迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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 久方ぶりに現代カードが回るよ。
 そう簡単には回させんけど。


神を怒らせたらマズイと再確認した。

「リース!!??」

「随分探したわよ?

 土竜みたいに地面の下に潜っていたなんていい趣味しているじゃない?」

 

 くつくつと嘲りに顔を歪めながら睥睨するリースをミクトランテクートリは不快げに見遣る。

 

「鼻が曲がりそうなほど濁り淀んだ魂だ。

 巫女として取り込まずあんなふうになるまで放置しているなんて【地縛神】共は怠慢が過ぎるぞ?」

「どういう意味だ?」

 

 地縛神は人類に仇なす邪神じゃないのか? 

 

「地縛神は魂を喰らい浄化する事で星の循環を担う浄化装置だよ。

 と言っても彼等が復活して人類を喰らい尽くしたらそうなるだけで、定命を定められた人類にとっては間違いなく人類に仇なす邪神であり終末装置だから完全に滅ぼすのは無理だけど全力で抵抗して打ち倒して問題ないよ」

「因みに失敗したら?」

「ケツアルコアトルが再生させるよ。

 現に3回地縛神に人類滅ぼされてその度に再生させたし」

「えぇ…?」

 

 いやさ、創世が容易な神のスケールで見れば人類の興亡なんてものがシムシティ感覚なのは致し方ないけど、それをサラリと言わんで欲しいんですが?

 というか、ZONEを絶望させたゼロ・リバースってまさか…。

 

「実態を見てないから確定は言わないけど、人類滅亡の規模的に地縛神じゃなくてディーヴァ達が末世と判断してユガを回した可能性はあるね」

「頼むから思考を読まないでくれ」

 

 というかエジプトとインカとマヤ・アステカだけじゃなくてヒンドゥーまで現役なのかよ遊戯王ワールドの神話世界!!??

 【極星】は北欧だからそっちも在るとしたら【時械神】とかも含めて精霊界が在るからって高橋ワールドって女◯転生並に神話の存在が力持ちすぎじゃないか?

 

「私を前に随分な態度ね?

 神が守ってくれるって思い上がっているのかしら?」

 

 思考がズレ始めていたところで苛立たしげにリースがそう吐き捨てる。

 

「悪い悪い。

 溝泥に腐った女より推しの救済に繋がるかもしれない話のほうが大事なんでな」

「減らず口だけは相変わらずね」

 

 実のところ精霊達を取り上げられている今の俺に抵抗らしい抵抗は叶わず、出来るとすれば殺される前に煽れるだけ煽って苛つかせる事ぐらいだ。

 

「まあいいわ。

 貴方の首を落として『神器』を手に入れれば全てカタが着くのだからさっさと終わらせてしまいましょう」

 

 そう言い鎌の刃先を俺に向ける。

 と、ミクトランテクートリが間に割って入った。

 

「流石にそれは見過ごせないな。

 ここは死者の国。

 殺しは認められないね」

「あらそう?

 なら、それを咎める者がいなくなれば問題ないわね?」

 

 言うと同時にミクトランテクートリへと獲物を振りかぶるリースが、ピタリと一時停止したようにその動きを止めた。

 

「なっ!?」

「吃驚したなぁ。

 まさか魂を剥き出しにしたまま権能を預かる支配者に牙を剥く無知なる者がまだ居るなんて」

 

 そう言いながらミクトランテクートリの肉体がボロボロと崩れ始め、精霊達が姿を消しその身体が神話に記される異形のモノへと変じていく。

 

「あ、ああ…」

『お前は二つの罪を犯した。

 一つは自らの骨を捨て魂を腐らせながら我が領域へと無断で侵入した事』

 

 爪が鋭く伸び、胴は丸々と膨らみ手足が細く腕と胴の間に皮膜を張った蝙蝠の身体。

 しかしその頭は赤い血潮が滴る人の頭蓋骨であり、幾つもの眼球が数珠繋ぎに神経で結ばれ首飾りとしてその首に下げられた本当的な恐怖を掻き抱かせる恐ろしい魔神へと変貌した。

 

『そしてもう一つ。

 我が領域に住まう者たちを恐怖させた事。

 この罪を贖う意志が在るならば、今一度だけ貴様に機会を与えよう』

「贖罪ですって…?

 っ! …私に何をしろというのかしら?」

 

 仮の姿を脱ぎ捨て冥府神としての姿を露わにしたミクトランテクートリにリースは慄きながらも怒りに顔を歪め、しかし勝ち目が無いとすぐに判断したのかミクトランテクートリの言葉の真意を問う。

 

『貴様にはシャーマンとの決闘を申し渡す。

 これに勝利したならば此度の狼藉を見逃し地上に帰ることを許そう。

 だが、受けぬならば今すぐ貴様の殻を打ち壊しその腐った魂を消滅させる』

「なっ!?」

 

 そのミクトランテクートリの言葉に驚く俺とは対照的にリースは歪んだ笑みを浮かべた。

 

「いいわ。

 受けましょう」

『よし。確かに契約は結ばれた』

 

 そう言うとミクトランテクートリは再び青年の姿へと変わり俺に告げる。

 

「君とのデュエルは一旦お預けだ。

 ボクとのデュエルの前のデッキ確認だと思って全力で立ち向かうといい」

「待ってくれ!

 奴とやるならせめて姫様を…」

「言ったはずだ。この一戦は『試練』の内に入ると。

 それと、彼女が【ライゼオル】でも使わない限りそのデッキが何も出来ないなんてことはないから安心してくれ」

「【ライゼオル】?」

 

 言い方からして相当ヤバいデッキなのは察するが、しかしどれだけ強かろうと回し方も分からないデッキでどうなると!?

 

「知らないのかい?

 そうだねぇ、【ライゼオル】を簡単に言うなら正面対決するなら制限解除された【イシズティアラメンツ】を持ち出してくる必要まであるデッキかな?」

「はぁ!?」

 

 制限を取っ払われた最強融合テーマが必要なデッキってどんな地獄だよ!?

 

「さあ行き給えよ」

 

 そう俺の背を押して無理矢理既にデュエルディスクを構えるリースと相対させる。

 

「おかしな事になったもんだ」

「それはこちらの台詞よ。

 まあいいわ。

 私の可愛い小鳥達で嬲り殺しにしてあげるわ」

 

 嗜虐的な笑みを浮かべるリースに俺も腹を括りデュエルディスクを展開する。

 

「「デュエル!!」」

 

 ディスクに表示された『後攻』の文字に緊張と安堵が同時に走る。

 【ふわんだりぃず】の最も嫌なところは【ふわんだりぃずと未知の風】によってこちらのフィールドを食い荒らしながら展開してくる事だ。

 しかもこれの対象はモンスター以外も可能であり、回避にはリリース耐性ではなく魔法耐性が必要であるというややこしい裁定が成されていること。

 これを【ふわんだりぃずと謎の地図】の効果でこちらのターンに叩き込んで来る上にそうやって喚び出すのが大抵自他を選んでデッキバウンスが出来るロックとリクルートを使い分け可能な【烈風帝ライザー】なのだからやってられない。

 後攻故に展開したフィールドを未知の風で食い荒らされずに済んだと安堵する気持ちと、抑止力として最強に数えられる【増殖するG】があってもなんの役にも立たないことを焦るべきか…。

 こうなればもうミクトランテクートリの言葉を信じるより他にない。

 

(……って、え?

 なんだこのカード達は!?)

 

【メメント・エンウィッチ】

【メメント・ウラモン】

【マルチャミー・プルリア】

【メメント・ボーン・バック】

【アーティファクト-ロンギヌス】

 

 覚悟はしていたが、局所的妨害札のロンギヌス以外のカードは完全に未知のカードであり、効果はもとより切るべきタイミングがいつなのかさえろくに分からないのだ。

 

(とにかくテキストを読み込め!

 一語一句を吟味する余裕はない!

 全部を頭に叩き込んで類似する効果を記憶から引きずり出すんだ!)

 

 苦い顔が隠せない俺に厭らしい笑みをリースは浮かべながら手札を一枚抜く。

 

「私のターン。

 メインフェイズ。

 私は手札から【封印の黄金櫃】を発動するわ」

 

【封印の黄金櫃】

通常魔法(準制限カード)

(1):デッキからカード1枚を選んで除外する。

このカードの発動後2回目の自分スタンバイフェイズに、

この効果で除外されているカードを手札に加える。

 

 除外テーマのサーチカードの宣言に俺は反射的に宣言していた。

 

「チェーン発動!!黄金櫃の発動宣言に【アーティファクト-ロンギヌス】をリリースして効果を発動する!」

 

【アーティファクト-ロンギヌス】

効果モンスター

星5/光属性/天使族/攻1700/守2300

(1):このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠ゾーンにセットできる。

(2):魔法&罠ゾーンにセットされたこのカードが相手ターンに破壊され墓地へ送られた場合に発動する。

このカードを特殊召喚する。

(3):相手ターンに、手札・フィールドのこのカードをリリースして発動できる。

このターン、お互いにカードを除外できない。

 

「除外封じですって!!??

 くっ!? …その発動にチェーンは無いわ」

 

 心底忌々しそうにそう嘯くリースに対し、俺は思惑を封じたことに嘲りを向ける余裕はなかった。

 

(エンウィッチはサーチと破壊効果。

 ウラモンは墓地リクルート及び自己蘇生。

 それとシーホースの効果にも破壊効果があったから【メメント】は【スクラップ】や【破戒】のような展開方法に破壊を織り交ぜて墓地肥やしを加速させる事が鍵となるテーマでほぼ確定!

 それとボーン・バックのテキストから推定エースカードのメメントラル・テクトリカなるカードは何らかの召喚条件が課されていることは間違いない)

 

「だけど無駄よ!

 除外を封じたところで渡り鳥達の飛翔は止まりはしないわ!

 手札から【ふわんだりぃず×ろびーな】を召喚するわ!」

 

【ふわんだりぃず×ろびーな】

効果モンスター

星1/水属性/鳥獣族/攻 600/守1200

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、

この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードが召喚に成功した場合に発動できる。

デッキからレベル4以下の鳥獣族モンスター1体を手札に加える。

その後、鳥獣族モンスター1体を召喚できる。

(2):表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

(3):このカードが除外されている状態で、

自分フィールドに鳥獣族モンスターが召喚された場合に発動できる。

このカードを手札に加える。

 

 フィールドに三羽のキョウアジサシに似た三羽の小鳥達に寄り添う様に一羽のコマドリがフィールドに羽ばたき舞い降りる。

 

 

「召喚時効果発動!

 デッキから【ふわんだりぃず×いぐるん】を加えて」

 「待て!効果にチェーンして手札から【マルチャミー・プルリア】を捨てて効果を発動!」

 

【マルチャミー・プルリア】

効果モンスター

星4/水属性/水族/攻 100/守 600

このカードの効果を発動するターン、

自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない。

(1):自分・相手ターンに、自分フィールドにカードが存在しない場合、

このカードを手札から捨てて発動できる。

このターン中、以下の効果を適用する。

●相手が手札からモンスターを召喚・特殊召喚する度に、自分は1枚ドローする。

●エンドフェイズに、自分の手札が相手フィールドのカードの数+6枚より多い場合、

その差の数だけ自分の手札をランダムにデッキに戻す。

 

「…通すわ。

 効果は【エフェクト・ヴェーラー】の近類かしら?」

「違う。こいつは手札からの召喚時に追加ドローを行わせる【増殖するG】の廉価品だ。

 デッキ及び墓地からの特殊召喚には効果が対応しない狭い範囲のみだが増Gが対応出来ない()()()()()()()()()()特異性を有している」

「通常召喚に…っっっ!!??」

 

 何を意味するのか理解したリースの顔は実に愉快極まりないものに見えた。

 

「さあ好きなだけ鳥達を呼んで来いよリース。

 代わりに手札をたんまり潤させてもらうからよ!!」

「……くっ!?

 ろびーなの効果で【ふわんだりぃず×いぐるん】を手札に加えて効果で召喚するわ」

 

【ふわんだりぃず×いぐるん】

効果モンスター

星1/風属性/鳥獣族/攻 800/守1000

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、

この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードが召喚に成功した場合に発動できる。

デッキからレベル7以上の鳥獣族モンスター1体を手札に加える。

その後、鳥獣族モンスター1体を召喚できる。

(2):表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

(3):このカードが除外されている状態で、

自分フィールドに鳥獣族モンスターが召喚された場合に発動できる。

このカードを手札に加える。

 

 胸元が赤い小鳥がピィピィと鳴くと一羽の鷹がフィールドへと羽ばたきながら着地する。

 

「プルリアの効果で一枚ドロー」

 

 俺の横を浮遊している愛らしさを感じさせるクラゲのモンスターが触手を切り離し、その触手が再生する間に切り離した部位がカードとなって手札を潤す。

 

「いぐるんの効果を発動!

 デッキから【ふわんだりぃず×えんぺん】を手札に加え2体をリリースして【ふわんだりぃず×えんぺん】をアドバンス召喚!」

 

【ふわんだりぃず×えんぺん】

効果モンスター

星10/風属性/鳥獣族/攻2700/守1000

(1):このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「ふわんだりぃず」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

その後、モンスター1体を召喚できる。

(2):アドバンス召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手フィールドの特殊召喚された攻撃表示モンスターは効果を発動できない。

(3):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に1度、手札を1枚除外して発動できる。

その相手モンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで半分になる。

 

 鷹が甲高く嘶き2体が空へと飛翔するとぎゃあぎゃあと喧しく鳴く一羽の巨躯のペンギンが腹でスライディングしながら現れた。

 

「えんぺんの効果で【ふわんだりぃずと未知の風】を手札に加えるわ」

 

 お前さえいなければ俺は【ふわんだりぃず】にトラウマを植え付けられずに済んだんだよ!!!!

 

「っ!?

 召喚効果は破棄して【ふわんだりぃずと未知の風】を発動するわ」

 

【ふわんだりぃずと未知の風】

永続魔法

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

自分がモンスター2体のリリースを必要とするアドバンス召喚をする場合、

モンスター2体をリリースせずに自分フィールドのモンスター1体と

相手フィールドのカード1枚を墓地へ送ってアドバンス召喚できる。

(2):自分メインフェイズに発動できる。

手札の鳥獣族モンスターを2体まで相手に見せ、好きな順番でデッキの一番下に戻す。

その後、自分は戻した数だけデッキからドローする。

 

 何やら異様に警戒心を高めながらリースは未知の風を発動する。

 ……不味いな。

 リースが手出ししたのは実質二枚。

 その上でえんぺんのサーチが【ふわんだりぃず】を最大稼働させる【ふわんだりぃずと謎の地図】ではなく未知の風ということは手札三枚の内一枚は謎の地図で間違いないだろう。

 対し俺の引いてきた二枚は【手札抹殺】と【メメント・フュージョン】。

 引き自体は良いのだろうが、妨害札が無いのが大分厳しい。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 謎の地図を発動しない?

 なのに謎の地図ではなく未知の風をサーチしたのに効果も使わない?

 考えられるのは二つ。

 伏せカードが【メタバース】でありこちらの展開に合わせて謎の地図を配する事を狙っている。

 或いは単純に【ふわんだりぃず】を使いこなせておらず強みを理解していない。

 流石に後者は無いだろうから伏せカードは【メタバース】で間違い無いだろう。

 これ以上悩んでも仕方ない。

 バック破壊カードが引けていないのが懸念だが、ともあれ今は逝くしか無い。

 

「俺のターン。ドローフェイズ。ドロー。

 スタンバイフェイズ。メインフェイズ」

 

 引いてきたのは【冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ】。




ミクトランテクートリが示唆したゼロ・リバースの真実はあくまで可能性であり今作での真実ではありません。

後、リースがビビったのは執事が未知の風に全ギレして殺気ダダ漏れになったからドン引きしたのもあります。

次回は捲ります。
勝つまで行けるかな?

余談ですが神様視点だと執事はギリシャ勢のくせにエレシュキガルに粉かける頭ギリシャ扱いです。
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