迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
「まあ、こんなものか」
リーサル盤面が完成したので展開を終わらせる事にした。
手札
四枚
フィールド魔法
【六世壊=パライゾス】
エクストラモンスターゾーン
【S:Pリトルナイト】
モンスターゾーン
【フルール・ド・バロネス】
【ティアラメンツ・ルルカロス】
【マナドゥム=プライムハート】
【クシャトリラ・フェンリル】
【妖精伝姫シラユキ】
魔法罠ゾーン
【クシャトリラ・バース】
【
「あ、ああ、あああ…」
目の前に牙を剥く
だが容赦はしない。
「バトルフェイズに移行。
シラユキとルルカロスは左。
バロネスとリトルナイトは右。
プライムハートとフェンリルはキャプテン・ソロを攻撃しろ」
「ま、待ってくれ!!??」
「まあ、死なないよう手心は加えてやれ。
しなくてもいいが」
そう手綱を手放すとモンスター達が一斉に襲い掛かった。
「「「ギャァァァアアアアア!!??」」」4000→0×3
展開が長くて苛ついていたのか絵に描いたよう情け容赦が見えないルルカロス達の袋叩きに暴れ狂う怒りを少しだけ晴らし、遊矢君達と合流しようとした所でリトルナイトが俺に告げた。
「主殿。こちらに近付く小型船がありますが如何なさいますか?」
「追撃か? 船に乗っている者の姿は見えるか?」
「こちらを」
そう言って望遠鏡をリトルナイトから差し出され、それを受け取り接近するボートを伺う。
「月影殿と零羅君!
それと、『紫雲院素良』?」
素良は記憶では遊勝塾の塾生であり、ランサーズには参加しているとは聞いていないのだが彼が何故ここに?
そういえば『デニス・マックフィールド』はその正体は『アカデミア』の内通者だったという話だし素良にも何か裏があったのかもしれない。
だが、望遠鏡で見える月影達の様子を見るに致命的な関係にも見えないため判断は早計か。
「敵では無いようですので警戒は必要ありません」
そう言って俺は望遠鏡を返しデュエルモードを終え実体化したモンスター達を還す。
「殺さなかったんですね。
掃除の手間が省けました」
ボコボコにされ気絶しているが死んでいない事を確認し、【
「『ナッシュ』。状況が変わりました。
浮上して遊矢君達を甲板に連れてきてください」
『ナッシュ』は俺が付けた【
フルネームが呼びづらいのでスペルをそのままくっつけたらそう読めたのでそのまま名付けたのだ。
本人は何故か『ナッシュを知っているのか!?』と驚かれたのだが、生憎何を言っているのか分からず困惑してしまうとネフィルはすぐに『知らないならそれでいい』と驚いた理由も語らずその渾名で呼ぶ事を了承した。
すぐに【
「遊矢〜」
「素良!?」
甲板に上がってきた遊矢君に素良君が手を振り、その姿に遊矢君は驚いた様子を見せる。
「月影と零羅もいるじゃねえか!」
「これで所在不明の者は居なくなったな」
ボートをネフィルに横付けし再開を喜ぶ素良に、しかし先程のセレナの事が過ったのか遊矢君は柚子さんを庇うように背に回した。
「どうしたの遊矢?」
「ごめん素良。 お前のことは信じてるけど、それでもセレナの事があったから」
「セレナが?」
「彼女は『アカデミア』によって洗脳されています。
それも、最悪の方法でね」
怒りのあまり殺気を抑えきれず漏らしてしまい、全員からスッと距離を置かれてしまった。
「というか遊矢、このオジサン誰?」
「ああ、失礼。私の事は白銀ユウタと覚えてください。
それよりも素良君は遊勝塾の塾生とは覚えておりますが、ランサーズには加入していたとは聞いてませんでしたが?」
「素良は『アカデミア』の元スパイだ。
今は俺達に『アカデミア』と手を切って俺達に力を貸してくれている」
「…そうでしたか」
零児君。若さゆえに抜けるのも致し方ないにしてもあまりにも多方面にガバガバ過ぎて相対的にハゲのほうがまともに見えてきましたよ。
「それよりセレナが洗脳されているってどういう事だよ!!」
痺れを切らした様子で声を荒げる沢渡君に俺はあまり言いたくはないなと思いつつ確認を取る。
「素良君。『アカデミア』に『ドクトル』と呼ばれる研究者が居るはずですがご存知ですか?」
「え? ああ、うん。
そんな名前のすっごい気持ち悪い奴なら心当たりがあるよ。
それとプロフェッサーの側近に人の心を意のままに操る奴が居るって聞いたことがあるから、セレナが洗脳されているっていうのも合っていると思う」
まあ、当然の感想だな。
「奴は人体の脳に寄生し宿主の精神を操作する【パラサイト・フュージョナー】という独自のモンスターを開発しました。
セレナさんはそれを脳に植え付けられ人格を封印されています」
【洗脳ブレイン・コントロール】や【心変わり】といった精神や思考を支配するカードや技術的なマインドコントロールの場合には嗅ぎ取れる感情の匂いが、セレナからは
そうなると考えられるのは二つ。
件のセレナが偽物でブルーノやレイン恵程の高純度の魂を持たないデュエルロイドである場合。
そしてもう一つは『千年ロッド』で操られている繰り人のように当人の精神が活動していない場合。
パラサイト・フュージョナーに寄生されコントロールされた者は後者に当たる。
「ちょっ、待てよ!
『アカデミア』はセレナにモンスターを埋め込んで支配しているって言うのか!!??」
怒り狂う沢渡君に呼応するように遊矢君達も赫怒を湧き上がらせる。
「そんな…酷すぎる!」
「許せるはずが無い!」
柚子さんが哀しげに胸を抑え権現坂君もブルブルと腕を震わせる。
そうした中、精神体のユート君が現れ俺に問い質す。
『そんな、じゃあ瑠璃も奴等に!!??』
「……可能性は低くありません」
『ッッッ!!!!????』
余りにも酷い仕打ちを受けているかもしれないと聞かされ、ユート君が歯を噛み砕きそうなほどきつく歯を噛み締めギリギリと軋む音を響かせる。
「…ぐぁっ!!??」
ユート君の血涙を流しそうな程の怒りに『ズァーク』が呼応したようで遊矢君の目が紅く染まり苦しそうに蹲った。
その瞬間、嗅覚を起こしていないのに鼻が捻子曲がりそうなほどの強烈な怒りの感情が鼻腔から脳に叩き込まれた。
「っ! 不味い!」
この怒りを放置すると二人の心が持たないと俺は船から飛び降りるとそのまま遊矢君の首筋に強い衝撃を与えそのまま意識を刈り取る。
「ガハッ!!??」
上手く気絶させ倒れないよう支えると柚子さんが悲鳴を上げ素良君が俺に噛み付いた。
「遊矢!?」
「遊矢に何をするんだ!?」
「落ち着け二人共!
白銀の判断はおそらく正しかった筈だ」
すかさずフォローに入ってくれた権現坂に感謝して俺は改めて説明する。
「緊急事態と見なし眠ってもらいました。
詳しい話をしたい所ですが、『アカデミア』の襲撃が来ないとも限りません。
先ずはこの潜水艦で海中に退避しますので月影殿も此方に移動して下さい」
「承知した」
そうして全員で【
「情報共有は遊矢君が回復してからにするとして、先ずはクソハゲの計画の全容を柚子さんに説明してしまいましょう」
「クソハゲ…ぶっ!」
つい罵倒が漏れてしまい素良君が吹き出してしまう。
「失礼。 赤馬零王への殺意が天元突破したため殺意が抑えられませんでした」
咳払いをして気を取り直すと柚子さんがおずおずと俺に問い掛けた。
「白銀さん。その話は遊矢抜きで話していいの?」
「遊矢君は既に知っています。
遊矢君達と『エクシーズ次元』に移動した零児君と黒崎君も同様です」
「兄様!」
零児君の名を口にするとそれまでずっと黙っていた零羅君が初めて声を発した。
「兄様は今どこに居るの?」
「零児君は黒崎君と一緒に榊遊勝が乗るフェリーに乗船しています。
『アカデミア』に付けば合流出来ますよ」
「…分かった」
そう言うと零羅君は再び黙り込んでしまった。
「それでは先立って素良君は『アークエリア・プロジェクト』についてどの程度知ってますか?」
「あんまり詳しくは知らないよ。
次元を一つにする計画ってことぐらいだよ」
「そうですか…」
『エクシーズ次元』の司令であったエド・フェニックスでさえ次元を統合する計画としか知らなかったから当然か。
「でも柚子を連れて来いと命令されていたから、計画に必要なんだろうというぐらいは予想してるよ」
「必要なんてものじゃありません。
『アークエリア・プロジェクト』は世界を統合するために『柊柚子』『セレナ』『リン』『瑠璃』の四名の命を奪うことで成就するんです」
「「「「!!??」」」」
既に知っていた権現坂君と沢渡君を除いた全員がその言葉に驚愕し息を呑む。
「そもにして『アークエリア・プロジェクト』は赤馬零王にとっておまけでしかありません。
赤馬零王の真の目的は世界を統合することによりとある人物を復活させる事にあります。
その者の名は『赤馬レイ』。
世界の楔として四人の少女に魂を分割した赤馬零王の実の娘です」
そう言った瞬間椅子を蹴って素良君がいきり立つ。
「なんだよそれ!
なんで柚子が死ななきゃならないんだ!」
「落ち着け素良。
そうしないために白銀は俺達に力を貸してくれているんだ」
「でも、だからって、クソッ!!」
素良君は本当に柚子さんが好きなのだろう。
知らず柚子さんを死なせようとしていた自分への怒りの遣りどころが見つからずテーブルに拳を叩きつける。
「そして赤馬レイが復活すると同時にかつて世界の滅ぼそうとした『ズァーク』という存在も復活してしまいます。
私の目的は『ズァーク』の復活を阻止する事。
その為にも可能なら遊矢君には柚子さんと共にナッシュの艦内で待機してもらいたいところですが…」
そう言ったところで遊矢君は止まりはしないだろう。
世界には『流れ』というものがあり、それを阻めばかつて『イリアステル』が俺に接触してきた時のような致命的な破綻が未来に生じるだろう。
だからこそ俺に出来るのは可能な限りの補助と万が一の際の強硬手段が限界だと悟っていた。
「俺は、父さんに会いに『アカデミア』に行くよ」
俺の予想通り、起きてきた遊矢君は待つことを拒んだ。
「ありがとう白銀さん。
お陰でユートも頭を冷やせたみたいだ」
『すまなかった』
「構いませんよ。
君達の怒りは至極正しい。
愛しい人にそんな真似をされて冷静を保てるほうが心配になります」
もし姫様にそんな真似をされようものなら死ぬことも狂うことも出来ないよう『加工』した上でこの世全ての苦痛と恐怖と絶望を数百年単位で味合わせているだろう。
「取り敢えず赤馬零王の目的と柚子さんの重要性について共有出来たとして、遊矢君も起きましたしお互いの情報共有を始めましょう」
「ならば拙者から『シンクロ次元』の顛末について説明させて貰う」
月影殿の話によると『シンクロ次元』は格差是正政策を打ちその意識を拡大させていたセキュリティを解体したという。
……政治基盤の旗振りが全員消えた上に治安維持組織の完全解体って、それだけでもう国体を維持出来ず空中分解する未来が見えるんだが本当に平和を勝ち取ったと無邪気に喜んでいいのか?
まあ、そこで問題になったら零児君に皺寄せが来るだけだから破綻した計画の妥当な末路として諦めて受け入れてもらおう。
「遊矢達はあの後『融合次元』に直接転移したの?」
「いや。俺達は『エクシーズ次元』に辿り着いたんだ。
そこで白銀さんと出会って彼に助けてもらったんだ」
「白銀はヤベーぞ?
融合、シンクロ、エクシーズだけじゃなく儀式も使えるし『リンク召喚』っていう第六の召喚方法まで持ってるんだからな」
遊矢君の説明を遮り沢渡君が俺を語る。
「リンク召喚?
それって凄いの?」
「自由度が高いので汎用性は高いですよ。
使い熟すには経験と知識が必要ですが」
「ふうん?
確かにキャプテン・ソロを一人で倒したみたいだし、強さは本当みたいだね」
興味深そうに俺を見遣る素良君の視線を受け流しつつ俺は柚子さんに水を向ける。
「私の事はおいおい語るとして、柚子さんは今までどちらにおられたのですか?
それに榊遊勝殿と合流した経緯についてもお伺い出来ますか?」
「分かりました」
柚子さんの話によると『シンクロ次元』から転移した柚子さんは一緒に転移したユーゴ君と共に榊遊勝と合流し、彼がそこで『次元戦争』の現実を受け入れられず離反した『アカデミア』の生徒を匿い遊勝塾を開いてデュエルを教授していた事を語った。
「父さんはこっちでも遊勝塾をやっていたんだ…」
ボキャブラリーが無さ過ぎないかと内心突っ込んでいたらなんでか遊矢君は甚く感動したように呟いた。
それにしても療養の最中にデュエルに対する思想を…ねぇ。
「成程。アリアスが評価する訳だ」
思わず口に出てしまい衆目が集まってしまう。
「アリアスって誰だ?」
「私の上司ですよ。
彼女は榊遊勝をこう評していたんです」
下手に隠すと厄介になるかと判断し、俺はアリアスから見た榊遊勝という人物評価を言葉にする。
「『彼に暴力を辞さない野心があれば、嘗て世界を混沌の坩堝に叩き落とした第三帝国の総統クラスの革命家になれただろうね』と」
因みにアリアス的には大絶賛してます。
実際榊遊勝はエンターテイナーじゃなくて政治家の方が敵性高いと思う。
詐欺師もといカリスマの高さ的に。
後、クロウ君はリストラしました。
カイトとエドもリストラしたから仕方ないね。