迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
そういえば【サイバー・ドラゴン・インフィニティ】はデュエルで出したこと無かった。と。
という訳で今回はデュエルで出番の少なかったモンスターにも活躍の機会を振り分けて行きたいなぁと思っとります。
まあ予定は未定で決定とはならんのが俺なんですが…。
大会手続きを済ませ零児君の伝手で紹介してもらったホテルに荷物を置いた後、俺達は夕食までの時間潰しに街へと繰り出していた。
「お父様!
私あの『ブルーアイズアルティメットパフェ』を賞味致したいですわ!!」
そう魔法で黒髪に染めた娘が指差す先には全高50センチにもなる【ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン】が菓子で再現された見本が鎮座していた。
下に『※原寸大です』とプラカードが置いてあるのでマジでこれが出るらしい。
「姉様。それを食べたら夕食が入らなくなると思うよ?」
「お黙りなさいお兄様!
アリアスがいない今しかこんな素敵なお菓子を食べられないんですよ!!」
マジレスする息子にガチギレして噛み付く娘を宥めながら俺は告げる。
「気持ちは分かりますが、今回は諦めなさい」
「何故ですお父様!?」
「よく見なさい」
そうプラカードを見るよう促すと娘は顔に絶望を浮かべた。
「『材料の関係により注文から提供までに一週間頂きます』
な、なんですってぇえええ!!??」
野望が叶わぬと知りガクリと膝を折る娘の姿に姫様の姿がバッチリ重なりやっぱり親子だなとしみじみと思う。
というより生菓子なのにそんなに制作期間が必要ってどんなパフェなんだ?
「あれ? 執事さん!?」
面白そうだから姫様に献上するため後で注文しようと決め、あまり往来で騒ぐのもと駄々をこねる娘を起こそうとした俺に懐かしい声が掛けられそちらを見ると成長した『榊遊矢』と『柊柚子』の二人がそこに居た。
「お久し振りですね。『榊遊矢』君。『柊柚子』さん。
こうして会うのは何年ぶりでしたか?」
背も伸び青年へと成長した遊矢にそう言ってからいや失礼と謝罪する。
「今は『柊』ではなく『榊』でしたね。
改めてご結婚おめでとうございます」
「やだもう執事さんってば…」
祝辞を述べると柚子は手を顔に赤くなった顔を隠し遊矢君も「ありがとうございます」と言いながらしどろもどろな態度を見せる。
いやもうその初々しさでおじさんは大満足ですよ。
「所でその二人は?」
「そういえば初対面でしたね。
ほら二人共。ちゃんと挨拶をなさい」
そう言うと二人はきちんと並び行儀よく挨拶を口にした。
「初めまして。『
父より貴方達の事は伺っております。
どうぞ宜しくお願いします」
「同じく父の娘の『
偽りの名をありますが父より賜った大事な名。
どうかよしなに御願い申し上げます」
「えぇっと、お父様って…案内人さんとお二人の関係はもしかして…?」
「ご想像通り二人共私と血の繋がった子供ですよ」
「「子供!!??」」
唐突過ぎる家族の登場に驚愕する二人。
「往来で詳しく語れない内容もあるので、説明がてらお茶でも一緒に如何ですか?」
そう二人を誘い娘が食べたがったパフェが置いているカフェへと入り適当に注文する。
「お二人も遠慮せずに好きに頼んでいいですからね?」
若い者に奢るのは年上の楽しみと促せば二人は「ありがとうございます」と紅茶とケーキを注文する。
「先ずは遊矢君はもうお気づきかもしれませんがこの子達は姫様、【白銀の城のラビュリンス】と私の間に産まれた息子達です」
「どおりで…」
得心したと頷く遊矢君に俺は今日までのあらましを告げた。
「という訳で今の私は悪魔族に転生こそしていますが本名を隠した事と寿命以外は以前とほとんど変わりませんので、出来れば今まで通り接して頂けたらと思います」
悪魔には『真の名』を知られてはいけないというルールがある。
悪魔にとって『真の名』を知られるということは命を握られているより重大でありそれ故に姫様も対外には『白銀の城のラビュリンス』と名乗り通している。
姫様の本当の名前はアリアスさえ知らず名前を知るのは俺だけであり俺もまた本当の名前は姫様に預け対外には以前同様『執事』か『迷宮の案内人』で通しており、どうしても名を使わねばならない時は姫様から賜った『白銀ユウタ』の名前を名乗っている。
「分かりました。
じゃあこれからも執事さんと呼ばせてもらいますね」
「ありがとうございます遊矢君」
子供達がケーキに舌鼓を打つのを眺めていると柚子さんがうっとりした様子で嘯く。
「でも素敵ですね。
愛する人のために同じ存在になるなんてとってもロマンチックだと思います」
君がそれを言うと割かし洒落にならんのだが、真実を知らんのだから敢えて言う必要はないな。
「私からしたらゆっくり時間を掛けて愛を育んだ君達も引けを取りはしないと思いますよ」
「「あ、ありがとうございます…」」
二人揃って真っ赤になり縮こまる姿でご飯十杯は軽くいけますな。
やっぱりハゲ弄りより初々しいカップルを眺めているほうが楽しい。
だからといってハゲへの嫌がらせは絶対やめないがな!
「そういえば執事さんがこの時期に来たのは『舞網チャンピオンシップ』へ参加を?」
「ええ。
私はもとより二人もジュニアユースクラスに参加しますよ」
そう言うと遊矢君の雰囲気が変わり好戦的な笑みが浮かぶ。
「そう言えば俺、執事さんに負け越したままだったな。
その借りを返すチャンスが来るなんて思ってなかったですよ」
俺に対する口調こそ丁寧だが、視線を外した瞬間喉笛を食い千切られそうなゾクゾクする戦意を滾らせる遊矢君に俺も口元が凶暴に吊り上がってしまう。
「良い闘志だ。実に芳醇な香りで誘われる。
君の
「楽しみにしていてくださいね
俺が完成させた
目の前の極上の獲物に昂る俺と遊矢君だが、遊矢君の頭に振り下ろされたハリセンにより闘気が吹き飛んでしまった。
「いったぁっ!!??」
「そんなに殺気立ったらお店に迷惑でしょうが!!」
至極真っ当な言葉に俺も反省し謝罪を告げる。
「すみません。
久しぶりに勝ち負けより全力を奮えるかを重視していいデュエルが出来ると思いついつい燥いでしましました」
最近は姫様の名誉が掛かってるため負けは許されない癖に完全制圧からのワンサイドゲームは許されない接待デュエルが多かったので中々溜まっていたのだ。
ブルーノとギルスとのデュエルは全力ではあるがどちらかというと技量を高める修行の色合いが強く、加えて付き合いの長い友人故に遠慮無しの全力は奮えても死力を絞り尽くすような燃え尽きる覚悟を掛けるデュエルは出来ようもない。
そういう意味で勝敗さえ考える余裕もない、本気の本気で戦える機会にそれだけの気概が必要な相手が居るという事実に多少ならず入れ込んでしまった。
意図せず昂ぶってしまった熱気を冷ますため、俺はコーヒーのお代わりを注文するのだった。
今更気付いたけど、子供達の偽名のコンセプトがまんま迷宮兄弟だった件。
それと子供達のどっちが上かは両方がお互いに「兄様」「姉様」と呼び合う上に産んだ姫様も分かっていないけれど、双子だし誰も困らないから無理に上下を決めないでもいいかと現在に至っているという顛末となってます。
後、執事こと白銀ユウタは正しくは「白銀遊太」と書きますが、「遊」の字を使う事に執事が抵抗したためカタカナとなってます。
次回は少し時間が飛んで舞鶴チャンピオンシップになります。