迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
今年も執事と姫様のドッタンバッタンをよろしくお願いします。
死さえ救いとなる無の牢獄へとドクトルを叩き込んだ。
これで後は赤馬零王を仕留めれば…。
「…っ!?」
そう思った直後、強烈な目眩に襲われ思わずたたら踏んだ。
「主殿!!」
異変に真っ先に俺へと駆け寄ったリトルナイトがその原因に気付き顔を青褪めさせた。
「魔力が足りていない…!?
主殿、某を送還してください!
これ以上の魔力消費は御身の命に関わります!」
俺の状態の悪さにリトルナイトが声を潜めるのも忘れそう叫んでしまった。
「なんだと!?」
「余計な事を言うなリトルナイト」
「っ、申し訳ありません主殿」
敵陣の中で弱っていることを明らかにする愚を犯した失態にリトルナイトが自責に顔を伏せる。
「…はぁ。
こうなればもう隠しようも無いですね」
リトルナイトの助けを借り立ち上がると遊矢君が困惑した様子で俺に問い掛けた。
「白銀さん、どういう事なんだ…?」
「遊矢君にはお話しましたね。
私は人間からデュエルモンスターズの1種族である『悪魔族』へと転生を果たした元人間だと」
「「「「「「「!!??」」」」」」」
零児君と遊矢君以外の者達が驚く中俺は何でもないことだと嘯く。
「私が悪魔族に転生した理由は惚れた女のためで今は関係ないですから仔細は省きますが、悪魔族に転生した事で食事の代わりに魔力、或いはデュエルエナジーを摂取しなければならない体質になったんですよ。
私の場合肉体が生産する魔力量と生命維持に必要な消費魔力は生産量がやや上回るので他者から奪う必要はないのですが、この魔力はカードに宿る魂を実体化させるのに必要なんですよ」
「リアルソリッドビジョンではなく、カードに宿る魂に実体を与えていたというのか!?」
俺の【召喚】がリアルソリッドビジョンとは全くの別系統による技術に依るものだと聞かされ赤馬零王が驚きを顕にする。
「何を驚くのですか?
デュエルモンスターズは紀元前のエジプトの石版に宿した魂を召喚する魔術を起源に持つゲームなのです。
時代を下り魂を宿す器が変わろうと正しい手順さえ踏めば後は才能次第で過去の奇跡を現代でも再現できる。
ズァークは時代が時代なら稀代の精霊使いとなった才を持っていた。
だからこそモンスターを実体化させるに留まらずモンスターとの融合さえもを成し得たのです。
その証左はあなた自身が良く知るところでしょう」
「……」
否定したくとも自分の過去が俺の言葉を肯定しているせいで赤馬零王は黙ってしまう。
「力が強い精霊に肉体を与えるなら相応の対価は必然。
特にここ最近は高レベルモンスターを実体化させていましたからね。
そのせいで少しばかり無理をする必要がある状態になっているというだけですよ」
この事実はハゲをブチ殺すまで隠し通すつもりだったのだが、リトルナイトが口を滑らせたせいで明らかにするしかなくなってしまった。
「何故、息子のためにそこまで…?」
「榊遊矢は私の友人だからです。
遊矢君だけてはありません。
ユート君も、ユーゴ君も、ユーリも、柚子さんも、セレナさんも、瑠璃さんも、リンさんも、隼君や零児君達も含めて私の友人です。
友誼を結び共にデュエルをしたのが平行世界の彼らだとしても私が手を貸さない理由はありません。
それは貴方だってそうでしょう?
四つの次元に混乱と悲劇をまき散らした赤馬零王を友人だからと、今ここに至ってなお討つのではなく止めようとしている貴方に理解出来ないとは言わせませんよ」
理由なんてそんなものだ。
どんな世界に行っても俺はそうやって友達になりたいと思った彼等を助けたいと思ったから死ぬような目に遭っても全力で味方をして、殴ると決めたならどんな絶望的な戦場にだって拳を握り飛び込んでいった。
俺の返答に榊遊勝は僅かな瞠目を見せてからそれ以上の納得はないと目を瞑る。
「…そうか。そうだな。
友人のためなら無茶の一つや二つやりたくなるな」
リトルナイトを下がらせデュエルディスクを構えながら赤馬零王に告げる。
「加えて死ぬまで苦しんで欲しい赤馬零王が彼等の敵としてそこにいる。
死にかける程度のリスクで引き下がる理由はありません」
「巫山戯るな!」
戦う理由に赤馬零王が怒りを俺に向ける。
「貴様は自分で言ったな!
貴様が嫌うのは平行世界の私だと!
ならば私にその感情を向けるのは違うだろうが!!」
「いいや。この世界の惨状を見て、そしてお前自身の所業に怒り
「軽蔑だと?」
「そうだ。
赤馬零王。俺はな、お前が嫌いだがお前の娘を取り戻したいという願いまでは否定していないんだよ。
父親になって、育っていく姿を見守って、それが失われた苦しみと絶望から世界を踏み躙ってでも取り戻したいと足掻くことを否定出来ないんだよ」
あの頃はただ多くを犠牲にするその傲慢さが許せなかった。
だけど姫様と結ばれ子供達が育っていくのを見守る内に、赤馬零王の絶望と狂気に僅かばかりにでも共感してしまう自分がいる事に気付いてしまった。
赤馬零王だけじゃない。
世界を救おうとして足掻きに足掻きそれでもどうしょうもないと本末転倒としか言えない選択肢に手を伸ばさざるを得なくなった『Zone』や、死んだ妹を取り戻すため『星遺物』の力を用いて神の姿でイヴを蘇生させようとしたニンギルスを知っていて、彼等を否定出来ないというのに娘のために世界を犠牲にしようとした赤馬零王だけを否定するのは間違っていると思ってしまったのだ。
「だから俺は俺の世界で出会った赤馬零王を嫌っても、娘のために世界を犠牲にしようとした事までは否定していない。
だけどお前は違う!
お前はより確実な成功のためだけに柚子さん達にパラサイト・フュージョナーを使用する事を容認した。
それだけでも殺して釣りが出るだけの厭悪を抱かせてくれたが、お前はそれだけじゃなくパラサイト・フュージョナーを寄生させた柚子さん達を更に利用するドクトルの計画を勝算がないからと否定するだけで利用する事そのものを否定しなかった。
それが俺には我慢出来ない!!」
赤馬零王は俺の怒りを受け半歩足を引く。
「彼女達はお前の実の娘の魂を宿す生まれ変わりなんだぞ!?
それを利用しようとされて、お前は何とも思わなかったのか!!」
「生まれ変わり等ではない!!
レイの分かたれた魂の器がどうなってもレイの復活さえ叶うなら構うものか!!」
分かたれた魂が4人の命となって其々の人生を歩んだ事は考慮する値しない些事であると切り捨てる赤馬零王に改めて侮蔑の念を抱く。
「そうか。やっぱりお前を俺は軽蔑するよ」
一人の人間として見た上でそれでも犠牲にすると言い切るならまだ許容も出来た。
だがこの男は柚子さん達を含めこの世界の全てが消えて構わないレイを蘇らせるためのリソースとしか見ていない。
嗅覚を起こすまでもなく詳らかになる傲慢さに榊遊勝さえ言葉を失う中、俺は最後の問いだと口を開く。
「ならズァークはどうする。
今のまま復活すれば再び世界を焼くだろう」
「レイが復活すればレイと共に失われたズァークを封じた四枚のカードも復活する!
それを用い今度こそ私がズァークを降すのだ!」
「お前には無理だ」
「なんだと!?」
こいつは本当に馬鹿だ。
「『カードに宿る魂』が貴様に力を貸すわけないだろう?
大地から星の力を引き出すカードだぞ?
それ程の力を宿したカードがただその力を利用しようという輩に力を貸すと本気で思うのか?」
そう嘯く俺の言葉をリトルナイトが肯定する。
「左様。
我らが主殿の【召喚】に応えるのは主殿が我等カードに宿る魂をオリジナルの分霊と侮らず我等に敬意を払い自らと対等であると礼儀を払われるからだ。
故に我等は自らの意思で主殿に応え身命を捧げている。
例え貴様に主殿以上の精霊使いの才があろうと貴様に応え忠を尽くすことはありはしない!」
「っ!?」
精霊からの拒絶に赤馬零王が息を呑む中リトルナイトは更に畳み掛ける。
「理解しろ下郎。
貴様の発言により今この時から貴様は主殿のみならずこの次元全ての
今後貴様が如何なるデッキを組もうが貴様の手がまともに動くことはないと思え」
「戯れ言を!」
「ならば試してやろう」
そう言うとリトルナイトは俺の前に立ち何処からともなくデッキを取り出しいつの間にか装着したデュエルディスクを装備する。
「おいリトルナイト?」
「お下がりを主殿。
此奴のような輩には主殿が踏み付けるより某程度の木っ端の方が身の程を理解出来るというもの。
さあ来られよ。
それとも臆しデュエリストの風上にも立てぬことを承知で武力に頼るか?」
「言わせておけば!!」
リトルナイトの挑発に赤馬零王は顔を真っ赤にしながらデュエルディスクを起動して対峙する。
「「デュエル!!」」
こいつ、俺の獲物取りやがった。
「某のターン!
スタンバイからメインへ。
某は手札から【
【
効果モンスター
星2/闇属性/戦士族/攻 800/守1000
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分の「S-Force」モンスターの正面の相手モンスターは、
自身と同じ縦列のモンスターしか攻撃対象に選択できない。
(2):手札から「S-Force」カード1枚を除外して発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、
デッキから「S-Force 乱破小夜丸」以外の
「S-Force」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
現れるリトルナイトこと小夜丸の姿に赤馬零王は僅かに戸惑いを見せる。
「同じ顔のモンスターだと!?」
「【
義故に袂を分かったが嘗ての某が居るのも必然。
小夜丸の効果を発動!手札の【
除外は発動コスト故に先に手札の【
改めてチェーンは御座るか?」
「……」
「なれば小夜丸を手札に戻しデッキより【
お頼み申しますティナ先輩!」
【
効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻2200/守2000
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、「S-Force プラ=ティナ」以外の
除外されている自分の「S-Force」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分の「S-Force」モンスターの正面の相手モンスターの攻撃力は600ダウンする。
小夜丸が姿を消しフィールドに紫のコートを羽織る銀髪の美女がフィールドにおり立ち一瞬だけ小夜丸を仕方なさそうに見遣ってから赤馬零王へと対峙する。
「プラ=ティナの召喚成功時の効果を発動!
除外されている【
某は先程除外した【
頼みますエッジ・レイザー殿!」
【
効果モンスター
星4/闇属性/サイバース族/攻1500/守1300
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
手札から「S-Force エッジ・レイザー」以外の
「S-Force」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分の「S-Force」モンスターの正面の相手モンスターは、
リンク3以上のモンスターのリンク素材にできない。
プラ=ティナが空間を歪ませてゲートを作りそのゲートを潜りサイバーパンク世界の住人だと一目に解る鎧武者がガシャリと鎧を鳴らし大地を踏みしめる。
「エッジ・レイザーの召喚成功時効果発動!
手札から【
某は手札に戻した乱破小夜丸を攻撃表示で特殊召喚!
再び参るぞ私!」
エッジ・レイザーの横に刀を守りの型で構える小夜丸がフィールドに現れる。
「そして開け未来回路!!
ティナ先輩とエッジ・レイザー殿、そして【
【
効果モンスター
星1/光属性/戦士族/攻 0/守 0
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドのモンスターを「S-Force」モンスターのリンク素材とする場合、
手札のこのカードもリンク素材にできる。
(2):自分・相手のメインフェイズに発動できる。
このカードを持ち主の手札に戻し、手札からレベル2以上の「S-Force」モンスター1体を特殊召喚する。
(3):自分フィールドの「S-Force」モンスターが効果を発動するために手札を除外する場合、
代わりに墓地のこのカードを除外できる。
天に浮かぶ未来技術が生み出した科学の魔法陣に三体のモンスターが飲み込まれていく。
「あれは一体!?」
「アレは彼等だけが持つ【リンク召喚】。
融合、シンクロ、エクシーズ全ての特殊召喚されたモンスターさえもが召喚素材として活用出来る更なるデュエルの進化の形です」
初めてのリンク召喚に驚く榊遊勝に零児君が解説する。
「アローヘッド確認!召喚条件は【
参られよ【
リンク召喚!リンク3!【
【
リンク・効果モンスター
リンク3/光属性/サイバース族/攻2600
【リンクマーカー:左上/上/右上】
「S-Force」モンスターを含む効果モンスター3体
自分はこのカードのリンク先にモンスターを出せない。
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分・相手ターンに、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
その後、その相手モンスターをこのカードのリンク先となる相手のモンスターゾーンに移動できる。
(2):このカードが攻撃するダメージステップ開始時に発動できる。
このカードのリンク先のモンスターを全て除外する。
未来回路の中心部からメタルヒーロー然としたメタリックな戦士が居り立ち拳を構える。
「カードを一枚伏せてターンエンド!
さあ参られよ!!
その上でカードに嫌われるという意味を身を以て理解するがいい!!」
しちゅじがボロボロなので小夜丸ちゃんが乱入しますた。
然しながら一気見見直してもハゲはカードの精霊に喧嘩売りまくってるとしか思えない行動が多過ぎて乾いた笑いが漏れましたよ。
次回はハゲの絶望をお届けします。