迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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 前話で存在だけ登場した【オノマト】使いのデュエリストは遊馬大先生本人ではなく両親が冒険家なだけの同位存在です。
 アークファイブの次元にはアストラル世界もバリアン世界も存在しないので、彼にははアストラルから分かたれたという経緯もなく特に成長の機会も無かったため初期遊馬ぐらいのデュエルスフィンクス(笑)しか持たない元気だけが取り柄の周りから好かれている少年でした。
 なので当然【No.】も【ホープ】も持っておらずエースも【オノマト】エクシーズモンスターでした。


悪魔は嗤う人の業(3)

「…ん、んんっ!?」

 

 日が昇り始めた早朝の光の眩しさに遊矢は眠気を押し流され意識を覚醒させた。

 辺りを見回すと木彫りの面やらトーテムや謎のオブジェといったよくわからないものが散見しているが、考古学の知識がない遊矢にはちょっと不気味な変なものとしか思わなかった。

 

「なんで俺、こんなとこで寝てたんだっけ?」

 

 よくわからないものに囲まれていた現実に記憶を掘り返すと、昨晩どこで寝るかを決めるジャンケンに負けて一番上の屋根裏部屋で寝る羽目になったのだと思い出した。

 幸いハンモックと掛け布団があったため寝るのには困らなかったが、今更ながらよくこんな場所で寝られたなと自分に感心してしまう。

 下を伺うと沢渡と権現坂はまだ寝ておりその寝顔にイラッとしたから起こそうかと考え、これからの事を考えたらまだ早いかとなるべく音を立てないようにしながら階段をおりてリビングに向かう。

 

「やっぱりわらしは欲しいな。

 だが、そうすると誘発枠が膨らみすぎるから削るのはうららしか…いや、ニャルスを切ってフワロス二枚だけに絞るか?

 抹殺を考えると三戦も抜きづらいしかと言ってハイランダー寄せは事故率が高まるからなぁ…」

 

 階段を降りると、白銀がテーブルに広げたカードを前に一人ぶつぶつと悩んでいるのが見えた。

 

「ん? もう起きたのですか遊矢君?」

「え、ええ。はい。

 朝日がちょっと」

「そうですか」

 

 遊矢の答えに納得を見せた白銀は広げていたカードを纏めてデッキケースに収めていく。

 一瞬だけ見えたカードはテキストが上下に分かれたデザインだった。

 

「今のはペンデュラムモンスターですよね?」

「ええ。私が持っている唯一のペンデュラム主体のデッキですよ」

 

 そう言うと白銀はケースの蓋を閉め『カード化』させてしまい込んでしまう。

 

「眠気覚ましにカフェ・オ・レでも淹れましょう。

 遊矢君も飲みますよね?」

「はい」

「と言ってもインスタントですのであまり期待しないでくださいね」

 

 そう言って席を立ち携帯コンロのスイッチを入れる白銀の背中を見ていた遊矢は、不意に視線をテーブルに移すと、そこには先程とは別のカードが広げられていた。

 その中で一枚、【ブラック・マジシャン・ガール】に似た意匠の金髪の可愛らしいエクシーズモンスターに目が行った遊矢は思わず手に取ってみた。

 

【ガガガガガール】

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/闇属性/魔法使い族/攻1500/守1800

レベル4モンスター×2

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが「ズババ」、「ガガガ」、「ゴゴゴ」、「ドドド」カードのいずれかをX素材としている場合、

このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

「ガガガ」、「オノマト」、「エクシーズ」カードのいずれか1枚をデッキから手札に加える。

(2):このカードをX素材としている「未来皇ホープ」Xモンスターは以下の効果を得る。

●このカードがX召喚した場合に発動する。

このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

 

「これは…強いのか?」

 

 サーチ能力や自身を下敷きにした際の効果などから展開に使用する中継モンスターという事は理解出来るが、【オノマト】と【ホープ】を詳しく知らない遊矢ではイマイチその強さが実感出来ない。

 

「強いなんてものではありませんよ」

 

 マグカップを手に戻って来た白銀は片方を遊矢に渡しながら嘯く。

 

「元より【オノマト】を軸とした【ホープ】はカジュアルテーマの中では高い評価を持つテーマでしたが、彼女の存在で展開軸である【オノマト】の安定性が格段に上がった結果種族縛りの低いランク4軸のエクシーズテーマが化けるを超えて環境(理不尽)の領域に入りました」

「それって、昨日黒咲や赤馬を倒したデッキとか?」

「ええ。今も黒咲君に披露した【斬機ライゼオル】を崩して【オノマトライゼオル】にコンバージョンしている最中です」

「それってどれぐらい変わるんですか?」

「最大で4体立てるのが限界だったエクシーズモンスターが六体確定で立ちます。

 試算の段階ですが一枚初動からの理想展開が通れば一ターン中の特殊召喚の回数は二十近くまで届きますね」

「なにそれこわい」

 

 殺意さえ超えたナニカを当たり前のように語る白銀に改めて価値観の違いを思い知らされる。

 

「とはいえ【オノマト】の真のエースが欠けている状態では現状では【ライゼオル】プラス汎用エクシーズを並べる程度に落ち着くでしょうね」

「真のエース?

 なんてモンスターなんですか?」

「さあ?」

「さあって…」

「そう問われても知らないものは知らないとしか言えませんよ。

 ただ、【オノマト】には…正確には【ホープ】には私がまだ知り得ていない到達点とも言い変えられる強力なモンスターが存在していて、そしてそれはそのカードを持つに相応しい所持者の手の中にあるのでしょう」

 

 アテムのオリジナルの神のカード。

 十代が生み出したの真のネオス。

 遊星が到達した彼だけのコズミック・クェーサー。

 

 白銀の手元にあるOCG版(誰にでも使える量産品)とは違う本物の【ホープ】(主役のためだけのエース)が存在する確信があった。

 

「そのカードはどこかの世界で真の使い手を助け導いているでしょう。

 君の持つオッドアイズのようにね」

「……オッドアイズ」

 

 白銀の言葉に遊矢はデッキから【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】を引き出しその姿を眺める。

 

「白銀さん。

 俺は、俺の中に居るズァークの憎しみに打ち勝てるのかな?」

「分かりません。 私はズァークの憎しみに狂った姿を直に見た訳では無いので確たる言葉を君に与える事は出来ません。

 ですが、これだけは約束しますよ。

 君が憎しみに支配されズァークと成り果てたなら力尽く(デュエル)でその憎しみを晴らします。

 ですから、君は君が救いを求めた時君を助けようとする者が居ると安心してデュエルを楽しみなさい。

 その結果世界がどうにかなりそうなら、それをなんとかするのは私達大人の役目です」

 

 だから、と白銀は言った。

 

「どうしても苦しい時は笑いなさい。

 好きな女の子に胸を張れるカッコイイ俺はコレだと意地を張るのが男の子の矜持というやつですよ」

 

 父と同じ言葉。

 それを自身のために使えと言われた遊矢はただ感謝を告げる。

 

「……ありがとうございます」

「それはそうと仮組みした【オノマトライゼオル】を実戦で回してみたいのでどちらか少しお付き合い願えませんか?」

『「絶対に嫌です』」

 

 サンドバッグになるのは御免だとユートと一緒に真顔で拒否する遊矢であった。

 

 

〜〜〜〜

 

 

 そうして全員が起床し軽い朝食を済ませた後、一同は『融合次元』へと向かうため『アカデミア』の前線基地へと移動した。

 

「準備は宜しいですか?」

 

 そう俺が確認すると遊矢君、零児君、黒咲君、権現坂君、沢渡君の五人はしっかりと頷きデュエルディスクを起動した。

 

「作戦を確認します。

 沢渡君と権現坂君は転送が完了後即座に二人でデュエルを開始して転送装置を奪還しようとする者達に乱入ペナルティを与えつつどちらかがこのカードを可能な限り素早く発動して下さい」

 

 そう言って俺は【魔鍾洞】を二枚ずつ二人に渡した。

 

【魔鍾洞】

フィールド魔法(禁止カード)

(1):相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、

相手はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。

(2):自分フィールドのモンスターの数が相手フィールドのモンスターより多い場合、

自分はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。

(3):自分・相手のエンドフェイズに、お互いのフィールドのモンスターの数が同じ場合に発動する。

このカードを破壊する。

 

 本来は禁止カードだがこの次元ではまだ使用可能だと判ったため白銀は悪魔らしくバトルロイヤルルールで持ち出すのは人間の心を捨て過ぎるカードを用いる事にした。

 

「これ、ヤバくないか?」

 

 テキストを確認しそう苦言を漏らす沢渡に俺は「ええ」と項く。

 

「極悪過ぎて二度と禁止を解除されないだろうと忌み嫌われた一枚ですから。

 因みにそのカードの価格は『精霊界』だと美品ならコレクションとしてでも400万の値が付いた高級品だと言っておきますね」

「それを4枚って…どんだけ金持ちなんだよ!?」

「城の主に求婚を許される程度の資産は稼ぎましたから」

 

 入婿とはいえ俺も男だ。

 経済を回すついでにデッキを強化しつつ『ラビュリンス』の一員として釣り合う資産をとカードを剥きまくった結果、姫様が泡を吹き流出しないよう封印櫃を作る程の激ヤバカードを山程所持する所となり総資産に至っては金額を明記するのは止めておこうとなる程のカード資産を持つに至っていた。

 じゃあなんでそれらを使ってるんだって?

 息子の危機に世界への影響なんでものを考える余地は無いし、これらを使ってさえ異世界では死にかけるからだよ。

 

「ともあれ手持ちの【魔鍾洞】はそれで全部となりますので後で返して下さい」

「流石にそんな馬鹿高いカードを借りたままには出来ないな」

「無論だ。今回に限っては俺も不動のデュエルに反しようと世界のために全力を尽くそう」

 

 そう了承を得て二人は【魔鍾洞】をデッキに組み込む。

 

「転送室を制圧したら遊矢君と黒咲君は機動力のあるモンスターを使って柚子さん達の探索と救助をお願いします。

 その後、見付けたのがリンさんやセレナさんだったとしても誰か一人を見つけたらその時点で一度戻り『エクシーズ次元』へ退避してください。

 赤馬零王の計画は赤馬レイから分かたれた四人全員が揃っていなければ実行不可能です。

 ですから計画の妨害を最優先とし最終的に全員を助け出すよう専念して下さい」

「解りました」

「ああ」

 

 場合次第で柚子と瑠璃を見捨てろとも言える言葉に完全には納得し難いが、それ以上に失う条件を消すことが優先だと二人は了承してくれた。

 

「そして零児君は私と共に赤馬零王を始末します。

 いいですね零児君?」

 

 流石に身内の死体なんてグロテスクなモノは見せたくないので『カード化』に留めるが、処遇は此方に預からせてもらう。

 

「ああ。私のことは気にしないでくれ」

「分かりました。

 では、行きましょう」

 

 転送装置へと乗り込みエド・フェニックスの指示の下で転送が開始される。

 デュエルディスクを展開し制圧の準備を整え世界が切り替わった瞬間、

 

「【光の護封剣】発動!」

 

 ()()()()()天から振ってきた数多の剣に射止められ拘束されてしまった。

 




??「基地は完全に制圧され我々は現在囚われの身となってます。
 奴等は基地の転送装置を使い『アカデミア』に奇襲を掛けるつもりです!
 至急、救助をお願いします!」
??『その必要は無い。お前は奴等に従いつつ奴等を『アカデミア』に転送しろ』
??「な、何故で…っ、了解しました」
エド「こんな夜中に何をしていた野呂?」
野呂「設備の点検をしていたんですよ。
 万が一転送装置に不備が生じでもしたらあの悪魔のような男に我々がどんな報復をされるか解ったものではありませんからね」
エド「…そうか。だが、あまり根を詰めないようにしてくれ。
 我々が破壊した『ハートランドシティ』の復興で倒れたりしたら目も当てられないからな」
野呂「…分かりました」
野呂「……私は間違っていない。 間違っていないんだ…」
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