迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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自己解釈した四つの次元の正体と赤馬零王の腸回です。

※文章が一部おかしかったので修正しました。


悪魔は龍と踊る(4)

 世界が歪んでいく。

 柚子さんを失い世界の礎が損なわれたことで安定していた形が崩壊を始めたのだ。

 

「急がなきゃならないというのに…」

 

 時空の乱れが道を書き換え赤馬零王のいる場所へと行こうとするのを阻む。

 それは時間を経るごとに酷くなり他の三人も赤馬零王の犠牲になっている事が察せられた。

 こうまで時空が歪んでしまうと【緊急テレポート】の類は勿論使えないし、それ以前に魔力不足が限界を超えたらしく足の指が何本かが魔力に分解され消えている。

 体の本能がデュエルに必要な腕と頭を後回しにしているが、これが更に進めばまともに立っていることさえ叶わなくなるだろう。

 

「…おかしい。

 さっきから魔力消費が跳ね上がっている?」

 

 肉体を持ったまま悪魔族に転生した俺の燃費は良いを通り越してただ立っているだけでも増えるぐらいに消費は無い。

 代わりに身体能力は据え置きだが、他の命を奪わなくても生きられるようにダルクが調整した結果なのでそれが崩れたことが信じられない。

 

「主殿、その理由はおそらく某達の『精霊界』との繋がりが原因かと思われます」

「どういう事だ?」

「某が【S-Force】にいた頃に注意事項として習ったのですが、他の次元で活動する際にその次元に崩壊レベルの負荷がかかった場合、転移装置が元の次元との繋がりを維持するために大量のエネルギーを消費するようになるため、そういった事態に陥った場合機器がエネルギー切れで使えなくなる前に帰還するよう教わりました。

 おそらく主殿は『精霊界』との繋がりを維持するために大量の魔力を消費しており、それが主殿の負担になっていると思われます」

 

 リトルナイトの説明に体内の魔力の状態を確かめてみると、言われた通り帰るための道標に割いている魔力が生成量を大幅に上回っていた。

 

「だが、ここまで歪んだ次元を抜けるのは至難の技だぞ?

 それこそ次元を超える際の衝撃で繋がりそのものが切れかねない。

 それにこのレベルで次元の歪みが生じた事は何度もあったが、ここまで消耗した事は…」

「それは主殿が万全とは行かずとも活動に支障が及ぶほどの魔力不足に至ってなかったからかと」

「そういう事か…」

 

 確かに死にかけるようなことは両手両足を足しても到底足りないが、魔力不足という経験は全く無い。

 

「八方塞がりか?」

 

 リトルナイトを送還して人間化を解いても消費が幾許か減るだけで根本的な打開策にはならない。

 最悪の場合切り札である二つの罪宝の内のどちらかを砕いてリソースにするしかないかと、どちらを切り捨てるか考え始めた俺に何か覚悟を決めた様子でリトルナイトが俺に告げた。

 

「主殿。某に今一度汚名を濯ぐ機会を頂きたい」

「…何を考えている?」

 

 凄まじく嫌な予感が過ぎる俺の前でリトルナイトは信じられない事を口にした。

 

「某を御身の一部として使って頂きたいのです」

「巫山戯るな!」

 

 リトルナイトの言葉に俺は反射的に叫んでいた。

 

「俺に『精霊喰らい』をしろと、お前を喰えと言うのか!?」

 

 『精霊喰らい』とは文字通りカードの精霊の魂を身体に取り込みその存在を自身のリソースへと書き換える外法の中の外法。

 精霊の質や位によって差異はあれど、精霊を喰らえば莫大な魔力を得ることは叶うが、喰われた精霊は当然その存在を損ないそれまで培ってきた記憶と経験を失うだけなら僥倖で、最悪の場合カードとして実体化はおろかカードそのものが使えなくなる。

 『精霊使い』にとって許されるはずもない文字通りの最後の手段であり誇りを捨てる外道への道だ。

 

「ですが某がしゃしゃり出ず赤馬零王を主殿が誅していれば柚子達は斯様な目に遭わなかった!

 某が我を通した結果事態は更に悪くなったのです!」

 

 俺の負担を減らそうとして事態が悪化したのだと自責に駆られるリトルナイトに俺はそれでもと留まるよう言う。

 

「ならばこそ死んで償うなんて考えるな。

 生きるためだと言い訳をしてお前の忠義だと『精霊喰らい』(ソレ)を受け入れたら俺はきっと、悪魔族になっても手放さずにいた人間の心を失ってしまう。

 頼むリトルナイト。俺を人間だったことを忘れて何とも思わない完全な悪魔にさせないでくれ」

 

 そう懇願を口にすると、そうなる事など思いもしなかったとリトルナイトの顔が悲嘆に歪み目尻に涙を滲ませて頭を下げる。

 

「…申し訳ありません主殿。

 某はまた、過ちを犯してしまう所でした…」

 

 良かれと信じてより最悪を導こうとしていた己を恥じるリトルナイトを俺は許す。

 

「いいさ。お前はお前が出来ることを必死に考えていただけだ。

 その忠義は本当に有難いと思っている」

「勿体ないお言葉。

 ですがせめて某を還し某の得たデュエルエナジーを御身の物としてください。

 赤馬零王とのデュエルで得たデュエルエナジーがあれば少しは楽になる筈です」

「分かった」

 

 リトルナイトを犠牲にするよりよほど受け入れられる提案に俺はリトルナイトの実体化を解く。

 

「主殿。此度の失態は必ずや濯いでみせます」

 

 そう言い残し溶けて消えたリトルナイトを見送り、俺は少しでも魔力を制限するため人間化も解いてしまう。

 

「焼け石に水だがやらないよりマシか」

 

 普段は隠している捻じくれた角が伸びる感触と共に髪の色が抜けて他の【ラビュリンス】の者達同様の銀髪に色が変わる。

 最後に腰部から姫様やアリアスと同じ形態の黒に近い濃い紫色の翼と尾が伸びて【白銀の城の側仕え(ラビュリンス・アテンダント)『執事』】としての真の姿となる。

 

「兎に角急がなければ…」

 

 リトルナイトから譲渡されたデュエルエナジーで暫くは保つようになったがジリ貧なのは変わらないと急ごうとした直後、視界を強烈な光が包み反射的に腕で顔を覆い目が焼かれるのを防いた。

 そして光が落ち着き遮っていた腕を下ろすと世界は一変していた。

 

「これは…」

 

 『アカデミア』が時空の海へと浮遊しており、見れば地球らしき惑星に向けてエネルギーを放つ構造体も確認出来た。

 

「っ! 見付けた!!」

 

 デュエルマッスルで強化された異常な程見える視界の先に構造体の前で何かを待つように佇む赤馬零王の姿を捉える。

 

「赤馬零王!!」

 

 翼に魔力を込め、時空の海を飛翔し赤馬零王へと迫る。

 

「っ!? 貴様その姿は!!??」

 

 飛翔に魔力を使ったため再び切り捨てていい部分が魔力へと分解される中、俺は懐から切り札を手に赤馬零王へと飛びかかる。

 

「漸く捕まえたぞ赤馬零王!!」

「ぐっ!? 離せ!! 漸く、漸くレイが復活するのだ!!

 貴様に構う暇など無い!!」

「黙れ!!」

 

 赤馬零王を()()()()()()()俺は赤馬零王が秘めた感情を暴露してやる。

 

「娘を男に奪われた嫉妬もいい加減にしろ!!」

「な、に…?」

「貴様のズァークへの怒りの根幹は娘を奪われたからだ!

 その怒りをお前は世界を破壊したからとすり替えた。

 お前が娘を蘇らせたいのは取り戻したいからじゃない。

 娘とズァークを引き剥がしたいという願望こそが貴様が娘を蘇らせたい本当の理由だ!!」

 

 反論しようとして、しかし何も言い返せず口を開き閉じする赤馬零王へ嘲笑を投げかける。

 

「お前は悔しかったんだろう?

 長年愛情を込めて育てた娘が恋し選んだ男が、自分の娘より見ず知らずの誰かのためにと狂い最後には娘ごと世界を破壊しようとしたのが何より許せなかったんだ」

「ち、ちが…」

「違わないんだよ。

 お前は知ってしまったんだろ?

 四つの次元の成り立ちに娘が自分とズァークとの恋愛小説を下地にされていた事を」

 

 この事に気付いたのは俺ではなくアリアスだ。

 

 ズァークと幼馴染として共に成長し過ごす自分。

 平和な世界でズァークとただ甘い恋模様を描く自分。

 最下層で辛いながらもズァークと二人必死に上へ上へと駆け上がっていく自分。

 学生として共にズァークと共に切磋琢磨して学園生活を楽しむ自分。

 

 四人の少女に別れたレイはそんな秘めた妄想を世界の礎としてそれに適した次元の情報をコピーした世界を作り出した。

 

「見たくなかったんだよな?

 娘の妄想ノートの中身なんてさ。

 それも自分が嫌うズァークとのなんて反吐が出そうだったんだろう?」

「…黙れ」

「だからお前はかつての世界に帰りたかった。

 だが世界を戻すだけでは今度こそ娘がズァークに奪われると恐怖した。

 だからお前は今度は自分がズァークを封じることにした。

 そして娘をズァークから引き剥がし未来永劫ズァークとレイが結ばれないようにしようとしたんだ!!」

「黙れ!!!!」

 

 目を逸らし続けていた醜い本音を引きずり出され赤馬零王の顔が顔芸枠も真っ青なほどに歪みながら叫ぶ。

 

「私は認めない!!

 レイは奴なんかに相応しくないんだ!!

 レイはズァークになどやらん!! レイは何処にもやりはしない!!」

 

 引きずり出された醜い感情を喚き散らす赤馬零王に微かにだけシンパシーを感じながら、だからこそ赦さないと俺は『切り札』を起動した。

 

「娘の人生を祝福できない貴様に相応しい罰を与えてやる。

 起動しろ『盲目の罪宝マクシムス』!!」

 

 ドラグマの『ホール』のような模様が浮かぶ宝玉を突き付け、俺は赤馬零王が最も見たくないものを見せた。 




一挙見してこんな感じだったんじゃないかと思ったんですよ。

後、以前イデオンの話題を出したのは親としての自身のエゴで主人公を追い詰め主人公達を世界ごと相打ちに持ち込んだラスボスがいたからだったりします。
 

以下は簡易的なまとめです。

赤馬レイのズァークとイチャイチャコンセプト → ハゲがやらかした結果

スタンダード
幼馴染 → どん底人生まっただ中

融合
学園物 → 双方無関心

シンクロ
底辺這い上がり立身出世 → 格差社会ディストピア

エクシーズ
平和なボーイミーツガール → ポストアポカリプス

なお、レイがそう望んだのではなく覇王と四天が分断に抵抗した結果世界が分割され、楔となったレイの願望を世界の基礎になり構築の際にそれに適した別次元を象っただけでレイが直接構築した訳では無い…筈。

因みにリトルナイトの要望に従っていたらバトルシティの魔王執事が降臨して大惨事になってました。

次回からはデュエルになるはずです。
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