迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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ずるずる引きずるとエタるからね。
本筋を駆け抜けていきます。


箍が外れる音に俺はまだ気づいていなかった。

「……巫山戯るな!

 くそぉ!!??」

 

 サレンダーを了承する言葉に福野が突然そう叫ぶなりデュエルディスクを投げ捨て多目的ホールから走り出した。

 

「待つノーネシニョール!!」

 

 クロノス先生の静止の声にも止まらず消えた福野にクロノス先生は肩を落とす。

 

「…私は間違えたのでしょうーカ?」

「…いえ。貴方は正しかった」

 

 正しき光のデュエルを信じたクロノス先生の輝きを直視出来ず逃げ出した事は本人の資質だ。

 

「クロノス先生。

 締めをお願いします」

「分かったノーネ」

 

 体裁だけでも整えようとクロノス先生はホールで観戦していた『アカデミア』の生徒達へ語り掛ける。

 

「君達が観ていた通り、DMはシニョールギルスが構築したように突き詰めようとすれば極限まで相手を封殺する事が可能なノーネ!

 だけど、どれだけ突き詰めようと完全な封殺は不可能なノーヨ!

 例えば、シニョールギルスの使用したモンスターは主に闇属性なので闇属性の効果を制限する【暗闇を吸い込むマジック・ミラー】や特定属性以外の特殊召喚を封じる【結界像】等を使えば逆転出来る可能性は残っていたノーネ。

 実際に、シニョーラ姫島やシニョール複野の盤面をシニョールブルーノとシニョールラビュリンスが一ターンで捲りきり攻略してのけたように、デッキの可能性を信じれば一見不可能に見えようと必ず攻略の糸口は残されていマース!

 シニョール複野達とシニョールブルーノ達の違いはカードの知識などではなく、真摯にデュエルに向き合い相手と向き合う気持ちの差であったと私は思うノーネ!

 諸君らもこの先彼等の高みを目指すのであれば、デュエルとは一人で完結しないことを決して忘れず驕ることなく研鑽を積んで欲しいノーネ!

 以上を以って特別授業を終了すルーノ!」

 

 解散を告げるクロノス先生の声に早速デッキを改造するために席を立つ者やタクティクスを論ずる者、我慢出来ないとばかりにデュエルディスクを起動して対峙する等のこの世界の学生らしい光景を背に俺は多目的ホールを離れる。

 

「おめでとう執事君。

 皆勝てて安心したよ」

「俺達はまだしも友は本当にギリギリだったからな」

「そうだな」

 

 初手に誘発二枚と来てくれた【隣の芝刈り】に墓地に落ちた【嗤う黒山羊】。

 これらがなかったら捲り切る事は叶わず逆転する事は出来なかった。

 そうなれば…考えるだけ無意味か。

 

「後は事後処理が待っているぐらいか?」

 

 件の三人の処遇についても頭が痛い。

 MD次元の転生者であること以前に三人共が其々に人間性に問題を抱え過ぎている。

 このまま『アカデミア』に属させ更生を期待するのは難しいだろう。

 

「何か良い矯正施設でもあれば話は早いんだがな」

 

 倫理観を無視すれば性格を改善する手段は引く手数多だが、下手すると人格どころか種族さえ変わりかねないのは流石に気が引ける。

 姫様でさえただ殺すと決めれば普段の面白可笑しいポンコツアホ姫の姿が擬態であったのかと疑うような悪逆非道の悪魔の所業としか言えない行いをなさるし、俺自身さえ悪魔化もあって精霊界のちょっとアレな倫理観に大分侵食された結果、「原作で死んでたし肉体も無いから俺が殺しても誤差誤差」とノアとBIG5をデュエルで殺しても問題無いと思えるようになってしまった事をあまり重要だと思えなくなっている。

 

「ともあれ『アカデミア』は孤島だから売り捌いて既に手元に無いなんてことも無いだろうし先ずはカードの回収だな」

 

 解決出来るものから解決しようと動き出した俺たちだが、間を置かず複野獣田がデッキを残し次元間移動が可能なデュエルディスクと奪い取った【白銀の城の執事(ラビュリンス・バトラー) アリアス】と共に『アカデミア』から失踪したという不吉な予感を感じさせる事実を知り、そして、そう間を置かずその予感は間違いでは無かったことを俺は、暗く冷たい水の中で胸を刺し貫く痛みと共に思い知ることになる。

 

 

〜〜〜〜

 

 

「お呼びですか姫様」

 

 【白銀の迷宮城】。

 姫の自室に呼び出されたアリアスはノックしてから部屋に入ると、ジャージ姿の姫が真剣な顔で十二段に重ねたトランプタワーの頭頂部を作ろうとしている姿を目が目に入った。 

 

「ちょっと待って…もうちょっとで新記録なのよ…」

 

 ぷるぷると手を震わせながら慎重にトランプを重ねる姫だが、その震えがカードに伝わり高く積まれたトランプの塔はあっさりと崩れ落ちてしまった。

 

「あー!!??」

 

 新記録樹立ならずとなり姫が悲鳴を上げるのをアリアスはニコニコ笑いながら見守る。

 

「んもう…」

「残念でしたね。

 それで姫様。此度はどの様な用向きでしょう?」

 

 ぐったり背もたれに体を預ける姫にそう伺うアリアスに、顔を天井に向けたまま姫は口にする。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 貴女じゃないわ」

「……ふふ」

 

 呼んだのはお前じゃないと否定する姫の言葉に()()()()は笑みを深くする。

 

「おかしなことを仰られますね姫様?

 私は間違いなく【白銀の城の執事(ラビュリンス・バトラー) アリアス】ですよ?」

「愚弄するにしてもセンスが足りないわよ。

 どれだけ姿形が同じであってもこの私が【自分が生み出した作品(家族)】を間違えるはずがないわ」

 

 そう言い切りジロリとアリアスを睨めつける。

 

「……ふぅ。流石姫様。

 僅かに期待したのですがやはり見抜かれてしまいましたね」

 

 ヤレヤレと肩を竦めるアリアスに姫の視線は更に鋭くなる。

 

「私のアリアスはどうしたのかしら?

 正直に答えなさい。

 これは命令よ」

 

 このような自体にあって未だ姿を現さないなんてありえないとアリアスの安否を問う姫にアリアスはいけしゃあしゃあと嘯いた。

 

「ご安心下さい。

 少し窮屈な思いをしているでしょうが、彼女『達』はこちらに御座いますよ」

 

 そう言いながらアリアスはズボンのポケットから()()()()()()()()()()()()()()()()()を姫に示した。

 

「……貴様ぁ!!」

 

 それが執事から聞かされた『融合次元』で開発され、多くの人を世界再編の資源にするために奮われた『カード化』によるものであると気付いた姫から嚇怒と殺意が魔力とともに吹き荒れ室内を滅茶苦茶に荒らしながら暴れ狂う。

 

「私の可愛い下僕を紙切れに閉じ込めた罪を万の死を以て贖え!!」

 

 姫の怒りと殺意に応え迷宮城が罠を起動。

 罠が起動した駆動音の咆哮を伴いアリアスの足元と天井が同時に動きアリアスを挟み込んで圧し潰した。

 

「下僕と寸分違わぬ顔を一切躊躇なく攻撃なさるとはなんと恐ろしい御方ですか。

 その上城を動かすのに一言の命さえ不要とは流石迷宮城に愛されし御方ですね」

 

 そう嘯きつつ圧し潰された筈のアリアスがひょっこりと表れた。

 

「幻影…いえ。手応えは間違いなく本物だから分身かしら?」

「正解です。

 流石姫様に御座いますね」

 

 そう口にしたアリアスが直後に股下から頭頂部までを身の丈を超える長く鋭い針に貫かれ串刺し刑に処された。

 

「…ちっ、これも分身ね?」

 

 言葉を交わす価値など求めていないと問答無用で殺しに掛かるもそれすら読んでいたアリアスに姫がはしたなく舌打ちを打ってしまう。

 

「ならば貴女の分身が尽きるのが先か私の丹精込めた『おもてなし』が底をついてしまうか試していきましょうか」

 

 城の罠を総出にすれば先に尽きるのはアリアスであるのは明白。

 最初から勝ち目等与えはしないとそう嘯く姫だが、

 

「流石にそれは遠慮致しますね」

「はぁ!?」

 

 ()()()()()()()()()に咄嗟に前へとローリングで退避しながらその姿を確かめようとした姫は、しかしそこに誰も居ないことに自らの失態を悟る。

 

「貰いました」

 

 背後に立つアリアスのその腕に取り付けたデュエルディスクから光が放たれ姫を襲う。

 

「しつじぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!??」

 

 成す術なくその光を受けた姫は閃光に飲み込まれ、愛する人の事を叫びながら姫はカードへと封じられてしまった。




 執事やブルーノも以前から言ってたけどアリアスは姫というブレーキが無いと魔轟神並に邪悪という設定で書いてます。
 なので姫以外に仕える主を見つけたアリアスは…

 因みに姫のアリアスは邪悪だけどそれ以上に姫様体質なので姫が関わらない場所で悪辣を敷くと何故かハッピーエンドに導くトリックスターとなります。
 ドラグマの件とか正にそれ。
 それでいて本人が最低限得は得るので首は傾げるもまあいいかと自身の性質に気づいてなかったりします。

 次回、メインシナリオ最終幕開始
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