迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
打ち上げられ海へと落ちていく執事の行方を眺めるのを止め、ユーリは今にも暴れたい気持ちを我慢して邪魔した者に問いかけた。
「なんのつもりかなセレナ?
相応の理由が無いと流石に怒るよ?」
「貴様こそプロフェッサーからの命令を忘れたのか?
あの男のデュエルは禁じるとプロフェッサー直々に言われていた筈だ」
そう嘯くセレナの目は酷く
「別にいいじゃん。
勝てばいいんだからさ」
「貴様では無理だ。
貴様だけでは無い。
『融合次元』の誰であろうとあの男には勝てない。
そうプロフェッサーは結論を下した」
キャプテン・ソロとのデュエルを観察し、赤馬零王はあれ程の展開と蹂躙体勢を整えた執事がまだ余力を残していた事に気付き戦慄と恐怖する感情に支配された。
それを支える未知の召喚法であるリンク召喚と隔絶するカードパワーから、赤馬零王は執事とのデュエルに応じないよう命じリアルソリッドビジョンで実体化させたモンスターで直接討ち取るよう徹底させた。
それこそが執事を更に怒らせ、のみならず彼と共に在る精霊達を激怒させて居ることを知りもせず自らが嘗ての過ちを繰り返しているのは皮肉を通り越して喜劇と言うしかあるまい。
「それが気に入らないんだよね。
『勝てないから戦わない』なんて何が面白いのさ。
そんなに強い相手だからこそ『倒すのが楽しい』のに」
『強いから戦いたくない』
『負けるから戦わない』
そうやって誰もがユーリとのデュエルを拒絶した。
ユーリがプロフェッサーに従っているのは自由にデュエルする事が出来るからだ。
それを制限されて黙っているはずがない。
「我々には崇高な使命がある。
デュエルがしたいならそれを全うしてからにしろ」
「…つまらない奴になったね」
にべもなく切り捨てるセレナにユーリは吐き捨てた。
「榊遊矢と一緒にいた頃のセレナは少しは面白いと思えたのにがっかりだよ」
プロフェッサーに接触を制限されていたセレナだけがユーリに負けてもまたデュエルをしようと挑んでくれた。
故にユーリにとってセレナは『特別』だった。
しかし今の言葉でユーリの中でセレナは完全に『どうでもいい奴』に成り下がってしまった。
「何処へ行くつもりだ?」
「何処でもいいだろ? あのオジサンとデュエルしないってのを守ってやるから好きにさせてもらうよ」
そう言い残し『アカデミア』へと向かうユーリを無感動な瞳で見送るのだった。
〜〜〜〜
対処する間もなく海中へと叩き込まれた俺の口から空気が逃げ出していく。
「ガボボッ!?」
不味い!?
悪魔族に転生したから溺れ死ぬ事は避けられるしカードは魔力で保護しているから浸水で駄目になるのは防げるが、今はそれ以上にユーリをフリーにするのが危険過ぎる。
(回収に来てくれ『ナッシュ』!!)
距離から考え泳ぐより『ナッシュ』で上陸するほうが早いと判断しデュエルディスクを通して呼び掛けるが、返ってきた答えは最悪のものだった。
『魚族モンスターに囲まれて攻撃を受けている!
マスター!そっちにも来ているぞ!!』
(何だと!?)
辺りを見回すと自分に向けて突撃してくる【レア・フィッシュ】や【深海に潜むサメ】等が迫ってきていた。
(【召喚】…駄目だ!? 溺死しなくても水中では【召喚】に必要な声が出せない!!??)
海面へ上がらねばと上を向いたその隙を突かれ【深海に潜むサメ】が俺の右腕に喰らいついた。
「ガボァッ!?」
肺の残っていた空気が痛みと共に吐き出されそのまま海底へと引きずり込もうと喰らいついたまま潜航していく。
『見ていられないわね』
このままではと焦りを隠せなかったところで不意に【深海に潜むサメ】が尾びれに殴り飛ばされ拘束から解放される。
『無様を晒さないで。
貴方が死んだらヴィサスが悲しむの』
大きな泡の中に包まれ海水から解放された俺は、それが自身の意志で顕現した【ティアラメンツ・キトカロス】による助けだと理解した。
「…っ!? ゴホッゴホッ!?」
肺にまで入り込んだ水を吐き出すために必死で咳き込み、水が抜け肺に空気が入って楽になったのでキトカロスに礼を言う
「助かりました」
『お礼よりさっさと終わらせて。
それと、無理したから暫くは実体化出来ないしその泡も長くは保たないわよ』
そう言い残し自前の魔力で強引に顕現した反動でキトカロスは泡となって散ってしまう。
「嫌っている私のために無理をさせて申し訳ありません。
この礼は必ずしますよ。
来なさい【ティアラメンツ・クシャトリラ】【ティアラメンツ・カレイドハート】!!」
大量の泡が集い赤い鎧の人魚と下半身を軟体動物に変じたレイノハートを顕現させる。
途端、胸の奥に鈍痛が走るが俺は構わず二体に命じた。
「ティアラメンツ・クシャトリラは『ナッシュ』の援護と合流を支援!
最強の融合テーマと言われた所以を見せつけろカレイドハート!」
命じると同時に二体が文字通り水を得た魚の動きで本来の狩場を駆け回る。
(不味いな。【召喚】の多用で魔力が枯渇しかかっている)
ここ暫くの大量【召喚】でデュエルエナジーを持っていかれすぎた。
大型潜水艦であるナッシュを戻せば負担は大分軽くなるが零羅君を乗せたナッシュの顕現は解けない。
遊矢君達とのデュエルでもっと大量に回収しておけばまだ違ったのだが…
「意地を張るのはお父さんの誉れだもんな!!」
息子達に胸を張って再会する。
そして皆で姫様のもとに帰る。
それこそを縁に子供達が自慢に思えるお父さんであるために俺は意地を張り続ける。
『待たせた!
カタパルトから回収するぞ!』
直衛に回ったティアクシャと共に近くまで接近したナッシュが片方の鮫の口を開き俺は泡ごとその口に飲み込まれる。
鮫の口が閉まり排水を終えると俺を囲っていた泡がはじけて消えた。
漸く落ち着いたところで今度は噛まれた右腕が痛みを訴え始めた。
「改めてアリアスには感謝しないとな…」
『青眼の白竜』のブレスにも原型を保つと太鼓判を打った燕尾服は【深海に潜むサメ】の牙にも難なく耐えてくれた。
着ていたのがコイツでなければ右腕を食い千切られていただろう。
但し、服自体の防御力は只のスーツと何ら変わらないので食い千切られはせずとも骨のほうはしっかり逝っていた。
「ったく、俺の右腕はダメコン用のパーツじゃ無いんだぞ?」
『騎士』に打ち抜かれリースに斬り落とされと右腕ばかりが頻度高く被害に遭っている事をぼやきつつ【ご隠居の猛毒薬】を実態化させて回復薬を煽り骨を癒着させておく。
腕の治療が終わり人心地が着いたと思った矢先にナッシュの船体が激しく揺れた
「ナッシュ、状況は?」
『粗方の雑魚は掃討し尽くした。
だが、その機を見計らったらしい【雲魔物-アイ・オブ・ザ・タイフーン】が実態化した影響で海流が狂って『アカデミア』に近付けなくなっている』
「つまり、仕留めるのではなく足止めが目的か」
『だろうな。序に海水を取り込むことで通常の十倍近い巨大化を成し遂げている。
アレはカレイドハートでも梃子摺るぞ』
「零羅君は?」
『最奥の医務室のテーブルの下で蹲っているが怪我はしていない。
だが、異常に怯えているな』
「そうか」
記憶通りなら零羅君は零児君に引き取られる以前は紛争地域で暮らしていたらしい。
ナッシュの戦闘がそのトラウマを強く刺激したのかもしれない。
「ナッシュ。 現戦力でタイフーンを撃破するまでの予想所要時間は?」
『質量差を覆すのにどうしてもリソースが要る。
俺を含めた三体総掛かりでも最短で三時間は掛かるだろう』
「お前に
全力稼働、つまりナッシュ本船に『カオス・エクシーズ・チェンジ』を行い【
『正気か!?
今のお前の魔力残量で俺を【
「構わない。
リソースをお前とリトルナイトに集中させればまだ一回分の【召喚】程度は残る筈だ。
なにより子供を怯えさせて泣かせるより腸をひっくり返すほうがよっぽどマシだ。
それよりも推定所要時間はどれだけ短縮出来る?」
『一時間、いや。『ナッシュ』の名に誓って三十分で片付ける』
俺の決断にナッシュが力強く答え、その答えに力強く笑い命じた。
「ならやれナッシュ!
『カオス・エクシーズ・チェンジ』だ!」
『応!!』
そう応えると【
「ぐぅぅぅ…」
変型に必要な魔力を吸い上げられる苦しみは無理矢理血液を抜かれるような激烈な虚脱感となって俺を襲うが、その苦痛を父親としての意地だけでねじ伏せ耐える。
そうしている間に二つの船首が左右に開き、真横へと移動した後にさらに二つに分かたれ腕部と背部パーツへと展開。
同時に下部推進部は接続部を伸ばし両足への変形を完結。
最後に艦橋が下に下がり内側に収納されていた頭部パーツが表に現れ全身が紅く塗り替わり【
「相変わらず馬鹿みたいな魔力食いだな。
だが、これでサイズ差は狭まった」
本来の『カオス化』はナッシュ内部に格納されている【
実際どれぐらい強いのかと言うと、デカくなるだけで【
だが、水中運用可能で大きさが必要ならこいつ以上に適した存在も他に居ない。
「頼むぞナッシュ!大グレン団の名に恥じぬよう、台風如き風穴空けてやれ!!」
『当然だ!!』
銛を回転させながら見栄を切り【
今作中のハゲに対して精霊達はポプテピピックの「ステイッステイッ」のコマみたいになっとります。
なんで普段なら後少しほっといたら死ぬぐらいになるまで見過ごすキトカロスちゃんも執事を助けるのに無理するぐらい協力してます。
ナッシュの変形に関する言い訳ですが、ネフェルのイラスト見てたらこれ変形とかしそうと思いません?
そしてついメガレンジャー見たせいでやってみたいと思ってしまいました。
だから反省はするけど後悔はしない。