迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
ーー次元が違う。
『白銀ユウタ』と名乗る、平行世界の未来から来たというデュエリストのタクティクスに遊矢達は只々圧倒されていた。
凄まじいカードパワーとそれを制御するタクティクス。
複数の召喚方を使い熟し適切に扱う為のカードの知識と判断力。
召喚権を使わずフィールドには三体のモンスターが陣を敷く様子は遊矢達に畏怖を抱かせるのに十分だった。
だからこそ理解出来ない。
「あの時どうしてディスクガイではなくドリームガイを破壊したんだ?」
デストロイフェニックスガイの破壊を無駄打ちした誰が見ても明らかな悪手だけがあからさまに
相手を舐めて手を抜いた?
残虐に嗤い抵抗を赦さない姿を間近で見た天城カイトは手を抜いたならばその抵抗が無意味と化すより悪辣な体勢を敷いてからやるとその考えを否定する。
カードの効果を知らなかった?
【HERO】ミラー対決のこの状況でピンポイントにドリームガイの効果を知らない筈が無いと赤馬零児は否定する。
純粋なプレイングミスだった?
白銀はそれが悪手であると全部承知の上で自分の意志で悪手を選んだのだと黒咲隼は否定する。
疑惑の正体に至れず納得出来ない感情を抱く三人に対し、沢渡と権現坂はシンプルな感動を抱いていた。
「リンク召喚…!
アレを手に入れたら俺は『ネオ・ニュー・グレート沢渡さん』に進化するぜ!!」
「うむ! 不動の新たな境地、その答えに繋がる可能性を俺も見た!」
シンクロやエクシーズよりも自由度の高い新たな召喚方に自分のデッキの可能性を広げてくれると期待と興奮に胸を高鳴らせる。
そして…。
『聞こえたか遊矢?』
「…ああ」
プレイングミスの直前、デストロイフェニックスガイから強烈な『意思』が放たれたのを遊矢とユートの二人は感じていた。
何を訴えていたのかまでは理解出来なかったが、それでもデストロイフェニックスガイが悲痛とも言える程の切なる願いを使い手である執事に訴え、そして執事はそれを聞きいれてドリームガイを破壊した。
カードが自分の意志を訴えるばかりかプレイングに口を挟む。
不可思議で不気味な話である筈なのに、遊矢達は不思議と怖れを感じるどころか奇妙な安心感さえ感じていた。
様々な感情を過ぎらせる中、負ければ死という制裁を前に闘う執事に遊矢達は揃って不謹慎と言える程に
「楽しい…だと?
貴様、巫山戯ているのか?」
「巫山戯る?
そんな訳あるか」
苛立ち問い返すエド・フェニックスに執事は口元を吊り上げて嘯く。
「100以上のテーマが存在するDMデュエルモンスターズで同じテーマのミラー対決だぞ?
そんな貴重な経験が楽しいと思わないのか?」
「それが巫山戯ていると言っているんだ!
ボク達は戦争をしているんだぞ!?」
「それは
「っ!?」
前提がそもそも間違っていると吠える執事にエド・フェニックスは息を呑んだ。
「自分と同じテーマを使う対戦相手にワクワク出来なくて何がデュエルだ!
自分が知らないカードがあった。
知っているカードを自分が考えたことも無い使い方をしていた。
知っていても相手は自分が使わない戦術を使っている。
自分の使うカードの自分の知らない組み合わせ知れて、お前は悔しいと思えないのか?
自分ならこう使う。組み合わせるならこのカードを使うと自分でやってみたいとは思わないのか?」
「そ、それは…」
「男なら、いや、デュエリストなら叫んでみろ!
自分のほうがもっと上手く【HERO】を活躍させられると!!
俺こそ最強の【HERO】使いだとなぁっ!!」
今の状況を一切鑑みぬ、場にそぐわない魂の咆哮にエド・フェニックスは湧き上がる感動を振り切るため堪らず叫び返す。
「空気を読め!!
ボク達は戦争をしているんだぞ!?」
「知るかそんなもん!
だったら!戦時国際法はどうなっている?」
「……なんだそれは?」
知らない単語を口にされ思わずそう問い返したエド・フェニックスに執事はやっぱりなと思いつつエド・フェニックス同様困惑していた遊矢達に水を向ける。
「はいじゃあ代わりに天城カイト君答えてあげて!」
「…『戦時国際法』とは要するに戦争のルールだ。
デュエルに準えるならデュエルのレギュレーションとでも言えば理解出来るだろう」
唐突過ぎて困惑しながらもこの男がやるからには何らかの意味があるのだろうと全員が理解出来るだろう例えを並べて回答する。
「はい満点!
ではそれを踏まえると戦時国際法が結ばれていなければ『戦争』と冠するのは難しいとなりますね。
では改めて『融合次元』と『エクシーズ次元』は戦時国際法を結んでいるのか?
貴方が知らないなら知らないで仕方ないから、現地司令官なら知ってて当然なのでデュエルの後にでも聞いてきなさい」
そう言うとエド・フェニックスの顔が引き攣った。
「どうしました?
……もしや実は貴方が現地司令官だけど戦時国際法の存在さえ知らないとか?」
「……」
すごく悩んだ様子を見せた後、エド・フェニックスは無言で目を逸らした。
「えっと…戦時国際法を結ばない戦争はそんなに不味いのか?」
「不味いどころではない」
代表して遊矢が疑問を問うと零児が引き攣った顔でそう答えを告げた。
「戦時国際法を結ばずに戦争をするという事をデュエルに準えれば、デッキの中身を【エグゾディア】一揃いと残り全部を【強欲の壺】にしても
いや。それすら温い。
デッキ総数を五枚にして【エグゾディア】だけにしても
「なんだよ…それ…?」
守って当たり前だと当然に考えていたルール。
しかしその前提さえ投げ捨てても誰にも批難されないという答えに言葉を無くした。
そこで遊矢達は『アカデミア』がどれだけ許されざる行いをしていたのか理解し、同時に執事が
極端に言えば執事がニビルをデュエルをしていない民間人相手に落としていけないというルールが無いからと、本当にニビルを大量破壊兵器として運用したとしても誰からも咎められず許されてしまうのだ。
その上で戦争という限定状況において基本的に敵対する勢力に対する殺人は罪と数えない。
つまり、執事が『融合次元』で大量殺人を実行しても自らを『エクシーズ次元』に味方する義勇軍だと嘯けば執事が何をしても『正義』となってしまうのだ。
「まあいいや。
デュエルを続けようか」
自分から振った話をあっさり放り捨ててログを確認し始める執事に「待て!」とエド・フェニックスは声を張り上げる。
「自分から振っておいてなんだその扱いは!?」
「だってこのまま戦争の法的正義とかの話をしても時間ばかり掛かって無駄じゃないか。
だったらデュエルを再開したほうが健全で楽しいだろう?」
「だからって貴様!?」
「…じゃあ、こうしましょう」
直後、執事が悪魔が嗤うような笑みを浮かべ慇懃な口調で嘯いた。
「私がこれから三ターン以内にこのデュエルに勝利したら、今すぐ『融合次元』に赴き『アカデミア』と無関係な一般人に向けて手持ちのモンスターを解き放って殺戮と陵辱の限りを尽くしましょう」
「「「「「「「なっ!?」」」」」」」
何を言っているんだとネオス・ロードまでもを含めた全員が驚愕した様子で執事に視線を向ける中、執事はまるで新しい遊びを前にワクワクするような様子で愉しそうに嘯く。
「きっと見ものですよ?
崩れ落ち燃える街の中を破壊の限りを尽くし人を喰らい辱め殺し弄ぶモンスターたちの姿はきっと素晴らしいエンターテイメントとなって私を楽しませてくれるでしょうね」
地獄の釜の底の光景をハロウィンパレードのように嗤う執事に最初にエド・フェニックスがブチ切れた。
「そんな事が許されると思っているのか!!??」
「おやおやおやぁ?
『エクシーズ次元』の人達にはそんな地獄を味あわせた君達がどうして怒るのですか?
まさか自分達は正義だから何をしても許されると?
街を破壊し、人を苦しめ、カードに変えてその恐怖に震える者達を嘲笑いハンティングゲームだと楽しんでいた『アカデミア』がそれを怒る権利がお有りと本気でお思いなのですか?」
「それ…は……」
「自分がされたら嫌なことを人にしてはいけない。
デュエルの対戦相手には適応されませんが、デュエル以外でやったらやり返されて当然でしょう?」
『流石にソレは協力しかねるぞ?』
因果応報だと嗤ってやるとネオス・ロードが声なき声で苦言を申した。
(もちろん嘘八百だよ。
本当にやるにしてもドクトルなんかのハゲの度し難い関係者だけに絞ってだ。
後、ハゲは俺が殺るから手出しは許さん)
『それなら…まあ、仕方ないか?』
完全には承服しかねても『エクシーズ次元』の惨状を見た以上執事はもう止まりはしないかと無辜の民に手は出さないと誓う執事に納得しネオス・ロードはデュエルに集中する。
「初手はどうしましょう?
ニビルに任せると死んだことさえ気づけないでしょうし、やはり【クシャトリラ】が適任でしょうか」
「やらせはしない!!
ここでボクが貴様を討つ!!」
「それは楽しみだ。
その顔が絶望に染まる瞬間はさぞ美しいでしょうね。
それでは再開して私はディアボリックガイとクロスガイをリンクマーカーにセット!
アローヘッド確認!召喚条件は【HERO】モンスター二体!
来なさい。悪魔の身で正義を貫くヒーロー!
リンク召喚!リンク2!【
【
リンク・効果モンスター
リンク2/闇属性/悪魔族/攻1700
【リンクマーカー:左下/下】
「HERO」モンスター2体
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがL召喚した場合に発動できる
(この効果を発動するターン、自分は「HERO」モンスターしか特殊召喚できない)。
EXデッキの「HERO」融合モンスター1体を相手に見せ、
そのモンスターにカード名が記された融合素材モンスターを2体までデッキから手札に加える(同名カードは1枚まで)。
(2):このカードのリンク先の悪魔族モンスターの攻撃力・守備力はそのレベル×100アップする。
「召喚時効果は使えないのでスルーして、これでリンクマーカーの先のネオス・ロードの攻撃力はレベル×100ポイント上昇しの3500になりました。
私はカードを一枚伏せてターンエンド。
さあ、本当に貴方が正義だというのならこの程度は乗り越えて私の喉笛を掻き切ってみなさい!」
まるでラスボスのような事を宣いながら執事はターンエンドを宣言した。
またこいつ魔王ムーブ始めたよ…。