迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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切りどころがここしか無いため短いですがここで切ります。

第一話からの伏線が漸く回収できたよ。


俺は姫様を愛している(1)

 迷宮城の一室。 

 複野はそこで一人、ベッドの上でシーツに包まりながら只管に「僕のせいじゃない」と呟き続けていた。

 その手には執事から奪い取られたデッキが握られており、アリアスは実に楽しそうに執事の最期を嘲笑いながらデッキを手渡してきた。

 

「僕のせいじゃない。僕は【ラビュリンス】のカードがほしいと言ったけど殺してまで欲しかったわけじゃない」

 

 自分の浅はかさが端を発し、殺人という禁忌に手が染まった事に複野の精神は耐えられなかった。

 それ故に複野は【ラビュリンス】の崩壊と執事の死の原因は自分には無いのだと自身すら騙せぬ言い訳を必死に繰り返し続けていた。

 下手人であるアリアスは側にいない。

 死体を確認してくると言って部屋から出ていった。

 

「僕は殺したくなんて無かったんだ。

 全部アリアスがやったんだ。

 僕が殺したんじゃないんだ」

 

 罪の意識に怯える複野は恐怖から少しでも逃れたいと握りしめていたデッキを広げ始めた。

 

「【次元障壁】はいらない。

 【嗤う黒山羊】は【無限泡影】で十分。

 【墓穴ホール】はスペース無駄。

 長期戦になるはず無いんだから【バージェストマ・レアンコイリア】も【貪欲な瓶】も必要無いだろうが。

 なんで【神殿を守る者】なんか入れているんだ?

 無駄。無駄。無駄。

 余計な戦術なんか省いて【ラビュリンス】はもっとスマートに戦えばいいんだよ」

 

 執事が【ラビュリンス】に加えた多彩さ(『おもてなし』)を全て切り捨て複野は最低限のギミックに絞りデッキを薄くしていく。

 

「【ラビュリンス】が勝つためには必要な手順を踏めば勝てるのにこのデッキは何がしたいんだよ?」

 

 複野には理解出来ない。

 無駄に多様な罠を採用する理由が複野には分からない。

 

 複野は知らない。

 【白銀の城のラビュリンス】が相手が思いも寄らない罠カードを喰らい驚く瞬間を最も楽しみにしている事を。

 

 複野は認めない。

 【白銀の城のラビュリンス】が罠カードを愛するように罠カードもまた【白銀の城のラビュリンス】を愛している事を。

 

 だから複野は気付かない。

 

 カードの【白銀の迷宮城】はフィールド魔法であるが、己が一室を占拠する【白銀の迷宮城】が()()()()()である事を。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 城の地下に伸びる上水道。

 生活用水を支えるその水面から浮き上がった手がその縁を掴み、ずぶ濡れになった重い体を引き摺って執事は必死に陸へと倒れ込んだ。

 

「姫様には、感謝し、ないとな…」

 

 底が串刺し刺であったらどうにも助かりはしなかったが、彼が落とされたのは底が貯水槽に繋がっていた穴であり、水がクッションとなり九死に一生を得る事が出来た。

 

「とはいえ、誤差でし、か無いか」

 

 胸に刺さるナイフは心臓こそ傷つけはしなかったが肺を貫通しいくら呼吸を繰り返してもひゅうひゅうと抜けていくばかりで苦しさが募り続けていく。

 

「ここで、終わり…か」

 

 手元にあるのは【緊急テレポート】と【御隠居の

猛毒薬】のみ。

 アリアスの事だ、死体を確認しに動いているだろうから見つかるのは時間の問題。

 ホラーゲームのように隠れて対抗する手段を集めて逆転なんて都合の良い展開もシナリオも存在しない。

 

「……っ!」

 

 それでも最期まで戦おうと刺さったナイフを抜き、しかしそこで壁に寄りかかる力も無くなり倒れ込んでしまう。

 冷えた身体を寒いとさえ思えなくなりいよいよ死ぬのかと思った執事はふと、カサカサと這い回る足音を聴いた。

 

「【増殖するG】…か? はは、そういや、彼奴等は、スカベンジャーでも、あったな…」

 

 意識があるうちは勘弁してくれよと濁る思考にこのまま目を閉じてしまおうかと思い始めた執事は、しかし『奴等』が執事の前に置いた一枚のカードに目を見開いた。

 

「お前達、()()を、何処から…?」

 

 答えは無い。

 彼等にそんな機能は無いのだから当然だ。

 だがそれでも、『奴等』の声を執事は聴いた気がした。

 

『必要なら幾らでも集める』

『嫌われ者の我等を貴方は必要だと求めてくれた』

『嬉しい』

『応えたい』

『我等は最後の一人になるまで共に戦う』

『戦え』

『戦え』

『戦え』

『戦え』

 

「……はは、」

 

 別に執事は『奴等』が好きではない。

 ただ、その効果が必要だから嫌わなかっただけだ。

 だけどその性能の凄まじさがあってさえ誰もが厭い『奴等』には精霊界の何処にも居場所は無かった。

 そんな『奴等』は異世界のデュエリストが来た事で()()()()()()のだと居場所を得られた。

 それが自分の効果を求めての事だけだとしてもそれで十分だった。

 

「鶴の恩返し、ならぬ、Gの恩返し、てか?」

 

 そんな冗句を零しながら『奴等』が持ってきたカードを手にする。

 そしてそのカードを検めた執事はその()()()に一瞬迷うも、だからこそ逆転の一手になり得ると理解した。

 

「やってやるよ。

 尻拭いは、ハスキーさん、とギルス、がやってくれ、るさ。

 だから、恩寵を、使わせてもらいますよ、エルドリッチ卿」

 

 そう言って執事は『奴等』が渡した【黒き覚醒のエルドリクシル】を発動した。




次回はちょっと忙しくなるため少し遅れるかもです。
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