迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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という訳で今回は前回絡まなかったキャラと絡みつつデュエル序盤までとなります。


神は死んでも悪魔は嗤う(2)

 赤馬零王の真の目的。

 それを知り狂った願望を阻止するために手を組むことを了承してもらった俺は黒咲の案内で生き残りの集う難民キャンプへと向かい手持ちの物資を解放した。

 

「人数分の食事は用意出来ている!

 順番に並んでくれ!」

 

 まともな食事にありつくのも久方ぶりだったのだろう。

 黒咲の声掛けに応じてくれた手伝いから受け取った食事を必死に貪る姿にクソハゲへの怒りを燃やしながら並ぶ者達に十分な食事を渡していく。

 

「正直助かった。

 『アカデミア』の散発的な襲撃のせいで禄に物資の確保もできずに困っていたからな」

「いえ。世界は違おうと、それが一時凌ぎであろうと救える手を引っ込める趣味はありませんから」

 

 男の感謝の言葉にそう言いながら配膳を終えた後に遊矢の姿が無いことに気付く。

 

「遊矢君はどちらに?」

「配膳が終わるまでは見たが知らん」

「そうですか。

 遊矢君を探してきます。

 何かあれば連絡しますね」

 

 黒咲の答えに俺はジャーを二つ手に持ち適当に歩き出す。

 廃墟となったハートランドシティの惨状を新たに目にする度に赤馬零王への疑念が過ぎる。

 

「ここまでやっておいて娘が再会を喜ぶと本当に思っていたのか?」

 

 まともな感性の持ち主なら奴の凶行に対し恐怖を抱き赤馬零王を悪魔とでも罵りながら拒絶するだろう。

 そのくせで『スタンダード次元』に置いてきた妻と息子にも家族の情を残しており、全てが終われば家族全員で暮らせると本気で考えていた節が見えた。

 

「所詮は妄執に目を焼かれた狂人の考えだな」

 

 あれはもう人ではなく悪魔のソレだ。

 いや、悪魔どころか刹那主義かつ破滅主義である【魔轟神】でさえ奴と同じにするなと顔を顰めるだろう。

 零児には悪いが奴には惨たらしい死を与えた上で骸が塵になる迄晒し被害者を慰撫してもらわねばならない段階まできている。

 

「ん?」

 

 ふと、身を刺す敵意が自分に向けられていることに気付いた。

 数は、一人。

 嗅覚を起こして確かめてみると、敵意の中に…不安と焦燥?

 

 『アカデミア』ではないようだが…

 

「まずは話し合いをしませんか?

 暖かいスープがありますのでよければ腹ごしらえでもしながらと思うのですが」

 

 手のジャーを見せるように持ち上げながら敵意が来る方向に振り向くと、そこには俺が知る者が立っていた。

 

「君は、『天城カイト』君ですよね?」

「……」

 

 俺の確認にカイトは何も言わない。

 濁った瞳には憎悪が燃え、俺を見据えている。

 

「キャンプでは見かけませんでしたがお腹は空いていませんか?

 絶品とは言えなくても十分美味しいと言えますよ?」

「黙れ!」

 

 カイトはデュエルディスクを起動して俺に敵意の刃を突きつける。

 

「貴様、何のために俺達に近付いた!?」

「…君からしたら偽善になるのでしょうか?」

「偽善だと?」

「ええ。この世界の被害者を憐れみ。

 この世界を滅茶苦茶にした赤馬零王への怒り。

 それを晴らし自己満足を満たすための痛くもない範囲での私財の散財。

 私の動機を総じてみれば善意ではありますがそれらに付随するのは不純な動機ばかりで君達を慮っての行為とは言えませんから」

 

 今の彼には下手なお為ごかしをしたら致命的に拗れると見て正直に胸の内を語る。

 

「ならば貴様の真の目的は何だというのだ?」

「私がこの世界に来た理由は行方不明になった息子を探す為です」

「息子…」

「ええ。それととんでもない理由で家出をしたアホ娘も居まして、どちらかが見付かればと期待してこの街に来ましたが残念ながら空振りのようで、ですが惨状を前にはい頑張ってと背を向けるのは気が咎めたから多少なりとと支援を買って出ました」

「……」

 

 嘘偽りなく全てを語るとカイトは暫く俺を見定めた後デュエルディスクを待機状態に戻した。

 

「どうやら奴等のスパイでは無いみたいだな」

「あのクソハゲの配下だなんて冗談でも止めてくれ」

「…ふっ」

 

 腹の底から不快感を顕にするとカイトは僅かに顔を綻ばせた。

 

「それはそれとして、スープが冷めてしまうと勿体無いので受け取るだけでも構いませんから貰っていただけませんか?」

「貴様もほとほとしつこい奴だな。

 分かった。そこまで言うなら受け取ってやる」

 

 根負けした様子で差し出したジャーを受け取ろうとした手が途中で止まる。

 

「……全く、おちおち食事も取れないとは」

 

 その理由を理解した俺はジャーを地面に置いてデュエルディスクを展開するとベルトにセットしたデッキケースの一つを開いて中身をディスクにセットする。

 

「居るのは分かっていますので隠れていないで出て来なさい」

 

 強めに声を張れば悪意の籠もる笑い声と共に『アカデミア』の兵士が姿を現した。

 

「威勢のいいオッサンが居るようだな?」

「旧型のオンボロディスクでよく粋がる」

「雑魚狩りにも飽きてきたんだが、天城カイトと纏めて狩れば昇進の足しになるだろうさ」

 

 なんでコイツラ三人で一つの文章分け合うんだろう?

 アニメ的お約束にツッコミを入れつつカイトを見れば、そちらは既に別の三人組と対峙していた。

 

「カイト君。

 問題ありますか?」

「俺の事より貴様の心配だけしていろ!!

 『アカデミア』は俺が誰一人懺悔すらさせん!!」

 

 憎悪を籠めてそう吐き捨てるカイトに俺はもしやと思い至る。

 俺が知るカイトという青年は冷淡に見えてギルスが認めるほどのお兄ちゃん属性の持ち主であり、そんな彼がこれ程の憎悪を滾らせるとなれば家族に何かあったことは間違い無い。

 

「分かりました。

 ただ一つ、私は複数の特殊召喚を併用して扱いますので誤解なきようお願いします」

 

 復讐が悪いなんて言わない。

 寧ろその動機が正当で本人の心の整理を行う為ならば積極的に行うべきとさえ思う。

 カイトにそう断りを残し三人一纏めに俺に対峙する『アカデミア』に俺は告げる。

 

「さあ、現代遊戯王(理不尽の押し付け合い)と参りましょうか」

「吐かせ! 俺達に勝てると思う驕りを悔いながらカードになるがいい!!」

 

 「「「「デュエル!!」」」」

 

 ディスクの表示は『1』。

 2ターン目から攻撃宣言は可能なので手札次第では次のターンが回る前に死にかねないが、生憎と今の俺の手札は…

 

【怒れる嵐の神碑《ルーン》】

【神碑《ルーン》の泉】

【シンクロゾーン】

【ローンファイア・ブロッサム】

【抹殺の指名者】

 

 ちょっとえげつない盤面になるが問題無かろう。

 

「私のターン。

 ドローフェイズからメインまで使用する効果の宣言が無ければメインフェイズに移行する」

 

 フェイズ間の誘発の使用を確認するが相手は何も反応せず嘲笑うように口元を歪め眺めている。

 

「メインフェイズに移行。

 フィールド魔法【神碑の泉】を発動する」

 

神碑(ルーン)の泉】

フィールド魔法(制限カード)

(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、

自分は相手ターンに「神碑」速攻魔法カードを手札から発動できる。

(2):1ターンに1度、自分が「神碑」速攻魔法カードを発動した場合、

自分の墓地の「神碑」速攻魔法カードを3枚まで対象として発動できる。

そのカードを好きな順番でデッキの下に戻す。

その後、戻した数だけ自分はデッキからドローする。

 

「チェーンが無ければ手札から【ローンファイア・ブロッサム】を通常召喚し効果を発動。

 フィールドの植物族モンスターをリリースしデッキから植物族モンスターを特殊召喚する」

 

 さて、誘発はあるかな?

 反応を伺うが舐めた様子で手札を確認さえしない。

 

「宣言が無いようなのでデッキから【聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)】を攻撃表示で特殊召喚する」

 

聖種の地霊(サンシード・ゲニウス・ロキ)

通常モンスター

星1/地属性/植物族/攻 0/守 600

千年に1度、聖天樹から獲れる種は、千年の時を経てその土地の守護精霊になると言われている。

 

 フィールドに召喚された花の蕾が弾けるフィールドに台座に捧げられた種子が残される。

 

「アハハハッ!!

 コイツ馬鹿じゃねえの?

 攻撃力0の通常モンスターを攻撃表示で出しやがったぞ!」

 

 三人の内の一人がプレイングミスだと哄笑する。

 ……【ナチュルルーン】程じゃないが泉とサンシードが並んだ光景なんて即サレも視野に入る地獄の幕開けなんだが、知らないって本当に幸せだな。

 

「サーキット展開。開け未来回路!」

 

「ははは……は?」

「なんだこれは!?」

「サーキット? リンクマーカー!?」

 

 目の前に現れた未来回路に『アカデミア』が困惑するが無視して俺はゲニウス・ロキの台座を掴み未来回路へと投げ入れる。

 

「ゲニウス・ロキをリンクマーカーにセット!

 召喚条件はレベル4以下の植物族モンスター一体!

 発芽しろ大地を支える大樹の新芽!リンク召喚!リンク1!【聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)】」

 

聖天樹の幼精(サンアバロン・ドリュアス)

リンク・効果モンスター

リンク1/地属性/植物族/攻 0

【リンクマーカー:下】

レベル4以下の植物族モンスター1体

(1):このカードが「聖種の地霊」を素材としてEXモンスターゾーンにリンク召喚された場合に発動できる。

デッキから「サンヴァイン」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

(2):このカードは攻撃対象にされない

(この効果が適用されたモンスターしか自分フィールドに存在しない状態での相手の攻撃は自分への直接攻撃になる)。

(3):1ターンに1度、自分が戦闘・効果でダメージを受けた場合に発動できる。

その数値分だけ自分のLPを回復し、EXデッキから「サンヴァイン」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 未来回路から細いツタが伸びて一本の木へと成長する。

 

「リンク召喚!?

 なんだこれは!!??」

「落ち着けよく見るんだ!!

 出て来たモンスターは攻撃力0!次のターンで破壊すれば問題無い!!」

 

 パニックになりつつもドリュアスのステータスの低さに恐れる必要はないと叱咤する。

 

「優先権の行使がなければ俺はドリュアスの効果でデッキから【聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)】を手札に加えそのまま発動する」

 

聖蔓の播種(サンヴァイン・ソウイング)

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):デッキから「サンシード」モンスター1体を特殊召喚し、自分は1000ダメージを受ける。

自分フィールドに「サンアバロン」リンクモンスターが存在しない場合には、

この効果で「聖種の地霊」しか特殊召喚できない。

このカードの発動後、ターン終了時まで自分は植物族モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

(2):自分フィールドの植物族リンクモンスターが戦闘または相手の効果で破壊される場合、

代わりに墓地のこのカードを除外できる。

 

「ライフポイントを1000ポイント支払いデッキから【サンシード】モンスターを特殊召喚する」4000→3000

 

聖種の天双芽(サンシード・ツイン)

効果モンスター

星2/地属性/植物族/攻 0/守 800

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「サンアバロン」リンクモンスターが存在し、

このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、

自分の墓地のレベル4以下の植物族の通常モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

(2):墓地のこのカードと自分フィールドのリンクモンスター1体を除外して発動できる。

自分の墓地に同名の植物族リンクモンスターが2体以上存在する場合、その内の1体を選んで特殊召喚する。

 

「ライフポイントが減少した時ドリュアスの効果が発動。

 受けたダメージ分のライフを回復してからエクストラデッキから【聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)】を特殊召喚する」

 

聖蔓の癒し手(サンヴァイン・ヒーラー)

リンク・効果モンスター

リンク1/地属性/植物族/攻 600

【リンクマーカー:上】

植物族の通常モンスター1体

(1):自分フィールドの「サンアバロン」リンクモンスターが効果でフィールドから離れた場合に発動する。

このカードを破壊する。

(2):このカードが特殊召喚に成功した場合、

フィールドの「サンアバロン」リンクモンスター1体を対象として発動できる。

自分はそのリンクマーカーの数×300LPを回復する。

(3):自分の植物族リンクモンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。

自分は600LP回復する。

 

 これでフィールドにモンスターは三体。

 対して奴等は現れたモンスターの悉くが攻撃力が低い事に安堵し嘲笑っている。

 

 ああ。あの顔が絶望に染まり泣き叫ぶのが本当に楽しみだ。




今回のデッキコンセプトは…「無限にデュエル出来るデッキ」となります。

因みにこのデッキを見た姫様は自分の我儘で執事の心が壊れたと幼児退行するほどギャン泣きしました。
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