迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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あの引きからどう繋げるか地味に難産でした


死神は嗤う狂宴の舞(8)

 誰も言葉を発する事が出来なかった。

 

 プロデュエリストを目指す者にとっては自分がこうなるかもしれないと戒めを伝えるような、そんな寓話的な悲劇物としてみればよく出来た話だと思う。

 だけれど、それが自分達の世界の話となるなら全く意味が変わってくる。

 

「ありがとうございました沢渡君。

 そろそろデッキをお返し願いますね」

「…ああ」

 

 あんな話をしておきながら全く変わらぬ態度に戸惑いつつ沢渡は言われるままデッキを返却する。

 

「残念でしたね沢渡君。

 君がエクシーズ召喚していたのがマネキンキャットではなくシャドー・モスキートであったら私は負けてましたよ」

「……」

 

No.(ナンバーズ)2 蚊学忍者シャドー・モスキート】

エクシーズ・効果モンスター

ランク2/風属性/昆虫族/攻 0/守 0

レベル2モンスター×2体以上

(1):このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

(2):攻撃可能な相手モンスターは攻撃しなければならない。

(3):お互いのモンスターの攻撃宣言時、以下から1つを選択して発動できる。

●このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体に幻覚カウンターを1つ置く。

幻覚カウンターが置かれたモンスターの効果は無効化される。

●幻覚カウンターが置かれているモンスター1体を選び、その攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 ステータスは死んでるが排除するのに戦闘以外のリソースを食われる上に、バーン効果の発動条件が自他を問わず回数制限が無いと何で禁止になってないの? と言いたくなる隠れたぶっ壊れカードに沢渡君が気付いていたら負けたのは俺だった。

 

「なあ、さっきの話は本当にあった事なのか?」

「はい」

 

 嘘を言っても害しか齎さないと俺は肯定した。

 

「ですが、赤馬零王のやろうとした事が許されていい筈がありません。

 奴は一人のために世界を犠牲にしようとしている。

 そして数多の犠牲を今もなお増やし続けている。

 どんな理由であろうと奴を許していい理由にはなりません」

 

 そう言うと沢渡君は荒れ果てたハートランドシティを眺め、「そうだな」と頷いた。

 

「さて、次は誰がお相手して頂けますか?」

「出来るわけ無いだろうが」

 

 さもありなん。

 カイト君の当然の言葉に俺は敢えて口にする。

 

「そうですよねぇ。

 ですが、やらないなら私が『融合次元』を攻撃しに行くのを止められなくなりますよ?」

「それは…」

「俺が先にやる。

 頭を冷やしてデッキを選んでいろ」

 

 真実を前に混乱してデュエルどころではないとまごつく零児君の横からデッキケースの一つを掴んだ黒咲君が前に出る。

 

「【斬機ライゼオル】ですか。

 歴代最強エクシーズテーマとも言われたテーマですが覚悟はいいですか?」

「相手が何でも全力で叩き潰すだけだ。

 それより答えろ。

 『ズァーク』とユート、それと『赤馬レイ』と瑠璃に何か関係があるのか?」

「あるのは間違いないですが、『ズァーク』とユート君も『赤馬レイ』と瑠璃さんもどちらも別人です。

 私の主に誓ってそれは真実だと言い切ります」

 

 分割された時点で元の人物とは別人だ。

 遊矢君、ユート、ユーゴ、ユーリも柚子、セレナ、瑠璃、リンも前世の関係を引きずっている節があるとはいえそれぞれの世界で自分の人生を歩む権利がある。

 

「黒咲瑠璃さんは貴方の妹だ。

 それを否定する権利は赤馬レイにさえありません」

「……当然だ」

 

 【斬機ライゼオル】をディスクにセットし俺と黒咲くんは対峙する。

 

「先攻後攻のどちらを選びますか?」

「後攻だ。俺達のデッキで貴様の展開を耐えるぐらいなら捲りに向かうほうがまだ勝ち目が見える」

「然様ですか。

 では先攻を頂きます」

 

 勝ちを諦めない姿勢に俺は満点を与えつつデッキトップを五枚引く。

 

「「デュエル!!」」

 

〜〜〜〜

 

「私のターン!スタンバイフェイズからメインフェイズまでに使う効果はありますか?」

「俺のデッキに貴様のターン中にフィールドと墓地以外で使える効果は無いから確認はいらん!」

「畏まりました。ではメインフェイズに入り私は手札から【斬機サーキュラー】の効果を発動!」

 

 執事と黒咲がデュエルを開始する中、榊遊矢は酷く狼狽した様子で顔を覆い絶望に押し潰されそうになっていた。

 

「俺は、俺達は誰なんだ…?

 本当に榊遊矢なのか?ユートなのか?

 それとも本当に『ズァーク』なのか…?」

「落ち着け遊矢!

 あの男も言っていたではないか!

 お前と『ズァーク』は全く別の存在だと!!」

 

 権現坂が必死に呼び掛け正気に戻そうとするが遊矢には響いてくれない。

 

「声がするんだ。

 『まだ望みは叶えられていない』『全てを一つに』『破壊しろ』『破壊しろ』『破壊しろ』って、ずっと、ずっと頭の中で反響して止まってくれないんだ!」

「遊矢…」

 

 友と信じる男が苦しんでいるのに見ていることしか出来ないのかと自らに怒りを燃やす権現坂。

 そして赤馬零児もまた溢れそうな怒りに気が狂いそうになるのを必死に堪えていた。

 

「巫山戯るな…。

 貴様にとってこの世界は、俺と母さんは娘が用意した代用品の木偶人形だとでも思っているのか…?」

 

 狂ってしまっていても父への愛情があったからこそ止めたいと出来る全てを費やしてきた。

 だが、そんな願いさえあの男には何の価値も無いのだと零児は理解してしまったのだ。

 あの男に有るのは自分の目的だけ。

 デュエルの未来を願い完成させた技術が世界を滅ぼす引き金となり、自分だけが偽りの世界に放り出され愛する家族が犠牲になった。

 成程。確かにそれだけを見れば赤馬零王が被害者であるだろう。

 

 だからといってその偽りの世界を犠牲にましてや滅ぼしていい理由にはならない。

 

「全て貴様が始めた事だろうが。赤馬零王!」

 

 お前の贖罪は犠牲になった娘を解放する事ではなく、この世界で孤独を感じながらも同じ悲劇を起こさかぬよう見届け生きる事こそ成すべき贖いの筈だ。

 

「俺はもう貴様を父とは思わん!!

 断ずべき悪として地獄を見せてやる!!」

 

 白銀の憎悪を正しく理解した()赤馬零児は赤馬零王を真に敵として認識した。

 

 そんな阿鼻叫喚が巻き起こっているとは露とも識らず白銀は万全の布陣を完成させていた。

 

「普段使わないテーマだからこそ思うんでしょうけど、正直こんな事が許されるのでしょうか?」

 

手札一枚

フィールドゾーン

【ライゼオル・クロス】

エクストラゾーン

【ライゼオル・デッドネーター】エクシーズ素材✕3

モンスターゾーン

【ライゼオル・デュオドライブ】エクシーズ素材✕無し

【ヴェルズ・ウロボロス】エクシーズ素材✕2

魔法・罠ゾーン

伏せカード二枚

【ライゼオル・プラグイン】

【斬機超階乗】

 

「やったのは貴様だろうが…」

 

 【ヴェルズ・ウロボロス】の効果で手札を減らされた黒咲の手札は四枚。

 次のドローが何であっても自身のエンドフェイズにフィールドにモンスターが残っていない未来が見えてしまっていた。

 

「ここまでやられたら私でも同レベルのデッキで手札十枚は無ければサレンダーしますが、それでも挑みますか?」

 

 【RR】でも【レイダーズ】が混合していれば手札次第でまだ巻き返せるチャンスもあるだろうが、黒咲のデッキは汎用エクシーズ及びリンクモンスターの入っていない純構成【RR】である。

 加えてウロボロスのハンデス効果で墓地に送ったのは黒咲が万が一の目となると期待していた【RUM-ソウル・シェイブ・フォース】であったのが致命的だった。

 

「……分かっていたつもりだったが、ここ迄デッキの地力の差があると悔しさすら沸かないな」

 

 融合やシンクロならまだ不快感も残ったが、同じエクシーズであるためカードプールとパワーの差を認め後攻を選んだ自分の判断ミスを認めるしかない。

 

「俺のターン。ドロー。

 …サレンダーだ。此処から巻き返す手は俺には無い」

 

 負けて失うものはなく、白銀の言った最強のエクシーズテーマが如何様な代物か見れただけで十分な収穫であると黒咲は負けを宣言した。

 

「対戦ありがとうございました」

「対戦していたようには思えないが?」

「ちゃんとターンエンドまでサレンダーせずに耐えて頂けただけで十分ですよ。

 この辺りのデッキを回す環境では目が潰えたらその時点でサレンダーするのが当たり前でしたから」

「……そのデッキは普及しているのか?」

「ええ。制限改定で手足をもがれる前は十人居たら六、七人は【ライゼオル】だったなんて事もあった程度に出回ってますよ」

 

 今の紙環境の各召喚方最強は【k9】【ヤミー】【ドラゴンテイル】だったか?と現代遊戯王が通用する次元に訪問した際に調べた記憶を掘り返していると黒咲はドン引きした様子で嘯いた。

 

「貴様とは二度とやりたくない」

「私の魂のデッキは【ライゼオル】に十回やって二、三回勝てるかどうかの中速デッキなので一緒にしないでください」

「【ライゼオル】に勝ち目がある時点でお断りだ」

 

 現代遊戯王基準チューニングすれば【RR】も十分ワンチャンあるんだけどなぁと声に出さずにいると自分の手に目掛けてデッキケースが飛び込んできた。

 

「危ないじゃないですか」

「白銀!悪いが俺は今気が立っている!

 頭を冷やすために全力で行かせてもらう!!」

 

 赤馬零王への怒りで沸騰した零児になんとなく理由を察した執事は「わかりました」と投げ渡されたデッキをセットする。

 

「時代に取り残されまいと逆に最先端に到達した【巳剣粛声】。

 儀式テーマが如何ほどぶっ壊れたか体感していただきましょうか」

「御託はいい!

 行くぞ!俺のターン!」

 

 デュエルの宣言すらすっ飛ばして手札を一枚抜き出す零児に苦笑しつつ執事は宣言する。

 

「ならば今回は手加減無しです。

 スタンバイフェイズに【マルチャミー・フワロス】を手札から捨てて発動します」

「チェーンして【墓穴の指名者】を発動!」

「おっと? 残念ですが通すしか無いですね」

「メインフェイズ!俺は手札から【地獄門の契約書】を発動!」

 

【地獄門の契約書】

永続魔法

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。

デッキから「DD」モンスター1体を手札に加える。

(2):自分スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

 

「効果を発動しデッキから【DDラミア】を手札に加える!」

「チェーンはありません」

「ならば俺は手札の【DDスワラル・スライム】の効果を発動!

 手札の【DDネクロ・スライム】と【DDスワラル・スライム】をリリースして融合召喚を行う!!」 

 

【DDスワラル・スライム】

効果モンスター

星2/闇属性/悪魔族/攻 200/守 200

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札に存在する場合に発動できる。

このカードを含む手札のモンスターを融合素材とし、「DDD」融合モンスター1体を融合召喚する。

(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。

手札から「DD」モンスター1体を特殊召喚する。

 

【DDネクロ・スライム】

効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻 300/守 300

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが墓地に存在する場合に発動できる。

このカードを含む自分の墓地のモンスターを融合素材として除外し、

「DDD」融合モンスター1体を融合召喚する。

 

「二つの自在に形を変える神秘の渦よ!今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!

 融合召喚!生誕せよ!レベル6!【DDD烈火王テムジン】」

 

【DDD烈火王テムジン】

融合・効果モンスター

星6/炎属性/悪魔族/攻2000/守1500

「DD」モンスター×2

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する状態で、

自分フィールドに「DD」モンスターが特殊召喚された場合、

自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

(2):このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合、

自分の墓地の「契約書」カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを手札に加える。

 

 零児の噴出する赫怒を表すように赤い剣と盾を手にした悪魔がフィールドに降り立つ。

 

「そして墓地の【DDスワラル・スライム】を除外し手札から【DDラミア】を特殊召喚!

 【DDD烈火王テムジン】に【DDラミア】をチューニング!!

 燃え盛る王よ。未来に流される血を止めるため疾風の速さを得て新たな王へと姿を変えよ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル7!【DDD疾風王アレクサンダー】」

 

【DDラミア】

チューナー・効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻 100/守1900

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札・墓地に存在する場合、

「DDラミア」を除く、「DD」カードか「契約書」カード1枚を

自分の手札・フィールド(表側表示)から墓地へ送って発動できる。

このカードを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

【DDD疾風王アレクサンダー】

シンクロ・効果モンスター

星7/風属性/悪魔族/攻2500/守2000

「DD」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「DDD疾風王アレクサンダー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在し、

自分フィールドにこのカード以外の「DD」モンスターが召喚・特殊召喚された場合、

自分の墓地のレベル4以下の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

 テムジンを素材に今度は白い悪魔がフィールドに現れる。

 

「墓地の【DDネクロ・スライム】の効果を発動!

 【DDネクロ・スライム】と【DDD烈火王テムジン】を除外して融合召喚を行う!

 我が怒りの泉は枯れず、無形の神秘を飲み干しこの怒りを刃として断罪の刃となぜ!!

 融合召喚!再誕せよ!レベル8!【DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン】!」

 

【DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン】

融合・効果モンスター

星8/炎属性/悪魔族/攻2800/守2400

レベル5以上の「DD」モンスター+「DD」モンスター

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する状態で、

自分フィールドに「DD」モンスターが召喚・特殊召喚された場合、

自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

(2):自分ターンに1度、魔法・罠カードの効果が発動した時に発動できる。

その発動を無効にする。

 

「なんとまあ…召喚権も残ってますし、もしかしたら制圧盤面を完成されて完封されるかもしれませんね」

 

 子供の癇癪を受け止めるのも大人の役割かと納得し、零児が此処から何処まで展開を伸ばしていくか楽しみにしながら成り行きを眺めるのだった。




執事「折角だから話そうとしていた世界の真実を舞台仕立てにしちゃおうか」

結果:全員sanチェック発生。

権現坂・カイト・黒咲、クリティカル 減少無し
沢渡、成功 減少微量
遊矢・零児・エド、ファンブル 一時発狂

発狂内容
遊矢:幻聴
零児:凶暴化
エド:気絶

だいたいこんな感じでした。

執事がデッキケース投げられて怒らなかったのも零児が発狂中なのに気づいてるからで平静だったら叱ってました。

黒咲ならこんなシチュなら捲り目指すと思いましたが、【斬機ライゼオル】の展開力に【レイダーズ】抜きアニメ仕様【RR】ではバトルフェイズまで到達できないと判断しサレンダーさせました。

零児の盤面、どこまで伸ばそうかな←
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