迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
命に別状はないけど転んで怪我したり買ったばかりの電子タバコが逝ったりと中々精神的にキテます。
【原始生命態ニビル】
登場時にメテオインパクトを引き起こすため、リアルソリッドビジョン等の現実世界に影響を及ぼすデュエルで絶対に出してはいけないニビルが着弾した被害は粉塵等の軽微なもの以外はギリギリの所で客席までは届かなかったが、衝突の衝撃でアクションフィールドが崩壊し渦中の二人はその余波でぼろくそになっていた。
「…姉様。今後ニビルはデッキに入れるのは止めましょう」
「そうね。さすがに毎回
粉塵が収まり泥まみれになった二人は父が何故ニビルを貸すことに異様に渋っていたのかを身を以て理解し、そんな存在さえ危険な精霊から寵愛を頂く父への畏敬を新たにした。
なお、ニビルはこのまま普通に出て行ったら舞網市が地図から消えるだけでなく、マスターの子供達にも生命の危機を齎すと気付き慌てて全力ブレーキを行ったため被害は掠り傷程度に留まった模様。
「それで、兄様はターンエンドなさいますか?」
「流石にそれは笑えないよ姉様。
僕はもうニ回以上エクストラデッキからモンスターを召喚してしまっているんだよ?
此処でターンエンドしたら姉様にドローカードは無くても次のターンにティ・フォンが出せるからトークンがバウンスされて大ダメージを食らうじゃないか。
そうなればますます僕に手の打ちようが無くなってすり潰されてしまうよ」
「なればメインフェイズを続行なされると?
アトラをリリースしてしまったので私はもう手札から罠は使えませんが私の手札を更に潤してしまうのですか?」
「当然。火中の栗を拾わなきゃ勝てないなら焼けた石でも掴みにいかなきゃ勝てるものも勝てないよ」
リスクを顧みる余裕はないと手札の一枚に手を掛けた迷だが、そこにストップが掛けられた。
「そこまでです二人共」
「「(お)父様!?」」
「二人共大変素晴らしい戦いを魅せてくれて父として嬉しく思います。
ですが少しやり過ぎましたね。周りをよく見なさい」
執事に促され改めて辺りを見回せば、自分達がニビルの着弾によるクレーターの中心部に居り、その縁で大量に蠢く
「大会運営からこれ以上は観客への刺激が強過ぎるから止めさせろとストップが掛かりました。
デュエルを中断する事が非常に業腹なのは私とて同じですが、『スタンダード次元』にフィールドを借りている身なのですから此処は彼らの顔を立て身を引きなさい」
「ですが父様!?」
当然納得出来ないとごねる二人に執事は『切り札』を切る。
「聞き分けの良いいい子には私の【ラビュリンス】を使わせてあげようと考えていましたが、やはりここは「「私達いい子だから父様に従います!!」」そうですか」
【ラビュリンス】よりカードパワーが高いデッキをメインにしている二人だが、二人も『ラビュリンス』の一員であり父と並び敬愛する母をエースモンスターとする【ラビュリンス】には並々ならぬ執着心を持っている。
その母を子供達と戦えるように現代遊戯王基準でギチギチにチューニングした父の【ラビュリンス】を握れると言うなら不満の一つや二つ飲み込むことなど容易すぎた。
「それではこれから会場を整備するそうなのでモンスターを還してシャワーを浴びて来なさい」
「「はーい!!」」
モンスターが消え先程より幾分かマシになった会場を再びデュエルが出来るように急ぎ整備を開始するスタッフを横目に見ながら執事は控室へと戻ると疲れた様子の赤馬零児が待っていた。
「申し訳ありませんでした。
全力で回していいと箍を外させたら此処まで大暴れするとは思いもよりませんでした」
「…いえ。
端を語るなら私が安易に参加を促したからとなりますので謝罪はその辺りで結構です」
そう断りをいれる赤馬零児に執事は尋ねる。
「そうですか。
それはそれとして、大会運営に遅れが生じてしまいましたが補填は必要ですか?」
「案があるのであればお聞きします」
「ええ。効果の程は実施済みです」
そう言って執事は【ブラック・マジシャン・ガール】のカードを見せた。
「『エクシーズ次元』で伝説となった『精霊界』の歌劇集団『
三時間程度でしたら容易に稼げると思いますが如何でしょう?」
『スタンダード次元』でもブラマジガールのカルト的人気は変わらない。
そんな彼女が率いる【霊使い】を筆頭に【マジシャンガール】【エクソシスター】【マドルチェ】等様々な美少女テーマが毎回入れ替わりながら歌い踊る姿は『エクシーズ次元』に一大ムーブメントを刻み数年の活動期間ながら伝説を築いて見せた。
勿論赤馬零児も彼女達の伝説は知っている。
ライブ映像を録画した映像媒体は『スタンダード次元』でも飛ぶように売れ経済は活性化し『エクシーズ次元』への義援金も多く集めてくれた。
「お願い出来ますか?」
「勿論。先程も申しましたが子供の尻拭いは親の楽しみ。
ですが、せっかくやるなら『スタンダード次元』らしさを加えたいですね」
そう執事は少し思案してからそうだと手を叩いた。
「榊夫妻をお呼び頂けますか?
【幻奏】の美しい調べと【EM】の華やかなパフォーマンスを加えれば非常に素晴らしい演目となるでしょう」
執事の目論見通り、『スタンダード次元』で有名を轟かせる『榊遊矢』と『榊柚子』夫妻のエースモンスター達が更なる彩りを加えた『
ただ一点だけ誤算があったとしたら、余りの人気にアンコールが途切れず精霊達も調子に乗って当初の三時間どころか六時間にも及ぶ本格的なライヴになってしまい、本命であるはずのデュエル大会が翌日に持ち越しとなってしまった事だろう。
〜〜〜〜
そんな紆余曲折はあったものの、大会二日目となりフィールドではユースクラス…つまり年齢規制無しの無差別級の試合が繰り広げられている。
「ほう、【魔界劇団】と【ドレミコード】の対決ですか。
【魔界劇団】にリンクモンスターが入っていないようなのでカードパワーは【ドレミコード】が有利ですが使い手との親和性は【魔界劇団】のほうが上。
これは中々に勝敗が分からない試合になりそうですね」
あの沢渡というデュエリスト、自己評価と自己顕示欲が高い態度を見せているが不快にならない程度のウザったさが実に良い塩梅を醸している。
タクティクスもしっかりしているし自分達が介入しない本来の時間軸なら遊矢君の仲間として立っていたかもしれない。
他にも【Em】と【超重武者】の使い手は中々伸び代の多く【霊使い】のデュエリストとして全力で楽しめそうだと期待が出来た。
「少しいいかい?」
と、デュエルも佳境後見えてきた所で控室に『榊遊勝』がやってきた。
「お久し振りですね。
お元気そうで何よりです」
含むものは何もなく正直にそう言うと遊勝は「ははは」と笑った。
「それもあの時君に喝を入れてもらったお陰だよ。
遊矢と柚子ちゃんも無事に大事なく結婚して幸せになれたし君には感謝しきれないさ」
そう言ってから遊勝は表情を引き締めた。
「次の君の試合について、一つ警告しておこうと思ってね」
「警告ですか?」
「ああ。
君の対戦相手の『勝鬨勇雄』が所属する『梁山泊塾』と言うのだが、少しばかり問題を抱えている塾でね」
「『梁山泊塾』ですか」
梁山泊と言えば水滸伝に出て来る主人公達が根城とする土地の名であると同時にその名を冠するものは無頼等のあまり健全とは言い難いイメージが付いて回る言葉であろう。
「『梁山泊塾』は有力なデュエリストを輩出している反面、アクションデュエルにおける負の側面を体現している塾でもあるんだ」
そう口にする遊勝の顔には慚愧の念が浮かんでいる。
「執事君はアクションデュエルの最大の利点は何だと思う?」
「そうですね…」
その問いに俺は真剣に考えてみる。
「……敢えて挙げるならデッキ格差の一定の平均化でしょうか?」
非常にランダム性は高いが、【神の宣告】や【無限泡影】といった桁違いに高額なレアカードを持っていなくてもアクションカードとしてデュエル中に手にし使うチャンスが生まれれば紙束がテーマデッキを食い破る可能性が見えてくる。
例え手にしたカードがデッキコンセプト的に使えないカードだとしても手札コストが一枚増えるだけで戦術は大きく広げられる。
「うん。派手な見栄えばかりに目が行きがちだけれど、アクションデュエルはどんなデッキにも勝てる可能性を掴むチャンスを与える事が当初のコンセプトだったんだ」
「それと『梁山泊塾』の問題とどの様な関係が?」
「かの塾はデュエルと武道の融合を標榜している塾でね。
ここまで言えば君ならピンとくるんじゃないか?」
残念そうにそう語る遊勝に、俺は思い至った可能性を口にする。
「真逆、彼等は対戦相手に直接暴力を振るっているのですか?」
もしそうなら修羅の国とまでは言わないが治安が悪いところは世紀末並な精霊界でさえ正気を疑われる事となる。
何度でも言うがこの世界はデュエルが絶対正義として成り立っている。
故に人質などを使い盤外戦術でプレイングミスを促されたりデュエル中に効果や戦闘によりリアルダメージが発生して命を脅かされる事も多々あるが、逆に言うならそれらはあくまで
リースや大神祠官のような誰からも救いの手を差し伸べられないような外道だとしても、デュエルの間は相手に直接暴力を奮うことは無い。
愕然とする俺に対し遊勝は顔を歪め「流石に問答無用ではしないが」と口にし俺の言葉を肯定した。
「アクションデュエルはアクションカードの奪い合いもまたデュエルの肝となる。
その過程でカードを手にするために反射的に相手に手が出てしまう事もあったんだ」
「『梁山泊塾』はルール上は問題ないとそれを言い訳に相手に暴力を振るっているのですね」
「そうだ。
度が過ぎれば反則負けを取ることも出来るが完全に規制するのは難しくてね。
判定を厳しくする事で抑制するのが現状の限界なんだ」
正直不愉快極まりない話だが、以前ブルーノが『ライディングデュエル』に於いて対戦相手のDホイールをクラッシュさせ強制リタイアさせようとしたり、『闇のカード』と名付けられた物質干渉能力の高いカードを悪用して外道働きを行うチームがいたと聞いていたため、次元は違えど似たような思考を抱く者は何処にでもいるのだと自身を律する事で怒りを抑え込む。
「『梁山泊塾』はとっくにラインを超えた危険集団として認知が進み、『梁山泊塾』からプロ入りしたデュエリストが何人も追放処分になったせいで彼等も焦っているようでね。
無いとは思いたいが危険だと判断したらすぐにジャッジに報告してくれ。
厳正な審議と共に正当な沙汰を下させてもらう」
何も聞いていなければ本場のアクションデュエルはここまで過激なのかで流していたかもしれない情報の真偽を真摯に訴える遊勝の言葉に俺は「分かりました」と頷いた。
冷静に考えてメテオインパクトやらかしたらデュエルを続けさせたりはしないよなと思い決着は延期になりました。
余談ですが執事が所持するニビルは非常に優しい子なのでフィールドは喰らい尽くしますが本人(?)は宿した命を芽吹かせたいだけなので余程でなければプレイヤーを傷付けようとしません。
一応『闇のゲーム』及びリアルソリッドビジョンだと制御しないでただ召喚すると死人が出ますが、通常ソリッドビジョンやARソリッドビジョンなら衝撃はあっても命の危険はありません。
だが相互理解出来るとは言ってない。
それと執事の持つブラマジガールは自分が『M・M・C』の活動に参加できない時にブラマジガールが不在にならないようにと強めに分霊を宿した師匠も監修した特別な一枚で、これより分霊の強度が高いカードとなると武藤遊戯のブラマジガールとか比較対象がおかしくなるレベル。
次回は久しぶりに【霊使い】回します。
ちゃんとデュエル出来ると良いなぁ←