迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

237 / 255
ちょっと間延びしたのでハゲの処刑とデュエル開始までです。


悪魔は龍と踊る(5)

 執事が『盲目の罪宝マクシムス』を起動した直後、赤馬零王の視界は闇に包まれた。

 

「これは…!?」 

 

 掴んでいた執事も居なくなり一切の光の届かぬ無明の闇の中に自分一人が放り出され、咄嗟にドクトルと同じ感覚遮断を食らったのかと恐れを抱いたが、しかし執事がドクトルに使ったのは『拒絶の罪宝リース』であったはずだと思い出した。

 違う代物であるにしろ決して安心はできないと改めて何か情報は無いかと辺りを見回すと、そこに背を向ける人の姿があった。

 

「レイ!!」

 

 あの日、自分の前から姿を消したその時と寸分たがわぬ姿で佇む娘の姿に赤馬零王はそれが罠である可能性も投げ捨て駆け寄ろうとしたが…

 

「ズァーク!」

 

 レイは赤馬零王の声に何ら気づく素振りも見せず嬉しそうにその名を呼び走り出した。

 

「待ってくれレイ!?」

 

 赤馬零王の呼び掛けも届いていないのか笑顔で走り出したレイの行く先には微笑みを浮かべ手を振りながらレイが来るのを待つかつての姿のズァークが居た。

 その瞬間、赤馬零王の頭が真っ白に、そして刹那を置いて怒りで真っ赤に染まった。

 

「ズァーク!!」

 

 怒りのままに娘を追い抜きズァークへと駆け出し拳を振り上げた赤馬零王だが、その拳を振り下ろそうとした瞬間ズァークは煙のように目の前で消えた。

 

「なにっ!?」

 

 消えたズァークに困惑を浮かばせた赤馬零王の周囲が突然景色を変えた。

 

「こんどは…何だ!?」

 

 そこはリビングのような場所だった。

 戸惑いながらも警戒を続けようとした赤馬零王は、しかし視界に飛び込んできた光景にそんな考えも吹き飛んでいた。

 

「う〜ん。

 ここはこれでどう?」

「そう来たか。

 止めたいけどどうしようかな?」

「え〜。通してよ〜」

「ふふ、仕方ないな。

 だけどそれを通すかわりにこのカードを発動しようかな」

「ああ!? それはズルい!!」

「「あははは」」

 

 テーブルを挟み穏やかにテーブルデュエルを繰り広げるズァークとレイ。

 その二人の間に流れる雰囲気は恋人同士でしかありえないほどに仲睦まじいものを…

 

「許すものか!!」

 

 怒りで発狂しそうなほど滾りながらテーブルへと飛びかかる赤馬零王だが、手が触れる瞬間再び煙のように二人は消え、今度は外へと景色を変える。

 

「また…」

 

 今度は何をと憤死しそうなぐらい怒り狂う赤馬零王の耳にカランカランと鐘の音が響き渡る。

 

「まさか…」

 

 見たくないと思いながら音の出処へと振り向くと、そこには赤い絨毯が入口から伸びる教会。

 

「止めろ…止めてくれ…」

 

 絨毯を挟んでこれから来るだろう主賓達を祝う列の姿に何を見せられるのか理解した赤馬零王の顔に絶望が浮かぶ。

 だが、そんな願いなど叶うはずもなく、開いた扉から横抱きにされたレイを抱くズァークが歩み出てきた。

 どちらも白いドレスとタキシードに身を包み、左手の薬指にはお揃いの指輪が嵌められていた。

 

「やめろぉぉぉおおおおお!!」

 

 幾度となく繰り返し見せられるのかズァークとレイの幸福の姿(赤馬零王の絶望)にその心は砕け散った。

 

 

〜〜〜〜

 

 

「……終わったか」

 

 生気を失った瞳で倒れ伏す赤馬零王を前に俺は奴の心が砕け散ったのを確信して息を吐いた。

 

『盲目の罪宝マクシムス』

 

 その力は『都合のいい理想』を見せる事で人を従え利用した【教導の大神祠官】の所業を自らに再現する秘法であり、良い使い方をすれば希望を見せることも出来るのだが、悪し様に使えばこの様に見たくないものを見せ続けて精神を破壊し廃人にする事も意のままに従う傀儡にする事も可能なまさに自らの野望を盲信し続けた大神祠官らしい『罪宝』となった。

 

「後は…」

 

 少し離れた場所で実体化した【覇王龍ズァーク】がアカデミアを襲撃している光景が見える。

 

『我とデュエルする者は居ないのか!!

 我とデュエルしろ!!』

 

 暴走しながらも嘗て望まれたままに対戦相手を探すズァークの姿に憐憫を抱き、俺はセットしていた【世壊】を『カード化』してしまい新たに黄色のデッキケースが描かれたカードを実体化してディスクにセットする。

 

「ええ。お望み通りお相手しましょう」

『待って!』

 

 『アカデミア』まで行くのは辛いがギリギリ届くだろうと翼を広げた俺に声が掛けられた。

 

「貴女はレイさんですね?」

 

 振り向くとそこにはデュエルエナジーの塊が人の形を象る存在がそこに佇んでいた。

 

『私を連れて行って!

 ズァークの悪しき心を今度こそ私が切離してみせる!だから』

「お断りします」

 

 ズァークを止めたいと願うレイに俺は拒絶を示す。

 

「それを成せば貴女の裡に取り込まれた四人まで巻き添えになります。

 私は貴女ではなく柚子さん達を解放しに来たんです。

 ですから今暫くそこで待っていて下さい」

『ズァークには誰も勝てない!!

 統合された覇王龍ズァークは倒す事は誰にも出来ないの!!』

「笑わせるな」

『っ!?』

 

 ズァークの恐ろしさを語るレイを俺は嘲笑う。

 礼節が消えてしまっているが許してほしい。

 俺は今、デュエル狂い(エンジョイ勢)としてもう我慢の限界なんだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 だからこそ『最強』を目指し、殺意を研ぎ澄ませ『遊戯王プレイヤー(俺達)』は笑いながら殺し合い(デュエル)を愉しみながら遊べるんだ。

 そしてズァークは『最強』を名乗った!

 ならば挑み打ち倒さんと喰らいつかないで何がデュエリストだ!

 それをなんだ?()()()()()()()()()で諦めろと?

 笑わせる。勝つ努力を放棄したならすっこんでいろ」

 

 世界の命運も勝算も二の次で十分。

 強い敵が戦いを望んでいるならそれ以上に理由なんて必要ない。

 

『しょ、正気なの!?

 相手は最強の四天と一つになった存在なのよ!?』

「だからなんだ?

 生憎俺は世界を破壊するような化物との戦いは慣れっこでね。

 ()()()()()()()ぐらいじゃないと()()()()()()()

 

 そう言って俺は赤馬零王が使っていた移動装置を見付け、消耗を軽減するためにそちらを利用しようと移動する。

 

「ズァークと戦うならせめてこれを持っていって!」

 

 そうレイが言うと俺の前に四枚のカードが浮かび上がる。

 その中の一枚を見てみる。

 

【エン・フラワーズ】※アニメオリジナルカード

永続魔法

①:自分の魔法&罠ゾーンに「エン・ムーン」「エン・ウィンズ」「エン・バーズ」が

表側表示で存在する場合にこの効果を発動できる。

1ターンに1度、フィールドの全てのモンスターの効果を無効にし破壊する。

この効果で墓地に送られたモンスターのコントローラーは、その自分のモンスターの数×600ダメージを受ける。

 

『ズァークを封じた四枚のカード。

 これがあればズァークの力を無力化出来るわ!』

「なんですかこの醜い塵カード。

 他の三枚も発動条件に指定特殊召喚モンスター三枚以上とエクストラデッキの圧迫率が厳し過ぎてどう考えても使いようが無いし、こんなロマンさえ無いゴミを使うなら運は絡みますが【一撃必殺居合ドロー】のほうが魔法罠全部ぶち壊してくれる分ロマンも爽快感も遥かに上ですね。

 これを作ったデザイナーはバカ以前にデュエルを知らない素人なんですか?」

『え、ええ…』

 

 持っているだけで魔力が流れ込み回復しているところから秘めたる力は確かに凄いが、デュエルで使うなら【エン・フラワーズ】を使う事を前提としたネタデッキを作る必要がある。

 これを使うぐらいならフル投入した【三幻魔】とか【三邪神】とか【三幻神ホルアクティ】とか手札事故は前提のデッキか伝説のネタカードと言われた【スピリッツ・オブ・ファラオ】をエースに据えたデッキを使う方がまだ楽しいと思えるな。

 

『父さんの作ったカードがゴミ…』

「赤馬零王の作ですか。道理で実際のデュエルで使えるか考えていない筈だ」

 

 というか四枚の永続魔法使うのに赤馬零王が選んだのはペンデュラムって…ペンデュラムゾーンが独立しているマスター3ルールだからギリ可能なんだろうけど墓地に指定モンスター置く方法はどうするつもりだったんだ?

 

「【帝】か【教導】ならでワンチャン…いや、だったらこんな塵に頼らずズァークを【壊獣】か【溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム】辺りでリリース除去したほうが早いな。

 それはそれとして、このカードが無くとも柚子さん達は復活させられますか?」

『え? ええ。

 私の統合を解く事が出来れば四人を生き返らせる事は出来るわ』

「ならいいです。

 ちょっとズァークと遊んでくるのでそこで待っていて下さい」

 

 魔力を回復するアイテムとして【エン】シリーズを懐に収め俺は再構築された翼を広げデュエルに興じているらしいズァークの元へと飛翔する。

 

『もう終わりか?

 ならばこれでトドメだ!!』

 

 丁度デュエルの決着が着いたらしく【覇王眷竜スターヴヴェノム】の攻撃により零児君が派手に吹き飛んでいた。

 

『さあ次は誰だ!!

 俺に挑もうという者は居ないのか!!』

「ここに居ますよ!」

 

 零児君が立っていた場所に着地しそう言うと龍化した遊矢君の姿のズァークは俺を訝しむ様に目を細める。

 

「人間ではないな?

 誰だ貴様は?」

「誰でもいいでしょう。

 私は貴方とデュエルがしたいだけのデュエリスト。

 それでも名を知りたいなら執事とでも呼んでください」

 

 そう言うとズァークは悪役っぽい態度で尊大に告げる。

 

「まあいい。我に挑むというなら掛かってこい!」

「…はい?」

 

 何を言っているんだコイツは?

 

「どうした?デュエルをするのだろう?」

「ええ。ですから仕切り直すのを待ってるんですが?」

「んん? このままデュエルするのではないのか?」

「貴方と本気でやるからにはちゃんと一ターン目からやるに決まってるでしょう。

 全力勝負に横入り乱入なんて巫山戯た真似する方がどうかしてます」

「……」

 

 ちゃんとデュエルしたいから仕切り直せとそう言うと何故かズァークは黙り込んだ。

 

「そ、その姿はまさか白銀なのか?」

「ええ。色々あって人間の姿を保てなくなっていますが私は『白銀ユウタ』と名乗っていた者ですよ」

 

 そう言って俺は改めてズァークに言う。

 

「それと、ペンデュラムの扱いについて私と貴方でレギュレーションが変わるので説明したいのですが宜しいですか?」

「う、うむ。

 ルール確認は大事だからな」

 

 不思議なほど困った様子を見せながらズァークは合体していたズァークを分解し竜人状態で俺と対峙する。

 

「では改めて、図解を出したほうが分かりやすいでしょうから此方を確認してください。

 まず前提として私と貴方で違うレギュレーションに合わせたデッキ構築が成されています。

 本来であればどちらかに合わせるのが正しいのですが、所持カードや禁止カードの違いなど調整に時間を要するため今回は例外的に双方が其々のレギュレーションのままでのデュエルになります。

 ここからその違いについての簡単な説明に移りますが此処までで分からないことはありますか?」

「いや。だが、今やる必要があるのか?」

「当然です。

 やるからには全力全開でやらなきゃ楽しくありません。

 そのためにもルールの違いを念頭に置いて共有しておかねば出来る出来ないで一々ジャッジを挟むようになるでしょうが!」

「う、うん?」

「それでは先にズァークのレギュレーション。

 仮称として私に馴染みがある『マスター3ルール』と名付けさせて頂きますが此方はモンスターゾーン5箇所と魔法罠ゾーン5箇所に加えて独立したペンデュラムゾーンが存在する。

 これに間違いはありませんね?」

「ああ。我が生み出した新たなペンデュラムゾーンこそ我の力の象徴である!」

「ではそれを踏まえ此方を確認してください」

「…」

 

 張り切って宣うズァークを軽く流し『新マスタールール』についての解説に入る。

 

「私のレギュレーションを『新マスタールール』と呼称しますが、こちらではモンスターゾーン5箇所に魔法罠ゾーン5箇所に加えて右から数えて二番目と四番目の位置に新たな『エクストラモンスターゾーン』が追加されています。

 こちらのモンスターゾーンは通常召喚及びデッキと墓地を含む範囲からの特殊召喚でモンスターを置くことはできずエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターだけが配置出来ます。

 また、それに伴いペンデュラムゾーンを魔法罠ゾーンの両端と統合したためペンデュラム召喚に関しては弱体化調整が入ってます」

「我が生み出したペンデュラム召喚を弱体化させただと!?」

「『新マスタールール』で追加された新たな召喚法『リンク召喚』と組み合わせた場合専用構築すると特殊召喚の総数が一ターンで二十回を超えるために行われた調整です」

「我の後に新たな召喚法が生み出されただと!?」

「ええ。多少ネタバレになりますが今回お相手頂く私のデッキは儀式召喚以外のリンク召喚を含む全ての召喚法を用いますのでその辺りの違いに先にご理解を頂きたい。

 それに伴いエクストラデッキからのペンデュラム召喚はエクストラモンスターゾーンの一箇所のみ或いはリンク召喚されたモンスターのリンクマーカーという部位に対応した場所からしか召喚出来なくなってますのでその辺りも留意してください。

 喫緊で共有したいのはこの辺りですが、今の時点で疑問点はありますか?」

「いや、その前にだがもう少し我に反応しないか?」

「さっさと貴方とデュエルがしたいんですよ。

 デュエルが始まったら幾らでも応えますので今は確認を優先でお願いします」

「…はい」

 

 若干凹んでる気がするが気のせいだろう。

 

「エクストラモンスターゾーンは二つあるが貴様は最大7体のモンスターが同時にフィールドに置けるのか?」

「特殊な状態に限りですね。

 今回の私のデッキではその状態は作れないのでどちらか片方のみ使用可能で最大六体までとなります」

「エクストラモンスターゾーンは我も使用できるか?」

「レギュレーションとデュエルディスクが対応していないので貴方は使用出来ません。

 予備のデュエルディスクがあるのでレギュレーションをこちらに合わせれば使えますがペンデュラムメインのデッキですとリンク召喚無しだとメリットよりデメリットの方が大きいと思いますよ?」

「ならばそのままの方が良いな。

 分かった。納得できん事があれば質問を投げよう」

「ではデュエルを始める前に此方を」

 

 そう言って俺は懐から四枚の【エン】シリーズを取り出した。

 

「そのカードは我を封じた…」

 

 ビリィッ

 

「……何をしている?」

「このカードが発動してデュエルが中断するなんて不安を抱かれたままデュエルをして欲しくないので破り捨てて使えなくしているんです」

「白銀!なんてことをするんだ!!??」

 

 ズァークを封じたカードを破壊した事に狂乱する零児君に半分に破いたカードを渡す。

 

「効果を読んでみて下さい。

 こうした理由が分かるはずですよ」

「一体どういう…」

 

 慌てて受け取った零児君だが、テキストを読むなり真顔になり、次いで眼鏡を外しよく磨いて目元をよく揉んでから眼鏡を戻し再び読み直す。

 

「…白銀。お前の判断は正しかった」

 

 そう言ってカードを再生不能なまでに破り尽くした。

 

「本当に良かったのか?」

「使いようもない塵のことなんか忘れましょう」

「ああ。記憶の無駄だった」

 

 そう忘却の彼方に投げ捨て、改めてズァークに告げる。

 

「これで憂いは無くなりました。

 さあ、最高に楽しい殺し合い(デュエル)を始めましょう」

「我を前にそう口にする胆力は認めてやる!

 だが、我に勝つなど不可能だと思い知れ!!」

 

 気を取り直し再び覇王ムーブを開始するズァークに俺はデュエルディスクを展開して悪魔の笑みを浮かべ嗤う。

 

「ならばその身を以て味わいなさい。

 戦うために戦い続ける修羅(デュエル狂い)達が至った『現代遊戯王』という名の地獄の釜の底を見せてあげますよ!!」

 

 ここから先の対話はカードに委ねるため、俺達は宣言した。

 

「「デュエル!!」」

 




執事がノンデリ化しているのは人間化を解いたからではなく早くデュエルがしたくて逸っているからです。

そのせいで邪悪な魂も遊矢扱いしないのもあってノンデリ執事の前では型無しで思わず素が出てました。

それと改めてエン・シリーズの効果を読んでみたんですが、マジでスピリッツ・オブ・ファラオの方がまだワンチャンある効果で馬鹿じゃないの?しか浮かびませんでした。

シナリオの都合にしてもちゃんとOCGでも使える効果にしろよ監督さんよ。

次回はズァーク戦。
執事のデッキは曰く付きと称したペンデュラムです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。