迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

151 / 255
ごめん。デュエルまで届きませんでした。


地獄で踊るなら死ぬ覚悟をしてもらう(1)

 数日後、デッキを調整し現代遊戯王で十二分に戦えるよう組み上げた対環境想定の【デモンスミスラビュリンス】を手に俺は共に戦うと付いて来てくれたブルーノとギルスの二人に感謝を告げた。

 

「こんな巫山戯た戦いに来てくれてありがとう」

「君への借りを返すいい機会だから気にしないでくれ」

「そうだ。それに、現代遊戯王の理を奮ってみるというのもデュエリストとして得難い経験だ。

 ただ、気に入らん事は少なくないがな」

 

 今回のデュエルではアンティとして正気を疑うような条件が出されていた。

 

『敗者はそれぞれが所持する()()()()()()()()()()

 

 この世界(遊戯王)の世界でカードは命と等価、いやそれ以上の価値が持つにも関わらず彼等はそれを全て差し出すよう要求して来たのだ。

 当然そんな巫山戯た条件に対しクロノス先生でさえ応じれるはずが無いと苦言を訂したが、彼等はこの条件を飲むならば勝敗に関わらずこれまで『賭けデュエル』で手に入れたカードを全て返却すると言った。

 その為クロノス先生はこちらが了承すればと承諾を保留し俺にその条件を告げた。

 この条件のいやらしい点は()()()()()()()()()()()()()明言していない事だ。

 それこそデュエルに使用したデッキのカードだけでなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて到底通らないような拡大解釈も出来てしまう。

 流石に穿ちすぎだろうとは思うが、念の為手放すには余りに危険なカードは全て封印櫃に納め姫様の元に送った上で屋敷の全てのカードの権利を【妖怪少女】達に譲っておいたから、万が一の際に斯様なことを嘯こうと今手元にあるカード以外を彼等に渡す義務は無い。

 それでも屋敷のレアカードが屋敷の住人の人生数回分を働かずに賄えるほどの資産になるという恐ろしい現実にうらら達が目を回していたことから目を逸らしつつ俺は口を開く。

 

「ともあれ負けなければいい。

 今回ばかりは命のやり取りのつもりで行くぞ」

 

 カードゲームが基幹となるこの世界でデッキ(デュエリストの魂)を全て賭けろと言うなら、それはもう殺し合いと同義である。

 相手が何者であろうと容赦はしないと気を引き締めて敷居を跨ぐ。

 

「来てくれたか。

 久しぶりだな案内人」

 

 『アカデミア』内に入るとセレナが一人で出迎えた。

 

「久しぶりセレナ。

 元気にしていたか…と聞くのは良くないな」

「いや。ユーリのお陰で私は平気だ」

 

 少し困ったような笑みを浮かべセレナはそう言った。

 

「ユーリか…。

 アイツは今は?」

「『あんな()()()()()デッキに負けたままでいられない』って、負けた事にへこたれず部屋でデッキ作りに勤しんでいるよ」

「そうか…」

 

 矯正のために遊矢に叩き込んだ【深淵世壊】の地獄絵図の衝撃は思ってた以上にユーリを強くしてくれたようだ。

 

「アイツの趣味じゃないのは分かっているが、私のために戦ったユーリの仇を頼みたい」

「セレナのため?」

 

 らしくない理由にとうとうこの二人まで付き合い出したのかと、弁えもせずに(*´꒳`*)などと顔文字が浮かびそうになる表情筋を抑え込みながらそうなった経緯を伺う。

 

「今回の騒動の三人組の迫水が私にユーリと関係を断つよう言い寄ってきたのが始まりなんだ。

 迫水が言うには、ユーリは『覇王』となって世界を滅ぼす悪魔になるとかそんな訳の分からないことを言っていたのだが…」

 

 と、そこでセレナは何故か言葉に詰まってしまった。

 

「どうしましたセレナさん?」

「……いや、なんでもない。

 その後自分が悪魔から世界を救うだの私を一つにさせはしないなどという気味の悪い妄言を吐いていた所を、悪質なナンパは止めろとユーリが割って入ってそのまま…」

「ユーリはデュエルで負けてしまったのですね」

「ああ」

 

 どうやら迫水という男は俺達が介入しないまま赤馬零王ことハゲの計画が成されていく『四つの次元の本来の結末』を知っているらしい。

 その世界ではユーリ達ズァークは分割体たる四人は統合し完全な復活を遂げ、セレナ達も『赤馬レイ』として統合してしまったのだろう。

 その前提であるハゲが己の間違いを俺に指摘され折れてしまっていることも気付かないか、或いは意図して目を背け主人公気取りで自分勝手にやっているらしい。

 

「セレナさんから見て彼はどの程度の腕前でしたか?」

「言葉を選ばないなら迫水は『カードの強さに頼る素人』だろうか。

 タクティクスを駆使するのではなく、ただ用意された手順をなぞり無駄に効果を多用してカードパワーを制御しようともしないでただフィールドを滅茶苦茶にしているだけのように見えた」

「そうですか」

 

 セレナの観察通りなら迫水という男はデュエリストではなく()()()()()()()()()()()()()()()()()程度の腕前らしい。

 

「ではそろそろ向かいましょうか。

 セレナさん。会場はどちらになりますか?」

「案内するが、その前に案内人」

「なんでしょう?」

「ユーリのために怒ってくれているのは分かっているが、その目と他人行儀な口調はその、少し怖い」

 

 何をと疑問に思うのとほぼ同時にギルスが答えを口にした。

 

「気づいていないようだが友よ。

 目と口調が変わっているぞ」 

「……ああ、成程」

 

 ギルスに言われ手鏡を開いて覗き込むと、俺の瞳孔が歪み山羊眼となっていた。

 どうやら自分が思っている以上に迫水の発言に怒りを抱いてしまっていたようだ。

 

「『ダルク』。来てくれ」

 

 ディスクを起動しエクストラに入れていた【暗影の闇霊使いダルク】を【召喚】する。

 

「すまないが偽装を頼む。

 デュエル中に剥がれないよう念入りにだ」

「分かった」

 

 僅かに不安そうにしながらもダルクは杖を俺に向けて魔術を行使する。

 

「完了した。

 これで大丈夫だろう」

「ありがとうダルク」

 

 顕現を説いてカードに戻ったダルクをエクストラデッキに戻しセレナに謝罪する。

 

「すまないセレナ。

 無意識に怖がらせてしまったな」

 

 努めて普段を意識しながら謝罪するとセレナはいやと首を振る。

 

「私こそユーリのために怒ってくれたのに感謝の言葉が出なかったからお相子だ」

「ああ。そうしよう」

 

 その言葉にこの件は終わりだとセレナに続いて会場となる多目的ホールへと向かう。

 

「彼等が件の三人かい?」

 

 多目的ホールの客席には『アカデミア』の生徒がぎゅうぎゅうに押しかけ、ホール内には三人の少年少女が待っていた。

 

「ああ。見た目だけは悪くないのが『迫水』。

 金髪の軽そうな女が『姫島』。

 そして気の弱そうなのが『複野』だ」

 

 そう簡単に説明するセレナに改めて三人を観察する。

 迫水は俗にいう『クラスで一番モテる男子』というイメージの好青年風だが、セレナの話の通りなら自分の正義が一番正しいと思い込むタイプなのだろう。

 対して姫島はこれまた俗にいう『今が楽しければ全部どうでもいいギャル』といった感じで、制服を着崩し今時の若者らしく携帯に夢中でこちらに意識さえ向けていないように見える。

 そして複野だが…

 

「ブルーノ。

 多分アイツが一番ヤバイ」

 

 前髪で目元は見えず見た目は根暗な陰キャのように見えるが、髪の奥に見える目には狂気が伺えた。

 

「うん。あっちの二人は大した事無いけど、彼だけは油断しちゃ駄目だ」

 

 『戦慄のアンチノミー』としての顔が見え隠れするほどに真剣な顔でそう同意するブルーノにギルスも頷いた。

 

「おそらくは奴がデッキを拵え二人はそれを回しているだけなのだろう」

 

 真に警戒するべき相手を見定めた俺達が気持ちを新たに引き締めていると、クロノス先生が中心に立って宣言した。

 

「これより特別授業を開始するノーネ!

 ルールは三対三のチーム戦。

 三戦を終えた時点で勝ち越したチームを勝利とするノーネ!

 初戦の代表者は前に出るノーネ!」

 

 その言葉に率先してブルーノが前に出た。

 

「先鋒は僕が行くよ」

「頼む」

「うん」

 

 笑みを浮かべ中央へと向かうブルーノに俺はただ信じることにした。

 

「じゃあボクから行こうか」

 

 大事な初戦とあり真っ先にそう口にした迫水に対して携帯から顔を上げた姫島はブルーノに目ながら口を開く。

 

「ちょい待ち迫っち。

 あーしが行く」

「姫島さん?」

 

 直前までやる気が出ないと言っていた彼女の言葉を怪訝に思う迫水に姫島は嘯く。

 

「さえないオッサンよりイケメンと遊びたいからあーしがやりたい!」

「えっと…複野君はそれでいいのかな?」

 

 デュエルのいろはを教えてくれた複野に大丈夫かと尋ねると、複野はぼそぼそと大丈夫だと答えた。

 

「あの人が本物の『アンチノミー』だとするなら使うデッキは高確率で古い純正【TG】だから【センチュリオン】なら負けるほうが難しいと思う。

 新規やアニメ仕様のカードなら苦戦するかもしれないけどそれでも【センチュリオン】のカードパワーならダイアグラムは3対7より下がらないはずだから姫島さんのデッキなら後攻を取っても勝てる」

「イミフだけどオタク君が勝てるって言うなら大丈夫っしょ?

 って訳だからちょっと行ってくるね」

 

 そう言ってさっさとホール中央へと向かってしまった。

 

「全く、姫島さんも仕方ないな」

「……」

 

 身勝手な振る舞いに苦笑を零す迫水と無言でブルーノの奥で趨勢を見守る執事へと視線を向ける複野。

 

(アレが遊城十代が言っていたカードをくれた執事…。

 他のはどうでもいい。()()()()()さえ手に入ればボクは…)

 

 秘めた願望に仄暗い感情を燃やす複野。

 

「双方礼!」

「よろしくお願いします」

「うぃーす」

 

 真面目に頭を下げたブルーノに対し姫島は適当な態度を返した。

 

「姫島!きちんと挨拶をするノーネ!」

「めんどくさ。別にいいじゃん私が勝つのは決まってんだし」

「シニョーラ!!」

 

 

 余りに無礼な物言いにクロノスが激昂するも姫島は全く聴いたふうもなく適当に聴き流す。

 

「それよりさぁ、どうせ負けるんだからデュエルなんかしないで遊びにいかない?

 私、結構()()()って評判だったんだよ?

 お兄さんカッコいいし安くしとくよ?」

「姫島ぁ!!??貴女という人はナンテ事を口しているのですか!!??」

 

 およそ神聖な学園で、しかも未成年の女性が口にしていいわけがない台詞をさも当然と吐き出した姫島にクロノスがキャラ崩壊するほどに怒り怒鳴る。

 

「そういうのはお断りするよ」

 

 そんな混沌の気配を醸す場を、一切の感情も感じられない冷たい言葉が冷やしきった。

 

「…はぁ?」

「僕は友達の力になるためにデュエルをしに来たんだ。

 それに…」

 

 ガチャリと音を立て彼の表からは見えないが激情を表すように激しくデュエルディスクが展開する。

 

「カードの一枚も引かずに勝ちを宣うような子は僕は嫌いだ」

 

 鋭く細められた視線は彼が排すべき敵であると何より雄弁に語っていた。

 

「……うわぁ、キモ」

 

 そう姫島は冷めた様子で吐き捨てる。

 

「顔が良いから恥ずかしい目に遭わないようにってあーしなりに気ぃ使ってあげたのにバッカみたい。

 いいよ。そんなに恥掻きたいなら徹底的に虐めてやるよ!」

 

 嗜虐的に顔を歪めデュエルディスクを起動する。

 

「クロノス先生。

 開始の宣言をお願いします」

「…分かったノーネ」

 

 ブルーノの言葉にクロノス先生はフィールドから下がり宣言する。

 

「デュエル開始なノーネ!!」

 

 言葉と同時に二人はデッキトップを五枚引き同時に宣言した。

 

「「デュエル!!」」




大雑把なキャラ紹介。

迫水雷都:自分が正しいを信じる好青年(笑)

姫島睦月:p活とかやっちゃう系の刹那的享楽主義者

複野獣田:勝つのが好きな競技勢。それとは別に欲しいテーマがある。

次回からは蹂躙です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。