迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
「「「「「「第三帝国の総統って誰?」」」」」」
月影殿を除く全員から異口同音に問い返されてしまった。
「おや? まだその辺りの世界史は未修理でしたか?」
「白銀殿。コンプライアンスを意識して実名を避けたのは解りますが流石にその呼び方では歴史好きでなければ解らぬと思いますぞ?」
「成程」
どうやら第三帝国呼びは若者にとってオタク知識寄りだったらしい。
「第三帝国とは第二次世界大戦時のドイツのことです。
その実権を握っていた悪い意味で世界的に有名な人物といえば流石に分かると思いますが…」
「父さんはそんな人じゃない!」
流石にこれは理解出来たらしく俺の言葉に遊矢君が激昂した。
「父さんは皆を笑顔にすることを何より考えている人だ!!
あんな戦争を引き起こした悪人と父さんを一緒にするな!」
「落ち着け遊矢!
白銀自身がそう言っているわけじゃないぞ!」
「だけど!!」
嗜める権現坂君の言葉に納得出来ないと尚も荒ぶる遊矢君に俺は諭すように言う。
「遊矢君。確かにかの総統と同等と言われて怒るのは仕方ないにしても、そもそも革命という行為は常に暴力を振るうものではありませんよ」
「え?」
「革命とは大多数の力をもって既存の思想を上書きする事を指すんです。
遊矢君はトランプゲームの『大富豪』をやった経験はありますよね?
その中の『革命』は同じカードを四枚同時に公開することで最強の2と最弱の3の立場を入れ替える事が出来るというルールですが、これに暴力的な行動が伴いますか?」
「……いや。
そんな事は無いけど」
「革命が暴力的なイメージを伴うのは既存の政治構造によって利益を得ている者が力尽くででもそれを阻もうとするために結果として流血が伴うせいで付いたものです。
それに、榊遊勝のみならず君もまた革命を起こしているじゃないですか」
「俺が!?」
「【ペンデュラム召喚】ですよ。
君は新たな召喚方法を開拓する事で既存のルールを書き換え『デュエルモンスターズ』というゲームに革命を起こしたじゃないですか」
「…ああっ!!??」
そう言うと漸く気づいた遊矢君が大声を上げる。
「榊遊勝もそうです。
『エンタメデュエル』を流布し大衆を認めさせる事で『スタンダード次元』のデュエルは過激な攻撃性より華やかさを重視する事が良い事だと常識を書き換えたでしょう?」
「確かにそうだった…」
俺の言葉に納得を得て遊矢君も落ち着きを取り戻す。
「榊遊勝は既に始まってしまった『次元戦争』を前に赤馬零王を止めるだけでは目の前の『次元戦争』を止められたとしても何れ同じ過ちを繰り返すと考え、療養の傍らで将来を見越し『融合次元』でも『スタンダード次元』同様にエンタメデュエルを通して平和的なデュエルを常識化させ、『次元戦争』を肯定する暴力的なデュエルを忌避するのが当然である社会を作り十年後、百年後の『デュエルモンスターズ』を守るために革命活動を行っていたのだと私は考えています」
「父さんはそんな事を…」
それだけ気の長い計画には兎に角時間が必要だ。
思想の上書きには親から子へ、子から孫へとゆっくりやらねば根付かず歪みが生まれる。
故に榊遊勝は『次元戦争』により『デュエルモンスターズ』の危険な運用が『融合次元』でこれ以上常識化するのを阻むため『スタンダード次元』での地位も名誉も捨てる覚悟で先走ったのだろう。
家族にさえ何も告げなかったのは、何もかもが上手く行きその日の内に『スタンダード次元』へと戻り日常へと帰れるかもしれないと彼なりに希望を抱いての楽観だったのだろう。
結果としてその全てが裏目に出るという最悪の結果になったのは皮肉でしかないが。
「凄いな父さんは。
人を喜ばせるだけじゃなく、未来まで考えていたなんて」
無邪気に父への畏敬を抱く遊矢君に、それがそうだといいなという自分の希望だという残酷な真実は告げず俺は喫緊の問題を口にする。
「榊遊勝についてはこの辺りにしておきましょう。
当面の問題はセレナさん達に寄生する【パラサイト・フュージョナー】です。
このモンスターの厄介なところは物理的に対象を支配しているため、外科的な手段で取り除くか依代であるカードを破壊しない限りその呪縛から解放できないことです」
相棒のダルクならば【パラサイト・フュージョナー】を逆に支配し寄生された者を解放してやれたのだが、ダルクは俺の他の精霊達と共に息子に付けてしまったためその所在は分からない。
そして手元に残るドリアードから授けられた精霊は『アーゼウス』『クルヌギアス』『ニビル』の三体しか居ない。
「つまり、僕達は柚子を守りながらドクトルを捕まえて【パラサイト・フュージョナー】を破り捨ててやればいいのかな?」
「それで問題ありません。
破くなり燃やすなりしてカードとして再生不可能にしてやれば【パラサイト・フュージョナー】は消滅します。
それまでは物理的に拘束するか、或いは私の持つ『カード化』を使って一時的に無力化する方が確実でしょう」
「セレナをカードにするだって!!??」
「私の有している『カード化』は荷物の運搬のみならず医療技術としての改修をされています。
重症の怪我人や治療が困難な重い病に掛かった病人を『カード化』する事でその進行を止める為に活用されているんです」
この技術改修にはギルスやブルーノも関わっておりその信頼性は折り紙付きだ。
「白銀殿。貴殿の持つ技術を使えばカードにされた兄の日陰を元に戻すことは可能でござるか!?」
突然月影殿がそう尋ね、彼も被害に遭っていたのかと悼みながらできると伝えた。
「可能です。 『アカデミア』により『カード化』された者を解放するのにも活用されましたから、カードさえ無事なら確実に取り戻せます」
「そうでござるか…」
ひどく安堵したように目を伏せる月影殿に遊矢君達も喜びに打ち震えた。
「なら、ミッチーや他のカードにされた人達も取り戻せるんだな!」
『エクシーズ次元の仲間達も!』
奪われ失われたと思うしかなかった命が返ってくると知り艦内が喜びに包まれる。
「ですが喜ぶのはまだ先の話です。
『アークエリア・プロジェクト』を破綻させ赤馬零王の計画を全て打ち砕いてからでなければ絵に描いた餅に終わります」
そう言うと皆の顔は真剣に引き締まる。
『間もなく『アカデミア』に到着する。
今のうちに上陸の準備を済ませておけ』
そう呼び掛ける『ナッシュ』の声に俺達は気を引き締めるのだった。
〜〜〜〜
『アカデミア』に近い上陸可能な陸地を見付け『ナッシュ』に柚子さんと零羅君を残し俺達は再び『アカデミア』へと上陸した。
「周辺に気配は無いので今回は『アカデミア』の制服を奪い生徒に変装して侵入しましょう」
気休め程度でにしかならないだろうが、少しでも勝算を高める努力はするべきだ。
「むっ!?」
と、何かに気付いた月影殿が懐から棒手裏剣を取り出し空に投げつけた。
投げた方向にはドローンが滞空しており投げられた棒手裏剣に貫かれ墜落していく。
「中々あちらも本気みたいですね。
私に戦力が集中する筈ですので私が戦力を引きつけている間に遊矢君達は零児君と合流し瑠璃さん達が洗脳されている事を伝えてきて下さい」
そう月影殿に引率を任せリトルナイトを【召喚】し共に遊矢君達から離れる。
「衆目を集中させます。
派手にやってください!」
「承知!」
俺の言葉にリトルナイトが懐から大量のネコ耳が付いたグレネードを取り出すと膝を深く曲げ一気に加速した。
「派手に掻き回しなさい【EM:Pグレニャード】!」
『『『『『『ニャーゴ!!』』』』』』
グレニャード達が鳴き声を上げながら爆ぜサイケデリックな色の煙幕やら花火やらを撒き散らして派手に周辺整備を染め上げていく。
「煙幕のチョイスはマスカレーナですか?
相変わらず派手好きですね」
「主様来ました!」
閃光煙幕爆音とこれでもかと派手にやった結果、当然の如くデュエルディスクで武装した『アカデミア』戦闘員が飛び出してくる。
「これ以上神聖な学び舎を汚させて堪るか!!」
そう言いながらリアルソリッドビジョンで実体化させた【
「犬は殺す。確実に殺す。纏まる前に一匹ずつ必ず仕留め仕る」
その目に宿る殺意は遊戯王というよりFR◯Mプレイヤー地味てるが何処からか電波でも受信した?
「ひ、怯むな!
相手は二人だ!数で押し込め!」
「主様がその様に甘い方だと? 戯けめ」
吐き捨てるリトルナイトの言葉に追随するように赤い体の馬の頭を持つ剣士と巨大な鉞を担いだ巨漢が其々の獲物を叩きつけ迫り来る手勢を払い除ける。
「オーガは正面から突っ込み陣形を崩せ。
ユニコーンはデュエルディスクの破壊だ。
リトルナイトは好きな様に引っ掻き回せ」
命令に従い【クシャトリラ・オーガ】が巨体に似合わぬ俊敏さで砲弾のように纏まっている【
「このままじゃ嬲り殺しだ!
増援はまだか!!??」
「昨日の戦闘で『オベリスク・フォース』は軒並み行動不能だ!
生徒でも何でもいい!戦える奴は全員こっちに呼び付けろ!」
「痴れ者が」
「しま…ピギゥッ!!」
そう言った瞬間、リトルナイトが懐に飛び込み股座の間へと膝を付き込んだ体勢のまま不快感のままに吐き捨てる。
「神聖な学び舎と言ったその口で守るべき者を矢面に立たせようなど恥を知れ!」
膝で
「さあ終わりは近いぞ赤馬零王。
「それはちょぉと困るんだよね?」
俺の言葉にそう返しながらユーリが前に出てきた。
仕切り直しを察しリトルナイト達が下がって俺の周りに配する。
「ユーリ…」
「また会ったねオジサン。
今度は逃げないでよね?」
ニヤニヤと笑いながらデュエルディスクを起動し俺にそう言い掛ける。
「お望みなら相手になってやるよ。
但し、あまり遊んではやれないけどな」
「へぇ? 僕を知っていてそんな事言えるんだ?」
「メインテーマ【捕食植物】。必殺の汎用札として【超融合】。そしてエースモンスターは【スターヴヴェノム・フュージョン・ドラゴン】及びその派生モンスター。
お前の事はこの程度には知ってるさ」
手の内はあらかた知り尽くしているとそう含めてデッキの詳細を言うとユーリは楽しそうに笑い出した。
「アハハ!!凄いねオジサン。何処でそれを知ったのさ?」
「俺の友人からだよ」
ユーリってお前と同じ名前のな。
「へぇ? でも、少し迂闊すぎなんだよね?
オジサン達は柚子って子を安全な場所に隔離したつもりかも知れないけど、それって本当に安全なのかなぁ?」
「何!!??」
上陸と同時に『ナッシュ』には潜航するよう命じてある。
それにどうやって……まさか!?
「【強制転移】か!?」
『マスター!! あの娘が突然消えた!!』
その答えに気付いた瞬間デュエルディスクを通して『ナッシュ』の焦りの籠った報告が飛んでくる。
「やられた…。
リトルナイト、遊矢君達に至急伝えてくれ!!」
「承知!」
瞬時に駆け出し遊矢君達が向かった先へと向かうリトルナイトに追撃の手が伸びるも変わり身の術でグレニャードと入れ替わり爆炎に紛れて逃げ果せた。
「一体どんな方法で柚子さんの座標を掴めた?」
【強制転移】は座標指定の設定が少しでもズレると失敗するからこそ不可能だと言って捨てたのだが。
「裏切り者には感謝しないとね。
デュエルディスクの反応から柚子の座標を特定して発動出来るってプロフェッサーは言ってたよ」
「獅子身中の虫とするために泳がされていたのか…」
柚子さんを想う素良君の想いまで利用された事に再び殺意が燃え上がる。
「オーガ、ユニコーン、戻れ」
顕現を解除しデュエルディスクをデュエルモードに切り替える。
「お前とは本気でやりたいが、時間がないんだ。
全力で制圧させてもらう」
「やってみなよ。
そう言って誰も僕に勝てた試しはないんだけどさ!」
殺意を研ぎ澄ましデッキトップへと手を伸ばした瞬間、
「【強制脱出装置】発動!!」
俺の身体が上空空高く跳ね飛ばされ、そのまま抵抗する間もなく海中へと叩き込まれた。
申し訳ないがアークファイブ前後のカードプールではワンサイド確定なので執事は引き続きディアハです。
漸くズァーク覚醒ルートに入れたので目的の展開まで後少し。