迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

22 / 255
俺は姫様に惚れているよ

「これからどうする?」

 

 転移魔法を使えるポイントに今から向かうのは危険だと宿を取り部屋に荷物を置いた『騎士』は俺に訪ねた。

 

「先ずは診断結果をアリアスに報告します」

 

 転移魔法は使えないが通信までは遮られていないためアリアスに報告しようと魔道具を起動してみるが…

 

「あれ?」

 

 繋がらない。

 

「どうした?」

「いえ…」

 

 忙しくて出られないなら分かるが、そもそも繋がらないというのは流石におかしい。

 

「魔法族の里では通信魔法や魔道具も禁じられるのですか?」

「流石にそれはない。

 そんな事したら若い子がみんな里を出ていく」

「ですよね」

 

 新鮮な情報の価値がわからない程里の年長者も頭は固くないようで安心した。

 

「繋がらないのか?」

「ええ」

 

 魔道具をしまい、俺は『騎士』の正面を向く。

 

「『騎士』殿。無理を承知でお願いします。

 今すぐ出立させて下さい」

 

 これがただの機材トラブルなら俺の早とちりで笑い話に終わるだけだ。

 

 しかしもしそうでないなら…

 

「どうしてだ?」

 

 『騎士』は真っ直ぐ俺を見ながらいつものように抑揚無く、それでいて俺にも分かるほど明らかな()()を抱いて俺に問い掛ける。

 

「どうしてお前は姫に忠を尽くすんだ?」

 

 荒々しさは無い。

 どちらかと言うなら虫が獲物を狩るような()()()()()とでも形容できる静かな殺意を俺に向ける。

 

「私と同じく城の宝を求めて姫の懐に取り入ったのか?

 それとも姫そのものに劣情を抱いて隙を伺っているのか?」

 

 まるで雑談のような気軽さで、しかし解答次第ではこの場で殺す事を厭わないと暗にひけらかしながら問い掛ける『騎士』に、俺は確かに恐怖を感じながら、それ以上に二人の関係は思っていた以上なのだと安心して我慢しきれず笑いを溢してしまった。

 

「何か変な事を言ったか?」

「いいえ。ただ、嬉しくなったんだよ」

 

 執事見習いの皮が外れ、素の自分に戻って俺は言う。

 

「ああ。姫様は本当に愛されているなぁってさ」

「……」

 

 無言を返す『騎士』に俺は胸の内を語る。

 

「城の宝に興味がないかって言えば嘘だ。

 姫様に下心が向いていないかって言われれば向けていると言うよ」

 

 実際あんなに綺麗でエロい姫様とのベッド・インなんてものが叶うなら遠慮なく頂きたいと思う。

 

「だけど、その辺りは全部()()()()()()

「どうでもいい?」

「俺は姫様に惚れたんだ」

 

 勝利を前に恥を晒して無様に負けを認めてくれと懇願した俺を姫様は受け入れてくれた。

 

 あの時の姫様は、人生で出会った何より美しいと思えた。

 

「だから、姫様が楽しく笑っていてくれればそれでいい。

 そうなるよう、出来ることをしたいって気持ちで俺は姫様に仕えているんだ」

 

 割りと好き勝手やっている城の面々も姫様の我儘に振り回されている時はなんだかんだ楽しそうだ。

 きっと、彼等も俺と同じなのだろう。

 

「だからさ、姫様が危険から遠ざけたいって気持ちで俺を送り出したのだとしても、それは受け入れられない」

 

 以前の俺は不平不満を溜め込むだけの変わる事を厭う臆病者で、怠惰に流され社会の歯車に組み込まれた無駄に無駄を重ねたつまらない人生だった。

 

 それが社会には必要で、だから仕方ないと諦めて受け入れていた。

 

 そんな愚にも付かなかった俺を姫様は認めてくれた。

 

 だから惚れた。

 

 命を捧げてもいいと、我が君として惚れたんだ。

 

「……そうか」

 

 俺の内心の告白を聞き、『騎士』は殺意を霧散させ立ち上がる。

 

「なら行こうか。

 かなりの無茶になるけど、姫のためなら問題ないんだろう?」

 

 立て掛けた槍と盾を手にそう嘯く『騎士』に俺も立ち上がりトランクを手にする。

 

「お手柔らかにお願いますよ」

「後、宿のキャンセル料はそっち持ちでよろしく」

 

 さり気にちゃっかりしている『騎士』に「仕方ありませんね」と俺は財布の中身を心配しつつ共に部屋を後にした。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 無茶をするの言葉に偽りはなかった。

 

「【幻獣機ドラゴサック】なんて何処で手に入れたんですか!?」

 

 ジェット機の身体に龍の頭を持つドラゴサックの背中のシャトルに乗りシートベルトに身を固定され城への帰路を文字通りかっ飛んでいた。

 

「酒場で絡んできた酔っ払いを叩きのめしたら謝礼として貰った。

 後、下手に喋ると舌を噛むよ」

 

 音速を軽く超える速度により生じる激しいGに押し潰されそうな圧迫感に苦しむ俺に対し、全く苦痛を感じていない様子でそう嘯く『騎士』。

 

「ぐぉぉ…」

 

 ジェットコースターなんて比較にならない恐怖に晒され続けること暫く、朝日が登り始め外の様子が少しづつ見え始める。

 

「城の領域が近付いてきた。

 もう少しで見えてくるよ」

 

 後どれぐらい続くんだと心が折れそうになっていた所で『騎士』の言葉に少しだけ気力を回復させる。

 

「見えた」

 

 そうして燃え尽きかけた気力を振り絞りGに耐え続けた俺は、小さく見える『白銀の城ラビリンス』に安堵を覚えかけ…

 

「煙が…!?」

 

 小さく見える城から立ち昇る黒い煙に俺は先程までの苦痛とは別の痛みに襲われる。

 

「様子から直接転移は避けたほうがいいな。

 もう少し近づいたら走るよ」

「わかりました」

 

 あれが俺達の勘違いで姫様のいつものポンの結果であってくれと、そう願う俺達を乗せたドラゴサックは少しづつ減速を始めた。

 

 

 

 

 




当初のプロットではこのまま自由都市に行く予定でしたが、間延びするので後回しにします。

因みに執事は人として惚れてるし性的対象に見れるけど女性としてはあまり見てません。

なんでか?

執事は過去に仲の良い女性に告白して男性として見てなかったと振られた経験があります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。