迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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霊使いに次いで【妖精伝姫】まで強化ですって!?

しかも強化内容的に普通に戦えそうだし、これは執事のデッキも大幅改造せねば…!


悪魔は嗤う人の業(2)

「こちらは『アカデミア』の橋頭堡を制圧し終え活動中の全員に撤収命令を出させました。

 これで命令を無視する極一部を除き『エクシーズ次元』への攻撃は止まります」

 

 あっさりと自分達を苦しめていた『アカデミア』を止めてみせた白銀に黒咲とカイトは感謝より恐怖と不気味さを感じてしまった。

 

「それで、榊遊勝について現在まで把握出来ている事に着いて共有は終わりましたか?」

「ああ。それで貴方についてライトハートから気になる事を聞かされたのだが訊いていいか?」

「隠すようなことは無いので構いませんよ?」

「ならば訊かせてもらうが、貴方は本当に人間なのか?」

「…そう思った理由は?」

「ライトハートは貴方を【白銀の城の側仕え(ラビュリンス・アテンダント)『執事』】と名乗り呼ばれていると言った。

 それと貴方が【ラビュリンス】に仕えているとも言っていた。

 それを聞いて私はモンスターの呼び名のように聞こえたんだ」

「そうですか」

 

 零児の質問にまあ構わないかと白銀は正直に告げた。

 

「概ね正しいですよ。

 私は元々は人間でしたが、【ラビュリンス】の主人である姫様の寵愛を頂いて入婿し結婚するに当たり寿命の問題を解決するために悪魔族に転生しました。

 【白銀の城の側仕え(ラビュリンス・アテンダント)『執事』】は【ラビュリンス】の一員となった証として妻である姫様から賜った名です」

「ならば白銀というのは!?」

「そちらも今の私の本物の名前です。

 悪魔族にとって『真の名』は秘すべきものであるため、以前の名を伏せるために新たな名を姫様から戴いたのです。

 ああ、君達には直接は関係ありませんが一応言っておくと君達を最初に知り合ったのは人間だった頃の話ですよ。

 その際にクソはもとい赤馬零王が『エクシーズ次元』のみならず私達の『精霊界』をも攻撃範囲に含めたので反撃に出た結果があの写真達の光景に繋がったんです」

「今クソハゲって言いかけたな?」

「奴への罵倒が漏れただけですから気にしないで下さい。

 他に訊きたい事はありますか?」

 

 そう促すと零児は「もう一つだけ」と前置いて尋ねた。

 

「赤馬零王への厭悪は【ラビュリンス】に手を出したからか?」

「そんな真似されていたら問答無用で『融合次元』ごと滅ぼしてましたよ。

 私が奴を嫌うのは戦後処理の一切を引き受ける羽目になったからです。

 零児君。戦争の何が一番大変か解りますか?」

「……いや」

()()()()()()()()()ですよ。

 国家さえ超えた『次元戦争』程の規模になれば政治的な解決は必要不可欠です。

 私の関わった頃にはまだ『エクシーズ次元』は此処までの被害は出ておらず『エクシーズ次元』の政治組織も生きていた為『精霊界』が調停組織として介入する事で講和を結び終戦まで持ち込めましたが、それでも両者を席に座らせるまでに一週間。

 事前に調整していた講和内容の締結に更に一週間。

 そこから下部組織への通達に一般情報に卸していい範囲の選定やら実際の賠償支払いに復興活動に徴兵された『アカデミア』生徒への思想改善とメンタルケアに各種手続きと…私がベッドで時間を気にせず眠れるようになったのは赤馬零王をブチのめしてから半年後でした」

「「「「「「……」」」」」」

 

 当時のデスマーチを思い出し殺意に塗れ目に見える程のドス黒いオーラを纏う白銀に、疑いやらなんやらといったは警戒心は消え、「これ以上触れたら危険が危ない」とその場にいる全員が彼を敵に回すような発言や行動は控えなきゃ駄目だと理解させられた。

 

「零児君。

 君ももうすぐ()()なるでしょうが頑張ってくださいね」

「本気で嫌だ!!」

「恨むならハゲに全部向けて下さい」

「嫌だーーーーーーーーー!!??」

 

 白銀の話が本当ならまだマシな状態で()()なのだ。

 更に酷いことになっているこの世界の復興とデスマーチは更に凄惨を極めるだろうと思い知らされ零児はキャラ崩壊を起こして絶叫した。

 

「零児…」

「憐れな…」

 

 『次元戦争』を終わらせたらそこから本当の地獄が始まると知り絶望する零児の姿に彼を追い詰めるのはこれ以上止めておこうと遊矢は思い、そこで白銀ならばとある可能性に着いて尋ねてみた。

 

「白銀さん。貴方の世界では父さんは『エクシーズ次元』に着いた後はどうなってたんですか!?」

「榊遊勝の話によると『アカデミア』と交戦中に想定外の次元跳躍が発生して『融合次元』に流れ着いたそうです。

 その際にアクションデュエルに支障を来す怪我を負い赤馬零王との邂逅を一時諦め療養せざる得ない状態だったと伺ってます」

「そんな…父さんのエンタメデュエルがもう見れないなんて…」

 

 生きていた安堵を得る間もなく大好きだった父のエンタメデュエルが失われていた衝撃に遊矢の心はさらに曇る。

 

「気をしっかり持ちなさい。

 榊遊勝が目指したエンタメデュエルは君が引き継ぐのでしょう?

 ならばこそ君は榊遊勝を超えズァークさえ超えた【稀代のエンタメデュエリスト】になるんだと前に進みなさい」

「【稀代のエンタメデュエリスト】…」

 

 不安そうに俯きながらも、それでも目指したい自分がそこにあるんだと遊矢は顔を上げる。

 

「零児君。『融合次元』に先行させた現地戦力はどの程度ですか?

 合流するにしても幾つか確かめておきたいのですが」

「『融合次元』は座標が不明だったから現地戦力は存在しない」

「……零児君。

 あまり言いたくありませんがその無計画さは赤馬零王そっくりですよ。

 本気で戦争を止める気なら『アカデミア』の一人でも鹵獲して月影殿を先行させるぐらいやっておいて下さい」

「ゴフッ!」

 

 杜撰すぎる状態に思わずそう言った白銀の言葉に血を吐いて倒れ伏す。

 

「それはそうと月影殿はどうしました?

 遊矢君達まで起用したのなら彼を登用していないということはないと思いますが…」

「月影は『シンクロ次元』で離れ離れになってしまった。

 アヤツの事だから零羅を「ハァ?」

 

 零児に変わり権現坂が月影の状態について知りうる限りを口にした瞬間、白銀の口から地の底から響くような声が漏れ人間ではありえないフクロウのような動きで首が回りドス黒い光を放つ眼が零児を射抜く。

 

「零児君? 少しばかり()()をしましょうか」

「ま、待ってくれ話を」

「ええ。たっぷり()()をしましょうか」

 

 今までのやり取りから何が白銀の逆鱗に触れたのか聞くまでもなく理解した一同は、首根っこを掴んで待機するアーゼウスの足元へと引きずられていく零児に自業自得だと静かに黙祷した。

 

 

閑話休題

 

 

 夜の帷が迫る中、白銀とランサーズは比較的被害の少ない家屋に移動し夜露をしのぐ準備を進めながら今後について話し合っていた。

 

「それでは明日の早朝に私達は制圧した基地から『融合次元』に向かいます。

 おそらく『アカデミア』の最奥に到着することになるでしょうから到着と同時に戦闘が始まる覚悟をしておいて下さい」

 

 灰のように真っ白になった零児を見ないようにしつつ沢渡が手を挙げる。

 

「『エクシーズ次元』に来ている『アカデミア』の奴らはどうするんだ?」

「前線基地で預からせます。

 エド・フェニックスから遊ばせずに街の復興の人手に駆り出す提案を受けてますがカイト君。どうですか?」

「人手が欲しいのは間違いないが、『アカデミア』に対する恐怖と憎しみを考えれば作業エリアは絞る必要があるな。

 それにアレだけの人数となるとライフラインも必要になる」

 

 『エクシーズ次元』に残り街の復興に専念すると決めたカイトはその処遇について頭を巡らせる。

 

「そのあたりはエド・フェニックスと協議すべきでしょう。

 他に訊きたい事はありますか?

 無いようですので解散してください」

 

 そう手を叩くとめいめいにその場を離れていく。

 そうして白銀はなんとなしに庭に出ると、そこでローラーとマジックハンドの付いた卵型のロボットが倒れ伏しているのに気付いた。

 

「……ダメか。完全に()()()()()

 

 この家で大事に使われていたようで躯体から魂の残滓を感じ取った白銀は組成出来ないか調べてみたが、躯体と共に魂も霧散していた。

 

「そんな所でなにをしている?」

「カイト君ですか。

 このロボットはまだ使えないか少し見ていただけです」

 

 頭に付けられたリボンの切れ端を丁寧に畳み体の上に乗せながらそう言うとカイトはそのロボットにわずかに目を見開いた。

 

「『オボミ』……そうか、オービタルだけじゃなくお前も逝ったのか」

「お知り合いですか?」

「俺のサポートロボットが懇意にしていた。

 『アカデミア』の侵攻の最中で行方が分からなくなっていたが…」

「…そうですか」

 

 ふと視線を上げると庭の片隅に壊れたデュエルディスクと抜け落ちたらしいカードが散らばっていた。

 

「…【オノマト】ですか。

 随分大事に使っていたようですね」

 

 一枚を拾い上げるとカードから悲しみと怒りの強い感情を感じた。

 

「このデッキに見覚えはありますか?」

「……弟の友人のデッキだ。

 下手なくせに俺に何度でも挑んでくる面白い奴だったな」

 

 そう僅かに口元を緩め懐かしむようにカイトはそう呟いた。

 

「白銀。俺の代わりに『ハートランドシティ』を滅茶苦茶にした赤馬零王を叩き潰せ」

「懺悔は如何しますか?」

「いらん。その分地獄を見せてくれ」

「わかりました」




色々考えたけど話が伸びちゃうからがっつりカットして次回からアカデミアに殴り込みを掛けていきます。
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