迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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確定した運命を変えることは叶わない。
それでなお運命を変えたいと望むなら、()()()()()()()()()()()を用意する事が可能ならば或いは…


俺は姫様と伴に在る(3)

 嘗ての時代、ディアハ(殺し合い)デュエル(決闘)へと形を変えていく頃に敷かれ時代の流れの中で人が忘れ去ったルールがあった。

 

 対戦中に決着が着かぬまま片方が死した場合、その勝敗をどう扱うか。

 

 この扱いについて多くの議論が交わされた結果、その裁定は『闇のゲーム』に倣い敗北が決定した側がそれを覆そうと害するような例外を除き死した者を敗者とするとして決着が尽いた。

 

「そうよね。 貴女なら()()()()()()()

 

 ぽたり。

 

 『アリアス』が握る大鎌を伝い溢れた血が地面に落ちる音が異様に、異常なほどに大きく響いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 貴女ならそのルールの抜け穴に気付くだろうって、そう()()()()()()!!」

 

 『アリアス』に()()()()()()()()()()()()が血化粧で顔を汚しながら力強く吠えた。

 

「姫様ぁ!!??」

「アリアス何をやっているんだ!!??」

 

 俺と複野の驚愕と悲嘆がぐちゃぐちゃにかき混ぜられた絶叫が響く中、大鎌を振るった『アリアス』の顔もまた驚愕に歪んでいた。

 

「どうして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!??」

 

 右手でガシリと鎌を掴み動かせぬよう固定しながら『姫様』は獰猛に笑い「特別に教えてあげるわ」と、左手の手袋を歯で引き外しながら左手の()()()()()()()を見せつけた。

 

「【磁力の指輪】。

 このセンスが悪い指輪に貴女の攻撃は引き寄せられたのよ」

「くっ!?」

 

 読み切られ対策されていた事に焦る『アリアス』。

 

「すぐに顕現を解け福野ぉ!!」

「出来ない!!アリアスは僕が呼び出したんじゃないんだ!!??」

 

 【召喚】した複野にそう命じるも、複野は自分が喚び出したのではないと悲鳴のような声で叫ぶ。

 

「やめてくれアリアス!!

 僕はこんな形で生き残っても勝ったなんて思えない!!」

 

 そう訴える福野の叫びに反射的に視線を向けた『アリアス』の隙を突き『姫様』は自らに刺さった大鎌を更に深く突き刺さらせその身を以て『アリアス』を押さえ付けた。

 

「姫様ぁああああ!!??」

 

 本物かどうかなど些事だ!!

 俺の目の前で姫様が傷付き血を流す姿に耐えられる筈がないだろうが!!

 

「何をなさって!?」

「口惜しいけれど、こうするしか無いのよね」

 

 独白を零す姫様の顔は不思議なほど穏やかだった。

 

「私がラビュリンスの主に成り代わろうとすれば執事は死んでしまう。

 それはとても嫌。家族を犠牲にするぐらいなら私が死んだほうが余程マシというものよ」

「貴女は、最初からそのつもりだったのですか!!??」

 

 自ら死ぬために行動していたのかと、『アリアス』が【白銀の城の執事アリアス】である限り決して容認してはならない動機だったのかと問う言葉に「いいえ」と『姫様』は嘯く。

 

「私は唯一無二の【白銀の城のラビュリンス】としてこの城の女主人の席を手にするつもりだったわ。

 だけど、それをやれば執事が死んじゃうのよ。

 時間の赦す限り汎ゆる方法を考えてみたけど、執事を犠牲にせずに私が迷宮城の主の席に座る方法は見つからなかったわ」

 

 「だから諦めたの」と姫様はとても綺麗な笑顔を浮かべて言った。

 

「その席を私は、愛する夫を殺してまで欲しいなんて思えないんだもん」

 

 そう笑う姫様は嘘偽りなどない、俺の愛した【白銀の城のラビュリンス】であった。

 

「執事。私から最後の命令よ。

 私を妻としてちゃんと愛しなさい。

 そして、私より1日以上長生きしなさい。

 いいわね?」

「ひめ…さま…?」

 

 何を申しているのですか!?

 それではまるで…

 

「…っ!? 離してください!!

 離せぇっ!!??」

 

 体裁をかなぐり捨て姫様を引き剥がそうと藻掻く『アリアス』だが、その抵抗は間に合わなかった。

 

 バタンッ!!

 

 姫様とアリアスを呑み込もうと、足元が開き奈落が口を開いた。

 

「アリアス!!??」

「姫様!!??」

 

 俺達の叫びに姫様は童女のようなあどけない笑顔を浮かべたまま…

 

「ばいばい。やくそくまもってくれてありがとう。わたしのしちゅじ」

 

 そう言い遺し『アリアス』を道連れに奈落の底へと落ちていった。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 姫様と『アリアス』を喰らった口が閉じていくのが不思議なほど現実感が無かった。

 

「そんな…アリアス…」

 

 複野が打ちひしがれた様子で閉じた穴に縋り付いているその姿に俺は、自分で疑問に抱くほど感情が動かない。

 ただ、()()()()()()()()()()()()

 それだけが俺を動かした。

 

「立て。先攻はお前だ」

「……何を言っているんだよ?」

 

 俺の言葉に複野が目に怒りを燃やしながら俺を睨んだ。

 

「こんな時に、デュエルなんてやっている場合じゃないだろうが!!??」

()()()()()()()()()

「っ!?」

 

 ビクリと複野が震えるが俺は構わず嘯く。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 怒りも、憎しみも、悲しみも、恨みも、殺意も、すべての感情はカードに乗せて解決させるんだよ」

 

 ああ、そうか。

 俺は今、世界全部ぶち壊してしまいたいんだ。

 

「カードを握れ複野(デュエリスト)

 それが嫌なら、俺はお前を縊り殺す」

 

 きっと今の俺はひどい顔をしているのだろう。

 

「ヒィッ…」

 

 複野は呼吸の仕方すら忘れた様子で投げ捨てたカードを拾い集めると膝を笑わせながらフェイズ宣言を開始する。

 

「スタンバイ、メイン!

 僕は手札から【白銀の城の火吹炉(ラビュリンス・ストービー)】の効果を発動!

 このカードと手札を1枚墓地に送りデッキから【白銀の迷宮城】をセットする!」

 

 狂時計を先に切らずかつ【ウェルカム・ラビュリンス】か【ビッグウェルカム・ラビュリンス】をセットしなかったことから残りの手札はどちらかとアリアスが有るのは確定と見ていいだろう。

 

「次いで手札から【白銀の城の執事アリアス】を墓地に送り効果を発動!

 アリアスを墓地に送り手札から【ウェルカム・ラビュリンス】をセット!」

 

 手札にある使える妨害は【レッド・リブート】だけ。

 【レッド・リブート】は今使えば逆に此方が不利になる。

 

「チェーンは無い」

「【ウェルカム・ラビュリンス】発動!

 デッキから【白銀の城の召使い(ラビュリンス・サーヴァンツ)アリアンナ】を守備表示で特殊召喚する!」

 

 フィールドに何の感情も伺えないアリアンナが静かに片膝を着く。

 

「アリアンナの召喚時効果を発動!

 デッキから【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を手札に加える!

 その後、セットした【白銀の迷宮城】を発動し、カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 お手本のような【ラビュリンス】の基本盤面を敷いてターンを終えた複野。

 ストービーと共に落としたのが【トランザクション・ロールバック】だったから見た目以上に盤面は硬い。

 

 だけど問題無い。

 

「俺のターン。

 ドローフェイズ。ドロー」

「その瞬間チェーンして手札から【増殖するG】を捨てて効果を発動!」

 

 特殊召喚を縛りに来たか。

 やはり精霊達は静観するつもりだったか。

 それに対し、俺もやるべきを成す。

 

「チェーン。手札から【抹殺の指名者】を発動」

「くっ!? 駄目か!?」

 

【抹殺の指名者】

速攻魔法(制限カード)

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):カード名を1つ宣言して発動できる。

宣言したカード1枚をデッキから除外する。

このターン中、この効果で除外したカード及びそのカードと元々のカード名が同じカードの効果は無効化される。

 

 止められたことに顔を歪める複野だが、俺が止めるのは()()()()()G()()()()()()

 

「俺はデッキの【ドロール&ロックバード】を除外してこのターンの効果の発動を禁じる」

 

【ドロール&ロックバード】

効果モンスター

星1/風属性/魔法使い族/攻 0/守 0

(1):自分・相手ターンに、相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた場合、

このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

このターン、お互いにデッキからカードを手札に加える事はできない。

 

 引かれるのは構わない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「増Gを止めずにドロバ!?

 まさかお前のデッキは…!?」

 

 予想が着いたのか顔色が悪くなる複野に構わずフェイズ宣言を続ける。

 

「スタンバイフェイズ。メインフェイズ。

 俺は手札から【未界域のモスマン】の効果を発動する」




次回。決着。
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