迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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という訳でネタが膨らまないオムニバス回です。

今回の時間軸は其々エンディング後とバトルシティ前を想定しています。


徒然なる日常の一幕

 ━【英才教育そのいち】━

 

 デュエルマットを挟み相対する息子へと俺は語り掛ける。

 

「良いですか? デュエルというものは大きく二つに分かれます」

 

 マットの上に広がる盤面に顔を青褪めさせる息子は絶望を顔に浮かべながら一語一句聞き逃すまいと言葉に耳を傾けていた。

 

「一つは精霊界のデュエル。

 信を預けるカードを束ね己が胸に掲げる信念をぶつけ合う対話のための闘争。

 このデュエルに於いて重要なのは勝敗ではありません。

 互いに信念をぶつけ合う以上状況次第では相手が勝ることもある。

 ですが勝敗に固執せず、良き相手には戦い終えた後に相手とカードに敬意を払うことが重要です」

 

 そしてと、俺はフィールドの上の【クシャトリラ・ライズハート】の上にエクストラデッキから【クシャトリラ・アライズハート】を引き出して乗せる。

 

「そしてもう一つは修羅が修羅と喰らい合う現代遊戯王と呼ばれる地獄の釜の底。

 私の故郷のデュエルです」

 

 フィールドは地獄と言うにも生温い悪夢が広がっていた。

 

 【クシャトリラ・シャングリラ】【クシャトリラ・アライズハート】【ティアラメンツ・ルルカロス】【ザ・ビーステッド・ルベリオン】【フルール・ド・バロネス】【刻まれし魔(デモンスミス)レクストレメンデ】+【刻まれし魔の大聖棺(デモンスミス・セクエンツィア)】+【刻まれし魔の神聖棺(デモンスミス・アグヌスデイ)

 魔法罠ゾーンには【烙印の獣】が配され更に手札に【灰流うらら】と伏せカードに【神の宣告】まで仕込まれている。

 

 現代遊戯王(地獄)でも此処までやるかと言われそうな盤面である。

 

「現代遊戯王に人権も理性もありません。

 何も出来ないほうが悪であり、カードの性能を突き詰め煮詰め殺す事だけを求めるのです」

「父上。この状況ではどうしようもありません」

「それをひっくり返し逆に殺しに行くのが現代遊戯王です」

 

 絶望に悲鳴を溢す息子に容赦ない言葉をぶつける。

 信じ難いだろうが、これでさえまだデッキと手札次第で捲れる範囲なのが現代遊戯王なのだ。

 

「覚えておきなさい。

 何事も過ぎれば毒であると。

 だれもが強いカードばかりを求め性能を突き詰めてしまった果ての光景が()()なのだと。

 それを踏まえ、改めて聞きましょう。

 今のデッキはいらないから強いカードが欲しいと言いましたが、何が欲しいのですか?」

 

 「誰にも負けない最強のデッキが欲しい」と子供らしい我儘を口にした息子に改めてそう尋ねると、息子は青褪めながら言葉を発した。

 

「デッキに相性の良いカードを見繕う手伝いをお願いします」

「分かりました」

 

 思想が歪む前に矯正できたようで何よりである。

 

 ※なお、この光景に娘以外はドン引きしていた模様。 

 

 

 ━【霊使いとデッキ】━

 

 

 今日はアリーナでの対戦予定もないから城に帰ろうかなと考えていると、【召喚】していたウィンが要望を口にした。

 

「マスター。私のデッキを強化したいの」

「デッキ?

 持っていたのか?」

「勿論だよ!」

 

 そう言うとウィンはデッキケースを俺に見せた。

 

「皆でデュエルしてるんだけど最近ずっと勝てなくて…」

「見ても良いかい?」

「うん」

 

 渡されたデッキを改めるとバランスそのものは悪くなかった。

 

「【ガスタ】か。

 選んだのはやっぱり故郷のテーマだからか?」

「そうだよ。

 でも、皆のデッキとは相性がよくなくてあんまり勝てないの」

「他の皆は何を使うんだ?」

「エリアちゃんは【氷結界】でヒータちゃんは【インフェルノイド】でアウスちゃんは【ナチュル】でライナちゃんは【セイクリッド】でダルク君は【暗黒界】だよ」

 

 テーマそのもののパワーはヒータとダルクが頭一つ抜けているな。

 

「確かに【ガスタ】はキツイな」

 

 【ガスタ】は低レベルモンスターを自爆特攻させて相手に反射ダメージを押し付けるテーマだ。

 それ故に後攻を選ばざるを得ず、先のテーマの展開を赦すと何も出来ずに封殺される危険がある。

 

「因みに誘発は?」

「【小夜しぐれ】は入ってるけど…」

「うららとGは入れたくない?」

「出来れば…」

 

 普通に無理だろ。

 

「となると…」

 

 属性を縛りたいと言うなら仕方ないが、かといって風属性は単体ならともかくテーマが強いカードあったか?

 

「……ああ。アレがあったな」

 

 一通り風属性だけのテーマを頭の中で並べていて、ふとあるテーマの存在に行き着く。

 

「エースの一部が光属性になるが、【聖霊獣騎】はどうだ?」

 

 イラストデザイン的にも【ガスタ】との関連がありそうだしと挙げてみるとウィンは興味深かそうに目を輝かせる。

 

「見せて欲しい!」

「ああ。じゃあ書斎に行くか」

 

 そうウィンと連れ立って書斎へと向かう。

 

「これだな」

 

 ファイルから一通りのカードを取り出しウィンに見せてやる。

 すると、その一枚を見たウィンが目を見開き小さく溢す。

 

「……お姉ちゃん」

 

【精霊獣使い ウィンダ】

効果モンスター

星4/風属性/サイキック族/攻1600/守1800

自分は「精霊獣使い ウィンダ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードが相手によって破壊された場合に発動できる。

デッキ・EXデッキから「霊獣」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

 泣きそうな顔で嬉しそうに呟くウィンに、端末世界でのあらましを思い出して俺はそっと手を置く。

 

「ファイルには【風霊媒師ウィン】もあるが、一緒に入れるか?」

「うん!!」

 

 涙を拭って嬉しそうに頷くウィンに、こんな日もあって良かったと思うのだった。

 

 そんな事があった後日…

 

「マスター!!

 ボクの進化した【火霊媒師ヒータ】は無いの!?」

「【水霊媒師エリア】はありませんか?」

「ウィンが有るなら【地霊媒師アウス】も当然ありますよね?」

 

 と、早速大暴れしたらしいウィンに触発された三人が俺の所に雪崩込んできた。

 

「落ち着け三人共。

 【霊媒師】は四属性一通り揃っているからちゃんと渡すよ」

「あ、やっぱり【光霊媒師ライナ】は無いんですね」

「まあ、光と闇はサーチ効果で引かせたら洒落にならないカードは多過ぎるから仕方無いだろう」

 

 俺の執り成しにションボリするライナと当然だろうと納得するダルク。

 

「すまんなぁ。【闇霊媒師ダルク】が来たら【ラビュリンス】に組み込むから今は堪えてくれな?」

「…別に、拗ねてるわけじゃないから気にしないでくれ」

 

 そっぽ向いてそう答えるダルクが久しぶりに年相応に見えた。

 

「それと! ボク達もデッキ強化させてよね!」

「ウィンちゃんだけ贔屓はズルイです!」

「確かマスターは【春化粧】をお持ちだった筈。

 是非とも私のデッキに加えさせて頂きたいのですが」

「アウスちゃんズルい!

 私だって【海晶乙女】使いたい!」

「だったらボクは【炎王】欲しいかな」

 

 俺から新しいデッキを貰えたのが余程羨ましかったのか三人がそれぞれ新しいテーマを要求する。

 

「分かった分かった。

 カードは持ってて嬉しいコレクションってだけじゃないからな。

 使ってくれるなら好きに持っていっていいぞ」

 

「「「やったぁ!!」」」

 

 歓声を上げながら書斎へと飛び込んでいく三人。

 

「二人は良いのか?」

「私は…じゃあ、【サイバー・ドラゴン】が欲しいです」

「分かった。

 【サイバー・ドラゴン・インフィニティ】が何枚か引けてたからそれも譲るよ。

 ダルクはどうだ?」

「俺は特に無いな」

 

 そう言うが、ダルクだけ無しというのは座りが悪い。

 

「だったら俺から【原石】をプレゼントさせて貰おうか」

 

 通常モンスターを起点とするという癖の強さを持つが、その分だけ関連カードは非常に強力なテーマであり、エクストラデッキが好き放題出来るという玄人向けのテーマでもある。

 強力なサポートを有する通常モンスター【ブラックマジシャン】や【青眼の白龍】と組み合わせたらおそらく環境でも一定以上の戦果を期待出来る事からかなり嫌な予感を抱かせるテーマでもある。

 

「まあ、そこまで言うなら」

 

 満更でもなさそうな様子で納得をみせるダルクと共に既に姦しく燥ぐ声が聞こえる書斎へと俺たちも向かった。




因みにダルクは【原石マジシャン】になりました。

次回は久方ぶりにデュエル回にしようかな?
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