迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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さあ、反撃を始めるぞ。

 

 【オレイカルコスの結界】による裁きが始まろうとする中、不満そうなミクトランテクートリの声が響く。

 

「僕の領域を開いたことは気に入らないが蛇の穴は敗者のみを喰らう。

 その公平さだけは認めているよ。

 それに、こんなに腐りきった魂の処理を考えると今回ばかりは穴を開けたことも黙認しよう」

 

 緑の禍々しい輝きが強くなりリースが悲鳴を上げる。

 

「嫌よ!! あの暗闇に戻るのはもう嫌!!

 お願い!! もう二度と貴方に歯向かわないから助けて!!」

 

 見苦しい命乞いを口にするリースに、しかし俺は慈悲を与える気は微塵も起こらない。

 

「アストラム達が赦したら解放してやるからとりあえず封印されとけ」

「嫌ああああああ!!」

 

 それが事実上の死刑宣告だと分かっているリースが泣き叫びながらカードに封印された。

 

「まあ、期待はするなよ」

 

 リースが封印されたカードを拾っていると、抜け殻となった筈のガラテアがピクリと動きそのままぎこちない動きで立ち上がった。

 

「お久しぶりです『元』マスター。

 私の失態の尻拭いをして頂き感謝します。

 そして貴方に苦痛を与えた事を謝罪します」

「いや。君の苦労を思えば構わないよ。

 それに悪いのは全部コイツ(リース)だ。君が気負う必要はない」

 

 リースの所業を全て見ていたらしく表情はあまり変わらずとも悲しみを浮かべているガラテアを労う。

 

「それはそれとしてカード(本体)は無事なのか?」

「はい。兄様達に保存していただいたので此方に」

 

 そう言うと胸にスリットが刻まれそこから新品同然の状態で【オルフェゴール・ガラテア】のカードが姿を現した。

 

「兄様ってディンギルスか? というか『達』?」

「ディンギルス兄様とニンギルス兄様のお二人です。

 二人から是非にと頼まれたので兄様と呼ばせていただいています」

 

 ニンギルスぇ…。

 相変わらずのシスコンぶりについ苦笑が溢れてしまう。

 

「ともあれ、少し休むか?

 そんな状態でニンギルス達に見付かったら俺が殴られそうだし」

「お願いします。

 兄様達は多分、次元の海で私を探しているはずです」

「分かった。

 どうにか探してみる」

 

 放っといても向こうから来そうな気もするが、その時はその時だろう。

 カードを受け取るとガラテアの身体がデュエルエナジーへと解けカードに吸い込まれていった。

 ガラテアのカードをサイドデッキにしまい、リースが封印されたカードはとりあえず残されたパラディウス社製デュエルディスクから他のカードを抜き取り除外ゾーンに【オレイカルコスの結界】と共に突っ込んでおく。

 

「さて、次はミクトランテクートリとですよね?」

「いや。その必要は無いよ」

 

 楽しそうに笑いながらミクトランテクートリはそう嘯いた。

 

「君は僕を、僕の世界に居を選んだ精霊達を十分楽しませた。

 その功績を認め、君のカード(家族)を返還し地上に帰ることを許そう」

 

 そう言ってカードを収めた宝石で作られた箱を俺に渡した。

 

「ありがとう慈悲深き冥府神」

 

 色々思わなくもないが、素直に感謝し頭を下げ箱を受け取る。

 

「それで、僕達(メメント)は強かったかい?」

「そうですね」

 

 実際に回した感想を問われ、俺は思った事を口にする。

 

()()()()()()()()()()十分に強くて面白いと思いましたよ」

「……へぇ?」

 

 俺の言葉にミクトランテクートリは笑みを深める。

 

「根拠はあるかい?」

「理由は二つ。

 一つは妨害札が1枚も無いこと。

 【メメント・クレニアム・バースト】は妨害札と言えなくもないが、永続罠かつ魔法罠に対処が出来ずしかも【メメントラル・テクトリカ】が居る前提というのはあまりにも()()()()()()()()()()()()()

 そして【メメント・フュージョン】。

 アクセス先が【メメント・ツイン・ドラゴン】一体だけならテーマ内融合魔法なんて作る理由には弱過ぎる」

 

 それこそ【融合】で十分だし、【雷龍融合】という除外リクルート可能な使い易いカードもある。

 正直、【メメント】の評価はこの時点では普段回すハイランダー寄りの【ラビュリンス】と同等ぐらいだろう。

 

「アハハハ!!

 やっぱり君は凄いね?

 確かに僕が【メメント】として新たに生まれ変わらせたカードはまだあるよ。

 それと、君の推察通り僕の分霊にはまだ解放させていない力を用意しておいた。

 だけど思ったよりパワーが出過ぎたから無法な理不尽にならないような調整のために今回は控えて貰ったんだ」

 

 そう笑いながらミクトランテクートリは嘯く。

 

「もし君が良ければその子達を外に連れて行ってくれないかい?

 勿論常に使えなんて言わないよ。

 時折でいいからデュエルで使って欲しいんだ」

「いいのか?」

「せっかく生まれ変わったんだから新しい力を思いっきり世界に見せ付けたいじゃないか。

 それに、僕の分霊も君が気に入ったみたいだからね。

 引き剥がすのは可哀想だ」

「わかりました」

 

 デッキに目を向け、これからよろしくと俺は心の中で告げた。

 

「他の子達も調整が終わればそちらに合流するだろうがら宜しくね」

「ええ。いずれ来る日を楽しみにしているよ。

 じゃあ、()()()()()()()()

「……」

 

 そう言うとミクトランテクートリは目を見開き、そして嬉しそうに笑った。

 

「そうか。じゃあ、その日を楽しみに待っているよ」

 

 その言葉と共に俺は地上への道を歩きだし、死者の国ミクトランへの訪問は終わったのだった。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 入ってきた道を戻り暫く進むとやがて地上の光が見えた。

 体感的にはホールに辿り着くより大分短く感じられたが、ミクトランテクートリがその辺りを弄っていたのだろうと深くは考えず、念の為一度も振り返らず外に出た俺はそこが朝日を感じるジャングルの中であることを察した。

 

「無事に出れたみたいだな」

 

 もう大丈夫だろうと出て来た洞窟へと振り返るが、しかしそこには朽ち果てた石碑らしき苔生した岩が一枚あるばかりで洞窟なんてものはどこにも無かった。

 

「それにしても、最後まで食えない方だったな」

 

 俺はカードを敢えて『DM』ではなく『現代遊戯王』と呼んだのにミクトランテクートリはそれに注釈せず流した。

 【ライゼオル】という俺が存在さえ知らない未知の強力なテーマを口にしたことからかつて俺が居た()()()()()()()()()()()()()を知っているのではないかと考えたからだ。

 だからカマを掛けるために敢えて呼称を口にしたが、ミクトランテクートリは笑って聞かなかったことにした。

 と言っても、それを知ってどうするということも無い。

 灰色の人生だった昔の日々を思えば帰りたいとは思う訳もなく、せいぜいが【ラビュリンス】に合う強いカードを買い漁りたいというぐらいでもうあの世界に未練はないのだ。

 

「それじゃあ遊戯君達と合流しようか」

 

 さして重要ではない事柄を排除し、俺はミクトランに行った証拠である宝石で出来た箱を開き一枚の欠けも無いことを確認してから中から【サイバードラゴン・インフィニティ】を抜き出しデュエルディスクにセットする。

 

「来い!【サイバードラゴン・インフィニティ】!!」

 

 デュエルエナジーを注ぎ込むと周辺を薙ぎ払う暴風が吹き荒れその中心に鋼の翼有るドラゴンが姿を現した。

 【サイバードラゴン・インフィニティ】は『キュイィィン…』と鳴き声を上げると俺に顔を擦り付けた。

 

「いつもありがとうな【サイバードラゴン・インフィニティ】。

 すまないがまた一飛び頼む」

『キュオオオオン!!』

 

 「任せて」とそう言うように力強い咆哮を上げる【サイバードラゴン・インフィニティ】に顔が綻ぶのを我慢せず俺は更にもう一体喚び出す。

 

「来てくれ【蒼翠の風霊使いウィン】!」

 

 地面に魔法陣が光りそれを中心に現実には起こり得ない緑色の風が渦を巻いて少女を象り風の色の彩色の髪を持つ少女が現れる。

 

「マスター!!」

 

 風が収まるなりウィンは大きな声を上げ俺にしがみつく。

 

「大丈夫!?

 ちゃんと魂と肉体に変なことされてない!?」

「心配しなくてもミクトランテクートリはそんな仕込みはしていないはずだよ」

 

 神話では譲った骨を取り返そうとしたりしたけど、少なくとも違和感なんかはない。

 

「そっちもだけどクルヌギアの方が余計なことしてそうだし…」

「なんて?」

 

 もしかして別方向にやらかしてたか?

 いやいや、さすがにウィンが穿ち過ぎだろう。

 

「ともあれこれから遊戯君達と合流して【ドーマ】の拠点に乗り込む。

 ナビゲートを頼みたいんだが出来るか?」

「任せて!

 風の霊術で何処にでも案内するよ!」

 

 その力強い答えに頷き、二人で【サイバードラゴン・インフィニティ】の背に乗り込む。

 

「飛べ!【サイバードラゴン・インフィニティ】!!」

『キュオオオオオオン!!』

 

 甲高い声で応え、翼を羽ばたかせて【サイバードラゴン・インフィニティ】が空へ舞い上がる。

 一分と経たず雲の近くまで舞い上がった【サイバードラゴン・インフィニティ】の上でウィンが魔力を放出し遊戯君達を捜索する。

 

「見付けた!ダルク君の魔力!

 マスター、ファラオ達は陸から離れた島に居るよ!

 『オレイカルコス』の濃い魔力がそこにある!」

「分かった!」

 

 クソッ! もう最終局面に入ってしまっていたか!?

 

「頼む!【サイバードラゴン・インフィニティ】!!」

『キュオオオオオオン!!』

 

 翼で風を叩き凄まじい速度でウィンが指した方向へと飛翔を開始する【サイバードラゴン・インフィニティ】。

 風圧はウィンが防壁を張ってくれているので全く感じる事なく快適な空の旅とさえ感じるほどに余裕さえあった。

 

「今のうちにデッキの調整をしておこう」

 

 リースと違い大神祇官のデッキは自分に関係があるテーマ。

 テキストの読み込みが甘い状態で勝てる相手ではない。

 

「やっぱりエンウィッチが基本の初動要員か。

 それとメイスとゴブリンも初動要員になれるからテクトリカへの展開ルートは滅茶苦茶パターンが多いな」

 

 初動要員が多いので安定性は高いが、逆に言うなら【メメント】の比重を高くしなければならず混ぜ物がし辛いということでもある。

 

「俺が回すなら純構成プラス汎用札に汎用エクストラが無難だな。

 エクストラはレベルが不均一でエクシーズは難しいからリンクモンスター主体の隙間に汎用誘発の【妖怪少女】や【エフェクト・ヴェーラー】でシンクロを狙うのが現実圏内か」

 

 【深淵】や【クシャトリラ】辺りの出張要員程度なら兎も角テーマ複合で回すには俺の構築力では難しいだろう。

 

「【マルチャミー】はレベル4なのが有り難いな」

 

 展開後には効果を使えないため先行だと腐るが、後攻ならばコイツにうららを刺させた後に増Gを刺すという使い方も出来る。

 それに加えビジュアルも可愛らしいから姫様もデッキに入れても許してくれるだろうし、アリアンナ達と合わせてランク4エクシーズの素材に使い回すことも出来る。

 そんな事を考えつつ対大神祇官を想定して幾つかのカードを入れ替えエクストラデッキを拡充しておく。

 そうして全容を検め俺が使いやすいよう調整した【メメント】が完成した所で丁度『ドーマ』の本拠地である南海の孤島が視界に見えてきた。

 

 そしてそこで、【教導の大神祇官】と対峙する遊戯君達の姿か見えた。

 

「大神祇官!!」

 

 上空を通過する刹那に飛び降り、ウィンが放った風をクッションに着地すると俺はデュエルディスクを構えて宣った。

 

「お前の相手はこの俺だ!!」




次回は大神祇官とデュエル。

長丁場になるだろうなぁ…
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