳ありません姫様。
次の機会には今度こそ「違うわ」…?」
やはり自分のセンスでは駄目だったかと残念に思いながら非礼を詫びていると姫様はそうではないと遮った。
「プレゼントはとっても嬉しかったわ。
だけど、その中に
デザインの注文の際に自分を含めるべきではないなと自分の人形を省いたことが気に召さなかったらしい。
「貴方も私の
だからそれはいらないの!!」
……全く、困った人だ。
「申し訳ありませんでした姫様。
私は今、心から反省しています。
だからどうか泣くのをお止めになっていただけないでしょうか?」
両の瞳から大粒の涙を流して泣きじゃくる姫様をあやしながら、本当に自分は果報者なのだなと改めて思い知る。
「執事は私の大事な家族なんだからどこにも行っちゃやだぁ…」
しがみついて泣きじゃくる姫様の背を優しく叩きながら俺は約束する。
「大丈夫ですよ姫様。
私は一生貴女の傍から離れたりしませんよ。
だからほら、目が溶けてしまう前に泣き止んで下さい」
姫様が泣き疲れて眠ってしまうまで俺はこのわがままでこわがりなおひめさまを優しくあやし続けた。
その後、スノードームは執事の持ち物として預かることになり、改めて全員揃ったものを贈ることを約束しました。
次回は姫様もいつも通りです