迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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俺「さあて、書きたいネタが決まっ」
逆らえない知人「今の状況だと逆行して本編アークファイブに絡められるよな?」
俺「理屈ではあり得るけど…」
知人「〇〇と〇〇絡めて救済して」
俺「はい?」
知人「後〇〇と〇〇回して」
俺「パワーバランスが…」
知人「書け」
俺「ウス」

そんな感じで再びアークファイブ絡みます。
尺的に中編で終わればいいな…


re:ARC-V
神は死んでも悪魔は嗤う(1)


「これは…酷いな…」

 

 幾つもの次元を跨ぎ降り立った俺は眼前に広がる光景に言葉を失っていた。

 大地は荒涼と破壊の痕跡が広がり、街を囲う巨大な壁は崩れかつては大きな街だったのだろう事を無残な形で俺に伝えてきた。

 そして俺は、この街を知っていた。

 

「何故ハートランドシティがこんな事に…?」

 

 『エクシーズ次元』の最大都市にして『アカデミア』の侵攻により大きな被害を被ったものの、これ程までに壊滅的な損害は受けなかった。

 子供達が生まれた頃にはカード化された人民も帰還して復興はほぼ完了しており、多次元との交流も行われていた。

 

「となると、平行世界にきてしまったのか?」

 

 どちらにしろここまでの破壊を受けた世界では人的資源も枯渇しているだろうしどれほど進んだ科学技術を用いても復興には三桁の年数を見なければ難しいだろう。

 

「誰だ貴様は!?」

 

 一先ず誰かしらに話を聞こうと思った俺に聞き覚えのある声が詰問を投げ掛けた。

 

「その声は黒咲君ですか?」

 

 何故彼がこの場所にと訝しみがりながら振り向くと、そこには警戒した様子でデュエルディスクを構える黒咲隼と榊遊矢達が居た。

 俺が初めて会った頃の姿に大体を察しながら俺が両手を直角に上げると黒咲は訝し見ながら俺に問いただす。

 

「なぜ俺の名を知っている?」

「色々と複雑な事情があるので、説明すると長くなりますが宜しいですか?」

「…いいだろう。

 その前にその古臭いデュエルディスクを外せ」

 

 素の口の悪さもあってただ喧嘩を売っているだけに聞こえるが、煽って此方の情報を漏らさせようと彼なりに頑張っているのが察せられたので大人の対応を見せておく。

 

「だめですよ黒咲くん。

 人の物を貶めるような言い方は無闇矢鱈に相手の心情を悪くするだけで有意義な情報は得られませんよ?」

「っ!? 余計な世話を焼く前に事情とやらをさっさと話せ!」

 

 窘められた気恥ずかしさを誤魔化す様に声を荒げる黒咲に俺は苦笑を零してしまう。

 

「やれやれ。そんなふうではまた瑠璃さんに怒られてしまいますよ?」

 

 ただの軽口。アイスブレイクの一端のつもりでそう口にした瞬間黒咲の気配が明確に敵意を抱いた物に変わった。

 

「貴様!!瑠璃の居場所を知っているのか!!??」

「……成程。そういう事か」

 

 妹の所在を知らず怒り狂う黒咲隼。

 崩壊した『エクシーズ次元』。 

 これだけヒントがあれば連想は容易い。

 

「赤馬零王…娘のために()()()()やる覚悟『だけ』は認めてやるよ」

「な、なにを…?」

 

 堪えきれずくつくつと漏れる嗤いに黒咲が引いているが構う余裕はない。

 

「…ああ、まだ伝えていませんでしたね。

 些細は後として、今はこれだけ理解していただければ十分です」

 

 俺は悪魔の本性を抑えきれないままに嗤いながら嘯いた。

 

「私は赤馬零王が、いや。あのクソハゲを奴の血の一滴まで絶望に染めたいほど大っ嫌いなんですよ!」

 

 世界が分岐した条件はクソハゲが『精霊界』を観測しなかった。

 或いは不確定要素を懸念して『精霊界』を資源徴収先として狙わず『エクシーズ次元』の侵攻に集中した事で侵略速度が上がった世界なのだろう。

 もしかしたら俺というイレギュラーの不在により『精霊界』もこのような惨状になっている可能性もあり得るが、もしそうだとするなら…もう次元諸共殺すしか無いよな?

 

「お前は、一体…?」

「それはそうとこの街の生き残りはどの程度ですか?

 潤沢とは言えませんがそれなりに水と食料や医薬品のストックはありますので提供出来ますよ」

「は? いや、そんな物何処に…」

 

 当然の疑問に俺はデュエルディスクを起動してカードを置く。

 

「カード化解除」

 

 すると世界一高価なキャンピングカー『ElementPalazzo』が目の前に現れる。

 俺としては普段はカードにしまうし運転も出来ないので寝床に使うためのコンパクトサイズを買おうとしたのだが、姫様が「私に犬小屋で寝ろと言うの!?」と別荘として使うつもりで最高価格のキャンピングカーを買い付けて俺に管理を押し付けたのだ。

 快適なのは確かなのだが、毎回相当範囲で展開スペースを確保しないといけないのが地味にめんどくさい。

 

「うわっ!?」

「リアルソリッドビジョン!?

 だがこれは…!?」

 

 困惑する遊矢達に俺は種を明かす。

 

「クソハゲが開発したカード化を応用、発展させた収納技術です。

 立って話すには内容的に時間が掛かりますし、茶でも淹れましょう」

 

 茫然とキャンピングカーを見上げる彼らを置いてドアを開き中に入って冷蔵庫のミネラルウォーターを薬缶に移しコンロに乗せて加熱する。

 因みに電力ではなく魔力で稼働するIHコンロなので火事の心配は無い。

 水が湧くまでにどの茶葉とコーヒー豆を淹れようかと吟味していると恐る恐るといった様子で遊矢達がキャンピングカーに乗り込んで来た。

 

「うわぁ…なにこれぇ…」

 

 内装の豪華さに立ち竦む遊矢達に俺は尋ねる。

 

「コーヒーと紅茶のどちらにしますか?

 なんでもとはいきませんがある程度なら銘柄も希望に添えられますよ?」

「コーヒーを頼む。銘柄は任せる」

「かしこまりました。他の方はどうしますか?」

「同じもので構わん」

「じゃ、じゃあ俺もそれで」

 

 赤馬零児がコーヒーと言い他の者も同じでいいという。

 

「それでは適当に寛いで下さい。

 冷蔵庫にミネラルウォーターがありますので喉が渇いているなら好きにとって構いませんよ」

 

 ペーパードリッパーを用意しながらそう伝えて人数分のカップを並べていく。

 個人的にネルドリップの方が味わいは好みなのだが管理が面倒だし多人数に振る舞うなら味が均一にし易いペーパードリップの方が安定する。

 そうして淹れたコーヒーを其々が受け取り思い思いに砂糖やミルクを足していく中、ブラックのまま一口飲んだ零児が驚いた様子で俺に問うた。

 

「この香り、もしやブルーアイズマウンテンか?」

「良い舌をお持ちですね。

 ええ。やや粗めの中引きを用意させてもらいました」

「ブルーアイズマウンテン?

 それって凄いのか?」

 

 カフェ・オレを通り過ぎてコーヒー味のホットミルク地味た物にしていた沢渡の質問に零児が答える。

 

「カップ一杯で三千円なら安いと言って然るべき高級品だ」

「さんっ…!?」

「一杯で!?」

 

 とんでもない高級品と言われ絶句する彼等にミルクと砂糖を入れながら俺は嘯く。

 

「値段は気にせず好きなように飲んでください。

 美味しく飲めないならグラム十万も十円も大した差にはなりませんからね」

 

 そう言いつつコーヒーを口に含む。

 悪くは無いが、ハスキーさんの淹れたコーヒーには遠く及ばないなと、彼女達の有能さを改めて思い知りつつ、人心地着いたかと俺は口を開く。

 

「それでは先ず認識の摺合せから始めましょう。

 貴方方が敵対しているのは『融合次元』を支配する赤馬零王率いる『アカデミア』。

 これに間違いはありませんか?」

「……ああ。間違いない」

「では次に赤馬零王の真の目的に着いて何処まで把握していますか?」

「真の目的だと!?

 奴の目的などどうでもいい!瑠璃を取り戻し俺達の故郷をこんなふうにした奴をこの手で叩き潰すだけだ!!」

 

 黒咲がカップを叩きつけそう怒りを顕にするが、俺は静かに告げる。

 

「奴の目的は娘を取り戻す事。

 その為に必要な『柊柚子』『黒咲瑠璃』『セレナ』『リン』を手元に集める事が奴の狙いです」

「なんだと!!??」

「柚子が!!??」

『どういう事なんだ!!??』

 

 突如遊矢の背後に半透明の姿でユートが現れた。

 

「ユート君!! その姿は何があったのですか!!??」

 

 まさかズァークを覚醒させるために統合を? いや、様子から『一つの世界』についての知識はないようだから事情を確認するまでは何らかの事故により今の状態になったと見るべきだろう。

 

「ユートが見えているのか?」

「ええ。理由については私の事情にも関わるので後で説明しますが……そうか。こうなるとあまり時間的猶予は無いと見た方がいいな」

「一体どういう…」

 

 いつかも分からないタイムリミットを突き付けれ混乱しかけた所を沢渡の声が割割いた。

 

「おいオッサン!

 このネオ・ニュー沢渡さんにもちゃんと理解できるよう簡潔に説明しろ!!」

 

 そう身勝手にも聞こえる要求に空気が冷え、同時に抜けている段取りを冷静に確認出来た。

 

「ああ。失礼。

 要するに赤馬零王は極個人的な願望で世界を引っ掻き回し、誰も幸せにならない自己満足を叶えようとしているのです。

 それを言い切る根拠は、私が平行世界の別次元で奴と敵対し叩き潰した際に吐かせたからです」

「…俄には信じられんな」

 

 まあ、あちらからしたらあまりにも唐突過ぎるだろうから致し方ない。

 精神負荷を思えばあまりやりたくないが、納得してもらうために俺はデュエルディスクのカメラ機能を起動して『四天』と記載したフォルダを開き空中に投影する。

 

「なんだこれは!!??」

 

 黒咲が驚愕に目を剥いてワナワナと震えだす。

 さもありなん。

 俺が表示させたのは成長し大人になった『ウェディングドレス姿の黒咲瑠璃がタキシード姿のユートに横抱きにされ幸せそうに笑う』映像データだったのだ。

 

「合成…いや、俺の魂がこれが偽物の瑠璃なんかではないと訴えている!?」

 

 「真のお兄ちゃんなら魂で真贋を見極められる」とギルスが嘯いていたが……マジかぁ。

 

「これが偽物でないというなら、貴様は未来から来たというのか!?」

「そうだと言いたいのですが、事情はもう少し複雑です。

 私は赤馬零王を次元戦争が初期段階の内に挫くことで致命的損失が生じる前に事態を収束に向かわせることが出来た世界線の存在になります」

「???」

 

 遊矢と沢渡がはてなマークを浮かべ混乱する横で意味を噛み砕けた零児が口を開く。

 

「つまり、貴方は平行世界の未来の存在なのだな」

「そうです。そう言い切る根拠はこちらを見れば理解頂けると」

 

 そう写真をスライドさせ、ユーゴとリン、遊矢と柚子、ユーリとセレナが写真からでもわかるほどそれぞれが幸せそうに成長した姿で共に映し出された写真を表示していく。

 

「私が未来の住人である証拠は君たちがちゃんと大人になれた姿を見てきたからです」

 

 そう言ってから遊矢が酷く辛そうな顔で未来のあり得たかもしれない自分を眺めていることに気づき、失敗したかと悔やむ。

 と、

 

「ユートぉぉおおお!!」

 

 突如激昂した様子で黒咲が遊矢に組み付く。

 

「貴様ァ!!瑠璃との結婚は俺に勝ってからだと言った筈だぞ!!!!」

「落ち着け黒咲!! これはIF!! こっちのユートは瑠璃とは何もない筈だ!!」

 

 肉体が無いので代わりに組み付かれた遊矢が必死に言い募るも、ユートは引き攣った笑いを浮かべ明後日の方向に視線を泳がせていた。

 

「ちょッ!!?? お前その反応まさか!?」

「ゆぅぅぅとぉぉぉ!!!!」

 

 完全にお兄ちゃんスイッチがオンになった黒咲に振り回され悲鳴を上げる遊矢とユート。

 ドッタンバッタン大騒ぎを眺めながら俺は、ガス抜きになったみたいだからいいかと温くなり始めたコーヒーを啜るのだった。 

 




黒咲が柚子と瑠璃を見間違えたのは精神テロリスト状態のあっぷあっぷで魂が同一人物だからで許してあげてほしい。

次回はデュエルまで行けたらいいなぁ。
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