迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
ちょっと下品なので注意をば。
「アリアス!アリア〜ス!」
「如何致しました姫様?」
敬愛する主の呼び掛けに慇懃にかつ神速で顕れるアリアスに姫様は真剣な顔で口を開いた。
「アリアス。私、大変な事実に気づいたわ」
(お?とうとう執事君が姫様の伴侶である事実を知らないことに気付かれたのかな?)
そうであるならアリアーヌ達が「もどかしい!」と叫んで変な計画を立てたりしなくなるから少し寂しいものの、自覚した姫様が攻勢に出るならば執事君も腹を括り喜ばしい事になるだろうと思いつつ姫様の言葉を待つ。
「もしかしたらなんだけど執事って…」
真剣な顔で姫様は告げた。
「おっぱいが小さい方が好みなのかもしれないわ」
よっしゃ愉快な日々がまだ続くぜ!
内心大笑いしながらオリハルコン並の強度の表情筋でそれを腹の中にしまいつつアリアスは姫様に伺う。
「流石にその発想は些か突拍子もないと言わざるを得ませんが」
「だってお嫁さんの私に手を出してこないのよ!?」
そもそも知らないんですよと内心でニヤニヤ笑いながら姫様は本当に可愛らしいと思いつつ愚痴を聞き続ける。
「この前だって恥ずかしいの我慢していつもより過激な姿を見せてあげたというのに、執事ってば『着衣が乱れておいでです』なんて澄ました顔でアリアンナを呼び付けたのよ?」
本人はそう言うが、実際はいつもより1センチほど胸元を開いたドレス姿で居ただけである。
それを過激と嘯く姫様も姫様だが、そんな誤差を完璧に見切ってきっちり直させる執事も大概であろう。
「しかしながら、それだけならそうとは言い切れないのでは?」
「じゃあなんで同じ顔なのに私よりおっぱいの小さいアリアスの方が好みなのよ?」
「……」
それに返せる言葉もなく曖昧に笑うしかないアリアスであった。
「それに執事の下僕の女の子は皆私よりおっぱいが小さいじゃない!
だから執事は小さい方が好きなのよ!!」
それに関しては他が小さいと言うより姫様が大き過ぎるだけなのだが、その指摘は解決には至らないし戦争になるのでアリアスは別角度からの解決に入る。
「姫様の懸念は理解致しました。
ですがご安心下さい。
執事君の性癖は把握しておりますが、胸は小さいより大きい方が好みなのは間違いありません」
アリアスの罠カード発動!【性癖開示】!執事は死ぬ。
「じゃあなんで私の誘惑に乗ってこないのよ?」
「執事君の理性を崩すなら姫様の強みを押しつけるだけではなく、執事君の弱点も突かなければ足りません。
聡明な姫様ならその意味はご理解頂けるでしょう?」
「むぅ…確かに罠の配置も弱みに付け込まなきゃ効果は薄いものよね…」
「そうですとも。
ですので、執事君が1番フェチズムを刺激される弱点を突いていきましょう」
そう邪悪に笑うアリアスに姫様は期待を込めて問う。
「では答えなさいアリアス。
執事の好みは何なのかしら?」
無駄に威厳の籠もった問い掛けにアリアスは慇懃に答えを口にする。
「執事君が最も興奮するのは、『手袋』です」
「……はい?」
アリアスの答えが理解出来ず姫様の目が点になる。
「手袋?」
「はい。手袋です」
「おっぱいとかお尻とかは?」
「勿論好きですが執事君が1番興奮するのは手袋です」
「なんでよ!!??」
生身より衣服に興奮すると言われて姫様が白目を剥いて驚愕する中、アリアスのフォローどころか完全にトドメを刺す解説が始まる。
「ご安心下さい姫様。
執事君が手袋に興奮するのは嘘偽り無い事実ですが、何も手袋単体を性的に見ているわけではありません」
「そうじゃなくて安心したけど益々意味が分からないわよ!!??」
破茶滅茶に喚き散らす姫様を宥めながらアリアスは執事の尊厳を容赦無く生贄に捧げていく。
「いいですか姫様?
殿方という生き物は所作の一つ一つに対しエロスを掻き抱く生き物なのです。
例えばショーツにしても履く時と脱ぐ時で男性が抱くエロスは別々なのです」
「しょ、しょうなの…?」
「はい。脱げばいいでもなく着ればいいでもない。
性とは実に難解な、それこそ迷宮と同じぐらい攻略が難しい代物なのです」
エロと私を一緒にするなと迷宮城が突っ込んだが、しかしそれを聞いている者は誰も居ないため虚しい風の音となって消える。
「それを踏まえて執事君が最も興奮するシチュエーションを今から実践してみせますね」
そう言うとアリアスは手袋を着けた人差し指を口元に寄せ妖しく艷やかな色香を瞳に宿す。
「はわわ…」
唐突に始まったエッチな雰囲気に姫様が変な声を漏らすしか出来ない中、アリアスの淫靡な振る舞いは続いていく。
「ふふ…」
小さく蠱惑的な笑みを口の端に浮かべたアリアスは軽く口を開けると口元に寄せた人差し指を軽く歯を当て噛んで見せる。
「ひゃわわわ…」
従者の見たことのない一面に姫様が恥ずかしさで目を逸らしたくなるも、しかし執事のために必要だと我慢して顔を赤くしながらその光景を眺める。
そうしてしっかりと見ていることを確認したアリアスは軽く噛んでいた指をずらして手袋だけを噛むと手は動かさず首の動きだけで手袋を外していく。
「はわわわわわわわわ…」
耐えきれず手で顔を隠してしまうが指の隙間からしっかりガン見する姫様の顔は真っ赤になっていた。
そうして手袋を外しきったアリアスは外した手袋を手に先程迄の色気を消していつもの姿に戻る。
「如何でしたか姫様。
今のが執事君が1番興奮したシチュエーションでしたが」
なんで知ってるか?
そこはまあ、絞り粕みたいなものだが彼の尊厳のためにも黙秘しておく。
「ダメよアリアス!
エッチよ!エッチ過ぎて駄目だわ!!??」
顔を真っ赤にしてブンブン頭を振りながら否定する姫様だが、手袋のエロスは理解出来たと判断しアリアスはニッコリであった。
「ご理解頂けたようで何よりです。
今のを姫様がおやりになれば執事君の理性も【バーサーカー・ソウル】してしまうでしょう」
「ううぅ…」
アリアスの言葉に一理を理解した姫様は顔を真っ赤にしながら葛藤する。
自分があんなにエッチな姿を執事に見せる?
無理無理無理!
【ラビュリンス】が相手に【月鏡の盾】を装備した【サイコ・ショッカー】を先攻で立てられた時より難易度が高過ぎる!!
だけど…
「……やるわ!」
恥ずかしいが、今のをやれば執事とオーバー・レイしてリンクショックからのシンクロ召喚も夢じゃないと茹だった頭で奮起してしまう。
その思考の時点で色々と終り終りしているが誰もツッコミを入れないので止まりはしない。
「まずはそうね…私に相応しい手袋を作るところから始めるわよ!!」
執事なら普段使ってる手袋で簡単にリーサル取れるがアリアスは敢えてそれを言わない。
「アリアス!! 私に相応しいエッチな素材を用意しなさい!!
勿論最高級品の手触りの良いやつよ!!」
「畏まりました」
慇懃に一礼して言われるままに従うアリアス。
そうして奮起する姫様だが、その結末は姫様の尊厳のために割愛する。
ただし完全に無駄ということは無く、その日の執事のトイレ休憩がいつもより長かったらしい。
次回はエピローグです。