迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
これでサイマル・デーモンズまで禁止になったらパーミッションはマジでどうなっちゃうんだか…
「俺のターン!ドロー!
げぇっ!?」
引いたカードを改めた瞬間、沢渡君が絶叫をあげて引いたカードを放り出した。
「どうしました?」
「どうしたもこうしたもねぇよ!
なんでデッキにゴキ◯リが入っているんだ!!??」
そう騒ぐ沢渡君に落ちたカードを見ると、そのカードは【増殖するG】であった。
「あまり酷い事を言わないであげて下さい。
『アカデミア』の司令官も採用していたように効果をよく読めばそのカードがどれだけ優秀か理解出来る筈ですよ」
「はぁ? レベル合わせで入れてるんじゃないのかよ…?」
俺の言葉に訝しがりながらも沢渡君は嫌そうにカードを拾い確かめてみる。
「何々…このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
自分・相手ターンに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
このターン中、以下の効果を適用する。
相手がモンスターを特殊召喚する度に、自分は1枚ドローする。
……ぶっ壊れを超えた化物じゃねえか」
ビジュアルのディスアドがどうでもよくなるレベルのぶっ壊れ効果に沢渡君がそう口にする。
「私の環境は手札に【増殖するG】があるかどうか。
そしてそれが通るか否かで勝敗が決まるとまで言われるほど重要なカードですから無下にしないであげて下さい」
「デュエルの勝敗をゴキが決めるって嫌過ぎる」
酷い言われようだ。まあ事実だからしょうがないけど。
「因みに効果のドローは回数が条件なのでペンデュラム等の複数召喚でも一枚しか引けないので注意してくださいね」
「そこまで都合は良くないのか。
まあ仕方ない。
俺はモンスターをセットしてターンエンドだ」
増G構えての壁増やし。
実は結構厭らしい布陣なんだよなと思いつつ、セットモンスターは推定マルチャミーかと推察を挟んでターンを開始する。
「それではドローフェイズ。ドロー。
増Gはフリーチェーンでいつでも効果が発動出来ますので使う際にはチェーン宣言をお願いします。
それではスタンバイフェイズからメインフェイズまでに使われますか?」
「フリーチェーンならエキストラの効果発動に合わせたほうが確実に引けるからそこまで温存するぜ」
適切なタイミングの一つを言うまでもなく理解するなんて思った以上に飲み込みが早い。
ゴリ押しでリーサルを目指せば手札増加後に仕留め損なうリスクが見えた以上このターンは二ドローに抑えて最低限の展開に留めるしかないな。
「それではメインフェイズに入ります。
私はPスケールのエキストラの効果を発動します」
「それにチェーンして手札から【増殖するG】を墓地に送って発動するぜ!」
「通ります。
では逆順処理を実施して【増殖するG】の効果を適用した状態でエキストラが特殊召喚されます」
直後、沢渡君の足を拳大のモザイクの塊が駆け上がりと沢渡君の手に張り付くとカードに変化した。
「ギャァァァ!!??」
あまりにショッキングな光景に沢渡君が絶叫する。
「ちょっと待て!!??
今ゴキが俺の体を走り回ったぞ!!??」
「普段は包囲するぐらいでそんな事はしないのですが…どうやら沢渡君は【増殖するG】に甚く気に入られたようですね」
或いはさっき投げ捨てられた報復かも。
「嬉しくねえよ!!?
っていうか使ったら大量のゴキに囲まれるとか聞いてないぞ!!??」
「どうやらカードが気に入った相手によって演出を変えているようでして。
こればかりは私もちょっと検証したことが無いので推測の域を出ませんが…ともあれエキストラの効果を発動して自身をリリースしてデッキから二枚目のメロー・マドンナをPスケールにセットします」
「納得いかねぇ…。
今引いた【灰流うらら】で止める!!」
「残念ですがフィールドにセットする効果を【灰流うらら】では止められないので手札に戻して下さい」
「なんでだよ!!??」
というか増Gの次にピンポイントにうららを引くとか沢渡君の天運はマジで万丈目準と同じかそれ以上かもしれん。
「メロー・マドンナのペンデュラム効果を発動。
ライフポイント1000を払いデッキから【魔界劇団】モンスターをサーチします。
こちらはうららで止められますが如何しますか?」3500→2500
「止めるに決まってるだろうが!!」
効果を発動しようとしたメロー・マドンナだが馬車に乗り込んできたうららを優しく説教するのに時間を取られ効果を不発にしてしまう。
「それではメロー・マドンナを守備表示に変更しカードをカードをセットしてメインフェイズを終了します」
「くっ、結局1枚しか引けなかったか…」
「展開を行わせないのが増Gの役割ですから十分な働きと考えてよろしいかと。
それでは話の続きを致しましょう」
そう俺が嘯くとメロー・マドンナが馬車の座席から立ち上がり美しい調べを謳い出す。
俺はそれを邪魔しないよう気をつけながら同時にBGMとして語りを開始する。
「リアルソリッドビジョンの完成は赤馬零王の目論見通りデュエルに更なる変化を齎しました。
実際に触れる事の出来るモンスターとの連携はデュエルの見栄えを更に派手に彩り、その技術を発展し応用する事でデュエルフィールドさえ自由に書き換え選べるようにしました。
そうして新時代のデュエルが人々を魅了する中、一人の青年が頭角を現しました」
それに合わせてメロー・マドンナの歌が楽しげなものから静謐なものに転調する。
さすがプロフェッショナル。こちらの語りから必要な要素を汲み即興で歌を変える技術の高さに感心しながら続きに入る。
「彼は生まれつきカードの声が聞こえるという不思議な力を持っていました。
カードの声など幻聴ではないのか?
そう思われるのも当然でしょう。
されどフィールドに現れたモンスターがまるで自分の意志があるかのように振舞う様には皆様にも覚えがありませんか?
それは本当にただのプログラムによる反応だと?
声を掛けられたら喜び、感謝を告げれば嬉しがり、失敗すれば悔しがり、攻撃を受ける際には恐怖し、味方を倒されたら悲しみ怒りをむき出しにする姿を貴方方は本当にただのプログラムによるエフェクトだと切り捨ててしまいますか?」
俺の言葉に思い当たる節があるようで疑いつつも今現在のデュエルの様子を見ていたら完全に否定は出来ないと様々な感情を過ぎらせる前で俺は世界の崩壊の始まりを語る。
「青年の名は『ズァーク』。
リアルソリッドビジョンから始まる動乱の中心に立つ運命を背負うデュエリストであります。
もう少し語りたい所ではありますが、対戦相手を待たせすぎてはいけません。
彼の物語を詳しく語るのは次の私のターンとさせていただきます。
それではターンエンド」
メロー・マドンナの歌い終えに合わせエンドを宣言し二人並んで一礼する。
「すごいなアンタ。
話の続きが気になりすぎてデュエルを終わらせたくなくなっちまったじゃないか」
「気にせず勝ちに来て構いませんよ?
勝負は水物。主義に反しない勝ちの目を見逃すのはデュエリストの恥ですから。
それにこの芝居はデュエルが終わっても演目が終わるまでは続けるつもりですので、中断の心配はせずに存分に奮って掛かってきなさい。
メインギミックが死んでいてもそのデッキはまだ戦える。
そのデッキのポテンシャルを全力で引き出してみせなさい」
敢えて上からの目線でそう言うと沢渡君は歯を剥いて楽しそうに笑った。
「当然だ!『ネオ・ニュー・グレート沢渡さん』はいつだって全力で勝ちに行くぜ!
俺のターン!ドロー!」
引いたカードに目を剥いて悔しそうに手札を公開する。
「俺が引いたのは【ハーピィの羽根箒】だ!
フィールドの魔法罠ゾーンを全て破壊する!」
「本当に君の引きは神掛かっていますねぇ!
チェーンして速攻魔法【魔界台本「ロマンティック・テラー」】を発動します!」
【魔界台本「ロマンティック・テラー」】
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドの「魔界劇団」Pモンスター1体を選んで持ち主の手札に戻し、
手札に戻ったモンスターと元々のカード名が異なる表側表示の「魔界劇団」Pモンスター1体を
自分のEXデッキから守備表示で特殊召喚する。
(2):自分のEXデッキに表側表示の「魔界劇団」Pモンスターが存在し、
セットされたこのカードが相手の効果で破壊された場合に発動できる。
デッキから「魔界台本」魔法カードを任意の数だけ選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットする。
実体化した羽根箒を握り沢渡君が大仰に振り払うと背後のテントと舞台装置が纏めて吹き飛んでいく。
使わず【魔界台本】を大量セットするほうがアドバンテージは稼げるが、ガンマ・バーストでメロー・マドンナを破壊されたら【魔界劇団】のリクルート手段が足りなくなると判断しリーサルを取られる覚悟でメロー・マドンナを回収し最低限次に動ける盤面を作る。
「逆順処理によりフィールドのメロー・マドンナを手札に加えエクストラデッキから【魔界劇団プリティ・ヒロイン】を守備表示で特殊召喚します!」
「チィッ!?
だがこれでフィールドは全滅に出来る!
バトルフェイズ!マネキンキャットでプリティ・ヒロインを攻撃!」
沢渡君の宣言を受けマネキンキャットがジャンプからの飛び蹴りを見舞わせると、プリティ・ヒロインが派手にワイヤーアクションよろしく派手に吹っ飛んでフィールドから退場する。
「プリティ・ヒロインの破壊時効果を発動!デッキから【魔界台本「オープニング・セレモニー」】をセットします」
「そいつをセットするのか。ターンエンドだ!」
「私のターン。ドローフェイズ。ドロー」
引いたのは【魔界劇団-コミック・リリーフ】。
リーサル脱出のためにライフ回復をとオープニング・セレモニーを選んだが、どうやら日和るのは許さないらしい。
「スタンバイフェイズからメインフェイズまで使う効果はありますか?」
「無いぜ」
「分かりました。
それではメインフェイズに入り私は手札のメロー・マドンナをPスケールにセットしライフポイント1000を支払い効果を発動します」2500→1500
「使う効果は無いぜ」
「分かりました。
私はデッキから【魔界劇団-コミック・リリーフ】を手札に加えそのままペンデュラムスケールにセットします」
【魔界劇団-コミック・リリーフ】
ペンデュラム・効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守2000
【Pスケール:青8/赤8】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手フィールドのモンスター1体と
自分フィールドの「魔界劇団」Pモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター2体のコントロールを入れ替える。
その後、このカードを破壊する。
【モンスター効果】
(1):このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
(2):自分スタンバイフェイズに発動する。
このカードのコントロールを相手に移す。
(3):1ターンに1度、このカードのコントロールが移った場合に発動する。
このカードの元々の持ち主は自身の魔法&罠ゾーンにセットされた「魔界台本」魔法カード1枚を選んで破壊できる。
「げっ!? まさかその手札は…」
「私は手札から【魔界劇団-コミック・リリーフ】を通常召喚しPスケールにセットしたコミック・リリーフの効果を発動!
セットモンスターとコミック・リリーフを選択しコントロールを入れ替えた後に自壊します!」
安牌はマネキンキャットだがこちらに移動させるのはやめたほうがいいという直感が働いたためセットモンスターと入れ替える。
「チェーンはありますか?」
「…無いぜ」
「分かりました。ではコントロールを入れ替えた事によりコミック・リリーフの効果が強制的に発動します。
私のセットされた【魔界台本】を一枚破壊します。
破壊された「オープニング・セレモニー」の効果を発動。
手札が五枚になるようドローします。
私の手札は現在0枚。
よって五枚ドローします」
大量ドローにより羽根箒に奪われたアドバンテージが一気に回復する。
「私は手札から【魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー】をPスケールにセット。
さあ、揺れるペンデュラムが示す先に何が待ち受けるのか、それを共に観に参りましょう!」
なんか思ったよりいい試合になってるのが一番ビックリ。
そして今更気付いたけど、現時点でのライフポイントの変動が自傷ダメージのみなんだよね…