迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
エンタメより構築なので勝率はお察しですが展開ルートが多いので中々勉強になります。
「敵性反応消失。
追撃は終わったようですね」
一時間ほど続いた戦闘はリアルソリッドビジョンの投影範囲外に脱出したアーゼウスの完全勝利という形で幕を閉じた。
その間に破壊したモンスターの総数は三百近く。
対しアーゼウスの被害は数体の特攻を許した程度で装甲に僅かな損傷が入った程度の軽微。
これだけの戦力差を見せ付けたのだから『アカデミア』は『融合次元』からの戦力拡散は出来ないだろう。
それに加え一つのデュエルディスクからリアルソリッドビジョンで実体化させたモンスターを【召喚】したモンスターを撃破して強制送還すると、【召喚】したモンスターを構築する高密度のデュエルエナジーによりデュエルディスクに大量の負荷が掛かりオーバホールないし廃棄になるほどのダメージが入るため実質的に戦力を削れている事も『エクシーズ次元』へはプラスに働くはず。
「先ずは遊矢君達との合流ですね」
途中で『アカデミア』に向かうフェリーとすれ違いつつアーゼウスを埠頭へと飛ばす。
そうしてアーゼウスを見上げる遊矢君達を見付けた俺はアーゼウスを送還して遊矢君達と合流した。
「白銀さん!」
「お互い無事で何よりです。
それに、柚子さんを見つけられたんですね」
黒崎君と零児君の姿が無い事に疑念を感じつつも、今はハゲの計画の要を抑えられた事を喜ぼう。
「遊矢、この人は?」
「俺達に力を貸してくれている白銀さんだ。
大丈夫だ柚子。この人は信用出来る」
「自己紹介は後程。
それより遊矢君。黒崎君と零児君はどうしたんですか?」
「零児はデニスを追ってフェリーに乗り込んだ。
その船には榊遊勝も乗っていて黒崎は零児と合流するためにフェリーに向かったのだが」
「あの船か…」
なんて迂闊な。
もう少し気にしていれば気が付けただろうに俺は阿呆か。
「分かりました。
我々もすぐに後を追い『アカデミア』に向かいましょう」
「でも、移動手段は有るのかよ?
俺達が乗れる船なんか無いんだぜ?」
散々アーゼウスで暴れ散らかした以上『アカデミア』に潜入するなら船ないし潜水艦が必要となるが、手持ちのカードの中に【
「船ならある!」
そう答える声にそちらを振り向くと、
「セレナ!」
懐かしい顔の少女が一段高い場所でドヤ顔を決めていた。
「『アカデミア』に行くのだろう?
着いてこい」
セレナが仲間にいたとは聞いている。
だが、『アカデミア』に連れ去られた筈の彼女が何故此処に居る?
一切疑う様子もなくセレナに着いていく遊矢君達に警戒するべきだと言おうとしたが、しかし彼女が逃げ出した経緯が分からない以上下手な事は口にするべきじゃないなと今は彼等に同行する。
そうしてセレナに紹介されたのは旧世紀の帆船であり幌には如何にもな海賊旗が描かれていた。
「なんだこりゃ!?海賊船か?
今時こんな船で『アカデミア』がある島まで行けるのかよ?」
「言ってくれるじゃねえか兄ちゃんよぅ?」
そう言いながら現れたのはテンプレ海賊ルックなオッサンとバンダナ頭の如何にもな船員達。
「この船の船長の『キャプテン・ソロ』だ」
「見た目はボロいが性能はいい。俺が保証するぜ」
セレナの紹介にそう自慢げに嘯くキャプテン・ソロ。
いや、なんかもうアニメ的なお約束の展開しか見えないんだが…。
そうして気付くといつの間にか俺達を載せた船は出航していた。
「いつの間に!?」
波止場で船を見上げていた時から船に乗り出港するまでの一切の記憶は無い。
『キング・◯リムゾン』でも喰らったのか!?
馬鹿な!? 此処は遊戯王世界であってジョ◯ョ世界じゃないんだぞ!!??
訳がわからない状況に恐怖を感じつつ、内心で滅茶苦茶に混乱する俺を横目に柚子さんが嬉しそうにセレナと話をしているのを聞き耳を立てる。
「私は『アカデミア』に強制送還されたが、お前達が合流するチャンスをずっと待っていた。
そうしたらお前達が『アカデミア』に乗り込むために『融合次元』に来たと情報を得た。
だから駆けつけた迄だ」
………そうか。残念だ。
「セレナさん。
お聞きしても宜しいですか?」
「誰だ貴様は?」
「『エクシーズ次元』で遊矢君達に協力していた白銀です。
先程『アカデミア』に乗り込むためにと仰りましたが、それを何処で知ったのですか?」
「無論閉じこめられていた『アカデミア』だが?」
「「「っ!?」」」
その台詞があからさまにおかしいと遊矢君達も気付いてくれたようでさり気なくセレナから柚子を庇えるように遊矢君が立ち位置を変える。
「そうですか?
そうなると少しばかり変なんですよ」
「変だと?」
「ええ。私達が『融合次元』に来たのはほんの数時間前。
この船の速度は体感ですが約10ノット前後。
情報を得て即座に脱出したとしても『アカデミア』からまっすぐあの波止場までたどり着きあの場にセレナさん居たというのは少し無理があります」
「なぜそう言い切れる?」
「言ってくれるじゃねえかアンタ」
理詰めに問い質す俺にキャプテン・ソロが食ってかかる。
「確かに今は風の向きが悪くて対して速度は出てないが、俺の船が全速力になれば『アカデミア』まで数時間も要らねえんだよ」
「ほぅ?
ならば、貴方は『アカデミア』から脱した時は追い風だから間に合ったと、そう言うんですね?」
「応よ。天候を見な!
これだけ快晴と風だ
確定だ。セレナとコイツラは『敵』だ。
彼等が嘘をいっているのを理解した権現坂君と沢渡君も柚子さんを守るためにセレナとの間へと移動する。
「ほう?
追い風が吹く
「しつこいなアンタ?
何が言いたいんだよ?」
「私達は実体化させたモンスターを使い
「「っっ!!??」」
「三百近いモンスターの大混戦です。
風は荒れ狂って滅茶苦茶になっていたし海面に落ちたモンスターにより海は荒れ狂っていました。
そんな荒れた海を帆船が大した損傷もなく無事に渡り切るなんて不可能なんですよ」
嘘を言っている証は自身であるとそう言うとセレナは即座に身を翻し柚子を捕まえようとするが、三人掛かりでブロックされキャプテン・ソロの方へと退避する。
「なんでだよセレナ!?」
「フッ、騙される方が悪いんだよ」
そう嘲笑うセレナに俺は違和感を感じた。
俺が知るセレナという少女は満場一致で猪のほうが思慮深いと言われるぐらい猪突猛進で真っ直ぐな娘だった。
『アカデミア』に思想を歪められているとしてもこんなふうに他人を踏み躙り嗤えるような娘ではない筈だ。
(仕方ない。
女性に使うのはデリカシーに欠けると使うのを控えていた感情を嗅ぎ取る嗅覚を起こしセレナの感情を嗅ぎ取る。
だが、
(なん…だと…)
セレナから嗅ぎ取れた感情に俺は大きくショックを受けた。
そうしている間に空からヘリコプターが近づいてくるのが見え、俺は衝撃に浸る間もなく遊矢君達に告げた。
「海へ飛び込んでください!」
「無茶言うなこんな場所で」
「いいから早くしろ!!」
「ああ、クソッ!!」
「本気なの遊矢!?」
「白銀さんを信じるしかない!!」
俺の気迫に遊矢君達が柚子さんと共に海に飛び込む。
「馬鹿な!? 溺れ死ぬ気か!?」
驚愕するセレナの声に俺はクソハゲへの怒りを抱きつつ手元に握ったカードを【召喚】する。
「深淵より目を覚まし此岸へと浮上せよ!【
俺の【召喚】に応えサメの意匠が施された二つの船首を持つ潜水艦が遊矢君達の真下に現れ上部ハッチを開きそのまま中へと格納する。
更に実体化の影響で船体が大きく傾ぎ追撃も防ぐ二段構えである。
「やりやがったなテメエ!?」
キャプテン・ソロが喚くが俺は抑える必要がなくなった怒気のままに凶暴に頬を吊り上げる。
「設定が甘過ぎるんだよ。
騙したいならちゃんと設定を練っておくべきだったな」
「くっ! 後は任せたぞキャプテン・ソロ!」
そう言うとセレナは下がってきたロープを伝いヘリコプターへと乗り移りヘリで船から去っていく。
「待ちなさい!」
セレナを解放するべく追いかけようとしたが、それをキャプテン・ソロと手下共が阻んだ。
「おっと、お前の相手は俺達だぜ」
そう言うと一斉にデュエルディスクを起動する。
「邪魔をするなら死ぬより酷い目に遭うぞ?」
「へっ! この人数を相手にイキるんじゃねぇ!
テメエのカードも根こそぎいただいてやるよ!!」
馬鹿が。【世壊】の恐ろしさを身に染みたいらしい。
「ならば悔いて死ね。
誰も見てないなら加減はしない。
そして貴様達にはサレンダーも許さない」
そう俺は死刑宣告を告げてディスクを戦闘状態に移行した。
「「「「デュエル!!」」」」
次回はデュエルはサクッと締めつつ榊遊勝関連については個人的解釈を掘り下げていきます。