迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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遅くなり大変申し訳ありませんでした。

最近職場で古株の一人がアイキャンフライかましてくれた結果ブラック勤務に逆戻りしてますた。

なんで、この先も料理人共々不定期になります。


ルールが違えばカードプールも違うものだ

「スピードデュエル?」

 

 アリーナから指名を受け、久し振りに自由都市へとデュエルをやる為に赴いたらマッチメーカーからそんな言葉が飛び出した。

 

「ええ。別次元から来訪した特殊なレギュレーションを用いるデュエルらしいですよ」

「アクションデュエルみたいなやつか?」

 

 人間を辞め身体能力は大分上がったが、飛んだり跳ねたりしながらカードを保持しつつランダム要素にお祈りしながらカードを探すアクションデュエルは榊遊勝との事も含めあまり良い感情がなく苦手意識が強い。

 

「どちらかと言うと人間界でレギュレーションを固めている最中のライディングデュエルに近いそうです」

「あっちかぁ…」

 

 デュエルタクティクスとドライビングテクニックを両立しなきゃならんライディング・デュエルは俺がバイクに乗れないので遠慮していたが、乗り物なら何でも良いからとバイクの代わりに【サイバー・ドラゴン・インフィニティ】の背中を借りて一度だけ試した際にスピードスペル以外の魔法カードの縛りを忘れて反射的に抜き忘れた【刻まれし魔の詠聖(デモンスミス・トラクトゥス)】を発動してしまい盛大に自爆して負けた身なのでこちらもやはり苦手意識が強い。

 

「レギュレーションが配布されたら学びはしておくが、俺は基本的なテーブルデュエルかスタンディングデュエルの方がいいな」

 

 現代遊戯王の理不尽さを双方が罵りながら殴り合う懐かしき修羅の国のような滅茶苦茶を味わえるなら覗きに行ってもいいかなと思いつつ、調整したデッキをセットしアリーナへと向かった。

 

 

〜〜〜〜

 

 

「スピードデュエルに私達も参加するわよ!!」

 

 その夜、件の話を姫様に伝えたら秒でそう宣った。

 

「どんな世界だろうと【ラビュリンス】が最強無敵だと知らしめるのよ!オーホホホ!」

 

 新しいデュエルと聞き久し振りに自己顕示欲が爆発したらしい姫様はハイテンションで命じる姫様に俺は伝える。

 

「無理です」

「は? なんでよ?」

「スピードデュエルはネットワークに繋がねば出来ませんので、ネット回線の無い迷宮城では参加出来ません」

 

 こうなる可能性を考慮しあの後すぐに先んじて拾っておいた概要を告げると姫様は久方ぶりに白目をむいて叫んだ。

 

「なんですってーーーー!!??」

 

 やはりアホ面晒してる姫様も趣きがあって可愛らしい。

 横でうんうんと頷くアリアスと共に姫様のポンを堪能していると思いの外早めに復活した姫様が俺達に命じる。

 

「今すぐネット回線を城に繋げなさい」

「無理です。

 専門業者から迷宮城は遠すぎてケーブルの設置は無理と言われてます」

「どうにかしなさい!!」

 

 滅茶苦茶な事を申されるが【ラビュリンス】は姫様の所有物。

 例え表でアーゼウスとティ・フォンがどちらがエクシーズ素材になったほうがより強い盤面を作れるかで喧嘩になりその余波で森の七割が焼け野原になっていようと、姫様が散歩日和の良い日柄だから森を散歩すると言えばそれに適するよう準備するのが我々である。

 本気でやろうとするなら先にも言った通り地下ケーブルは引けないので中継塔を設置するかパラボラアンテナを設置してとなるのが、どちらも以前姫様から「私の領地に不細工な装飾は要らない」と駄目出しを喰らっているためどちらもアウトである。

 因みに屋敷はWi-Fi含めネット環境は非常に良いものを用意していたりするがそこは割愛。

 

「ねぇ執事。

 執事のデュエルディスクは使えないの?」

 

 完全に我儘に入られた姫様にどうしたものかと頭を捻っているとアリアーヌがそう俺に言った。

 

「デュエルディスク?」

「執事のデュエルディスクは城からでもメールのやり取りが出来るんだからネット回線に繋げられたりとかしないの?」

 

 何の事だと首を傾げる俺にアリアーヌがそう尋ねると姫様は「それよ!!」と声を上げた。

 

「デュエルディスクからネット回線に繋げるのよ!」

「無茶言わないでください。

 いくら創星神の神核とはいえデュエルリンクスへの対応はして…」

 

 事前に出来ないことは確認しておいたが、目の前でやって見せなければ納得しないだろうと起動を試みると…

 

『DUELLinksのアカウント作成に移行しますか?』

「…出来ますね」

 

 それでいいのか創星神?

 

「早速皆で行くわよ!!」

「…あ、ディスクのアカウントは1人分しか作れないので全員は無理ですね」

 

 唐突に追加された新機能を確認しそう告げると姫様はションボリされてしまった。

 

「皆で行けないならもう興味無いわ。

 執事だけで行きなさい。

 そして【ラビュリンス】の恐ろしさを知らしめるのよ!!」

 

 ぷんと拗ねた様子でそう宣いもう寝るわと部屋を出ていってしまった。

 

「もしかして皆でお出かけしたかったのか?」

「やっぱり気づいていなかったんだね。

 全く、執事君は姫様の女心を理解する力はまだまだだね」

 

 勝る点を見付けたと言いたげに嬉しそうなアリアスにハイハイと流しつつ取り敢えずアカウントを作成しそのままログインする。

 

「成程。MD次元(あちら側)でアプリ配信していた『デュエルリンクス』と概要は同じなんだな」

 

 レギュレーションがマスタールールと違う上にキャラゲーとしての性質が色濃かったからプレイはしていなかったが、よくよく思い出せば仕様もスピードデュエルと同じだったから、『デュエルリンクス』はスピードデュエルで遊戯王をプレイできるアプリだったらしい。

 手持ちのカードは持ち込めず、いくつかのストラクチャーデッキから一つを選んで開始するようだ。

 

「【ラビュリンス】は当然無しか。

 じゃあ【霊使い】テーマの【華やかなる精霊術】で決まりだな」

 

 エクストラは無しでテーマ内強化の【憑依装着】モンスターや【憑依覚醒】関連もデッキに含まれて無いが、どちらもリンクスの環境ではストラクチャーデッキに入れるには展開速度が速くなりすぎる上に火力も上がり過ぎるのだろうと納得し【ラビュリンス】を揃えた後はそれらを優先的に集めようと決めてストラクチャーデッキを選択する。

 

「さて、まずは姫様の含まれるパックを確かめるとこれからだな」

 

 そうごちりながら、俺は眼前に広がるデュエルリンクスの世界へと足を踏み出した。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 執事がデュエルリンクスへとログインしてから数時間後、様子を見に来た姫様は意識を送り出し無防備を晒してソファーに横になる執事の頬を突いて遊んでいた。

 

「執事ってば今ならどんな悪戯されても抵抗できないのよね?

 うふふ…どうしてやろうかしら?」

 

 邪悪な企みを笑みに浮かべる姫様だが、そんな様子に3人は呆れ顔である。

 

「実行しようとしたら恥ずかしくなって大した事は出来ないんでしょうね」

「出来ても顔に落書きとかその程度なんだよなぁ」

「どうせならそのまま姫様から執事君に【ナイト・ショット】の一発も決めてくれたら色々助かるんですけどね」

 

 本人が夢中な事をいい事に言いたい放題する三人にしかし姫様は全く気付かず執事の頬を突いて喜んでいた。

 

「……ん」

 

 不意に執事がピクリと動き、そのままログアウトしたようでむくりとソファーから起き上がった。

 

「ひゃっ!?」

 

 驚き後ろに下がる姫様に何ら反応を示さず、執事は目を開くとどんよりした雰囲気を纏い出した。

 

「どうしたの執事?」

「申し訳ありません姫様。

 我々はスピードデュエルに参加する意義は無いものと思います」

「え?」

 

 デュエルをやる意味がないと、この世界の住人にあるまじき発言が出たことに全員が驚く。

 

「なんで? 執事、あの世界で何があったの!?」

 

 悲痛にさえ見える様子に只事ならぬ何かがあったのだと姫が尋ねると、執事は重苦しく理由を口にした。

 

「無いんです」

「…何が?」

「あの世界のカードプールには【ラビュリンス】は存在しないんです」

 

 重苦しい告白の意味を漸く理解した姫様はワナワナと震え、やがて爆発した。

 

「なんですってぇぇええええええ!!??」

 

 今世紀稀に見る姫様の大絶叫の勢いのままに執事に詰め寄る姫様。

 

「どういう事なのよ!?

 なんで【ラビュリンス】が無いのよ!?」

「おそらくは、【ラビュリンス】はカードパワーの高さは元よりレギュレーションの関係上展開力が溢れ過ぎてフィールドが足りないという判断が成された結果なのだと」

 

 初動が少ないためにやや止まりやすいものの【ラビュリンス】も現代遊戯王においてTierにランクインを果たす凶テーマの一角。

 加えて魔法罠ゾーンに依存する性質はフィールドが狭いスピードデュエルにおいて非常に不利を被るという配慮もあるだろう。

 多分一番の理由は【妖怪少女】をリンクス内に実装してないから一度走り出したら無双するからと弾かれたのだろうが。

 

「そんな……で、でもそれだけ私達が強過ぎるって事なのよね?」

「それはまあ、間違いないかと」

「だったら仕方ないわね!

 美しさだけでなく強過ぎるという罪まで背負うなんてなんて、私という女はなんて恐ろしい悪魔なのかしら!!

 オーホホホ!!」

 

 強いから使わせてもらえないという結論に一応の納得と機嫌を取り戻す姫様に一同は安堵する。

 

「じゃあ、さっさとアカウントを削除するか」

「え? なんでですか?」

 

 アッサリ撤退しようとする執事にアリアンナが疑問を投げる。

 

「折角なんですし、【霊使い】でそのまま残しておけばよいのでは?」

 

 そう問うと執事は先程より深く落ち込んでしまった。

 

「どうしたんだいそんなに気落ちして?

 もしかして目当てのカードが引けなくて所持金が尽きてしまったのかい?」

 

 アリーナでの収入等これまでの活動で相当の個人資産を持っている彼でさえ目当てのカードは手に入らないほどカードプールが沼なのかと若干の恐れを抱きながらの問いに執事はどんよりしながら理由を口にした。

 

「そうじゃないんだ。

 無いんだよ」

「何がだい?」

「【憑依覚醒】があの世界には無いんだ」

 

 【霊使い】のメインエンジンでありテーマを組むなら三積み前提となる最大起点が実装していないのだと執事は語る。

 

「【憑依覚醒】だけじゃない。

 展開を伸ばす【憑依覚醒】モンスター達も、【霊使い】のズッ友テーマの【妖精伝記】も無かったし、【壊獣】はガメシエルだけハブられてリダンやバグースカといった主要となってくれていたランク4エクシーズモンスターやアーゼウスとアストラムなんかの切り札達まであの世界には殆ど居ないんだよ」

 

 【レイダーズ・ナイト】と【アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】だけは居てくれたが、カードプールの関係から彼だけを主力とするなら【霊使い】ではなく【RR】で組むほうがより活躍を期待出来る。

 

「「「「……」」」」

 

 信を置く部下達が半数以上居ないという事実がどれほど辛いことか、それを察した姫様は静かに肩に手を添えそっと告げた。

 

「私、頑張るから今日は一緒に寝ましょう?」

「ありがとうございます」

 

 




姫様はいつもより頑張りましたがやっぱり気絶しました


余談

知人「そういや執事って来る前はリンクスやってなかったのか?」
俺「やってないな。やってたらユーリ達を知らんということは無かったはずだし」
俺「シンクロ実装前に触りだけ調べてやらなかったぐらいが妥当だろうな」
知人「ちなリアルは?」
俺「【ラビュリンス】無いしドリアード入手難易度鬼すぎて止めた」 
知人「それネタにして一本いけん?」
俺「……いけるな」
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