迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
「さて、次は誰が「俺の相手になってもらうぜ!」」
食い気味に沢渡君が青いデッキケースを押しつけてきた。
「【キスキルスプライト】ですか。
カジュアル寄りなのは兎も角、パーミッション寄りのデッキなのですが大丈夫ですか?」
「ハハッ!この『ネオ・ニュー・グレート沢渡さん』に不可能は無いぜ!」
沢渡君の異様なテンションとデッキの重さに違和感を感じつつデッキをセットしたのだが…
「エクストラデッキが無い?」
ケースは【キスキルスプライト】で間違い無いのだが中身が変わっている?
「まさか沢渡君?」
「ハーハッハッハッ!!
『ネオ・ニュー・グレート沢渡さん』となった俺とのデュエルで連勝記録をストップしてもらうぜ!!」
やりやがったこの野郎。
「沢渡お前また!?」
遊矢君の反応から初犯では無いようだが、成程。『沢渡シンゴ』というキャラクターは『万丈目準』のような方向性の人物だったみたいだな。
そして新たな召喚方法を前に悪癖が顔を出したと。
「……いいでしょう。
リンク召喚の特徴を体感してもらう機会と割り切っておきます。
デュエルが終わったら返していただければ今回に限り見逃しましょう」
「良いぜ。カードに愛された『ネオ・ニュー・グレート沢渡さん』が使いこなせないデッキは無いが、【魔界劇団】は手放したくたないからな!」
盗人に人権無しとリアルファイトで叩きのめして取り返してもいいのだが、ある意味遊戯王世界の展開らしいかと思いつつデッキトップから五枚引く。
「「デュエル!」」
先攻は沢渡君。
「行くぜ!
俺は手札から【
【
効果モンスター
星2/光属性/サイバース族/攻 500/守 0
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分フィールドに他のモンスターが存在しなければ発動できる。
手札・デッキから「リィラ」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手モンスターが攻撃宣言する度に、自分は500LP回復する。
フィールドに現れるコミカルなデザインのモンスター。
手札に誘発は無い。
というか多分このデッキには入ってないだろう。
「一応チェーンはありませんと言っておきます」
「行くぜキスキルの効果を発動!
俺は【
【
効果モンスター
星2/闇属性/サイバース族/攻 500/守 0
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分フィールドに他のモンスターが存在しなければ発動できる。
手札・デッキから「キスキル」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手は500LPを払わなければ攻撃宣言できない。
キスキルが手招きすると同じタッチで描かれた気怠な雰囲気の少女がフィールドに現れる。
さて、ここからどう展開するかがあのデッキの難しい所ですが果たして?
「早速行かせてもらうぜ!
俺はキスキルとリィラをリンクマーカーにセット!」
「いきなりリンク召喚をするのか」
「沢渡の奴もう使いこなせるというのか!?」
遊矢君達が驚く声をバックに空中に現れた未来回路に二人が飛び込んでいく。
「アローヘッド確認!召喚条件は【リィラ】モンスターを含むモンスター二体!!
行くぜ!『ネオ・ニュー・グレート沢渡さん』のリンク召喚だ!!」
そう沢渡君がリンク召喚を高らかに宣言しようとしたのだが…
【Error】
「……はぇ?」
ビープ音が鳴り響きポンッと音を立てて未来回路からキスキルとリィラが弾き出された。
「なんでだ!!??
召喚条件は確かに満たしているのになんでリンク召喚出来ないんだよ!!??」
目を回し積み重なるキスキルとリィラを他所に召喚失敗が認められず騒ぐ沢渡君だが、俺はその理由を察していた。
「一つ確認なんですが、そのデュエルディスクには『エクストラモンスターゾーン』は付いてますか?」
「『エクストラモンスターゾーン』?」
「ええ。この部分です」
自分のディスクの『エクストラモンスターゾーン』を示しながら俺は解説する。
「リンク召喚されたモンスターは『エクストラモンスターゾーン』かリンクモンスターのリンクマーカーの先のモンスターゾーンにしか配置出来ません」
「召喚条件だけじゃなくて召喚場所にまで制限が掛かっているのかよ!?」
「緩い召喚条件ですからそれぐらいの制約は必要ですよ」
実際その制約が何の縛りにもならんからリンク召喚は厄介なんだけどな。
「じゃ、じゃあ『エクストラモンスターゾーン』が無い俺のデュエルディスクでリンク召喚は…」
「出来ませんよ」
「なんだとーー!!!!????」
中々愉快な顔芸を見せてくれる沢渡君に僅かばかり溜飲が下がる。
「先に言っておきますが一度始めたデュエルを中断する気はありません。
どうしてもとエクストラデッキのモンスターを喚びたいと言うならエクストラデッキにはエクシーズモンスターも何体か入ってますからそのカード達で頑張って下さいね」
「【ギガンテック・スプライト】と【マネキンキャット】と【シャドー・モスキート】の雑魚モンスター三体でどう勝てっていうんだ!!??」
どれもそのデッキだと必要不可欠なんだが?
というか効果を読んだ上で雑魚扱いしてるなら君のタクティクスは無いと宣言しているようなものなんだが…いや、アニメ時空の住人だし然程カードを読み込む時間もなかったからランクとステータスだけ確認したのだろう。
「クソッ!!俺は手札から【スプライト・レッド】と【スプライト・ジェット】を守備表示で特殊召喚する!
【スプライト・ジェット】の効果を発動!
デッキから俺は…速攻魔法【スプライト・ガンマ・バースト】を手札に加えるぜ!」
【スプライト・レッド】
効果モンスター
星2/炎属性/雷族/攻1200/守1800
このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにレベル2かリンク2のモンスターが存在する場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):相手がモンスターの効果を発動した時、
自分フィールドの他のレベル2・ランク2・リンク2のモンスター1体をリリースして発動できる。
その効果を無効にする。
ランク2かリンク2のモンスターをリリースして発動した場合、
さらにその無効にしたモンスターを破壊できる。
【スプライト・ジェット】
効果モンスター
星2/闇属性/雷族/攻1300/守 700
このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにレベル2かランク2のモンスターが存在する場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):このカードが特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スプライト」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
フィールドにファッショナブルな服飾で着飾る赤と白のエネルギー生命体がパチパチと炭酸が弾けるような音を点てて立ちはだかる。
ジェットでスターターではなくガンマ・バーストか…。
既に手札にあるのか、或いは特性を理解しきっていないから火力を確保しに向かったのだろう。
「俺はキスキルとジェットでオーバーレイ・ネットワークを構築!
エクシーズ召喚!ランク2!【
【
エクシーズ・効果モンスター
ランク2/光属性/獣族/攻2000/守 900
レベル2モンスター×2
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、
相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを相手フィールドに特殊召喚する。
(2):このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、
相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
種族または属性がそのモンスターと同じモンスター1体を自分の手札・デッキ・墓地から選んで特殊召喚する。
ガンマ・バーストでパンプすれば3400の大台に乗るから攻撃表示のキスキルを退かすついでに壁として出したのだろう。
「俺はカードを二枚伏せてターンエンドだ!
予定は少し狂ったけど、不慣れなデッキはお前も同じだ!」
「いえ。【魔界劇団】は一時期回していたので使い方は知ってますよ」
「……え゛?」
予想が外れたという風に顔を引き攣らせる沢渡君に俺は言う。
「最初に言ったはずですよ。
私は別次元の未来人だと。
時代が進めばカードプールの普及と拡大は当然。
【魔界劇団】だけでなく皆さんの【超重武者】、【銀河眼】、【DDD】、【RR】、【EM】も一通り触り使い方を学んでいます」
「なんだよそれ!一方的に俺だけ不利なんて卑怯だろうが!」
「人のデッキを摩り替えた貴方がそれを言うのはどうなんですか?」
「喧しい!」
身勝手な言い分なんだか、不思議とそこまで苛つかないのは彼の人物像のお陰だろうか?
ともあれ先ずは盤面を再分析しよう。
フィールドにはあのデッキの素出し最高打点のマネキンキャットが攻撃表示で他は守備表示のレッドとリィラ。
伏せカードは二枚で一枚はガンマ・バーストでほぼ確定。
その上でデッキに入っているのは…ダブルクロス、スマッシャーズ、夢幻泡影辺りだった筈。
取り敢えず二妨害構えていると前提を立て俺はターンを開始する。
「ドローフェイズ。ドロー。
スタンバイフェイズ。メインフェイズ。
メインフェイズまでに使う効果はありますか?」
「え? えっと…無いぜ!」
慌てて確認仕出す辺りまだ読み込みの最中のようだ。
さて、私の手札は…
【魔界劇場「ファンタジック・シアター」】
【魔界台本「オープニング・セレモニー」】
【魔界劇団-エキストラ】
【魔界劇団-カーテン・ライザー】
【魔界大道具「ニゲ馬車」】
そして引いてきたのは【魔界劇団-コミック・リリーフ】と汎用札は無いが中々不足は感じられないラインナップ。
これは一芸披露しろとデッキからの要望だろうか?
であるなら応えてこその『精霊使い』。
せいぜいデッキにそっぽ向かれないよう踊ってみせましょうか。
「それではメインフェイズを開始しますが、このデッキを奮うなら相応の振る舞いというものが必要でしょうね」
「んん?」
若干の戸惑いを見せる沢渡君に魅せるように俺は上着に手を掛け派手に脱ぎ去ると黒の燕尾服から星柄タキシードにピンクの蝶ネクタイへと早着替えを行った。
「「「「「えええぇぇぇっっっ!!??」」」」」
「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
辛くて苦しいそんな毎日に疲れた心をリフレッシュ!
時間も苦悩も全部忘れてしまう楽しい時間をお届けしましょう!!
進行は私『白銀ユウタ』が勤めさせていただきます」
【
「フィールド魔法【魔界劇場「ファンタジック・シアター」】を発動します。
それでは愉快な一時の始まり始まり〜」
万丈目とか沢渡みたいなクソ野郎ムーブしても嫌われ切られないキャラ書くのって書手視点だと凄く難しい。
でもこういうことやらせてもちゃんと書けばアンチにならないからすごく便利。
時間はトンチキデュエル…になるかも?←